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明日に向かってプログラめ!!PARTW vol.2/10 山崎晴可@DAブラックホールは、SF小説を執筆中!
ちょっとヤバイ人が出てきましたよ。電話回線を丸裸(?)にする「DAブラックホール」の開発者であり、元ストーカーのストーカーバスター、テレビ番組の構成作家やマンガの原作者にもなって、今は小説を書くのがいちばん面白いとか。多才多芸な人ですが、ぴったりな肩書はやはり「ハッカー」でしょう。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ 撮影/関本陽介)作成日:09.07.16
プログラミングとは、GETである
山崎晴可さん
探偵・捜査機関御用達の電話アナライザー「DAブラックホール」
探偵・捜査機関御用達の電話アナライザー
「DAブラックホール」
mixiの日記・メッセージをバックアップする「撤退!mixi」
mixiの日記・メッセージをバックアップする「撤退!mixi」
別れた元カノへの想いから留守電の暗証番号を突破!
山崎さんといえば「DAブラックホール」。電話番号がわかればその回線状況をすぐに解析してしまうという、かなりエッジの立ったソフトです。開発はどのようなきっかけから?
失恋です。20歳ごろに付き合っている女の子がいまして、まあ、振られたんですね。ただ、僕としては納得いかなかったし、何より振られるきっかけとなった新しい彼氏を見てみたかった。そこで、それまで封印していたプログラミングを再開して、彼女の留守電の暗証番号を突破するプログラムを開発したんです。
山崎晴可さん
……続けてください。
1990年ごろの話ですから携帯電話はほぼなく、ただ、自宅の留守番電話に吹き込まれたメッセージは、外の電話から聞くことができたんです。そのときに4つの数字をプッシュするのですが、その暗証番号を解除するソフトを開発しました。会社を辞めて、彼女のと同じ機種の電話を買って、分解して、実験して、プログラムを書いて……およそ1年半かかりましたね。
その方法を聞いてもいいですか?
原理は簡単なんです。システム側は1回目のプッシュ、その後に無音の状態があり、2回目のプッシュ、また無音、3回目……と繰り返される4つの数字を認識しています。そこで、まず無音の時間を与えずに0〜9までの数字の音を連続して鳴らし、次に無音を与え、再び0〜9までを連続させ、また無音と繰り返していくと、システムは待ち受けていた番号が4回鳴ったと誤認識してしまうのです。すると暗証番号が解除されてコマンドモードに入ります。
 当然ですがこれは、1年半の研究の末にようやく導き出されたものです。しかも、当時のパソコンはPC-9801、FM音源ボードを制御して音を出したので、音をつくるのにもかなりの苦労がありました。21歳から始めて、完成したのが23歳になるころでしたから、「落ちた」瞬間はおいおい泣きましたね。そして、彼女の留守電を聞いて、二人がデートの現場に行きました。
山崎晴可さん
ユーザーにより使い方が広がるDAブラックホール
山崎晴可さん その日は彼氏が1時間くらい遅れてきて、彼女はずっと待っていたので、僕も一緒に物陰で待ちました(笑)。そしてやってきた奴がね、格好よかった。背が高くて、スーツにトレンチコートがよく似合って、誠実そうで、さわやかでね。それに……彼女のメイクが変わってた。負けたなと思いました。
 新卒で入社した会社を辞めてこの研究開発をしていたのですが、彼氏を見た2カ月後かな、故郷の高知に帰りました。親父の会社(工務店)に入ったんです。でもね、このときに感じたのは、世の中に女性の味方をする男はいても、男の味方をする男はいないということ。相談してもせいぜい「もう忘れろよ」と言うくらいでしょう。
 だから、親父の会社で1年ほど働いた後にパソコンショップを起業して、後にコンシューマーソフトを開発するのですが、第1号の「ぱるす」には先の機能を盛り込みました。世の男たちを応援したかったし、いわば僕の恋愛観そのもので、後のDAブラックホールへもつながります。
ちょっと待ってください。恋愛観そのものとは?
「ぱるす」には留守電の暗証番号解除機能のほかに、電話リダイヤル機能やポケベルの一斉同報機能があります。リダイヤル機能は、人気のコンサートチケットが取れたら女の子をデートに誘いやすい、ポケベルはサークルの幹事になって活躍すれば人気が出るだろうからで、男たちにモテてもらうことを目的に開発しました。ですから、リダイヤル機能はチケットセンターに電話して席を大量に取るものではなく、狙った席をほぼ確実に取れる仕組みです。
 ただ、思わぬ展開になりました。「ぱるす」が売れに売れて、8000枚ほど出したらユーザーサポートが追い付かなくなってしまったんです。本当は一発で終わらせるつもりでしたが、予定外の経費が掛かり、新しいソフトを開発しなくちゃいけなくなりました。1年に1本くらい出しましたが、DAブラックホールの原型は1993年に完成、Windows版を1999年に発売しました。
DAブラックホール開発の理由は、やっぱり恋愛?
単純に公衆電話の番号が知りたかったんです(笑)。例えば僕の携帯電話の番号、自分に関係する数字の羅列にしたんですけど、それってあり得ないですよね。DAブラックホールで空き番号を探したんです。ほかにも、携帯のメモリをここに転送すれば、通話者が誰と話しているかわかりますし、代表番号から子機の電話番号を探せますし、使い方はいろいろです。
 コンピュータの楽しい使い方とは、自分の意思が外に出ることだと思います。メールはもちろん、ネットの先のプレイヤーとつながる対戦ゲーム、自分の作品を誰かに見てもらえる動画サイト、昔のワープロ専用機も内容が出力できるから売れたのだと思います。
 つまり、マシンを出て実在の人間に影響を与えるものが流行するわけで、この発想は彼女の留守電を突破したときに感じました。DAブラックホールもそのひとつだと思いますから、今の僕があるのは振られた彼女のおかげ。彼女にはとても感謝していますし、同じ意味で、いくら頼んでも3年間パソコンを買ってくれなかった両親に感謝しています。
携帯電話
中学時代のソフトは雑誌に掲載、高校では原爆シミュレーション
では、山崎さんとパソコンとの出合いを聞きましょう。
小学5年生のときに、科学博物館のようなミニパビリオンに行ったんです。ゲーム機が並んでいて自由に遊べたのですが、インベーダーゲームのようなものと違ってモニターにボタンがたくさん付いていた。キーボードです。「このキーは何だ」とびっくりしましたね。
 その半年後に高校生向けの雑誌を読んでいたら、マイコン特集があって同じ写真が出ていた。「これは買えるものなんだ」と知って本屋に走り、「マイコン入門」を買って読んだら、フローチャートが書いてある。それからは、空想するゲームのフローチャートをずっと書き続けましたね。そのうちに漠然と、フローチャートをゲームにする手段があるのだろうと思い始め、小学校6年のときに両親にマイコンをねだりました。
キーボードを打つ山崎晴可さん
当時はずいぶん高いものだったでしょう。
安くて8万円、高いもので20万円ですから、親も無理ですよ(笑)。それでまたフローチャートや紙に簡単なプログラムを書いたりして、ようやく中学3年の5月20日に買ってもらいました。シャープのX1です。3年間上流工程ばかりでしたから、キーボード触るときは手が震えました。友達には「触る前には手を拭け」って言ったりね(笑)。
 空想の3年のおかげで実装が早くでき、4カ月後に自作のプログラムを雑誌に投稿して採用されました。X1にはスーパーインポーズ機能があって、テレビの画面とマイコンの画面を重ねられたので、テレビに出てきた嫌いな奴にクロス線を合わせて撃つソフトです。
高校時代も続けたんですか?
中高生を対象にした日本学生科学賞に、塩化ナトリウム水溶液のシミュレータを出しました。でも、当時はコンピュータへの理解も乏しく、塩化ナトリウムも一般的ですから、評価が低かったようなんです。だったらインパクトあるものにしようと、高校3年のときに、原子爆弾被害のシミュレータを出品しました。
 何キロトン級の爆弾をどの高さから爆発させると被害はどう広がるかという、シミュレーションソフトです。しかし、何せ8ビットマイコンですから遅い、BASICからアセンブラに変えても全然遅い、ひと夏をつぶしてもまだ結果が出ない。発表会は10月なので間に合わない。そこで、教育委員会に直接「コンピュータを貸してくれ」って頼んだら、年間のリース料が3億円だか4億円のFACOMを借りられて、ようやくソフトを完成させました。
Quick C
20年ほど使い続けている「Quick C」
最近のC言語の本は厚く、基本情報のみを載せた本がないと語る
 結局は受賞できなかったのですが、地元の新聞が文化面の全面で紹介してくれて、テレビ局も取材に来ました。ただ、僕は同時に脚本も書いていまして、NHKの全国高校放送コンクールの高知県大会で優勝して、全国で6位になったんです。やっぱり全国大会を取りますよ。それで理系学部ではなく、大阪芸術大学の文芸学科に入ったわけです。
元ストーカーが語るストーカーバスターの実際
かなり前から「ストーカーバスター」として活動しているとか。
ストーカーといってもメッセージのプロトコルが違うだけなので、いい翻訳をしてあげるのが大切です。例えば、何度も何度も電話して留守電に「電話に出ろ!」と吹き込む人は、相手の声を聞きたがっているわけなんです。そのことを被害者に伝えて、「それでも出たくない」と言われたら、その気持ちをストーカーに伝えます。「そんな相手にいくら電話しても出るわけないよね。じゃあどうする?」とかね。すると、本人が自分で答えを探し始めるわけです。ですから、バスターでも何でもない。
山崎晴可さん
 自己弁護もあるんですけど、ストーカーって特定のスイッチが入っちゃっている人なんです。でも、スイッチが切れるときもあるわけで、素に戻ると今までの行為が社会的にどう見られるのかを考え、当惑したり困惑したりする。思いつめて悪い方向に行く場合も出てくる。しかし、その場に安心材料を与える助言者がいれば、「もうやめよう」と決心する人もいるわけです。
 そうなったストーカーにとって恐ろしいのは、自分の記憶がいつまでも相手に残ることや仕返しです。一方で被害者は、ストーカー行為をやめてくれればそれでよいという場合が多い。そこで、刑事や民事に発展しないように被害者と契約書を交わすなどして、後腐れのないようにしてから、ストーカー行為を終わらせます。この方法で、後にトラブルになった案件は一度もありません。
山崎晴可さん
今までどのくらいの件数がありましたか?
ちゃんと数えてはいませんが、10年ほど続けて累計1万件くらいなので、平均で年に1000件ですか。相談の掲示板があるので、スタッフと一緒にそれを見て、真実だろうと判断すれば動きます。相談はメールのやりとりが中心で、会って話したほうが早い場合は出動しますけど、ボランティアなのでお金は一切いただいていません。
 男女別では男性の被害者が多いですね。女性は警察に届けられますが、男性は行きづらいんでしょうね。それと、ストーカーからの相談も多いですよ。
わかりました。ところで山崎さんの趣味とは?
今、いちばん楽しいのは小説を書いているときです。高校時代に考えたSFを書いています。Y染色体に寄生するウイルスが蔓延して、地球上から男性が減っていく。ただ、ウイルスは無重力下では発生しない設定。そこで、ある国が打ち上げた人工衛星内のY染色体を巡って、争奪戦が始まるというあらすじです。
 ところで、ひとつ聞いていいですか? なかなか答えてくれない取材対象者はどうしたらいいですか? 僕も取材することが多いので、参考にしたいんです。
(……みたいな話でこの後は盛り上がり、大切な質問を聞き忘れました。「あなたにとってプログラミングとは?」を後ほどメールでいただいたのが以下です。山崎さん、ありがとう!)
僕にとっては「プログラミングとはGETである」となりますね。いつか1冊の本にできたらなと思っていることなのですが、プログラミング言語の善し悪しは「Get〜」、例えば“getchar”とか“GetHostByAddress”など、Get周りの機能がどれだけ充実しているかである程度わかると思っているのです。
 仮説ですが、英語・英作文の本質が「get〜」で書き始めるような言語特性をもっており、その文化を土台にしてプログラム言語も発達しているからではないかと考えています。また、「顧客の要求をいかにGetするか」「証拠力と証明力の違いをいかに情報氾濫の中からGetするか」など、僕にとってプログラミングと「GET」は非常に密接な関係にありますね。
山崎晴可さん 山崎晴可さん(40歳)
1968年生まれ。大阪芸術大学文芸学科を中退後、測量会社に入社。カーナビ開発に携わった後に退職し、父親の会社に転職。この間に、別れた彼女の留守番電話の暗証番号を解除するソフトを1年半掛けて開発し、これが後の「ぱるす」へと発展、「DAブラックホール」の原型となる。1993年にパソコンショップ「山崎屋」を開業。事業をソフト開発に移したダイアモンドアプリコットに発展(1994年)し、1999年にダイアモンドアプリコット電話研究所を設立。同社取締役所長のほか、テレビ番組の構成作家、『HackerJapan』など雑誌の執筆、ボランティアでのストーカー相談など幅広く活躍。現在は小説の執筆に取り組んでいる。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
ここに紹介しきれなかった話が、実はまだまだあります。日本のプログラマのあるべき姿とか、海外のハッカーの話題とか、連載記事が行き詰まっている悩みとか(笑)。撮影では何も言わなくてもポーズを決めてくれた山崎さん。楽しい方ですので、機会があればまた記事を起こしますね。

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明日に向かってプログラめ!!

編集部が注目したプログラマの趣味やハマりごとにフォーカス。彼らの人間性とその魅力を通して、プログラマライフをクローズアップします。

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