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やっぱりエンジニアはオモシロイ!
技術未来人インタビュー
ゴリッとした「コア」があるかどうか、
それがエンジニア生き残りの条件
アクセンチュア株式会社 パートナー
アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ株式会社
代表取締役社長
安間 裕 氏
アクセンチュアのパートナーでもあり、テクノロジー専門集団でもあるアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズを率いる安間裕氏。今までのキャリアパスを振り返っていただき、これからのエンジニアにとって必要なものについて語ってもらった。
(取材・文/植村恒有 総研スタッフ/関洋子)
作成日:03.04.16
安間 裕 氏
[PROFILE]
●アンマユタカ
1959年生まれ。明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒。団体系保険会社で大型汎用機系のSEとして11年間勤務。その後、外資系商社、アクセンチュア、外資系広告代理店を経て、2001年、アクセンチュアに再入社。2002年4月、現職に就任。
「偶然」をうまくとらえ、受け入れたきた結果がコアになった

安間 裕 氏
――安間さんはこの10年をどういう風に捉えていらっしゃいますか。
安間:構造不況といわれ、唯一好調と思われていたIT業界も不況に陥り、暗い話題の多い10年でした。しかし、その中で生き残り、伸びた企業はたくさんあります。では、何がその明暗を分けたのかというと、自社の「コア」が突き詰められていたかどうかです。そういう意味でITバブルは、「コア」を持つ企業と持たない企業をふるいにかける役割を演じたといえます。

 しかしこれはエンジニア個人にも当てはまることです。今後、エンジニアもゴリッとした「コア」があるかどうかが問われるようになるでしょう。

――エンジニア自身も「コア」となる技術を身につけなければならないという気持ちはあるようですが、それを得られるような環境にいるとは限りません。安間さんはどのようにして今のようなキャリアを築いてこられたのでしょうか。
安間:もちろん、すべてのエンジニアが自身で「コア」を築けるようなキャリアパスを描けるかというと、それは非常に難しいことです。この10年を個人の軸で振り返ると、大きな社会の流れの中で起こる偶然の連続に対し、その状況を楽しんできたこと、つまり、与えられた状況を、よい意味で受け入れてきたことが、私の「コア」を築くことにつながったと思っています。

 私自身、IT業界に入りたい、英語を身につけたいと思っていたわけではありませんでした。たまたま企業に就職したらコンピュータ部門に配属され、そして次に転職した会社では、英語は必要ないと言われて入社したにもかかわらず、直属の上司が米国人で英語を使わざるをえなかった。そういう偶然を生きてきたにすぎないのです。でも今思うと、そこで出合った「IT技術」と「英語」は私のコアとなっている。つまり偶然の連続をうまく受け入れてきたことで、それらの偶然をITエンジニアとして生き抜くための「コア」に転換できたというだけですよ。


――偶然出合ったITと英語、これらの偶然をなぜ、「コア」に転換できたのでしょうか。
安間:おそらく多くのエンジニアも、仕事をする中でさまざまな偶然に出合っているはずなのです。しかしなかなかそれをとらえることができず、見逃してしまう。では、なぜ私はできたのか。

 それには理由があります。私は必ず、目の前に出された料理を「うまいはず」と思い、食べることにしているのです。食べてみると、意外に「うまかった」ということがあるじゃないですか。それを「なんだかおいしくなさそう」と思い込み食べなければ、本当の味はわからない。

 つまりコンピュータや英語もそれと同じことです。新卒で入社した団体系生命保険会社でSEの適性試験を受けることになり、コンピュータなんか触りたくもないから、わざと間違えるつもりで答えた。ところが、幸か不幸か全問正解。まあ、素養はあったでしょうけど……(笑)。そしてコンピュータ部門に配属となり、実際に触ってみると、これが面白い。周りの人々も「君は筋がいい。適性試験は正しい」ということになった。英語も同様で、米国人の上司と意思の疎通ができるようになると面白くなる。結局、6年間で英語によるコミュニケーションには不自由しなくなりました。「面白いな」と感じたものは、一生懸命にやる。その結果が、今のキャリアに結びついたということです。
どんなにつまらない仕事でも必ず面白いところがある

安間 裕 氏
──安間さんにとって仕事とはどういうものでしょうか。
安間:仕事とはお金をもらうのと引き換えに、自分がだれかに何かを提供することです。アクセンチュアやアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズはもちろん、どこの会社でも同じでしょうが、「10年間やってきて何ができるんだっけ」といわれるようでは、エンジニアとしておしまいです。これはITコンサルタントも、業務コンサルタントも同様。何でもできるというのは、何もできないのと同じことなんですよ。

 10年ぐらい前から「スペシャリティ」とか「エキスパティズ」が大事だといわれてきましたが、そのとおりなんです。モノづくりはエジプト文明の時代からあり、今後も絶対なくならない仕事です。そして「モノづくりにかかわる人」は手に職をつけているので、その人たちも生き残っていけるはずです。しかしこの「手に職」という意味は、その技術や関連する事柄の浅い知識ではなく、ある程度掘り下げた事柄までも知っていなければならないのです。

──しかしITの世界では技術の進歩も速いし、プロジェクトの短期化なども進んでいます。厳しい仕事ですよね。
安間:私たちエンジニアの仕事はつらいことも多い。しかし、つらいなかには面白いことが必ずあるのです。かつて映画評論家の淀川長治さんが「どんな映画にも素晴らしい場面が必ず1カ所はある」と言っていました。それと同じことです。それをちゃんと見つけて、どんな仕事でも面白いと感じられるようになると、身になるのです。

 しかしながら面白いといっても、仕事は趣味ではありません。仕事を楽しむことは非常に大切ですが、楽しんだとしてもお金をもらっていることを踏まえていなければなりません。このプログラムをもっとこうしたいと思って取り組むだけでは、寄せ木細工の趣味と同じ。ここまでやったらお金をもらえる。お金をもらうことの対価として何をやったらいいか。そういう感覚を常に持っていることが、自らも楽しみかつ仕事としてもやりがいにつながります。
個性と個性がぶつかってシナジーを生み出す集団をつくりたい

──エンジニアが能力を発揮するためには、どういう機会や環境を整備すればよいとお考えでしょうか。
安間:会社と個人の関係は、従来は会社の中の一員としての個人でしたが、今は会社と個人は対等という関係に変わってきています。私も何度か転職を経験しましたが、その会社が嫌だから辞めたことは一度もなく、新しいつき合いを求めたから転職した。今や会社側も、個人との新しいつき合いを求めているのです。「人は財産」。これは、間違いありません。だからといって、「ウチへいらっしゃい。福利厚生も充実しているし、教育制度もしっかりしている。座っているだけでいつの間にか育つから」というようなことはない。よく考えてみれば、そんなことで人が育つわけがないのです。


安間 裕 氏
――なるほど。環境が人を育てるわけではなく、自らの意欲とそれを満たす環境が必要ということですね。
安間:そうです。自発的な欲求こそが、成長のカギでしょうね。学ぼう、成長しようとも思わない人は、いつまでたっても情報は与えられないし成長できないんです。

 ご存じかもしれませんが、当社ではナレッジ・エクスチェンジ・データベースを用意しています。これはアクセンチュア世界7万5000人の英知の集合なのですが、皆これをクセのように使っています。例えば、各ソフトウェア製品がどういう側面で長所があり短所があるのかを顧客に聞かれることもあるでしょう。そういうことひとつでも、アクセンチュアの社員は皆、事前に自ら勉強しています。

 ここまでの仕組みはなくても、成長意欲を満たしてくれるシステムが必ずあることこそ、エンジニアにとってよい会社といえるのではないでしょうか。

――安間さんが目指す理想の会社を教えてください。
安間:私は学生時代からバンドをやり、今もアマチュアのバンドに所属しています。クラーク&ボランオーケストラというバンドがあるのですが、そのサックスセッションの5人が非常に好きなんです。この5人はソリストとしてもすごいのですが、バンドとなるとさらによくなる。リズムなどが微妙にズレるんですが、逆にそれがドライブ感を生み出すのです。それぞれが自分の個性を主張しながら、ひとつの音楽をつくっていく。彼らの音楽はむちゃくちゃカッコいいんですよ。個が集まってグループを形成しても、決して個を殺さない。個性と個性がぶつかって、シナジーを生み出す。つまり、このバンドのような形が理想型です。当社も、ぜひそういう集団にしたいと思っています。

インタビューを終えて
安間さんが話された即興で行われるサックスセッションの話。それは今、プロジェクトの組織論でも注目されているスキルの一つ(インプロ・スキルとも呼ばれる。元々はジャズの世界の用語で「インプロビゼーション(即興演奏)」の意)。確かにジャズもビジネスの組織も人と人とのセッション。一人一人がすごくても、ダサくなったりすることは多分にある。みなさんの周りでもありませんか。すごい人が集まってるんだけど、魅力を感じられないこと。インプロの大切さを実感するためにも、一度、安間さんお勧めのバンドを聞いてみたいと思っています。(総研スタッフ/関洋子)

   
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