|
最近、「ダイバーシティ」や「ワークライフバランス」という言葉を耳にする機会が多くなったはずだ。少子化時代を見据え、男女ともに仕事だけではなく、社会生活、家族生活を楽しめるようにしようという社会の機運が、今高まっている。また、少子化に加え、景気の回復によって企業の人材不足感が強い。人材採用や定着度アップのために、労働環境の見直しが進んでいる。社会と企業が一体になって、いよいよ「時短」を真剣に考え始めたと言っていい。 この変化をエンジニアは実感しているのだろうか? 今回、インターネットでエンジニア500人に対して行った調査(2007年5月実施)によれば、「労働時間に関する変化があった」と回答しているのは、4割強。「サービス残業の取り締まり・管理監視が強化されている。年間・月間の上限が定められており、それを超えると健康診断やペナルティーが発生する」(35歳/運用・テクニカルサポート)というように、以前に比べ月の残業時間の上限を見直したり、サービス残業の撤廃など、大きな流れでみると、エンジニアの労働環境は徐々に改善されつつあるようだ。 |
しかし、特に変化がないというエンジニアも約半数。「会社としても残業は減らしたいようで、いろいろと対策は講じているようだが、現状なかなか難しい状態にある」(30歳/システム開発)、「裁量制度の導入で、来年度から残業代はカットとなるらしい。しかし、基本給は上がらず」(29歳/運用・テクニカルサポート)など、人材の数と仕事量とのバランスが合わなかったり、裁量労働制によるコストダウンを図っているのでは?という勤務先への不信感など、まだまだ理不尽な環境を余儀なくされている人も少なくない。 上記の平均退社時間のデータを見てみよう。ボリュームゾーンは19時台、20時台。約7割のエンジニアは、20時台までに退社できるという環境に身を置く。一方で、いまだに22時、23時以降、いわゆる「深夜」まで残業を続けるエンジニアも決して少なくないのである。それでは、残業を断り、プライベートを優先することは可能なのだろうか? 「残業ができない、したくないときに断れるのは月何回?」という問いかけに対しては、1〜2回、3〜4回を足して約6割という結果。0回も12%いる一方で、9回以上という人が16%いる。残業するかしないのか。その裁量を手にしているエンジニアと、そうでないエンジニアの数は二極化していると言えるだろう。 |
そんなエンジニアたちのオフの過ごし方とは……。 「睡眠」という答えは、その多忙さを想像し、思わず涙してしまう。 「ああ、やっぱりエンジニアだ!」と思わせるのは、オフの時間でもネットサーフィンやゲームなど、パソコンに向かっている人が目立つ点である。 しかし、やはりオフはオフらしく、スポーツやスポーツ観戦、映画鑑賞、ショッピングなど、外でアクティブに過ごす人も。そして、「家族と過ごす時間」を大事にする人が多い点も印象的だ。 もちろん「資格試験の勉強」など、スキルアップに費やす人もいる。しかし、仕事が好きなエンジニアとはいえ、「趣味に没頭し、余計なことはあまり考えない」(33歳/生産技術・プロセス開発)というように、ゆっくり休む、仕事を忘れる時間としてオフを過ごす人のほうが多数派のようである。 |
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ここで、カリスマエンジニアであるはてなの伊藤直也さん、インフォテリアUSAの江島健太郎さん、の「ワークライフバランス」にインタビューした。彼らの「オン」と「オフ」とは? |
|
|
では実際に、どうやって最適な「ワークライフバランス」を見つけたらいいのだろう? エンジニアたちのアンケートと、伊藤さん、江島さんのコメントから探り出してみた。アンケートの「オフの時間の作り方は?」という設問に対して目立った回答は、「仕事の効率化」や「スケジュール管理」。仕事に集中し、無駄をなくして早く終えようという発想である。 とはいえ、人のまねをすればいいわけでもなさそうだ。はてなの伊藤さんは、「無理にオンとオフの切り分けをしない」そうだ。 「タイプにもよるんですね。僕みたいに、仕事やそれにかかわることをしないとスッキリしないという人もいる。そうしたら、オンとオフは限りなく近づくから、無理やり遊びに行ったらよりストレスになってしまう。でも、オフの日は仕事をしたくない人も確実にいますよね。まずは自分のタイプを知ることが、ワークライフバランスを実現する第一歩だと思います」 自分のタイプを知ったら、「自分なりのルールを決めることが大切」だというのは、江島さん。「無理やり早く帰る日を作る、毎日21時以降は仕事をしないとか、決めたルールを守るんです。そうすると、仕事のやり方の見直しになるし、無駄なことも見えてきます」 実際にアンケートでも「仕事を家に持ち込まない」「休日は仕事をしない」と、オフの時間を生み出すためのルールを設けているという回答が多く見られたし、「夜や休日は携帯や自宅の電話を切ってしまう」(28歳/機械設計)と、徹底している人もいる。 「オフ」について考えること。それは、自らの仕事へのスタンスや、仕事のやり方を確認すること、つまり、「オン」に対する考え方の見直しにもつながるといえそうだ。 「自分の立場だと、ルールを決めてもそううまく運用できないんだよね」というエンジニアのボヤきも聞こえてきそうだが、「ほかの人に仕事をお願いできるよう、人間関係を円滑に保つ」(35歳/システム開発)、「後進の育成」(29歳・システム開発)、「自由が利く会社を選んで働く」(25歳/機械設計)というように、自分の環境に甘んじず、協力体制、権限委譲の態勢を自ら作るエンジニアは少なくない。ワークライフバランスの実現とは、単に「時短」の問題だけではない。仕事と生活全体を通じ、自分にとってハッピーな仕事のやり方、ハッピーな仕事との距離感、ハッピーな仕事環境を見つけることなのだろう。 |
|
|
|
||||
このレポートを読んだあなたにオススメします
ロボットクリエイター高橋氏×はてなCTO伊藤氏スペシャル対談
ソフト×ハードの融合が生む10年後の刺激的な未来
ロボカップ世界大会4連覇の「ロボットクリエイター」高橋氏。独自のネットサービスを次々とリリースする「はてなCTO」伊藤氏。日本の…
今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE!
平均は7.7万円!職種でギャップが出る残業代の実態
残業続きの毎日に積み重なる疲労は、仕事の達成感だけでは償われない。やはり、それ相応の残業代が支払われてこそ、活力がわく…
今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE!
二極化する残業時間!残業代はどこまで支給される?
エンジニアにとって、逃げたくても逃げきれない残業。短期開発が全盛時代の今、ますます増大する他律的「残業」は、もはや、エ…
エンジニアとしての内なる心の声にしたがって
あえて厳しい環境に身を置くことを決意したT.Iさん
強力な製品を持つ外資系ベンダー。プリセールスでアジア・パシフィック地区1位の実績と評価。着実に上がる待遇。均衡のとれたワーク・ラ…
人気サイト運営企業が求めるネットワーク・サーバーエンジニア
はてなCTO伊藤氏が欲しいインフラ技術者・スキル編
新たなネットサービスの開発・実装には、トラフィックの高負荷に耐えるシステムを構築・運用が必要不可欠だ。今回は、株式会社はてなのC…
やる気、長所、労働条件…人事にウケる逆質問例を教えます!
質問を求められたときこそアピールタイム!面接逆質問集
面接時に必ずといっていいほど出てくる「最後に質問があればどうぞ」というひと言。これは疑問に思っていることを聞けるだけで…
あなたのメッセージがTech総研に載るかも