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Androidでミニ四駆を動かせ!未来予測よりも、創るほうが楽しい
アイデアと実装技術を発酵させる!KLab若手の自由研究
標準労働時間の10%以内であれば、上司の承認なしに、好きなテーマで自由に開発に勤しむことができる──KLabには「どぶろく制度」と呼ばれる自由研究の仕組みがある。KLab入社からまだ日が浅い若手エンジニア3人の自由研究の成果を発表してもらおう。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:10.05.19
【PART1】今日もまた机の下で、アイデアと実装技術が発酵する。──KLabエンジニアの自由な世界

 KLabの「どぶろく制度」は、「新しいものを創り出したい」というエンジニアの本能を刺激し、優れた技術やアイデアの土壌を作りだすのが狙いだ。台所の床下で、自家製造のどぶろくが発酵するように、今日もふつふつとアイデアが湧きだしてくる。それをいとも簡単に実装してしまうところに、彼らのすごさがある。まずは、KLabの若手エンジニア3人の自由研究を発表させて頂こう。

世界を自由に塗りかえよう──ソーシャル・ストリートアート・サービス「Paintica」
高田敦史さん(28歳)

Kラボラトリー所属。もともと文系で、東京大学大学院総合文化研究科では、Amazonのカスタマーレビューの分析などをテーマにしていた。2008年入社。ソーシャルアプリの開発に従事。

「ストリートビュー」にもう1枚レイヤーを重ねて

 高田さんが自由研究のテーマに選んだのは、世界を塗り替えるソーシャル・ストリートアート・サービス「Paintica(ペインティカ)」。Googleの地図サービス「ストリートビュー」を利用し、路上の景色360度に、ユーザーが自由に絵を描くことができるというものだ。 「建物の壁や路上にスプレーで絵や文字を落書きみたいに描く人たちがいるでしょ。あのストリート・グラフィティをWeb上で実現したかったんです。例えば、パリの大通りに場所をセットし、大きなキャンバスを抱えた画家の絵を登場させる。そのキャンバス自体にもストリートビューの画像が投影されている。画家はそのキャンバスを自由な色で塗りつぶしていく。俺にはこの世界はこんな風に見えているんだよってね」

 技術的には「ストリートビュー」の画面にもう1枚、描画ツールを配したFlashのグラフィックスレイヤーを重ねて、「ストリートビュー」と動的に連動させている。できあがった画像は、保存したり、他のユーザーと共有したり、他のユーザーが新たに手を加えたりすることができる。ひとけのない広い道の周りに、誰かが一つ建物の絵を描き、他の人が看板を書き加え、それがどんどん増えて一つの街になるようなプロセスも楽しめる。レインボーブリッジのビュー上に、怪獣が登場し、あわてふためく人々が描かれ、やがて東京を舞台にした怪獣大戦争が始まるというような、劇画的なストーリー展開も可能だろう。Web上での描画を通してコミュニケーションが行われるという点では、優れたソーシャルアプリケーションの一つである。

IT業界のカンファレンスで真田社長がデモ

 もともとは社内の企画セクションのプランナーのアイデア。ソーシャルアプリの新たな可能性を探っていた高田さんが飛びつき、共同で自由研究のテーマにすえた。開発期間は数週間。社内の勉強会で披露したところ好評で、2009年5月には、国内外のIT企業の経営幹部を集めた「Infinity Ventures Summit」(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)に招待された同社の真田哲弥社長が、自社の新技術をデモするセッションでこれをプレゼンした。

 不動産のバーチャル広告メディアとしての可能性など、将来の商業サービス化にも踏み込んだデモンストレーションだったが、もちろん真田社長が開発を命じたわけではない。高田さんらの「こんなのがあったら面白い」という自由なノリが出発点なのだ。 「まだ、機能が少ない、サイトが重い、ペイントツールが使いにくいなどの課題があって、ユーザーが殺到しているという状態じゃないんですが、ユーザーの反応を踏まえて、改良を加え、もっと面白いものに仕上げていきたい」と高田さん。彼の自由研究はまだ始まったばかりだ。

「Android 」携帯と「ミニ四駆」の未来的コラボレーションを目指して
竹井英行さん(25歳)

研究開発部アプリケーショングループ・プロトタイピンググループ所属。奈良工業高等専門学校、豊橋技術科学大学を経て、2009年入社。奈良先端科学技術大学院大学に設置した奈良先端ラボの責任者も兼ねる。

「進めっ!」「ブイーン」──「ミニ四駆」マンガの世界を実現

「ミニ四駆」といえば、プラモデルのタミヤが発売する動力つきの小型自動車模型。これまでブームは数回あり、それを題材としたマンガやアニメも数多く世に出ている。竹井さんも子供の頃、ブームの洗礼を受けた世代だが、ミニ四駆を自由研究のテーマにしようと思った直接的なきっかけは、KLab社内で「ミニ四駆」のレースが流行っていたことだ。ちなみに社内にはレーシングコースが2つもあるという。

「僕自身はそんなにハマってはいなかったんだけれど、新しいデバイスが好きで、部長に頼んで『Android』携帯を手に入れたときに、これで『ミニ四駆』のコントロールができるんじゃないかと思いついたんです。『Android』はBluetooth通信ができるし、音声認識系の機能もある。『Android』に『いっけーっ!』って命令すると、『ミニ四駆』が『ブィーン』と動き出す。これは、子ども時代に読んだマンガの世界。21世紀の『ミニ四駆』はこうでなくっちゃと、すぐに開発に取りかかりました」

“本業”ではソーシャルアプリを開発する竹井さんだが、高専、大学時代にはロボットとのインタラクションを研究していて、ハードウェアをいじるのも得意。仕事の合間に「ミニ四駆」を分解し、そこに基板を搭載した。基板には通信のためのBluetoothモジュールや、タイヤの回転をセンシングするフォトインタラプタ、さらにモーター速度制御機能などが組み込んである。特撮テレビドラマ「ナイトライダー」に出てくるドリームカー「Knight2000」をイメージして、ソフト制御で光量を調節できるLEDも仕込んだ。

「『Android』の日本語音声認識機能は、『進めっ!』を『スフレ』とかに解釈する癖があったんですが、その誤認識を吸収するプログラムを書いて、『スフレ』でも『スルメ』でも動くようにしました」
 そうした凝りように、今年2月の社内発表会の場は大爆笑の渦。勢い余って、ワークスアプリケーションズ社との共同勉強会でプレゼンしたところ、これも大ウケだった。

「ミニ四駆」が究極の入力デバイスに変身する

 ただ、携帯電話を遠隔操作のコントローラーにするというだけの話では、あまり芸がない。竹井さんの研究がすごいのは、「ミニ四駆」をマウスのように使って、逆に 「Android」上のアプリケーションを動かしてしまおうという逆転の発想だ。タイヤの回転速度と方向を検知し、それを Bluetooth で「Android」に伝えるわけだ。現在は、電子ブックリーダーの上下スクロールぐらいにしか使えないが、この発想は社内のエンジニアの度肝を抜いた。

「『ミニ四駆』を片時も手放せない、『ミニ四駆』で世界をすべてコントロールしたい人ってのが、もしかするといるかもしれないじゃないですか。『ミニ四駆』は次の世紀には当たり前の入力装置として使われているかもしれないんですよ!」  いや、そんな時代が来るかどうはともかくとして、『ミニ四駆』という技術の固定観念を打ち破るのが、この研究のほんとの狙い。 「未来を予測する最良の方法は、それを創りだすことだって、アラン・ケイも言ってます。だったら、それをちゃちゃっと創っちゃおうと思いましてね」
 KLabには、末恐ろしい新人がいるものだ。

初めてのWebアプリは、Flash上で動くファミコン・エミュレーター
三浦良介さん(29歳)

研究開発部インフラストラクチャグループ所属。大学院では先端ネットワーク技術の研究。KLabのインターン生になって10日後に正社員に内定。2008年入社。ふだんはDSASインフラの開発に従事。

下層レイヤーをたたくエミュレータが大好き

 三浦さんは、ネットワーク・インフラ系のエンジニア。本業では、モバイルサイトを支える高信頼性のサーバーインフラ「DSAS」の開発に携わる“中のヒト”だ。
「08年入社の新卒研修のときに、なんでもいいからWebアプリケーションを作ってみようという課題が出ました。それまでWebアプリなんて書いたことなかったんですが、やってみたのがファミコン・エミュレーターです。ファミコンのエミュレータは昔から多く存在し、今も頻繁に開発されていますけれど、それをFlashで動くようにしたところが、当時はまだググッても見つからなかったので、やったという感じでした。まあ、厳密にいうとWebアプリじゃないんですけど、いちおう『ドンキーコング』がブラウザ上で動きますから、これで自由課題は達成ということで(笑)」

 エミュレータは学生時代から好きだという。エミュレータ開発では、対象とする装置の動作ロジックそのものを再現する必要があるため、対象となるハードウェアを理解するところに、興味を覚えるのだという。
「例えば今、オープンソース・ソフトウェアでの開発というのがもてはやされていますが、OSSのコードそのものを書いている人は世界でもごくわずか。大多数のエンジニアはそれをツールとして利用しているだけ。ただ、それだけだと、企業としての競争力が弱くなります。フォロワーではなくて、リーダーになるというのが会社の目指す方針で、それに共感しています。」
 その意味で、三浦さんにとっては、本業と自由研究の違いはそう大きくないのだ。

ブログで成果を発表し、次の課題をクリアにする

 既存ソフトウェアやツールをソースレベルで解明し、その中から新しい知見を見いだす。この手の技術がさらに奥深く、三浦さんが言うところの「アンダーグラウンド」領域になればなるほど、公知の情報つまり書籍、雑誌、ネットの情報は限られてくる。他人に頼ることができない世界で、自らがテストを重ね、ノウハウを積み上げていくしかないのだ。

 もちろん、こうした技術の試行錯誤も、必要とあれば公的にシェアされることもある。エンジニアのOSSコミュニティへの貢献が奨励されるKLabでは、専門誌やブログを通しての技術情報公開が活発に行われている。インフラ開発のエンジニアたちがつづるDSASブログなどもその一つだ。 「DSASでは、スイッチやルーターの機能をLVS(Linuxバーチャルサーバー)上で、つまりソフトウェアで実現しているんですが、弊社でのやり方は公開しています。ハードウェアルータでは難しかったネットワークのトラフィック量をモニタリングする方法などもソフトウェアで実現できる。そういう情報を今後ブログに発表していき、あらためて自分の技術的課題を確認したいですね。」

【PART2】KLabの自由研究は楽しいぞ。──若手エンジニア3人のミニ座談会

KLabの自由研究制度を、当の本人たちはどう位置づけているのか。それは、エンジニアたちにどんなモチベーションをもたらすのか。3人に語ってもらった。

自由研究だからこそ負けられないというプレッシャー
三浦 

今でも思い出すけど、社内勉強会で竹井さんの「ミニ四駆」のデモがあったときは、僕はずっと笑い転げていたね。とりわけ、「ミニ四駆」を入力デバイスにしちゃうという発想。あれはすごい。笑うしかない(笑)。

高田 

音声認識だけでは、動かなかったところは、僕も笑った。でもさ、そういうものがないのなら、自分たちで創っちゃおうという発想は、みんな持っているよね。いまできないことだから、あえてやりたい。そのチャレンジが自分だけでなく、会社にとっても新しい付加価値になるんだよね。

竹井 

僕だってほかの人の発表を見ていると、すごい刺激になりますよ。自由研究だからやってもやらなくても実はいいんだけれど、すごいものを見せられると、負けたくないとか思っちゃうし。

高田 

妙なプレッシャーみたいなのはあるね、たしかに。でも、発表会ではどんなトンでもない発想でも、頭ごなしに否定する意見は出ないじゃない。自由研究だからみんな大らか。技術的にはまだまだ未熟な部分もあるけれど、それをほかのエンジニアがフォローしてくれるという雰囲気もあるしさ。そこがいいと思う。。

三浦 

KLabの自由研究は自分の将来への投資なんだよね。その投資をこの会社は認めてくれる。そんなこと許さない会社に行ったことがないので、ほかがどうなのかわからないけれど、そういう自由がないと息苦しいと思うな。

竹井 

他社との共同勉強会も月一ぐらいのペースで開かれるようになりました。例えば技術や製品分野が違っても、他社のプロジェクトの進め方などでは、参考になることが多い。

既存の技術をフォローするのではなく、フォローされる技術を創ろう
高田 

OSSコミュニティも含めて他社のエンジニアと自由に交流していい、そこから刺激を得てこいというのも、KLabらしいと思う。

三浦 

KLabらしさっていえば、この前の飲み会の挨拶で、天羽部長(天羽公平・研究開発部長)の乾杯の掛け声が、「俺たちは、ググらないゾォ!」だものね。Google検索で出てくるレベルの知識だけにすがっていては、ホンモノの技術開発はできないぞという意味。やっぱり、競争力のある会社になるためには、誰かの技術だけをフォローするんじゃなくて、人からフォローされるようなものを生み出せるといいよね。

竹井 

それはよくわかりますね。オリジナルなものを追求するエンジニアの姿勢を、会社が支えてくれる。今の職場に不満がないといったら嘘だけれど、会社のバックアップ体制には満足していますよ。

三浦 

竹井君、不満ってあるの?

竹井 

給料を今の2倍にしてほしいとか(笑)。

高田 

それってここではけっして不可能じゃないけどさ、そのためには相当なことをしないとね。

三浦 

でも、そう思って頑張れば、できちゃうかもと思えるところが、またこの会社のすごいところなんだよね。

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