“なぜ今こんなに注目されているのか?”を簡単解説! |
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DevOpsで変わるWebサービスの |
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開発(Dev)と運用(Ops)が、お互いに情報を共有し、協力しながら開発・運用を進めていく「DevOps」が注目を集めている。DevOpsによって、IT業界の開発スタイルとエンジニアの働き方がどう変わっていくのか。グロースエクスパートナーズの鈴木雄介氏に聞いた。 (総研スタッフ/馬場美由紀) 作成日:13.11.27
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多くのITエンジニアが関心を寄せる「DevOps」
最近さまざまなIT系イベントでテーマとして取り上げられている「DevOps」。その開発手法からツール、事例に関する技術勉強会では数百人単位のエンジニアたちが情報を得ようとこぞって参加している。クルーズ主催の技術勉強会「テックヒルズ 『Let's study Jenkins〜さまざまなケーススタディ〜』」には500名以上のエンジニアが参加し、話題になった。
なぜここまでDevOpsが注目されているのか、エンタープライズ系システムのアーキテクチャに詳しいグロースエクスパートナーズの執行役員・鈴木雄介氏に分かりやすく解説していただいた。
【ADVISER】
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グロースエクスパートナーズ株式会社 |
「DevOps」が今注目を浴びている背景とは?
「DevOps」とは開発チームと運用チームの協業により、より優れたITサービスを提供しようとするムーブメントのことです。実体の技術としては、Gitなどのソフトウェア構成管理、JenkinsなどのCI(※継続的インテグレーション)、Chefなどのインフラ構成管理などを含みます。背景としては、アジャイルによってソフトウェア開発が効率化されるなかで、その後工程にあたる運用までの流れを効率化しようというものです。同時期に注目されているリーンスタートアップはITサービス企画を最適化するための手法ですから、合わせて考えると、企画、開発、運用という各登場人物が一気通貫で優れたITサービスの提供に向かっている、と考えられます。
こうした流れのコンセプトは「優れたITサービスを提供するためには、顧客からの可能な限り早いフィードバックが重要である」ということです。サービスの企画をしてソフトウェアを開発し、それをインフラに載せてサービス化してユーザーに届ける。そして、そこでの反応を見ながら次の企画に繋げ、ソフトウェアを改善し、サービスをアップデートする。こういう一連の流れを高速に回転させるのです。
Web系企業と大手SIerで「DevOps」の導入状況は違う?
アジャイルに強い影響を受けていますから、すでにアジャイルを導入していたようなWeb系企業での導入が進んでいるのは当然です。一方で、大手SIerではアジャイルの導入が進まないように、DevOpsという流れでは進んでいないと思います。
ただし、企業のシステム子会社などのユーザー系企業や運用に強いSIerなどでは「開発チームと運用チームの協業による、より優れたITサービスを提供」という点に興味がありますから、取り組みたいという意識は強いでしょう。
ただ、多くの企業では開発部門と運用部門が分離され、仲が悪いというのは往々にして存在する課題だと思います。特に2006年ごろから導入された内部統制やJ-SOX法が決定的に影響を与えています。内部統制ではプロセスや安全性が重視されるあまり、リリースに際して長大なドキュメントが必要になったり、プロセスが複雑になっていたりして、とてもユーザーからのフィードバックを早くするようなことができません。
この辺は開発部門と運用部門の長きにわたる関係性のようなものが影響するので、簡単に解決できることではありません。関係が改善できている企業では、大胆な人事異動や権限変更を行っているようです。よって、企業でのDevOps導入は進むところはどんどん進むし、進まないところはまったく進まないといった格差ができているように感じます。
今後の「DevOps」の進化とエンジニアは取り組むべきものは?
繰り返しますが、DevOpsはより優れたITサービスを提供するためのムーブメントの1つです。この方向では、どんどん進化すると思われます。リーンスタートアップでは、サービスの成果を定量化して測定することが推奨されています。これと繋げて考えると、サービス提供環境で取得されているログをリアルタイムに分析し、即応するようにアプリケーションが動作を変えるといったことはできると思います。
例えばECサイトにおいて、あるキーワードでの訪問顧客が急激に増えたら、メディアなどで取り上げられたと判断し、専用のサーバを立ち上げで顧客を誘導し、対象商品の値下げを行い、さらに仕入先への発注をかけるといったようなことができるかもしれません。
やや大げさにいうと、ITサービスの制御に人間の判断を差し挟むのではなく、判断基準を事前的にプログラミング化し、自動化することによって、いかに優れたITサービスを提供するのかという流れです。個別のITサービス毎に必要とされる自動化は異なるでしょうが、この分野の技術はもっと進歩すると思います。
一方、エンジニア個人ですが、DevOpsの本質は「より良いサービスを提供する」という事です。ただソフトウェアを作れば良かった時代から、価値あるサービスを提供することが求められる時代になりました。
エンジニアも目線を上げて「自分の作っているソフトウェアが、どういう価値を産むのだろう」と考える必要がありますし、そういうエンジニアこそ、求められる存在と言えます。ですから、”ソフトウェアを作る”スキルに加えて、もう1つ”ITサービスを良くする”スキルに取り組んではどうでしょうか。DevOpsに関連するJenkinsやChefと言った技術でも良いでしょうし、リーンスタートアップ、UI/UX、ログ解析など様々な分野が存在すると思います。
エンジニアも目線を上げて「自分の作っているソフトウェアが、どういう価値を産むのだろう」と考える必要がありますし、そういうエンジニアこそ、求められる存在と言えます。ですから、”ソフトウェアを作る”スキルに加えて、もう1つ”ITサービスを良くする”スキルに取り組んではどうでしょうか。DevOpsに関連するJenkinsやChefと言った技術でも良いでしょうし、リーンスタートアップ、UI/UX、ログ解析など様々な分野が存在すると思います。
ITサービスの提供には様々な要素が複雑に絡み合っています。単にソフトウェアをいくら早く作れても、それだけでは意味がないのです。DevOpsという言葉を通じて、そうした変化を感じてもらいたいですね。
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