カヤック柳澤大輔、リブセンス村上太一、ブレインパッド草野骼j |
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「ハッカー魂」で、世界を変えろ! |
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特にIT・Web業界では近年、技術力が高いだけではない、さまざまな要素を兼ね備えたエンジニアに対する採用ニーズが高まっている。今回、そうしたエンジニアを“ハッカー魂を持つエンジニア”と定義した上で、そうしたエンジニアが具体的にどのようなタイプなのか?また現在、どのような活躍をしているのか?IT業界の先端をゆく3人の経営者に意見を伺った。 (総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:12.02.08
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「ハッカー魂」を持つエンジニアとは?
アップルのスティーブ・ジョブズやソフトバンクの孫正義社長など、世の中に革新的なサービスや技術を生み出してきた人物が今、注目を集めている。またFacebookでは独特の文化と経営アプローチを創り出すことを「ハッカーウェイ」と呼ぶ。ハッカーは最初から完全なものはないと信じ、改善する行為を通して世界に前向きなインパクトを与えたいと思っている。しかしそれは何も有名人だけとは限らない。例えばエンジニアの中途採用市場でも、そうした人物になりうるタイプを求める企業がここ数年で確実に増えている。
ちなみにここで定義する「ハッカー魂」とは、
・世の中をもっとよくしたいorこんな世界は絶対におかしい という志を持っている
・革新的な技術やサービスを生み出したい
・既存の枠組みや価値観にこだわらない
・自主独立の精神を持っている
・自分ならではのネットワークでスキルや人的リソースを獲得できる
・裏付け探しより実践 考えるよりまず行動 スピード重視
・自分の思いを伝え、周りを巻き込む力
・未来に対するスケールの大きな夢を抱いている
上記のような視点をいくつか持ち合わせているエンジニアだ。
今回、そうしたハッカー魂を持つエンジニアが具体的にどのような形で活躍しているのか? その実態について、3人のITベンチャー企業の経営者に聞いてみた。
カヤックのハッカー魂:「みんなで作るプロセスを楽しむ」「作る理由は問わない」環境で、ユニークなサービスを生み出すエンジニア
面白法人カヤック
代表取締役
柳澤大輔氏
社名が表す通り創業以来、音声専門のコミュニティサイト「こえ部」や仲間と位置情報を共有してチャットができる「ナカマップ」など、次々とユニークな技術やサービスを開発・リリースしてきた面白法人カヤック。そうしたサービスを生み出すエンジニアもまた、斬新なアイディアをゼロベースで生み出し、自らの手で作り上げる個性豊かなメンバーが多いと思いきや、必ずしもそういうわけではないと代表取締役の柳澤氏は語る。
「当社の開発スタイルは、『何をするか、より誰とするか』。つまりみんなで面白いサービスを作るプロセスを楽しむことに重点を置いています。世の中には『斬新かつ創造的なサービスを生み出すエンジニア』と、『ベースとなるアイディアやサービスがある上でブラッシュアップしていくことを楽しむエンジニア』の2つのタイプがいると思いますが、当社の多くのエンジニアは後者。その理由も、みんなで作る楽しさを追求したいから、自然とそのような構成になったんだと思います」
このように誰かのアイディアに次々とチームのメンバーが“乗っかっていく”ことで、ユニークなサービスを生み出していくのが、カヤックならではの開発スタイルであり、そこで活躍できるエンジニアこそ、カヤック流の“ハッカー魂を持ったエンジニア”だと柳澤氏は語る。
さらにカヤック流のハッカー魂を持つエンジニアの特性を探ると、「自分で物事を考え、作りたいものを形にするために周りを巻き込んで、スピーディに行動できるエンジニア」という人物像が浮かんでくる。現に、先ほど触れた「こえ部」や「ナカマップ」などはそれぞれ5〜6人のチームでアイディアを出し合い、企画〜開発〜リリースまでどれも、1カ月〜半年以内にリリースしている。
「それと、当社では何かアプリやコンテンツを作りたいエンジニアに対して、作る理由を問いません。『作りたいから作る』という単純な理由があり、かつチームが責任を持って開発していくことができるのなら、基本的にはOK。普通は作りたい理由や根拠を経営陣に対してプレゼンするプロセスがあるのかもしれませんが、その相手は経営陣ではなくユーザーでいいと思うんです。その方がよりスピーディかつ面白いサービスが生まれると思いますから」
このようにチームとして作っていくプロセスを楽しみながら、作りたいものを自由に作っていく環境があるからこそ、ハッカー魂を持ったエンジニアが活躍できるのだ。
リブセンスのハッカー魂:世の中にある既存のWebサービスに対する高い問題意識と、具体的に解決するための道筋づくりができるエンジニア
株式会社リブセンス
代表取締役社長
村上太一氏
「何かしら尖っていて、突き詰めるタイプ。それが私の思う“ハッカー魂”を持つエンジニアですね」と語るのは、昨年末に史上最年少で東証マザーズに上場した株式会社リブセンスの村上社長。
村上氏が学生時代に起業したリブセンスは、創業当時から「プログラマ」が活躍できる環境づくりを重視した経営で、アルバイト求人サイト「ジョブセンス」などの人材事業をはじめ不動産・中古車など新しいネットサービスを次々と展開してきた。
その原動力になっているのは、プログラマ発信による「高い問題意識と、具体的に解決するための道筋づくり」。
「当社に限らず、巷にある多種多様なネットサービスを利用する中で感じる問題点を見つけ出す姿勢と、“自分ならその問題をこんな風にクリアにする”という解決へのロードマップを描けるスキルを併せ持つプログラマが活躍していることが当社の強みであり、それこそエンジニアがハッカー魂を持つ大きな意味だと思うんです」
また、同社では毎週、業務に直接関係があるかどうかに関わらず幅広いテーマについて研究したり、アイディアを持つプログラマが発表する勉強会を行っているという。
「例えば、Backbone.js, Heroku上でのFacebookアプリ開発, R言語を用いたアクセス解析など、テーマはさまざま。ハッカー魂を持つエンジニアに重要なのは、知的好奇心を絶えず刺激しながら新しいアイディアや技術を探し追求することだと思うので、特にテーマは限定せず自由に発表してもらっています」
このように、ハッカー魂を持つエンジニアが自由に活躍できる環境づくりの面でも、村上氏は常に考慮している。なぜ、ここまでエンジニア視点に立った環境を作れるのか?それは村上氏自身も、細かいレベルまでこだわりを持って既存のサービスを改善したり、新しいサービスを創出しようとする意欲を持っていることにほかならない。
「例えばサイトのリンクボタンの色ひとつとってみても、ついついチェックして現場に口出ししてしまいます(笑)。だからこそ、追求する姿勢を持ち続けるタイプの人がのびのびと仕事に取り組める環境を、無意識のうちに作っているのかもしれません」
今後、「世の中からなくなると困るWebサービス、ある事業領域で圧倒的No.1・Only1となるような文化となるWebサービスを作りたい」と語る村上氏は、その実現のためにハッカー魂を持つプログラマの力を、これまで以上に求めていくという。
ブレインパッドのハッカー魂:近未来を想像して行動し、創りだせるエンジニア
株式会社ブレインパッド
代表取締役社長
草野 骼j氏
「データ活用の促進を通じて、持続可能な未来をつくる会社」をコンセプトに、大量データの分析や活用を独自の技術やノウハウを元に提案・構築することで今日のビッグデータ時代の黎明期から、市場を開拓してきたブレインパッド。そういう意味では、ブレインパッドを創業した草野社長自身が、革新的な技術やサービスを生み出すために奔走してきた。
その草野氏が思い描くハッカー魂を持つエンジニア、それは「近未来を想像して、考えて、行動できる」タイプだと言う。
「特にビッグデータの分析や活用に関しては、未開拓の領域が非常に大きいため、参考になるようなモデルケースがほかの業界に比べて圧倒的に少ない。そのため、例え小さな現象でもそれが1年後に、全世界で注目されるメインストリームとなることも決して珍しいことではありません。例えばソーシャルグラフが注目を集め出した時、データ分析の観点からグラフDBの必要性にいち早く紐付けて、活用できるかを考え、検討し行動を起こす。そこまで含めて、近未来を想像することが重要なのです」
このように、近未来を想像した上でアクションを起こすエンジニアに対して、基本的には「トライしてほしい」(草野氏)というスタンス。それは草野氏自身の経験から、未知の領域であるビッグデータの世界だからこそ、やってみなければそのアクションがいいのか悪いのかさえわからないことを、身を持って認識しているからだ。
また近未来を想像したアクションだけでなく、純粋にエンジニアとしてたりたいことがあれば、サポートしていくという。
「以前、Hadoopに関心を持った当社のエンジニアが『専門的にHadoopの研究をしたい』と私に直訴してきたので、それまで彼が担当していたプロジェクトから外して、Hadoop研究に専念できる環境を作りました。その結果、今では彼が取り組んだ成果がHadoop技術を活用する上で、重要な役割を果たしています」
今後、ビッグデータの世界では基本的なIT技術に加え、データ解析技術と豊富なビジネスナレッジを兼ね備えたデータサイエンティストが大量に必要になってくる。そのためには草野氏が指摘したような、ハッカー魂を持つエンジニアの存在が必要不可欠。その上で、いまだ活用されないまま眠っている膨大なビッグデータを、自分の手で効果的に活用していくことで、世界の経済活動や環境保護など多面的に貢献したいという高い意欲さえあれば、今後非常に刺激的かつ面白い挑戦ができるだろう。
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