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開発担当は全員が入社数カ月の中途入社エンジニアチーム!
サイバーエージェント「intely」リリースまでの舞台裏
サイバーエージェントは2012年9月、有益なノウハウや専門知識を収集することができる実名制のビジネスパーソン向けSNS「intely」をオープン。開発プロジェクトメンバーにAmeba事業と並ぶ新規事業戦略の一環となる新サービスに賭ける意気込みを聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:12.11.01
海外の真似をしない「大人のSNS」が日本にもあるべきだ
渡邊 大介氏
ネットビジネス総合事業本部
新規事業開発室
プロデューサー/アドマン
渡邊 大介氏

 2011年9月のある週末、都内から離れたとある場所に、社内の各部署から10人のプロデューサーが集まった。2012年以降の新規事業戦略を練るためのトップミーティング。一人最低10本のビジネスプランを持ち寄り、プレゼンしてはそれを吟味する「100本ノック」。いい案が出るまでは帰ることができない、泊まり込み合宿だ。

「広告代理事業の部署に所属していた頃から、ソーシャルメディア市場を研究していました。サンフランシスコで新しいSNS企業の調査をしたこともあり、社内ではソーシャルメディアに強い男と目されていて(笑)。合宿では『渡邊がまずやれ』という雰囲気。そこで満を持して提案したのが、『intely(インテリー)』のプランなんです」
 と言うのは、ソーシャルメディアマーケティング局の局長を経て現在、新規事業開発室で「intely」のプロデューサーを務める渡邊大介。名刺に「アドマン」と刷るほどの根っからの広告・マーケティング好きだ。

 渡邊氏はまず現状のサイバーエージェントの事業分析から入った。Amebaは高収益事業だが、ユーザーの7〜8割が若い女性と言われ、男性には強くない。今後、課金・広告ビジネスを強化するためには、やはり大人のビジネスパーソンを意識したサービスが不可欠だ。

 こうした「大人のSNS」はもちろん欧米には無数にある。
「10億人が使うといわれるFacebookは、実名を出しながらオンよりもオフで“リア充”な情報を交換するプライベートSNS。2億人弱ユーザーのLinkedInは、一種の履歴書サービスで、プライベートを排したネットワーキングとキャリアチェンジに使われている。ほかにもPathのようなライフログ型サービスもあります。しかし、いずれも日本ではまだ絶対的な勝者とは言えない」
 勝者がいないからこそ参入する価値はある。もちろん、単なるモノマネでは意味がない。Amebaで培った当社ならではのノウハウ・資産を活かすべきだ──と渡邊氏は力説した。

 そうしたマーケットにサイバーエージェントが送り出す新しいSNSはどうあるべきなのか。「intely」はジャーナリストや企業経営者など、影響力を持つ各領域の権威やインフルエンサーが多数参加し、日々の気付きや学び、専門的なノウハウなどを発信する。こうした人物やニュース系アカウントをフォローすることで、ビジネスパーソンは必要な情報を効率的に吸収することができる。興味関心のある人物に直接質問したり、特定のテーマや旬なトピックスに関して、議論や質疑を行うグループをつくり、SNSならではの情報交換やコミュニケーションの場として使うことも可能だ──。

 そのプランはすぐに採択された。サイバーエージェントは2011年10月に組織改編を行い、ネットビジネス総合事業本部(略称NBU)を立ち上げた。ここから「2年間で100の新規事業を生み出す」(藤田社長)。渡邊氏の新SNSも当然そこに含まれる。

 本部内では他のプロデューサーによる事業アイデアも徐々に形をあらわにしてきた。2012年春から夏にかけて、みんなの交換日記「wakka」、ペット写真の共有SNS「パシャっとmyペット」など、スマートフォン向け新サービスが相次いで市場に投入された。Amebaの女性限定の完全匿名性掲示板サービス「GIRL'S TALK」はテレビドラマと連携するという新しいプロモーションを仕掛けだした。まさに新サービスの百花繚乱。

 その勢いに遅れまいと「intely」も8月にスマートフォンブラウザ向け、PC向けにβ版サービスを開始。その後、9月にはiPhone、Android向け専用アプリをリリースし、正式サービス開始にこぎ着けた。

Amebaに頼らない新しい技術基盤の開発に、中途入社チームが活躍

 しかしこのサービスを実現するために、渡邊氏の手元に最初から潤沢な人的リソースがあったわけではない。
「リソースが足りなければ“熱量”でそれを補えというのが当社の鉄則。やる気があるからこそこだわりが生まれる。とはいえ、エンジニアリングをしてくれる人がいなければサービスは形になりません。技術者を集めるのには苦労しました」(渡邊氏)

 2011年11月に中途入社、12年1月から「intely」のチームに、サービス開発エンジニアとして加わったのが田宮直人氏だ。彼もまだ入社したばかりではあるが、チーム内のエンジニアは全員がその1月に入社した人ばかり。そのわずか2カ月のアドバンテージから、彼がエンジニア全体をまとめることになった。
「お互い全く知らない状態でのスタートはかなり不安。ただ、毎日のようにコードレビューを繰り返すことで、すぐにサイバーエージェントの開発スタイルをキャッチアップしてもらいました」

田宮 直人氏
ネットビジネス総合事業本部
インキュベーション室
(エンジニアリング責任者)
田宮 直人氏

 当然、同社には8年にわたる「Ameba」の技術資産がある。しかし、田宮氏はそれをそのまま流用することはしたくなかった。Amebaには開発と拡張を重ねた歴史もあるので、そのまま使うには難があるし、最先端の技術を集めて、新しいアーキテクチャをつくってみたい──エンジニアとしての欲も彼にはあった。
「redis、RabbitMQ、mroonga、Cassandra、nginx…などを、ほかのチームの人にも手伝ってもらいながら手分けして調査しました。それぞれについてライブラリも新たにつくりました。将来、高負荷になっても快適性・高速性を損なわないことを最大の目標に、さまざまな技術を試そうというわけです」

「intely」のサーバーサイドではパフォーマンスチューニングが徹底を極めている。
「SQLについては、Memcacheにデータの種別ごとにExpireを設定してキャッシュさせ、データの更新が発生したら、新しいキャッシュを読み込む機能を実装しました。データベース周りでも、データ容量が膨れあがっても性能が劣化しないように、シャーディング技術を設計当初から採り入れています。DBとプログラムに限界を感じたら、重たい処理はRabbitMQに投げて、キューで処理させるというあたりも工夫したところですね。当社の他サービスに比べても、パフォーマンスにはかなり気を使っているほう」
 と、田宮氏は自負する。

サービス開始が遅れるのは屈辱だが、ときには前向きのリスケもある

「intely」の正式リリースは実は5月30日に予定されていたという。しかしいくつかの課題があり、何度か延期された。プログラムの品質が満足のいくレベルに至ってなかったり、大規模な仕様追加があったりしたからだ。バグ織り込み済みでリリースし、リリース後に仕様追加で対応していくか、それとも、リリースを延期して完成度を高めるか。会議ではさまざまな議論が出た。

「最終的に藤田社長が『開発の都合ウンヌンではなく、ユーザーにデメリットがあるようならリリースすべきではない』と発言し、私もそれに同意しました。サービスをリスケ(ジュール)することはエンジニアとしてのプライドをいたく損なうものだし、経営側からは非難されるのが通常ですが、サイバーエージェントでは、ユーザーに提供するに値しないと判断したものについては、前向きに“リスケ”が行われる。それだけエンジニアの責任は大きいのだと改めて痛感しました」
 と、田宮氏は開発の舞台裏を語る。

“まずはユーザーありき”の方針は、サービス設計全体にも同様のことが言える。
「SNSの収益化、マネタイズはもちろん大切なことで事業プランにもそれは盛り込んでありますが、かといってマネタイズだけが先走ることを、藤田は強く戒めていました。SNSはまずはユーザーに快適に楽しんでもらうことが先決だろうと。それができていないのに、儲ける仕組みだけを整備しても、結局は長続きしないんです。これはサイバーエージェントのあらゆるサービスに共通のことですね」
 と、渡邊氏も言う。

腕のいい大工は、本当はもっと大きなプロジェクトに関わりたい
土井 健司氏
ネットビジネス総合事業本部
インキュベーション室(エンジニア)
土井 健司氏

 1月に入社し、すぐに「intely」チームに配属され、田宮氏のマネジメントの下で、redis、cassandraなどミドルウェアの構築とチューニング、ミドルウェアとプログラムのつなぎこみなどを担当したのが、中途入社チームの一人、土井健司氏だ。
「私もこれまでのキャリアの中で多くのミドルウェアに触れてきましたから、そのノウハウはここでずいぶん活かされました。とはいえ全くわからない技術もある。その部分は、サイバーエージェントの中に専門家がいて、テンプレートなどを用意してくれているんですね。既知のものは自分で、未知のものはテンプレートの助けを借りてというように、中途採用エンジニアの私でも、すぐに仕事ができる体制ができていることには、驚きました」

 土井氏がミドルウェア構築で心がけたのは将来の拡張可能性だ。タイムラインの流れのスピードは、とりわけスマートデバイスでのSNS利用では重要なカギになる。redis、Cassandra、MQなどを駆使して、将来の負荷に耐えうる基盤をつくった。もちろん、「最初からパーフェクトのものはないので、一定レベルのものをいかに早く仕上げるかが問われる」。アジャイルに開発することの重要さは、サイバーエージェントに入社してあらためて感じたことだった。

「1月の入社以来、このプロジェクトを通して積み上げた知識は計り知れないものがあります。もう一つエンジニアとしてうれしいのは、自分たちがつくったものを、プロデューサーたちが、どんどん世の中に広めてくれること。腕のいい大工さんがいて、本当は東京ドームのような大きなものをつくれるのに、小さな小屋ばかりつくらされていたら腐っちゃうじゃないですか。ここでは、どんなサービスにもでっかくなれるチャンスがある。『intely』も徐々にユーザーが集まってきて、つながりを深めていく様子を見るのは、エンジニアとしてもうれしいことですよ」
 単なる受託開発では得られない、自社サービスならではの達成感が、エンジニアのモチベーションをさらに高めるのである。

「ネット界隈」だけにとどまらない、100万人のSNSを目指して

 スマートデバイスの普及と共に、SNSは人々の新たな生活習慣の一つとして定着しつつある。「intely」も3分の2がスマートフォンからのアクセスだ。深夜寝る前に、ベッドサイドからスマートフォンでコミュニティに質問を投げておくと、出勤前には答えが返ってくる。新聞やテレビを見るよりも早く、有効な情報を得ることができる。

 アクティブなユーザーの声を受けて、リリース後にエンハンスされた機能もある。例えば「Twitter並みの機能があればいいかなと思っていたのですが、投稿した記事を編集できるようにして欲しいと言うユーザーの声を受け、編集機能を実際にリリースしました。そうした声をベースにしながら、いまは1週間ごとに機能を追加している状況です」(渡邊氏)

 外出・移動中のスマートフォンでの利用を前提に、サーバーサイドとの通信の発生量をいかに抑えるかという技術的な工夫もある。フロントエンドのJavaScriptを駆使して、ページを速く表示させることにも注力している。
「体感的にユーザーがスムーズに利用できるようにすることが一番の狙い。PC、スマートフォンブラウザ、スマホアプリのそれぞれの開発で、同じ要素を内部的に共有できるようして開発スピードを速めることにも取り組んでいます」(土井氏)

 新しいWebサービスがリリースされると、真っ先に登録するのはIT業界関係者だけというのがこれまでの通例。IT系のアーリーアダプターが集まったものの、広まらずにすぐに終焉してしまったサービスもいくつもある。
「インターネット界隈だけに終わらず、幅広い業種・年齢層の人々に届くサービスにしたい。そうなればITだけにとどまらず、さまざまな視点から、日本のビジネスのこれからを議論していくことができます」(渡邊氏)
 当面の目標は、100万人のアクティブユーザー。「intely」の奮闘はまだ始まったばかりだ。

ネットビジネス総合事業本部 インキュベーション室(エンジニアリング責任者) 田宮 直人氏 ネットビジネス総合事業本部 新規事業開発室 プロデューサー/アドマン 渡邊 大介氏 ネットビジネス総合事業本部 インキュベーション室(エンジニア) 土井 健司氏

1981年生まれ。新聞社系列のシステム開発会社を経て、起業を経験。その後、株式会社インディバルを経て、2011年11月サイバーエージェントに転職。

1982年生まれ。2006年、青山学院大学国際政治経済学部卒業、同社に入社。アカウントプランナー、ソーシャル領域の責任者を経て現職。

1984年生まれ。中小IT企業で携帯電話向けアプリからWebサービス、インフラ周りまであらゆる開発を経験。2012年1月サイバーエージェントに転職。

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