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NAND型フラッシュメモリのみならず、それを使ったSSDなどの製品開発を続ける東芝セミコンダクター&ストレージ社メモリ事業部。大船分室ではこれらメモリ・ストレージ製品のファームウェア開発が進んでいる。それを担う3人のファームウェア・エンジニアたち。関連業界から転職してきて1〜2年目を迎えた彼らは、東芝に移ってどんな未来が拓けたのか。座談会で本音を聞いてみた──。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/伊藤理子 撮影/刑部友康)作成日:14.10.22
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2012年10月入社 前職はSDカード向けのコントローラの開発を担当。現在は、スマートフォン向けUFSコントローラ向けファームウェア開発を手掛ける。 |
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2013年7月入社 デジタルカメラなどコンシューマ系のファームウェア開発が専門だったが、前職ではWebサーバー構築などIT系のシステム開発も担当。現在はeMMCのファームウェア開発に従事。 |
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2013年10月入社 前職は、半導体ソフトウェアのデバックツール開発。現在はSSDファームウェアのテスト工程を担当。 |
――まずは東芝に転職したきっかけをお聞かせください。
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T.Oさん
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M.F |
コンシューマ向けデジタル機器のファームウェアが自分の基盤技術であるのに、前職の最後の2〜3年はWebサーバー構築などIT系の仕事に回されていました。しかも年齢が上がってくるにつれて、マネジメントの仕事ばかりになってしまったんです。もう一度開発の仕事がしたい、ファームウェア開発に戻りたい、と思い転職先を探していました。ほかの会社も調べましたが、東芝では、ハードウェアと一体となってファームウェアを開発できそうだと思ったんです。 |
J.T |
私は前職が半導体メーカー。仕事は楽しかったのですが、企業としての先行投資はあまりうまくいってないように感じていました。10年後の自分を考えたとき、このままだとやりたいことができなさそうだな、単なる部品屋になって終わりかな、と悲観的な展望しか描けませんでした。 一方、東芝は外から見ても景気がよさそうで(笑)。技術のバックボーンもしっかりしている。やるからには世界の半導体市場で堂々と戦いたいですからね。日本はやはりモノづくりが基本の国。モノづくりができていないと立ち行かなくなると考えています。その意味でも、自分としては東芝に転職するしかないと思いましたね。面接では、先行投資の状況などについて質問し、海外にも行けそうだし、自分の仕事の範囲も広がりそうだと期待が膨らみました。 |
――技術者の転職の場合、前職での経験が新しい職場でどのように活かせるか、というのがポイントになりますよね。
T.O |
実は私は前職でもNAND型フラッシュメモリに関係していたんです。東芝からNANDを買ってきて、それをSDメモリカードに仕立てるという仕事。だから、今の仕事とは共通点が多い。 もちろんこっちはNANDの本家ですから、ハードウェアやパッケージングなど各部署と密接にやりとりしながら最新技術を取り入れることができる点が違う。これまではファームウェアしかやれなかったけれど、今は自分の仕事の幅が広がりました。いろいろな話が聞けるので、すごく面白い。 |
M.Fさん
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J.T |
前職でもデバッグツールの開発をしていたので、その経験がそのまま使えています。明文化できないような、自分なりのノウハウも持っているつもりなので、それもかなり活かせていますね。前職でのマネジメント経験も、チーム内での仕事のアサインなどで役立っています。 |
――東芝で実際に働いてみて、驚いたことはありますか?
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J.Tさん
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T.O |
ところで、転職活動で苦労したことってありますか? 私の場合、忙しい業務のかたわら求人に応募したり面接に行くのが、けっこう大変だったんですが。 |
M.F |
忙しかったから、面接のために会社を休むというのがなかなかね…。私の場合、実はほかに内定が出た企業もあったのですが、東芝が本命だったので断るのが大変でした(笑)。 |
J.T |
私の場合は、当初は転職したい会社がなかなか見つかりませんでした。自分の信念は曲げられない。けれども、信念にこだわりすぎても見つからない。自分は本当にやりたいのは、何なのか。自分の技術者としての本質はどこにあるのか…をじっくり考えましたね。振り返れば、私の転職活動は、自分のキャリアとじっくり向き合う時間だったとも思います。 |
――実際に働いてみて、改めて感じた東芝の魅力を教えてください。
J.T |
自社ブランドの製品開発に携わっている、という実感ですね。SDカードやSSDって、どこの店に行っても「TOSHIBA」とロゴ入り製品があって、お客さまはそれを選んで買っていくじゃないですか。作っている側として、これほどうれしいことはない。前職のように、いわゆる部品屋に徹していると、自社の名前が出てこないのが少し寂しかったんです。 |
M.F |
私が強く感じるのは、最先端の技術を担っているという誇りですね。世界の動向をにらみつつ、顧客企業とやりとりしながら、新しい技術を世界に広めていくという実感。もちろん、技術者としての責任感もその分大きいと感じますね。世界的スマートフォンメーカーなど客先からの要求も非常に高い。それに応えねばならないという責任も日々感じています。 |
T.O |
私はフラッシュストレージの次世代規格UFS(Universal Flash Storage)関連の開発をしているのですが、UFSは開発を始めてからまだ2年ぐらいしか経っていない。前例が少ないから、自分で考えなければならない場面が多いのです。顧客からの要求も、最初は実にシンプル。それを自分なりに解釈して提案していく。それって大変だけれど技術者としてはやりがいがありますね。 東芝は、やりたいと手を挙げたら任せてくれる会社です。私のようにいちメンバーという立場であっても、自分から顧客に新しい技術や性能改善を提案したいと言えば、どんどん任せてもらえます。 担当範囲を広げるも狭めるも、結局は自分次第なんですよね。思ったことを発信して、課題への対策案を出していければ、どんどん仕事は広がっていくはず。もちろん、責任も背負うことになるから大変ではありますけれど(笑)、その分やりがいも得られますよ。 |
M.F |
おっしゃる通り。私も転職前は、仕事の領域が狭まるのではないかと不安に感じていましたが、実際はそんなことは全くなかった。ファームウェアとひと口に言っても、実にいろいろな機能があって、やるべきことがたくさんある。万が一、やるべきことが尽きても、自分で新しいことを作り出せばいいだけ。それをよしとしてくれる社風ですからね。 |
J.T |
私たちの顧客の多くは、世界的に有名な企業技術のことを私たち以上によくわかっている顧客も多いだけに、要求水準は高いです。その要求に東芝がどれだけ対応できるかが、常に試されていると感じます。 要望レベルを達成するために、顧客とはよく話をするのですが、そのやりとりが実に楽しいんですよね。先端レベルのところで、双方の技術をぶつけ合っている、という感覚。その結果、感謝の言葉をもらったときはこの上ない喜びを感じます。 世界の企業を相手にする業務では、当然英語は必要になります。ファームウェアの仕様書はすべて英語だし、オフショア開発先の人とのやりとりもすべて英語。私自身、海外出張も頻繁にあります。そういう環境に身を置けば自然と、英語に強くなれるし、自分の領域もさらに世界に広がる。会社の英語教育体制も整っていますから、英語に苦手意識を持つ技術者も大丈夫だと思いますよ。 |
M.F |
私は海外出張は未経験ですが、いずれ行く機会があるようです。英語は読むほうは大丈夫のですが、会話が少し不安…。今後に備えて勉強しています。幸い、東芝には英会話の研修もあるので有効活用しています。 |
――最後になりますが、みなさん、技術者としてこれからやってみたいことをお聞かせください。
M.F |
どんどん新しいことにチャレンジしていきたいですね。例えば、いま話題の三次元NANDを活用した製品開発とか。もちろん、今関わっているeMMC技術についても、自分はまだ全体のことがわかっていないので、そこを埋めていきたい。全部をわかるようになり、製品を一つ任されるようになって、初めて東芝で一人前の技術者になったと言えるのかもしれません。 自分の技術の幅を広げるという意味では、ファームだけでなくハードウェア技術のことをもっと深掘りしたいですね。 |
T.O |
これは自分が作ったといえるような、オリジナルのNANDシステムを開発したいですね。もちろんたった一人では無理ですが、少なくともそれを作るチームの一員でありたい。たとえこれまでとは違うシステムだったとしても、技術的に正しくて効果があるのだったら、必ず使ってもらえる。東芝はそういう文化ですからね。 |
J.T |
自分の作ったものをあまねく広く世に伝える、が自分の使命だと思っています。例えば、SSDをもっといろいろなパソコンに入れたいですね。いずれは、SSDの次のメディアが求められるようになるでしょう。それを東芝ブランドで開発して、世界を変えたいというのが私の野望です。 |
NAND型フラッシュメモリなど「チップのメーカー」としてのイメージが強い東芝だが、SSDなど「メモリ製品」としてのビジネスを拡大させている。「製品」としての性能向上のカギを握るのはコントローラであり、その中核となるファームウェアの技術は、事業の成否を左右する重要な要だ。ビジネスにおける国際的優位性を確保するため、ファームウェア技術の一段のステップアップを図っている。
それを担うのが、SDカードなど比較的近い分野のみならず、デジタル機器のファームウェアに至るまで、業界を問わずファームウェア開発でキャリアを積んできたエンジニアたちだ。彼らファームウェア技術者にとっても、先端的なメモリ・ストレージ製品開発の現場で、自身のキャリアをさらに発展させるチャンスが広がってきた。
ここ数年、キャリア採用を強化してきた東芝は、他企業から転職してきた技術者たちの働く環境についても深く考える企業になっている。今回の座談会から、東芝ならではの自由な文化風土は、キャリア入社者の潜在能力を引き出すうえでも効果的に機能している…と実感することができた。
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