畳で会議!?「面白法人的業務」を生む奇想天外な職場

デスクに囲まれた広大な畳に、鮮やかなピンクと紫のミーティングスペース。テックハニー史上、最も奇想天外な職場に足を踏み入れたきゃんちが目にしたのは、見た目に負けず斬新でユニークな業務の数々だった……。

（取材・文／宮尾有希　総研スタッフ／山田モーキン）作成日：08.02.25

「エンジニアにとってこれ以上ない、理想の職場を探し出すこと」を使命に、鋭い突っ込みと癒しの笑顔を使い分け、その職場の特徴を浮き彫りにするＴｅｃｈ総研公認レポーター。
家電やモバイル製品など最新の技術に関心が高く、さらにアニメやゲームをこよなく愛する“アキバ系”の素顔には、エンジニアとの共通点も多い。
そんなテックハニーも2年目を迎え、衣装も新しくパワーアップ。毎週エンジニアのことを学習しているブログもグッと深みをましたテックハニーから、今年も目が離せない!?

天然のはちみつに、“きゃんち”の癒しの想いが込められた、程よい甘さのキャンディー。

効能：疲労回復　モチベーションアップ

エンジニアのみなさん、こんにちは！　テックハニーきゃんちです。寒い日が続きますが、体調など崩されていませんか？お忙しくても、睡眠とお食事はしっかりとって、お大事になさってくださいね。実は私も寒いのはとっても苦手。2月ももう終わり、春はそこまで来ていると信じてがんばりましょう☆

さて、今回訪問するのは、ブログツール開発やECサイト運営などなど、さまざまな面白い試みにチャレンジしていらっしゃる企業さんです。オフィスの内装も変わっているのだとか。私はブログをいくつも書いているので、とくにブログツールには興味しんしん♪では、行ってきます☆

1998年設立。「面白法人カヤック」と名乗っているとおり、ウェブサイト、ブログツールの開発を中心に、SNSやウェブコミュニティ運営、ECサイトの企画・運営、カフェやアートギャラリー経営など、「面白法人的業務」全般を幅広く手がける。グループ会社(株)クーピーではウェブサイトの受託開発を行っている。

http://www.kayac.com/

今回ターゲットとなるエンジニアは、2年前に大手SIから転職してきた閃光部の瀬尾浩二郎さん。Flashを使うコンテンツならなんでもござれの、頼もしい閃光部のリーダー。アイデア集団である社内ラボ「ぶっこみイレブン」メンバーとしても活躍中。趣味のジャズバンドではサックス担当、昼休みなど練習にいそしんでいるとか。

きゃ：	こんにちは！　テックハニーきゃんちです。いろいろな業務をなさっているカヤックさんですが、瀬尾さんのお仕事について教えてください☆（写真）
瀬尾：	閃光部というFlash技術者の部署で、アクションスクリプトを駆使してウェブサイトやブログパーツのFlashコンテンツを作成しています。
きゃ：	私はブログをやっているので、ブログパーツにはすごく興味あるんです！　瀬尾さんが作ったもの、見せてくださいっ。
瀬尾：	主には企業のキャンペーンコンテンツとしてのブログパーツを受託で作成しているのですが、一般ユーザー向けですと、ブログデコというポータルサイトで、社内で企画開発したオリジナルのブログパーツを現在37個、提供しています。この中では、例えば「THANKS」という、ありがとうメッセージを投稿し合うブログパーツを作りました。私が手がけたのはひとつ前のバージョンですけど、コンセプトは同じです。
きゃ：	ですね。短いメッセージばかりなのに、読んでるとじわ～ってきます……。
瀬尾：	あとは、のPIXIE。これはタグをブログに張り付けるだけで、ブログにアップされている写真をきれいに全画面表示で、つぎつぎとギャラリーのように見せられるツールです。
きゃ：	これは使いたいっ！　私、ブログにたくさん写真をアップしているんです。すごーい、さっそく帰ったら試してみますね☆
瀬尾：	ぜひ使ってみてください、好評なんですよ。ほかにも、サイトディレクションを担当したり、社内の産学連携プロジェクトを担当したり、ラボBM11に所属してアイデア出しをしたり、仕事内容は多岐にわたります。うちは企画部だけが企画を出すという会社ではないので、いろいろなプロジェクトのブレストにも参加していますしね。
きゃ：	カヤックさんは、面白いウェブコミュニティを作ったり、ギャラリーを経営されたり、ほかにもいろいろなことをなさっていますよね。
瀬尾：	そうですね、当社のサイトを見てくださればわかると思いますが、面白いことを次々につくっています。経営理念は「つくる人を増やす。」ですから。
きゃ：	Flashプログラムを組んで、ウェブをディレクションするだけでも大変そうですけど、急に「アイデアを出して」と言われることもあるんですよね。アタマの切り替えはどうやっているんですか？
瀬尾：	うーん……とくに意識してないかな（笑）。行き詰まったら、オフィスの中をぐるぐる回遊して、人に声をかけてしゃべったり。誰かと話すのって、いちばんの気分転換になる気がするんですよね。
きゃ：	苦労して新しいものをつくり上げる喜びって、どんなところにあるのでしょうか。
瀬尾：	毎回、大変といえば大変ですし、制作の現場なので徹夜することもたまにはあります。でも、それ以上に、モノづくりって楽しいんです。他社さんとコラボして予想以上のものが完成したり、新しい技術を吸収することで今までできなかったことができるようになったり、飽きることがありません。あとは、制作物に対してユーザーのみなさんから反応が返ってきたり、思いがけないヒットが出ると最高にうれしい！　社内では盛り上がったのに、ウケなかったものもありますからね（苦笑）。そのへんの試行錯誤を楽しんでいます。
きゃ：	すごいなあ。真剣勝負で楽しんでるんだなーって伝わってきます☆

瀬尾：	では、オフィスをご案内しますね。驚くかもしれませんが……（笑）。
きゃ：	きゃあ、面白いですね！写真を見てください、畳のまわりをぐるっとデスクが囲んでます。こんなオフィスを見たのは初めて☆　奥には、ガラスで仕切られたオフィススペースとミーティングテーブルがあります。そちらもとてもステキ♪
瀬尾：	去年末に引っ越してきたばかりなんですけど、私も最初にここを見たときは、正直、ビックリしました（笑）。クライン・ダイサム・アーキテクツという建築事務所にお願いして建てていただいたものです。
きゃ：	この畳のスペースは、どうやって活用しているんですか？
瀬尾：	簡単なミーティングは、この上にサッと集まってすませます。「ちょっと、これどうなってるか教えて」って、作業中の人にも頭上から気軽に話しかけて巻き込んだりしますよ（笑）。
きゃ：	おお～、今までにないスタイルですね。悪いことした人は、ここに正座させて、みんなでじーっと見つめるっていうお仕置きにも使えそう（笑）。
瀬尾：	それ、いいかも（笑）。上の階のミーティングスペースにもご案内しましょう。
きゃ：	きゃ～～、ピンクと紫のフカフカな台がある！（写真）
瀬尾：	みんなでベタ座りしてミーティングをしたりしています。
きゃ：	素足だとリラックスできるし、いろんなアイデアが飛び出しそう！　テーブルの会議室もあって広々しているし、窓から光がいっぱい入ってきて明るいですね。
瀬尾：	先日はPSPをここに持ち寄って、ほかのIT企業さんと合同でモンスターハンター大会をやったりしました（笑）。わが社にも「モンハン部」があって、はまってる人が多いんです。
きゃ：	えーっ、呼んでくださいよぉ、それ！　私もモンスターハンターが大好きで、今日も普通に持ち歩いているんです（笑）。大勢でやったら楽しそうだな♪
瀬尾：	ハンティングをネットで生中継できる「モンハンTV」というサービスも作りましたので、よろしければぜひ活用してみてください（笑）。 1階にはDONBURI CAFE DINING bowlsというカフェがあるのですが、ここも当社の運営になります。ウェブディレクターだった社員が、いきなりカフェ店長に社内転職ですよ（笑）。コラボしているカフェ・カンパニー(株)さんにみっちり研修していただきました。あとは、制度面でも面白いことをしているんですよ。例えば給与制度に「サイコロ給」というのがあります。
きゃ：	え？　サイコロ給、ですか？
瀬尾：	給料日前に、社員全員が写真③のサイコロを振って、サイコロの出目％×基本給が、その月の給料に上乗せされるという制度なんですよ。
きゃ：	あははは、面白い～☆　能力給というのはよく聞きますが、ギャンブル的に給料が決まっていいんですか？
瀬尾：	まあ、サイコロのせいで減るわけではないし、＋αのものですから。能力を完璧に給料に反映させきれるものでもないし、お金はひとつの物差しにすぎませんから、このくらいのんびりした気持ちで決まってもいいんじゃないでしょうかね。
きゃ：	お仕事も多方面にわたるし、オフィスにも遊び心があるし。多面的に物事をとらえている会社だなって思います。ホントに面白いです☆

きゃ：	気になる人間関係ですが、上下関係などはどうなっているんでしょうか？
瀬尾：	上司部下という関係はなくて、フラットですね。プロジェクトごとにチームを編成して、そこでリーダーを決める形なので。部ごとにリーダーもいますが、上司という感じではありません。私は閃光部のリーダーですが、技術共有はしても、進捗の管理は個人にまかせています。あえて上司といえば、創設者の役員たちです。
きゃ：	自立した関係なんですね。
瀬尾：	そうですね、一人ひとりが自分のやるべきことをやっていれば、空き時間をどう使おうとうるさく言う人もいませんし。といっても、冷たい雰囲気であるとか、バラバラなわけではありませんよ。犬を連れてきている社員もいるし（笑）、仕事以外でも、私は趣味のサックスで社内バンドを組んだりと、仲良くやっています。
きゃ：	そんな個性豊かで自立心旺盛なひとたちと仕事をするために、瀬尾さん自身が気をつけていることはありますか？
瀬尾：	ひと言で言えば「思ったことは口に出していこう」ということですね。困っていること、不満なことは、抱え込んでいるよりも外に出して解決していったほうが絶対にいい。言いにくい雰囲気にならないように私からもどんどん話すように気をつけています。
きゃ：	なるほど～。
瀬尾：	あとは、とにかく与えること。言いっぱなしにせずに、自分から動くこと。与えることが多い人のところに、結局人は集まっていくと思うんです。せっかく組織に属しているのだから、いい集団にしていきたい、チームでしかできないことをやっていきたい、という思いは全員が共有していると思います。ひとりでつくるよりも、よりよいものをつくるために集まっているわけだから。
きゃ：	どういう会社にしていきたいかを話し合う機会はありますか？
瀬尾：	それぞれが社長になったつもりで行う年2回の恒例行事「ぜんいん社長合宿」というものがあります。毎年、「3年後のカヤックはどういう企業でありたいか」などのテーマを決めて、グループに分かれて発表し合います。組織のビジョンを意識できるし、不思議とそこで思ったことは次々にかなっているんですよ。意識していると、チャンスがきたときに動きやすいからでしょうね。
きゃ：	新しい会社ですし、これからどんどん変わっていくんですものね。瀬尾さん、今日は楽しいお話をたくさん、ありがとうございました！　これ、ハニー“きゃん”ディーです、仕事で遅くなるときにはこれで元気を出してください☆
瀬尾：	ありがとうございます、みんなでいただきます！

　ウェブ関係の開発の会社ではあるのですが、カフェをやったり、リアル店舗を出したり、ウェブ開発の技術をリアルのデバイスとつないでロボットを動かしてみたりと、業務範囲が広くなってきました。これからも、ウェブを基調にしながら、ブラウザから一歩出て、面白いことをいろいろとやっていきたいですね。
　将来的にも、モノづくりにかかわっていたいと思っています。30年後にIT業界がどうなっているのか予想できませんが、その時々の流れの中で、開発に携わっていたいです。あとは、そうですね、趣味のサックスの腕をもっと上達させたい（笑）。音楽と連携したシステムも作ってみたいですね。

　カヤックの魅力は、ひと言でいうと「自由な人間の集まり」だということ。自由な人間とは、常に多面的に物事をとらえられる柔軟さをもった人間です。そのために求められる資質は、「素直であること」だと思っています。他人からの指摘に聞く耳をもち、変化していける、成長していける人を、私たちは求めています。
　職種としては、デザイナー、プログラマ、フラッシャー、ディレクターを募集中です。中途、新卒は問いません。まずは何らかの形で、作ってきたものを見せてください。社員たちが「この人とやっていきたい」と思う人を採用したいので、面接では多くの社員と会っていただくことになるでしょう。素晴らしい出会いを楽しみにしています。

　今日は本当に楽しかったです！　モンスターハンターが大好きという同じ趣味の人たちにもお会いできたし……というのは冗談ですが、そういった趣味でさえ仕事に昇華させていく姿勢は素晴らしいですよね。全力で遊ぶと、それは仕事になっていくんだなあと思いました。
　上から言われたことをただやらされているだけの仕事にうんざりしている人や、クリエイティブ志向の強いエンジニアさんは、カヤックさんに向いているんじゃないかな？自立した人たちの集団だから、技術者としてだけでなく、人として成長していける環境だと思いました。