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リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

「一発で伝わる」文章には“具”が欠かせない

「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う山口拓朗さん。そんな山口さんに「ビジネスパーソンのための文章術」について伺うこのコーナー。今回は「伝わる文章に欠かせない要素」についてです。
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抽象的な文章では伝わらない

伝わる文章を書く人と、伝わらない文章を書く人の差はどこにあるのでしょうか? その差のひとつが、“具”つまり具体例 の有無です。伝わる文章には具体例があり、伝わらない文章には具体例がない。このような傾向が見受けられます。

【例文】 汗をかくことが好きです。

「汗をかくこと」とは、どういうことでしょうか。スポーツをするときにも汗をかきますし、人によっては、寝汗をかく人や、緊張したときに汗をかく人もいます。あるいは、「一所懸命に仕事をする」ことの比喩として「汗をかく」という表現を使う人もいます。そうそう、ヒヤっとしたときに “冷や汗”もかきます。つまり、「汗をかくこと」という抽象的な文章では、読む人に伝えたことにはならないのです。

【改善文】 汗をかくことが好きです。オフの日にはランニングやフットサル、テニスなどで汗をかきます。温泉やサウナに入って汗をかくのも大好きです。

具体例を盛り込むことによって、書き手が何を言わんとしているのか、その真意が伝わります。具体例には、情報を明確化するパワーがあるのです。

<たとえばトレーニング>で具体化する力をつける!

具体例とは、平たく言えば「言葉をかみ砕くこと」です。先ほどの例文でいえば、「汗をかくこと」という言葉を噛み砕いたものが、「ランニングやフットサル、テニスなどのスポーツをすること」であり、「温泉やサウナに入ること」なのです。

具体例を盛り込むトレーニングとして有効なのが<たとえばトレーニング>です。「たとえば」という言葉を使って、身の回りにある物事をどんどん具体化していきます。独り言のようにつぶやくだけでも効果が得られます。

【<たとえばトレーニング>のお題回答例

、たとえば、赤、黒、白、黄色、緑、紫などです。
宝石、たとえば、ダイヤモンド、オパール、ルビー、サファイヤなどです。
交通機関、たとえば、電車、飛行機、バス、タクシーなどです。
緑黄色野菜、たとえば、ピーマン、ほうれん草、ニンジン、トマトなどです。
音楽、たとえば、クラシック、ロック、ポップス、ジャズ、パンク、フォークなどです。
名作映画、たとえば、『タイタニック』『ローマの休日』『スター・ウォーズ』『風と共に去りぬ』などです。

「名作映画」でトレーニングを終えたら、次は「名作アニメ映画」や「名作ミュージカル映画」「名作SF映画」という具合に、答えるのが少し難しいお題にもチャレンジしてみましょう。
 

具体例を盛り込めば「文章」が「映像」になる?

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自分の感想や意見、主張などを文章にするときにも、抽象的な言葉だけで終わらせずに「具体例」を盛り込みましょう。

【具体例のない文章1】 窮屈なスペースが嫌いです。ストレスを感じます。
【具体例のある文章1】 窮屈なスペースが嫌いです。たとえば、観覧車やゴンドラ、満員電車、カプセルホテル、飛行機のエコノミークラスなどです。社交辞令や接待(するのも受けるのも)も、私にとっては窮屈そのもの。ストレスを感じます。

【具体例のない文章2】 信念をもって自分の道を突き進む人のことを尊敬します。少しでも彼らの域に近づきたいと思います。
【具体例のある文章2】 信念をもって自分の道を突き進む人のことを尊敬します。たとえば、坂本龍馬、吉田松陰、マザー・テレサ、松下幸之助、イチロー、矢沢永吉などがそう。少しでも彼らの域に近づきたいと思います。

【具体例のない文章3】 私には数々の夢があります。それらが達成される日を想像するだけでワクワクします。
【具体例のある文章3】 私には数々の夢があります。近いうちに達成できそうな夢には、「ハーレーダビッドソンの購入」と「富士山登頂」があります。また、5年以内に「サロマ湖100kmウルトラマラソンの完走」を目指します。いつの日か、SF小説を書いて新人賞を受賞することも捨てがたい夢です。それと、麻雀で役満の「清老頭(チンロウトウ)」を作ることも諦めていません(笑)。それらが達成される日を想像するだけでワクワクします。

このように、具体例のない文章と具体例のある文章の差は一目瞭然です。具体例のないものはイメージしにくく、具体例があるものはイメージしやすい。具体例には、読み手の頭のなかに「映像」を浮かび上がらせる効果があるのです。

ビジネス文章にも具体例が求められる

もちろん、ビジネス文章でも、具体例を盛り込むスキルは必須です。

【例文】 この商品を広めるためには、口コミを誘発させるネットプロモーションが有効だと考えます。

「口コミを誘発させるプロモーション」の具体例が書かれていないこの文章では、意見を伝えたとはいえません。読み手も判断の下しようがありません。

【改善文】 この商品を広めるためには、口コミを誘発させるネットプロモーションが有効だと考えます。たとえば、影響力のあるグルメ系のブロガー30名に試食してもらい、自身のブログでリポート記事を書いてもらうのはいかがでしょうか。

「口コミを誘発させるネットプロモーション」の具体例を書いたこの文章であれば、書き手の意見が明確に伝わります。読み手も、その意見に対して「良し悪し」を判断しやすくなります

文章も味噌汁も「具」が重要!

「具体例」は伝わる文章に欠かせない要素であると同時に、感想や意見、主張の説得力を高める“根拠”としての役割も小さくありません。

具体例のない文章は「具のない味噌汁」のようなものです。一方、具体例のある文章は「具入りの味噌汁」のようなものです。見た目は同じ味噌汁でも、前者は物足りなく、後者はおいしく食べられる。文章も味噌汁も「具(体例)」が重要なのです。

せっかく文章を書くのであれば、読む人には、できる限りおいしく味わってもらいたいもの。とりわけビジネスシーンで書く文章では、具体例の有無次第で「仕事の目的が達成できる or 仕事の目的が達成できない」が分かれます

具体例のない文章を書いたにもかかわらず(書いた本人が)“何も感じない”ようであれば、まだ具体例を盛り込むことの重要性が認識できていないのかもしれません。一方で具体例のない文章を書いたときに「なんだか物足りないなあ」と感じるようになったら免許皆伝です。 

著者:山口拓朗

『書かずに文章がうまくなるトレーニング』著者。

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 伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。“書ける頭脳”を作る文章トレーニング方法を紹介した『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)のほか、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(共に明日香出版社)他がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/