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ドツボにハマッたエンジニアが伝授する トラブル処理の「土壇場テク」
変化が激しく、不慮の事態が多発しがちな今の時代。だからこそ「起きてしまったことにどう対処するか」――トラブルシューティングの腕前こそは、エンジニアとしての真価を問われる重要ポイント! そんな実例、集めてみました。
(取材・文/河馬田英毅 総研スタッフ/木下ミカエル イラスト/森 俊憲)作成日:04.04.28
 
Part1 エンジニアの「事後処理テク」天国と地獄の境界線
「備えあればうれしいな」……じゃなくて、「備えあればうれいなし」とはいうものの、いくら備えても降りかかってくるトラブル。見事解決、むしろプラスに変えて拍手喝采!――それともますます傷口を広げて地獄落ち。その運命の別れ道は、いったいどこに?
Scene1 やってしまった!自分がミスをしちゃった
 
「うわっ、しまった! やっちゃった!」はだれにでもある経験。設計ミスに発注ミス、説明不足や思い込み……。落とし穴は、エンジニアの日常のそこかしこに潜んでいるもの。そこで慌ててはさらにドツボに……。
天国なケース 自分の見落としは正直に認める! 地獄なケース 修正期間の見積もりは 慎重にすべし!
 
試作した装置の部品が図面どおりできていなかったのに、良品として受け入れOKしてしまった。そのため、組み立てのときに所定の性能がでなかった。
 
 
データの加工に関して、他システムにおけるデータ形式を誤認し、受け渡し先のシステムがダウン。納期が非常に短かったとはいえ、連携テストをしっかりやっておくべきだった。
   
 
●対処テクニック
発注元に対し、自分の見落としを正直に認め、やり直すチャンスをもらった。具体的には、誤ってできてしまった形状に合わせてバネを再発注してしのいだ。
 
 
   
 
●対処テクニック
3時間程度で復旧できると思い作業にかかったものの、結局一日かかってしまい、最終成果物の作成が遅れ、エンドユーザーから苦情が殺到した。
 
天国なケース なんといっても誠意ある対応! 地獄なケース トラブルシューティングは あわてずに!
 
プログラムの一部を修正作業中に処理が起動してオンラインが停止。にもかかわらずその停止していることに気づかず、オンライン2時間停止で、甚大な被害をもたらした。
 
 
あるシステムでデータベースが壊れた。何とか稼働していたのでバックアップを取って再構築を試みたが、その前に、前提となった作業結果をきちんと確認してから行うべきだった……。
   
 
●対処テクニック
顧客が望んでいることを考えながら、誠意をもって打てる手は先に打つこと。作ることのできる資料はすべて作成、再発防止処理に力を入れていることを顧客にアピールし続け、何とか怒りを収めることができた。
 
 
   
 
●対処テクニック
再構築の手順を間違え、それに気づかなかったため、一部データが消失!約40時間かけ、できる範囲でデータ修復を行ったが、一部は顧客が一から作り直すことに。
 
Scene2 上司や前任者のミスでとばっちりが!
 
 ミスは部下に押しつける上司、嫌な仕事からは逃げちゃう後輩……「なんでアイツのミスを!」と思っても、それが組織で働くうえでの宿命。潔く諦めて、では、そこで打つ「次の一手」は? うまく対処できれば、周囲の評価も格段にアップ?
天国なケース 『これから』に全身全霊を注ぐ! 天国なケース 人間関係の早期構築がカギ!
 
担当者が突然退職。仕事を引き継いだが、あまりにもいい加減だったため、振り出しに戻ることに。納期面で顧客に迷惑をかけた。
 
 
社内異動後に前任のミスが発覚!そのフォローと顧客の信頼を取りもどすのに半年もかかった。
   
 
●対処テクニック
確実に進行しているということが顧客にはっきりわかるように、進行状況を細かく伝えるようにした。起きてしまったことを悔やむより、できることに対して全身全霊を注げば、相手も人間、わかってくれる。
 
 
   
 
●対処テクニック
とにかく毎日お客様のところに出向き、ご機嫌うかがいの毎日。なによりも人間関係を構築・修復することに力を注いだ。「コイツならしょうがないか、許してやるか」と早く思わせることが大切だと思う。
 
地獄なケース 「メールで連絡」したが伝わらず……
 
大々的な販促キャンペーンの資料の記載内容にミスがあり、社内外からその問い合わせが相次いだ。
 
●対処テクニック
すぐに担当の営業部門に対し訂正のメールを入れたが、営業があまりメールをチェックしておらず、ほとんど連絡が伝わらなかった。大量のメールに埋もれてしまうことを考慮して、販促キャンペーンのリーダーに報告し、そこから連絡をしてもらうべきだった……。
Scene3 えっ動かない?予測外の事態、事故に遭遇
 
 どんなに綿密に考え抜いても、トラブルは起きるもの。「これまでにない、新しい何か」を生み出すエンジニアだけに、予期しない出来事もまた不可避。そんなときこそ問われる力量とは?
天国なケース いざというときの支援態勢を! 地獄なケース 人の言葉をうのみにするな!
 
あるシステムの最終動作テスト中、開始まであと30分というときになってエラー発生。データベースが壊れてデータが読めなくなった。
 
 
社内イントラを設計・稼働させたが、アクセスの集中に耐え切れず、システムがまともに動かずにダウンした。
   
 
●対処テクニック
会社に問い合わせ、原因の特定方法を確認。一人で解決できるトラブルには限界がある。いざというときにどれだけの支援を受けられるかどうか、常日ごろのギブ&テイクが大切。
 
 
   
 
●対処テクニック
サーバのスペックアップで耐え切れるという業者の言い分を信じてさらに投資したが、改善できず投資は無駄に。実は初期設計段階の見積もりミスにすべてが起因していた。
 
天国なケース 譲れない部分はキッパリと! 地獄なケース メンバーの人選は慎重に!
 
一括受託案件で、ユーザーから、仕様変更といえるバグ報告が続出。予算も期間もなくお手上げ状態となった。
 
 
パッケージソフト開発にあたることになったが、集まったメンバーが、業務知識のない人ばかりだった。
   
 
●対処テクニック
バグと仕様変更の切り分けを明確に実施。バグは連日徹夜で改修、仕様変更は別途予算とスケジュールをとって実施。顧客には可能な限り譲歩するが、譲れない部分は曖昧にせず、キッパリ切ることが大切だと思う。
 
 
   
 
●対処テクニック
知識不足を人で補おうと、増員をお願いしたが、知識がない人ばっかり集まってしまった。すぐ上のボスがまったく頼りにならかったので、もう少し違った角度から、人の手配をお願いすればよかった。
 
Scene4 チームの人間関係がこじれた
 
「人は石垣、人は城」というように、チームで動くなら、その綿密な協力と人間関係こそが、仕事を円滑に進める第一条件。とはいえ、その人間関係こそが、一筋縄ではなく難しい……。
天国なケース 人材こそがいちばんの宝もの! 地獄なケース 前任者の口出しは異動『前』に……
 
顧客側の担当者の一人が「業者いじめ」。プロジェクトに参加したこちらのグループメンバーに無意味な嫌がらせをし続け、人材がどんどん失われた。
 
 
部署を異動した際、後任者が仕事に対する意欲に欠ける人物で、せっかくそれまでいい状態だった職場の士気がすっかり下がってしまった。
   
 
●対処テクニック
客側とは稼働日を変えて、その人と接触しないですむように環境を整えた。一時の顧客より大切なのは人材。人材を失えば、次の仕事につながらない。
 
 
   
 
●対処テクニック
前任者として、できうる限りのサポートをしようとしたが、かえって反感を買ってしまった。後任人事について、あらかじめ、もっと積極的に意見を上申すべきであった。
 
Part2 トラブル処理のドツボを脱出する基本ルール
トラブル処理の基本ルール5
1 トラブルは予兆の段階で先手処理しよう!
2 一人で抱えず、包み隠さず報告しよう!
3 起きたことに悩むより、まず前向きに解決を!
4 しっかり原因までさかのぼって対処しよう!
5 常日ごろサポートしてくれる人間関係を!
「厳しい状況でどう考え、動いたかを知れば、その本人のポテンシャルがわかる(某社人事担当)」とか。もちろん、いろいろな事態をあらかじめ想定しておくことは大切。でも、どうしても不測の事態は起きるもの。それに対処する能力は、事前の綿密さと両輪をなす、エンジニアにとっては必要不可欠なものといえそう。

 さて、今回の調査で見えたトラブルシューティングの第一条件は、当たり前ではあるけれど、「まず、動転しない」こと。「なんとか乗りきった」ケースに他人のミスに対処した事例が多く、「裏目に出た」ケースには自分のミスに関する事例が目立ったのも、他人のミスほど冷静に対処できるからではないだろうか。「原因が自分でも、スパッと気持ちを切り替える」――これがなかなか難しいのも、また、確か。

 もう一つ、どうしても外せないのが、コミュニケーション能力。トラブルが大きいほど、迷惑をかける人、協力を仰ぐ人も多くなる。ここでムスッと黙り込んだり、周りに当たったりしたら、ますます傷口を大きくするだけ! 信頼を回復するにも、処理を手伝ってもらうにも、「よい人間関係」は基本中の基本。普段、周りのだれかがトラブルに困っていたら助けるよう心がけるのも、「もしも」のための保険になるかも。……もちろん、自分ではできない「助け」まで買って出てしまうのは、余計なトラブル源になってしまうけれど。

 先行き不透明なこの時代。企業でも、ますます「いざというときの対処能力」=「土壇場力」は高く評価される。トラブルは起きないに越したことはないけれど、起きてしまったトラブルは、そんな「土壇場力」のスキルを磨く機会だとも考えよう!
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木下ミカエル(総研スタッフ)からのメッセージ
まさにこのレポートを担当中、予想外のトラブルに巻き込まれて一時入稿があやうくなりました。幸い、ほかの総研スタッフの協力を得てなんとか完成しましたが、身にしみたのが、「イザというときに助けてくれる仲間」のありがたさ。いい仲間がいるというのは、最大の危機管理なのかも……。みなさんの場合はどうですか?

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