「文章力がない」人こそ磨くべき、たった一つのスキルとは?

「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う山口拓朗さん。そんな山口さんに「ビジネスパーソンのための文章術」について伺うこのコーナー。今回は「文章力を上げるために磨くべきスキル」についてです。

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いい文章を書く人と、ダメな文章を書く人の決定的な違い

筆者は20年以上に渡って、編集者やライターとして活動してきました。そのなかで確信していることがひとつあります。それは、優れた記者やライターほどインプットの能力に長けている、ということ。つまり、情報収集がうまいのです。

もちろん、書き方のうまいヘタがまったく無関係というわけではありません。しかし、どれだけ書き方がうまくても、書く情報の質が低ければ、いい文章にはなりません。一流の記者やライターは、良質な情報を仕入れる能力が高いゆえ、魅力的な文章、情報価値の高い文章を紡ぐことができるのです。

これは何も記者やライターに限ったことではありません。ビジネスパーソンでも、いい文章を書く人は、意識するしないにかかわらず、上手に情報をインプットしています。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

インプットの主戦場は現場

では、情報はどこから仕入れればいいのでしょうか?
最も情報が転がっているのは現場です。工場の視察のリポート文を書く人であれば「工場」が現場ですし、お客様に案内文を書く人であれば、ふだんお客様と接している場所(お店など)が現場です。

なぜ現場が重要かというと、一次情報が収集できるからです。「一次情報」とは、「加工や編集をしていない情報」のこと。関係者から直接聞いた話を含め、現場で見聞きした情報は、高い鮮度と正確性を備えています。つまり、情報としての価値が高い。現場は一次情報の宝庫なのです。

一次情報のなかでも「人から直接聞いた情報」はとくに価値の高い情報です。なぜなら、世の中には「人」しかもっていない情報が山ほどあるからです。

では、人から情報を得るときに、その効果を最大化するにはどうすればいいでしょうか。ポイントを紹介していきます。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【情報収集のポイント1】誰に聞くか?

「誰に聞くか」はとても重要です。そもそも情報をもっていない人に話を聞いても意味がありません

たとえば、現場がクライアントのお店だった場合、お店全体の情報は店長に聞くのが良さそうですが、そこに来るお客様の様子を聞くのであれば、接客にあたっているスタッフのほうがいいかもしれません。

また、英会話について書く場合、書くテーマが「英会話の留学情報」であれば、英会話講師や英会話上級者ではなく、英語留学に詳しい人(英語留学エージェントなど)に話を聞くべきです。書くテーマに応じて、話を聞くにふさわしい相手を選びましょう。

◆【欲しい情報】新作映画の公開劇場情報
  ⇒【話を聞く相手】映画配給会社の作品担当者

◆【欲しい情報】製品Aの機能情報
  【話を聞く相手】製品Aのメーカーの開発担当者や営業担当者

◆【欲しい情報】B級グルメの最新情報
  【話を聞く相手】B級グルメの専門家やB級グルメライター

つまりは適材適所です。一次情報を拾うときには、自分が欲しい情報をもっているのが誰なのかを、事前に確認しておく必要があります。現場にいる人であれば誰でも構わない、というわけではありません。

【情報収集のポイント2】何を聞くか?

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「何を聞くか」は、「何を書くか」によって変化します。

たとえば、不動産の専門家に話を聞く場合、文章のテーマが「分譲マンションの購入方法」なのか、「分譲住宅(戸建て)の購入方法」なのか、それとも「海外不動産の投資方法」なのかで、質問内容が大きく変わります。

話を聞く作業は、常に「仮説→検証」のくり返しです。
あらかじめ文章のテーマに沿った質問を用意しておき、<◯◯は□□ではないだろうか?>という仮説を立てて質問します。
仮説通りであればOKですし、仮説と違えば、「なぜ△△なのでしょうか?」「いつ△△をしたのでしょうか?」という具合に、いわゆる「5W3H」(※)を使いながら、アドリブで掘り下げていきます。

※「5W3H」とは、物事を正確に伝える際に用いるツールです。人に質問をするときにも使えます。
■When(いつ/期限・時期・日程・時間) 
■Where(どこで/場所・行き先) 
■Who(誰が/担当・分担) 
■What(何を/目的・目標) 
■Why(なぜ/理由・根拠) 
■How(どのように/方法・手段) 
■How many(どのくらい/数量) 
■How much(いくら/費用)

難しいのは、話を聞くときに、文章のテーマが決まっていないケースです。
このような場合には、少し大きめの質問から入り、相手が話す内容を吟味します。話の途中で“これぞ(=テーマになりそう!)”という情報が出てきたら、絞り込んだ(具体的な)質問をぶつけながら、ポイントを一気に掘り下げていきます。

【情報収集のポイント3】どう聞くか?

話を聞くときは、よく耳を傾けるほか、「質問」が「尋問」にならないよう気をつけましょう。相手を不快な気分にさせれば、有益な情報が得られなくなる恐れがあります。

【話を聞くコツその1:興味をもつ】

興味をもって話を聞く。これ以上のコミュニケーションスキルはありません。興味さえあれば、「うんうん」「なるほど」「へー」といった相づちも増え、表情も笑顔になりやすいものです。
人の話を聞くときは、何はさておき相手に「居心地がいい」と感じてもらうことが大切です。こちらの相づちや笑顔を見て、相手が「この人は好意的に聞いてくれるから話しやすい」と感じてくれれば、口も滑らかになるはずです。

【話を聞くコツその2:テンポと声量を相手に合わせる】

話のテンポと声量には個人差があります。話を聞くときには、「自分の」ではなく、「相手の」テンポと声量に合わせましょう。
ゆっくり話す人であれば、こちらの話し方や相づちもゆっくりと。声量が大きな人であれば、こちらも、少し声を張り上げる。テンポと声量を合わせるだけで、相手が「話しやすい」と感じます。

相手が重要だと気づいていない情報も引き出す

有益な情報を得るためには、ときに、相手の無意識下に沈んでいる情報を浮き上がらせる「攻めの質問」も必要となります。
お肌がきれいな人に「どうしてお肌がきれいなんですか?」という質問をすると、「なぜと言われても……よくわかりません」と返されてしまうことがあります。本人がその理由を把握していないようなときです。

このようなケースでは、「どんなふうに洗顔やクレンジングをしていますか?」という具合に、相手が打ち返しやすいボールを投げます。すると、「そう言えば、私は顔をゴシゴシこすりません」「顔を洗うときは温水ではなく、必ず冷水を使います」という具合に、有益な情報を含んだ返答がもらいやすくなります。

「攻めの質問」をするときに求められるのも「仮説」です。
「本人は気づいていないかもしれないけど、おそらく◯◯ではないだろうか?」という仮説を立てたうえで質問をします。かゆいところに手が届くような質問をすると、相手から「気づかせてくれてありがとう」と感謝されることもあります。「仮説→検証」でどんどん有益な情報を集めていきましょう。

 

信頼できる情報源とのホットラインを築いておく

特定の分野・テーマで文章を書いている人は、有益な一次情報をもっている人との関係性を大切にしましょう。その道のスペシャリストや情報通らと常に連絡を取れる「ホットライン」を築いておくのです。

音楽の情報を発信している人であれば、「J-POPならAさんに聞く」「ロックならBさんに聞く」「ジャズならCさんに聞く」「音楽の歴史ならDさんに聞く」という具合に、テーマに応じて気軽に質問できるパイプができていればOKです。

社内であれば、開発部のAさん、営業部のBさん、販売部のCさん、人事部のDさんという具合に、それぞれの現場についての情報をもつ情報源と信頼関係を築いておきましょう。何かあったときに遠慮なく話を聞ける状態にしておくことが大切です。

人脈(生きた情報網)を有効に活用する能力も、文章作成能力の一部です。 “情報ホルダー”や“優秀なブレーン”と上手につながれている人は、「いい文章」を書く環境をもっている人です。「書くことだけが文章力ではない」と肝に銘じておきましょう。

著者:山口拓朗

『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』著者。

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伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。書けない人を書ける人へと導くノウハウを満載した『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)のほか、『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)他がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

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