デキる人は「逆算」して考え、デキない人は「積み上げ」で考える――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第6回目です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、読むリラックスタイムですら学びの時間に変えることができます。私が強くお勧めする選りすぐりのマンガの名シーンの1コマを解説することで、より多くの方に名作の良さを知っていただけたら幸いです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「株に限らず物事には出口戦略が絶対必要だよ」

(『インベスターZ』第2巻credit.12より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

大切なのは結果という「出口」

そもそも、道塾学園に投資部が創設されたのは、明治初期に突如として現れた、1人の天才数学少年によってでした。学園の運営者がその生徒に投資を行わせたところ、巨額の利益を上げたため、学園は資産を少年に託すことを決定。少年は数名の優秀な仲間とともに、生徒だけによる投資部を設立し、現在の基礎を築いたのでした。

主人公・財前は、先輩の指導のもとで投資を始めます。しかし先輩に「買った後はどうやって売る?」と聞かれ、答えに窮する財前。先輩・月浜蓮(つきはまれん)は本棚からノートを取り出し、財前に見せます。それは、あの天才少年が書いた「投資の格言ノート」でした。

先輩が見せた格言とは「株ハ入口ニアラズ。出口ニアリ」というもの。「多くの人は、間違った株を買いたくないがために、買うための努力はする。しかし買った後のことを考えていないために必ず失敗する」と語る蓮。そこには、結果を得るためには「どういう結果が欲しいのか?」「そのためにはどうすべきなのか?」を考えることが大切だ、という意味が込められているのでした。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

投資とは「正しく価値を計ること」

「出口戦略」とは、もともとは軍事用語で、撤退時の被害を最小限に抑えつつ、自軍に引き上げるための策略のことを言います。通常、戦さとは攻める時よりも引く時のほうが難しいものです。投資の場合、特に商品を売却した時点で最終的な利益が確定するため、“出口”は非常に重要となります。

たいていの投資家は、「この株は将来上がるか?下がるか?」というように、自分の勘だけに頼って購入します。すると、自分が買った値段が基準となるため、売り時がわからずに一喜一憂することになります。

そうではなくて、「自分が予測する適正価格はいくらなのか?」「それに対して市場価格はいくらなのか?」と比べた結果、「将来的にこれくらいの利益が見込めるから購入する」と判断して買うことです。もちろん、予想通りにいくことはありませんが、中長期的な見通しを立てておけば、途中の価格変動に惑わされることもなくなります。これが投資における「出口戦略」です。

得たい結果のためにやることを決める

次に、これをビジネスに当てはめて考えてみることにしましょう。『インベスターZ』の著者・三田紀房(みたのりふさ)氏は、マンガ以外にも何冊かビジネス書を出版しています。その1冊の『個性を捨てろ!型にはまれ!』の中に、以下のような話が出てきます。

最近は、社会が二極化し問題になっていますが、それはマンガ家の世界でも同じだそうです。では、売れているマンガ家とそうでないマンガ家の違いが何かと言うと、「マンガ誌に掲載されるかどうか?」なのだと三田氏は言います。

かつて、サラリーマンだった三田氏が会社を辞めたのは、実家の衣料品店を継ぐためでした。実家の負債を返済するために、新人マンガ賞の賞金に目をつけ、作品投稿を始めたのがマンガ家になったきっかけだということです。現在は、10代でマンガ家になる作家がいる時代です。30歳で本格的なスタートを切った氏は、決して早いほうとは言えない状況でした。

そこで氏は、「マンガ誌に掲載される」ことに照準を合わせ、どうすべきかを考えます。出した答えは、「絵の技術を上げることに時間を使わない」ことでした。世の中には、絵のうまい人はいくらでもいますが、マンガで大切なのは、ストーリーやキャラクター設定です。中身で勝負することを決めた氏は、絵の勉強に時間を割くことをやめ、その分を取材や資料集めに充てることにしました。こうして、名作を次々と世に送り出したのです。

始めるためには「終わりから考える」ことが必要

出口戦略とは、要は「得たい結果から考え、それを得るための方法を導き出す」ことを言います。

確かに、入口も大切です。入口とは、「始める時」のことです。投資で言うなら「何を買うか?」に当たり、仕事で言うなら「どの仕事をするか?」や「与えられた仕事をどのように行うか?」といったことになるでしょう。しかしその入口を決めようにも、もとから目的に沿って考えなければ、正しい決定を下すことができません。

あなたも以後はぜひ、「出口から逆算する」ことを意識してみてください。
投資でもビジネスでも、「最も大きいのは実利や実損ではなく、機会損失である」ことはよく起こります。この見えにくいものを見ようとする人材や企業は、本当に強い存在です。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が11刷となっている。著作累計は34万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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