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Amazonキンドル、Google+Sony リーダーで市場は加熱!? 目指せecoエンジニア!グリーンITで地球を救え
広がる“デジタル読書”★電子書籍市場の開発事情
2007年にAmazon.comが発売した電子書籍端末「キンドル」。発売と同時に人気を呼び、米国での電子書籍市場は拡大している。一方、日本国内では女子高生を中心に、ケータイ電子書籍市場は拡大しているものの、一般化しているとは言い難い。今後、市場を拡大するため、どんな技術開発が行われているのか、探った。
(総研スタッフ/関洋子) 作成日:09.09.28
昨年比131%、順調に成長する電子書籍市場
 昨年秋に端を発した金融不安により、日本経済は低迷が続いている。そんな状況の中でも、成長している市場がある。それが電子書籍市場だ。

 米国でAmazon.comが2007年に電子書籍端末「キンドル」を発売したことで、にわかに注目を集めているこの市場。実は日本ではキンドルより以前に、ソニーやパナソニックが専用端末を開発、提供していた。しかしキンドルのように電子書籍市場を拡大することなく、撤退。「日本では電子書籍市場は期待できないのではないか」と思うかもしれないが、現実にはそうではない。順調に成長している市場である。

 それを表すのが、以下のグラフだ。インプレスR&Dの調査によると、2008年度の日本の電子書籍市場は464億円と推計され、2007年度の355億円と比較すると131%の伸びとなっている。この市場をけん引しているのがケータイ向け電子書籍市場である。今年の5月にはauからEZブックを手軽に楽しめるよう3.5インチフルワイドのVGA++液晶を搭載したケータイ「biblio」が発売されたことも、その事実を裏付けている。
順調に成長する国内電子書籍市場
(出典:インプレスR&Dインターネットメディア総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2009」)
 日本でケータイ向け電子書籍市場が拡大した背景について同調査では、「各出版社がコンテンツの電子化に対し積極的に取り組み始めたこと、取り次ぎサービスの整備による流通の円滑化、タイトル数増加によるコンテンツの充実」という3点を挙げているが、まだまだコンテンツ数はそれほど多いというわけではない。というのも既存コンテンツの多くは出版を前提とした契約関係と利権が存在するため、デジタル化が容易にいかないということがあるからだ。利権の存在はコンテンツのデジタル化を妨げるだけではない。電子書籍の値段が紙の書籍とほぼ変わらないということにもつながる。今一つ、日本市場において爆発的に普及しない理由になっている。

 一方のAmazon.comのキンドルは、自社オンライン書店にある8万8000冊ものコンテンツが紙の書籍よりも安い値段でダウンロードできるようになっている。またダウンロードは携帯電話網を利用するが、その通信料は無料となっている。これらの理由により、市場の拡大を促進しているというわけだ。

 まだまだ黎明期にあるといってもいい電子書籍市場。だからこそ、そこに魅力と可能性を感じ、関連技術の開発にまい進する企業がある。その最新事情を紹介していこう。
電子書籍関連技術の開発現場
Ex1. 電子書籍端末の開発 ── 富士通フロンテック「FLEPiaでベストセラーが手軽に読めるような世界をつくりたい」
携帯性、閲覧性にこだわる
 ケータイ向け電子書籍市場は拡大しているが、PC向け電子書籍市場はマイナス傾向にある日本。そんな中、富士通フロンテックは今年の3月に、電子書籍専用ビューアを搭載した携帯情報端末「FLEPia」を一般向けに発売した。
「FLEPiaがこれまでの電子書籍端末と大きく違うのは、表示デバイスにカラー電子ペーパーを採用していることです」

 こう語るのは電子ペーパー事業部ビジネス開発部部長の蔭山芳明氏である。蔭山氏は1983年に富士通に入社して以降、自動機や金融機関向け端末の開発など、一貫してハードウェアの開発に携わってきた。2002年に富士通フロンテックに異動後も、金融機関向けATMの開発などに従事。2005年、同社で電子ペーパー事業の立ち上げに伴い、「FLEPia」開発に携わることとなったという。
「FLEPiaは電子書籍の専用端末として開発されたというわけではありません。静止画やオフィス文書のビューアとして開発しました。その一つのフォーマットが電子書籍だったのです」

 FLEPiaは閲覧性と携帯性に徹底的にこだわっている。画面表示サイズは8型(132.6mm×164.8mm)という大画面。ちなみにiPhoneの画面サイズは3.5型。これを思い浮かべればわかると思うが、文字の読みやすさは段違い。それにもかかわらず厚さは12.5mm、重さは約360gと非常に軽量で携帯性に優れる。蔭山氏はこの厚みと重さの部分が開発でいちばん苦労した部分だと話す。「電子ペーパーという軽いデバイスを使っていることもあり、本当はもっと薄く、軽くしたかったんです。厚さ10mm、重さ300gを切れないか試行錯誤しました。しかしバッテリやケースの重さ、強度との兼ね合いなどを考慮すると、現時点では今のサイズ・重量が最良の結果でした」
蔭山芳明氏
公共システム事業本部
電子ペーパー事業部
ビジネス開発部 部長
蔭山芳明氏
技術開発と同時にコンテンツの拡充にも注力
 そのほかの技術的な苦労のポイントとして、蔭山氏は色数を増やすことやバッテリのもたせ方などを挙げるが、「それ以上に電子書籍としてのビジネスを拡販するところに苦労が多い。特にコンテンツを集めるのが難しい」と蔭山氏。現在企画とマーケティングを主に担当している蔭山氏にとって、今、いちばん頭を悩ませている課題でもある。
「いくら良い端末ができても、コンテンツがなければ普及しません。したがって、私たちも端末の開発だけではなく、コンテンツビジネスにかかわっていかざるを得ない。しかしコンテンツは著作権の問題や現ビジネスを構成する出版社、書店、流通などの再販制度もあり、デジタル化するのは容易ではない。この点をどうやって乗り越えていくかが、FLEPiaがさらに拡販していけるかどうかのカギになる。技術だけはなく市場も開発していく。大変ですが、そこが面白いところです」

 同社は電子書籍販売サイト「パピレス」と提携し、FLEPiaのための電子書籍サイト「ふれっぴ屋」を開設している。「コミックだけではなくベストセラーなどをもっと手軽に読めるようにしたい」と蔭山氏は語る。

 もちろんFLEPiaをさらに良くしていくことも、市場拡大には不可欠だ。「技術的に現状で満足しているわけではありません。現在、通信機能は無線LANとBluetoothだけですが、携帯電話の通信機能も使えればより便利になる。現在は10万円弱ですが、この低価格化も課題です。これからのエンジニアに求められるのは、いかにいいデバイスを安く、うまくつくるかということ。言い換えれば大量生産の技術開発やコストコントロールをできるエンジニアが求められるでしょう」
「FLEPia」

表示デバイスに富士通研究所が開発したカラー電子ペーパーを採用した「FLEPia」。屋外でも見やすい

Ex2.電子ビューアの開発──セルシス「手のひらで動くことを実感。それが楽しい」
読みやすさ、読む楽しさを追求
 ケータイでコミックや小説を読む。そんな風景も若年層の間では一般化しつつある。そんなケータイ向け総合電子書籍ビューア「BookSurfing」の開発を担当しているのが、セルシス アプリケーション開発部技術開発課課長小野宏史氏である。小野氏は2000年にセルシスに入社するまではずっと、コンシューマ向けのゲームソフトの開発に携わってきた。「もともとプログラムづくり=ものづくりが趣味だった」と語る小野氏。しかし長年、ゲームづくりに携わっていくうちに、ある程度の達成感を感じるようになったという。「ゲーム以外のソフトウェアを手掛けてみたい」という思いから、アニメ制作ソフトなどを手掛けているセルシスへの転職を決めた。以後、マンガ制作ソフト「ComicStudio」などの開発に携わってきた。

 そんな小野氏がビューア開発に携わるようになったのは「偶然だった」という。2002年からビューアの開発を任されるようになり、2003年11月にはau(KDDI)ケータイ向けのコミックビューア「ComicSurfing」を開発する。このComicSurfingと、ボイジャーが開発した電子書籍ビューア「T-Time(ティータイム)」を統合・発展させ誕生したビューアが「BookSurfing」である。この開発も小野氏が手掛けている。

 BookSurfingの特徴は閲覧性に富んでいること。マンガを画面サイズに合わせ1コマごとに表示したり、ページ全体をスクロールしながら表示したりできる。「最新バージョンの5.1ではページの一部を拡大させたり、全体を俯瞰したりするなど、これまでできなかったことができるようにしました」と小野氏。
小野宏史氏
アプリケーション開発部
技術開発課
課長
小野宏史氏
より良いビューアの開発に終わりはない
 ケータイ向けのビューア開発でいちばん苦労するのは、「端末ごとにプログラムが少しずつ異なることです」と小野氏は語る。しかも新機種端末に組み込まれる場合は、端末開発と同時並行で進むため、実機でテストする時間がそんなにとれない。「いくらシミュレーションでうまくいっていても、実機で試すとうまくいかないことも多い。短い時間で対応することも大変」(小野氏)だという。

 電子書籍市場について小野氏は「電子書籍はいつでも買えるという手軽さがある。しかもエコ。ケータイで読む人、読まない人に分かれると思いますが、特徴をもったコンテンツがどんどん登場したら市場は広がると思います。そのためにもより良いビューアを開発していきたい」

 どんな機能をビューアに盛り込むか、今は構想中という小野氏。「Windowsモバイルも登場しましたが、BookSurfingでのタッチ操作や見せ方などはまだまだ工夫の余地があると思います」

 新しい端末が開発されていく限り、ビューアの開発も終わりはない。「この分野に携わる時に大事なのは粘り強さがあることです。ケータイ向けアプリの開発はさまざまな制限があるだけに、なかなかうまくはいきません。たとえ不具合がでても根本の原因まで突き詰められることが重要です。ビューア開発の醍醐味は手のひらで動いているのが実感できること。ケータイが好きな人にとっては非常に面白い仕事だと思います」
「BookSurfing」

ケータイ向けビューア「BookSurfing」。読みやすさにこだわった機能が満載。作品を読み終わった後に次話の購入が容易にできる「次話購読機能」はその一例だ

電子書籍市場は今後どうなる?
 冒頭でも紹介したが、電子書籍市場がより拡大するには、コンテンツの充実が欠かせない。確かに著作権の問題や出版社、書店の利権の問題もあるだろう。しかし今後、一層コンテンツのデジタル化に拍車はかかっていくはずだ。

 Amazon.comに加え、Google社も紙媒体の電子化を大々的に進めている企業のひとつだ。そのGoogleの膨大な電子媒体を読むため、米ソニーはオープン技術を採用した電子書籍端末「リーダー」を提供、米国の電子書籍市場をさらに過熱している。また部数が低迷しつつある新聞各社も電子化(電子新聞)を検討しているという。このような状況が進めば、音楽をダウンロードで購入するのが一般化したように、日本においても電子書籍(端末を含む)が普及していくのは間違いなさそうだ。そうなればケータイだけではなく、さまざまなデバイスが読書端末として名乗りを挙げてくる。

 紙の書籍と見劣りすることなく読めるようになるには、ハードもソフトもさらなる技術開発は欠かせない。これからも要注目の技術市場だ。
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ 関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
取材時に富士通フロンテックの「FLEPia」に触れました。本文中でも紹介しましたが、もってみてびっくり。本当に軽いんです。WiFiが使えるのでネット端末にもなる。かなりほしいと思いましたが、価格がやっぱりネック。4万〜5万円ぐらいになればと思うのですが、難しいのでしょうね〜。

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