
Gunosy開発者×iAnalysisの最高解析責任者が対談 |
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ビッグデータ新時代!
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きっかけとは「医療系の教室」と「Webの研究室」
―― 本日はありがとうございます。まず、お二人の自己紹介をお願いします。 倉橋 iAnalysis合同会社という会社の最高解析責任者を務めます、倉橋一成と申します。学生時代(東京大学、同大学院)に医療分野を中心に統計学を研究していました。機械学習についても学び、論文を発表して博士号を取得しました。 関 株式会社Gunosyの開発部におります、関喜史です。社会人学生として、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻の博士課程にも在籍しています。学部時代の友人と3人で、2011年にGunosy(グノシー)を立ち上げ、「Gunosy」というサービスを提供しています。 ―― お二人はどういう経緯でデータサイエンティストになったのですか? 倉橋 きっかけは、大学時代に医療系の教室で受けた授業ですね。そこで統計学を学び、もともと数学が好きだったのでしだいに面白くなり、データの分析にハマっていきました。 関 学部4年のときにWebの研究室に入って、データマイニングに出会いました。特に人の行動を分析するのが肌に合っていると感じましたね。修士からは複数のWeb系の会社でアルバイトやインターンをして、データの分析などをしていました。 倉橋 私は修士や博士の時代には、医師のコンサルティングをしていました。お医者さんでも、「患者さんのデータはあるけど何していいかわからない」という人が多いんですね。そのため、「何をしましょうか」から始まり、データ分析していく中で新しい発見や法則が見えてくる。 関 私はWebの行動ログが好きなのですが、ログをデータ解析すると「人間てこうだよね」と明らかになる瞬間があり、そこに面白みを感じます。人間がいかに複雑でも、一部を切り出せば単純化できるので、「こうした刺激を与えればこう動く」という法則がどこかにあると思うのです。 |
データサイエンティストに必要なのは「業務知識」
―― データサイエンティストには「統計学に長けたデータ分析のプロ」というイメージがあります。どういうスキルや知識が必要なのでしょうか。 倉橋 私は、「分析能力」「エンジニアリング能力」「業務知識」の3つだと思います。これらがミックスした仕事であり、特にビジネス的な業務知識は欠かせません。これがないとデータの使い方も考えられませんし、何かの専門家である顧客と会話ができません。 関 僕もそう思います。分析は仮説を立てるところから始まりますが、それは対象となる事業やデータに特有なものになります。ですから、これらの一定レベルの知識は必要ですし、分析の手法をただ使うだけでは結果は出せません。 倉橋 また、3つの能力は必ずしも均等になくてもよく、ひとつの専門があれば、それを補う形でほかの2つを習得できます。私も統計学が最初にあり、エンジニアリングと業務知識は後からを身に付けました。 関 統計学は手法だけ知っていれば、さまざまなフリーソフトを活用できます。特に今、企業で求められるデータサイエンティストは、統計学のスキルというよりその手法を知り、それをコードに落とせるエンジニアリング能力と、業務で生かせる知識を持つ人だと思います。 倉橋 実は弊社でもそういう方を探しています(笑)。IT系というより、戦略系コンサルタントのほうが向いているかもしれません。理系出身でなくても大丈夫でしょう。 関 僕も同意見です。コンサルタントは業務知識に加えて分析力も持っていると思いますし、事業会社での仕事ならExcelが使えれば対応可能と思います。なぜなら、現場のニーズとして多いのは「データはあるけど何していいかわからない」なので、コーディングよりも業務知識が大切だと思います。 倉橋 弊社の場合も、「仮説があるので検証したい。分析の方法を教えてほしい」というお客さんもいますが、「このデータを使って売り上げを上げたい」などのざっくりとした要望がほとんどです。 |
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Gunosyのエンジン開発とiAnalysisの事業展開
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―― 今のお仕事のことを詳しく教えてください。Gunosyは2011年10月のリリースから約1年半がたちましたが、今のバージョンはいくつですか? 関 すみません。わかりません(笑)。バージョンアップは常に続けているので、ログを取っていないんです。推薦エンジンの更新は月に一度ほどで、リリース時のコードは残っていないほど様変わりしています。 ―― マネタイズはまだ考えない? 関 考えていません。プランはいくつかありますが、今はサービスの充実や満足度の向上を優先させて、ユーザーを集めたいと思っています。少人数のベンチャーですから、ほかにリソースを避けないという事情もあります。 倉橋 確かに、行動予測は今までとは違う形が求められていますね。防水機能の高い腕時計を検索したら、同じ種類の時計が何度も広告に出てくる。これが従来の行動予測の結果としたら、新しい形はスキューバ用の時計やアウトドア用品を推薦するなどです。過去のデータにはない、新しい価値を与えてくれるわけです。こうなればユーザーの不満は減り、評価も上がるのではないでしょうか。 関 この機能はアマゾンさんが強くて、机を検索すると椅子、椅子を検索すると椅子の足に付けるキャップが出てきたりするんです。「どんな体験をさせたらよいか」を開発の指針のひとつにしているのだと思います。私たちは記事やニュースでこれを実現したいのです。 ―― 倉橋さんのお仕事はいかがでしょうか。 倉橋 iAnalysisの今の事業は、半分がコンサルティングやセミナー、半分が受託分析です。こうしたB to Bのジネスをまずは伸ばしたいですし、他社さんとの連携も強めています。業界全体を成長させたいという思いもあるからです。 関 私たちも幅広いユーザーに貢献したいという気持ちです。検索キーワードを考えたり、自分に近い人を探してフォロワーになるなど、ネットでの情報獲得のハードルは意外に高いんです。 |
世の中に期待とデータサイエンティストとのギャップ
―― 最後になりますが、お互いに何かご質問はありますか? せっかくの機会ですから(笑)。 倉橋 そうですね。Gunosyの目標、それと今後をどう考えていますか? 関 多くの人にもっと簡単にネットを使ってほしいです。スマホが主流になって24時間ネットが使えても、その対象がFacebookとTwitterとゲームだけでは、個人的にも面白くない(笑)。Webはリテラシーの高い人に沿って進化してきたと思うので、あまり多くの情報に触れていない人たちに、「ネットの入口」を提供したいと思っています。 ―― では、関さんからもどうぞ。 関 はい。今はビッグデータがブームですが、世の中の期待と分析者側の実際にギャップを感じます。倉橋さんはどう思いますか? 倉橋 確かに期待感が大きすぎますね。10年ほど前にデータウェアハウスが話題になりましたが、「つくったけど使えないね」という評価が多くて下火になった。それに近いことが起こるのは阻止したい(笑)。 関 僕は、「データサイエンスは大したことできないよね」と言われるのが心外なんです。間違いなく運用してもらえれば、確実に利益が出るのがわかっていますから。 倉橋 そうですね。「広告費の1割削減」なんて、分析の結果から普通にできることでしょう。生産的な方向に分析を使うのが主流になればよいのだけど、そうでないとビッグデータも下火になっていくと思う。 |
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