メールで「感じよく」「スムーズに」予定変更をお願いするには?

「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う山口拓朗さん。そんな山口さんに「ビジネスパーソンのための文章術」について伺うこのコーナー。今回は「用件をメールでスムーズに伝えるための心得」についてです。

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「冗長」も「言葉足らず」も、どちらもアウト

仕事で使うメール、とくに、連絡事項など情報の伝達を目的とするメールでは、余計な情報をだらだらと盛り込みすぎないことが重要です。余計な情報がノイズとなって、大事な用件が伝わりにくくなるからです。
一方で、相手(メール受信者)が必要としている情報が書かれていない「言葉足らず」のメールもいただけません。

ノイズの多い「冗長メール」も、情報が不足した「言葉足らずメール」も、相手にとっては迷惑です。虫の居所が悪ければ怒りを買ってしまうかもしれませんし、場合によっては、送信者自身の信頼性や評価を損ねかねません。

仕事のメールに求められるのは、情報を過不足なく盛り込む絶妙なさじ加減、つまり、バランス感覚です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

その前に……ビジネスシーンでは用件を真っ先に伝えよ!

では、具体的にメールの例文を見ていきましょう。

【例文】 
お世話になっております。

明日10時〜12時にエキュート品川のカフェで
お客様とのお打ち合わせがあるのですが、
いま福岡にいる弊社のお客様の帰京が遅れて、
打ち合わせ開始が11時頃にずれ込みそうです。
なんでも飛行機のフライト時間を
勘違いして把握していたようなのです。

つきましては、誠に申し訳ございませんが、
明日13時にお約束しているミーティングの時間を
14時にずらしていただくことは可能でしょうか。

たいへんご迷惑をおかけいたしますが、ご調整いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

「読みにくい」「まどろっこしい」と感じる人が少なくないはずです。典型的な冗長メールです。

しかし、冗長以前に問題なのが、このメールの用件がパっとわからない点です。このメールで最も伝えたかったことは何でしょうか?それは「打ち合わせ時間を14時にずらしてほしい」という“おうかがい”ではないでしょうか。

例文では、その用件が後半に書かれています。前半には何が書かれているかというと、「明日10時〜12時にエキュート品川のカフェで〜」と相手にとって“よくわからない話”が展開されています。これでは相手がイラッときても仕方ありません。

仕事で使うメールでは、真っ先に用件を伝えるのがセオリーです。

【改善例1】 
お世話になっております。

明日13時にお約束しているミーティングの件で、ご連絡いたしました。
誠に申し訳ございませんが、
時間を14時にずらしていただくことは可能でしょうか。

10時〜12時にエキュート品川のカフェで
お客様とのお打ち合わせがあるのですが、
いま福岡にいる弊社のお客様の帰京が遅れて、
打ち合わせ開始が11時頃にずれ込みそうです。
なんでも飛行機のフライト時間を
勘違いして把握していたようなのです。

たいへんご迷惑をおかけいたしますが、ご調整いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

この文面であれば、相手は「打ち合わせ時間を14時にずらしてほしい」という用件を理解したうえで、続きを読むことができます。
用件=全体像」です。
全体像をつかんでから続きを読むのと、理解せずに読むのとでは、頭への(情報の)入り方が大きく変わります。改善例1は、例文よりも少しマシな書き方といえるでしょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

冗長部分は「削る or まとめる」のどちらか

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少しマシな文章になったとはいえ、まだ冗長の問題は解消されていません。このメールのどこが冗長なのでしょうか。筆者が思う冗長部分は以下です。

明日10時〜12時にエキュート品川のカフェで
お客様とのお打ち合わせがあるのですが、
いま福岡にいる弊社のお客様の帰京が遅れて、
打ち合わせ開始が11時頃にずれ込みそうです。
なんでも飛行機のフライト時間を
勘違いして把握していたようなのです。

丁寧といえば丁寧ですが、判断基準にすべきは、相手(メール受信者)がその情報を必要としているかどうか、ではないでしょうか。もしも相手が「そんな情報は知りたくない」「言い訳じみている」などと感じるとしたら、この部分は、間違いなく冗長です。

では、相手にとって必要な情報だけを抽出して再構成してみましょう。

【改善例2】
お世話になっております。

明日13時にお約束しているお打ち合わせの件で、ご連絡いたしました。
誠に申し訳ございませんが、
時間を14時にずらしていただくことは可能でしょうか。
直前の打ち合わせが、先方の事情で約1時間後ろ倒しになるためです。

たいへんご迷惑をおかけいたしますが、ご調整いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

例文で110文字以上あった冗長部分は、約30文字(青字)に要約しました。相手にしてみれば、この程度の情報量で十分ではないでしょうか。

もちろん、何をもってして冗長かは、そのときの状況やメールを送る相手との関係性にもよります。しかし、だからといって、書きたいことを書きたいように書いていいということにはなりません。

「余計なことを書きすぎた」と感じたときは、冗長部分を削ってすっきりさせましょう。要点を押さえてコンパクトに書く。これこそが、ビジネスシーンで好まれるメール文章です。

「冗長」もダメだけど、「言葉足らず」も同じくダメ!

もっとも、コンパクトさが行き過ぎて「言葉足らず」になってもいけません。

【言葉足らずの例文1】
お世話になっております。

明日13時にお約束しているお打ち合わせの件で、ご連絡いたしました。
誠に申し訳ございませんが、
時間を14時にずらしていただくことは可能でしょうか。

たいへんご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

「打ち合わせ時間を遅らせてもらいたい理由」がまったく書かれていないこのメールでは、相手を怒らせてしまうかもしれません(「ご調整いただければ幸いです」の一文も省かれています)。
冗長なメールも嫌がられますが、必要な情報が抜け落ちた「言葉足らず」は、もっといけません。

以下はさらに「言葉足らず」なメールです。

【言葉足らずの例文2】
お世話になっております。

明日ですが、時間を14時にずらしていただくことは可能でしょうか。

たいへんご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。

「明日13時にお約束しているお打ち合わせの件で」という言葉まで省略してしまいました。読んだ瞬間に相手が「明日って……何のことだっけ?」と思うかもしれません(手帳を取り出してスケジュールを確認するかもしれません)。
相手に余計な手間をかけさせること自体がレッドカードです。

メールの正解は相手がもっている?

絶妙なさじ加減のメールを書くためには、相手(メール受信者)の立場でものを考えることが大切です。「どういう情報を必要としているだろうか?」「何を書けば納得してくれるだろうか?」と。相手のニーズを的確につかめる人は、必要にして十分な情報をメールに盛り込むことができる人です。

もちろん、相手が「詳しく説明しないと納得しない几帳面な人」であれば、【改善例1】くらいの文面が適切というケースもあるでしょう。メールに何をどれくらい盛り込むか。
そこに正解はありません。あるとしたら、その正解は、いつでも相手がもっています。

メールは“送る人のもの”ではなく、メールを“受け取る人のもの”だと肝に銘じておきましょう。

著者:山口拓朗

『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』著者。

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伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。メールでのミスやトラブルを減らす方法を網羅した『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

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