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開発したソフトを面接に持ち込み評価、情報系資格取得で事前準備etc IT編 「自分の技術は通用する?」転職の不安解消法
「転職したいが不安が大きい」と感じる人がまだまだ少なくない。では、不安の原因は何だろうか、さらに、それを解消するには何をすればいいかを探るべく、転職を成功させたIT業界のエンジニアたちの声を拾ってみた。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:06.08.02
その1 転職に対する不安第一位は、「自分の技術力が通用するのか?」
転職活動を行う際に最も不安を感じているのは、異業種もしくは異職種への転職を考えている人だろう。同業他社からスキルが認められての同職種転職では、職を変えるというハードルも低く、多くの人への参考にはならない。そこで今回の調査では異業種&異職種転職にスポットを当てた。まずはIT業界で異業種(異職種)に転職を成功させた100人のエンジニアにアンケートを取ったところ、予想どおり多くのエンジニアが不安を抱きながら転職活動を行っていたことが判明。中でも不安要素として高いポイントを示したのが「自分のスキルが通用するか不安」「実務経験が足りない不安」という回答だった。では、こうした不安を解消して転職を成功させるためにはどんな手を打つべきか。異業種転職を成功させた2人のエンジニアに聞いてみた。
異業種(異職種)転職する時に抱いていた不安(複数回答)
ケース1 「上流工程に進みたくてコンサルタントを志望」 SE ITコンサルタントに転職 T・Mさん40歳
最初に話を聞いたのは、SEからITコンサルタントに転身したT・Mさん。汎用機系からオープン系まで多彩な開発経験をもつ。クライアントに専門的な意見を求められることが頻繁になり、情報システムのコンサルタントをしてみたいと考え、外資系コンサルファームX社に転職した。
転職前の最大の不安
「経歴やスキルの異なる集団でやっていけるだろうか」
T・Mさん
T・Mさん プロフィール:
新卒で大手コンピュータ会社に入社。外資系コンピュータメーカー勤務を経て、97年に外資系コンサルティングファームに転職。IT戦略を専門とするコンサルタントとして活躍後、現在は大手ソフトウェアベンダーにコンサルタントとして勤務。
今でこそ、コンサルファームが優秀なSEを採用してITコンサルタントへ登用するというキャリアステップが確立しているが、T・Mさんが外資系コンサルファームX社に転職した90年代半ばは、まだ異例のことだったそうだ。X社としてもT・Mさんの採用はチャレンジだったのだろう。「入社前からSI企業との風土や環境の違いを感じ、異質な自分が溶け込めるか不安でした。実際、入社してみたら周りは全員が会計士でした(笑)。経営改革のコンサルティングなど、これからはITが軸になるといわれていましたが、私はよくいえば先駆者。悲観的に見れば人身御供のような存在です。こうした中で、どう自分を生かしていけばいいか、その回答を見つけるには苦労しましたよ」。
T・Mさんの不安解消法(1) 「自分しかできないことを探す」
X社はクライアントからERPパッケージの導入支援を要請されていたにもかかわらず、情報システムに精通しているコンサルタントはごく少人数しかいなかった。そこでT・Mさんはコンサルのスキルを習得する前に、自分を生かせる業務としてデモ用のシステムの構築と運用を自ら買って出たと語る。「まずは社内に自分の居場所を確保したのです」。これで周囲に存在価値を認められ、居心地が急に楽になったそうだ。
T・Mさんの不安解消法(2) 「出会う人たちとの接点を探す」
異業種に転職すると、社内の上司・同僚どころか、顧客とする会話の内容も大幅に変わってくる。そんなときは業界経験が少ないだけに雑談でも間が持たず、会話に窮することが少なくない。T・Mさんも同様な場面に何度も遭遇した。そのときにどうしたかといえば、相手との何らかの接点を探して会話に花を咲かせたそうだ。例えばクライアントのCIO(情報技術担当役員)は例外なく、汎用機時代の苦労話が共通の経験談として大いにウケたそうである。
T・Mさんの不安解消法(3) 「バーで他業界の知人たちと情報交換」
異業種・異職種転職の際に、専門知識が足りなくて困ることは多い。そこで頼らざるを得ないのが専門書の類である。T・Mさんも数冊の専門書籍を購入して集中して勉強したそうだ。ただ、それだけでは当たり前。T・Mさんはコンサルファームやクライアント企業の業界情報を仕入れるために、行きつけのバーで異業種交流を積極的に行ったそうだ。普段は聞けないことが、グラスを傾けることでどんどん吸収できたという。異業種転職に限らず、転職前や転職直後の情報収集が、成功の秘訣といえるだろう。
ケース2 「早く独り立ちしたくてIT業界に転職」機械設計 ネットワークSEに転職 K・Hさん32歳
次にお話を聞いたのは、機械設計エンジニアからネットワークエンジニアに、転職でスキルチェンジしたK・Hさん。自動販売機の設計エンジニアとして入社した会社で、一人前になるまでに10年はかかるといわれ、IT業界に方向転換。現在は大手ネットワーク機器ベンダー勤務。
転職前の最大の不安
「業界経験がまったくないと通用するのだろうか」
K・Hさん
K・Hさん プロフィール:
工学部機械工学科卒。機械メーカー、PCセットアップのアルバイト、派遣で大手SI企業勤務と続き、現在は外資系の大手情報機器ベンダー勤務。新製品の発表準備や社内サーバー管理など重要な業務を任されるまでに至る。
K・HさんがIT業界を志望した理由は、若いうちから第一線で活躍できるからというものだった。でも、それは一定レベルのスキルがあっての話。彼のスキルレベルは学生時代にプログラミングの講義を受けた程度にとどまる。「ネットワークの知識などまったくありません。当然のことながら、自分が通用するかどうか不安でいっぱいでしたよ。ただ、当時は20代前半で、まだまだ若くチャンスがあると考えていました。だったら、どうやってIT業界にもぐり込めばよいか考えました」。最終的な彼の目標はネットワークに強いITコンサルタント。そんな夢をもつ彼が取った戦略は、不安を解消しつつ着実にIT業界の第一線に近づいていけるものだった。
K・Hさんの不安解消法(1) 「まずはアルバイトで業界経験を積む」
K・Hさんは最初からIT大手に入社できるとは思ってもみなかった。実際、「IT業界の人たちって、どんな仕事をしているのかもわからなかった」と言う彼にとって、未知の世界のハードルは高い。そこで彼はアルバイトとしてPCをセットアップする会社に就職。アルバイトなら採用されやすいし、入社後に大きなプレッシャーもない。まずは業界の端緒について業界経験を積み始めるとともに、これから何を勉強していけばいいかを探ることにしたのである。事実、直後からネットワークに関する猛勉強を開始。CCNAレベルのスキルを独学で身につけた。
K・Hさんの不安解消法(2) 「派遣のお試し期間を利用」
基礎的なスキルが身についたと自己判断したK・Hさんは、次のステップを踏み出した。ここでも慌てない。技術者派遣の会社に登録し、大手SI企業に出向した。それが可能になった理由は、派遣会社が顧客に向けてお試し期間を設け、スキルが若干不足しているエンジニアでも契約してもらおうとする制度があったからである。顧客側は3カ月間の試用期間として低コストで人材を確保できるというメリットがある。スキル・経験が足りないK・Hさんはこの制度をうまく利用した。派遣の、しかも試用期間ながら念願のITの最前線である。帰宅後に1日5時間の猛勉強を続け、周囲のスキルレベルに追いつくことに専念した。
K・Hさんの不安解消法(3) 「派遣会社の教育制度を利用」
K・Hさんはまた、派遣会社特有の各種制度を最大限に利用した。1週間に1回程度訪れる派遣会社のサポートスタッフからスキルを吸収しようとしたのである。そのスタッフはネットワークのエキスパートで、教育指導面も担当していたからだ。K・Hさんはできるだけ時間をつくって、サポートスタッフを質問攻めにし、自分のスキルを磨いていった。
その2 ITエンジニア100人の、転職不安解消術とは?
2人のエンジニアの転職に対する不安の背景とその解消例を紹介したが、そのほかのエンジニアはどのように不安を解消して転職を成功に導いたのだろうか。アンケートを分析してみると、大きく2つの解消法が浮上した。まずは採用面接の中で不安が薄れていったという意見が過半数を超えている。不安を抱いたまま面接に臨んだところ、採用担当者や上司となる可能性がある人と話し込むうちに「ここならやっていけそうだ」「自分を必要としてくれている」といった認識が生まれ、不安よりも期待感が上回るというケースである。次に多かった回答は、ネットや雑誌で情報収集して不安を解消したという意見である。転職活動に限らず、相手のことを知らないというだけで不安をもつものである。自分の市場価値や転職先での働き方を知ることで、対策も立てやすい。

さらに少数派だが、ITエンジニアらしい不安解消法が散見できた。自分が製作したソフトを面接に持ち込んで評価してもらうことなど、応募した企業で自分が通用するかどうかを判断する格好の素材といえるだろう。また、エンジニアとしてのポテンシャルに自信があり、それを認めてもらうことで当初のスキル不足が解消できるのではないかというような意見も多かった。
「自分のスキルが通用するのか」不安の解消・軽減ポイント(複数回答)
ITエンジニアの主な不安解消術 ITエンジニアならではの不安解消術
ネットや雑誌などの情報収集で、自身の市場価値や転職先が求めるスキルや働き方を知る

面接で自分のスキルと期待値をすり合わせ、転職後の仕事イメージを固める

人材紹介のエージェントなどの客観的なアドバイスから、転職先としての選択の妥当性や、合否の可能性を吟味する

オファーの内容で、自分への期待値やどこが評価されているかを把握する
最初は得意な技術フィールドで自分を売り込む

技術的バックグラウンドを紹介し、視野狭窄に陥っていないことをアピール

自分が過去に制作したプログラムやコンテンツを面接に持ち込む

分野が違っても技術的な共通基盤を見いだす
情報技術系の資格を取得
まとめ 自分の“どんな”技術が“どこで”通用するか、まずは不安がらずに行動あるのみ
T・Mさんは入社前から抱いていた異業種転職の不安を、転職後に努力と工夫で解消していったタイプ。K・Hさんは転職前に万全の準備を行うことで転職に臨む不安を解消したタイプといえるだろう。

では、一方で採用側である企業は異業種・異職種転職をどう見ているのだろうか。この点についてリクルートエージェントでIT業界を担当している村山雅哉マネジャーに語ってもらった。

「ITとまったく関係しない業界・職種からのキャリア採用は難しいのですが、IT業界内での異職種転職……つまりスキルチェンジ、キャリアアップは以前よりハードルが低くなっています。また、開発会社から社内SEとなるケースや、二次請けの開発会社から元請けの開発会社へ移るケースなども、事業形態が異なるので異業種転職と言えるかと思いますが、必要とされる基本的なスキルが共通しているために転職を成功させるケースが増えています」

村山氏のコメントを強引に要約すれば、スキルの一部が評価されれば環境をガラッと変えられる転職が可能ということになるが、企業側はどのようなスキルを評価するのだろうか。
「募集企業は、技術・ヒューマンスキル・業務知識・ポジションの4つの評価ポイントで求職者を評価しますが、どのポイントを重要視するかは企業の採用背景によって大きく異なりますね」

このことは、エンジニアが4つのポイントのどこかに自信がなく、不安を抱いたとしても、別の部分で企業側が評価するかもしれないということを示唆している。よって、不安解消のためのスキルアップの努力が必要なのは言うまでもないが、自分のどこが評価され、どこが評価されないかを客観的な目で評価することが重要といえそうだ。

異業種・異職種の転職だからこそ、まずは自己評価をアテにせず、人材紹介会社のアドバイザーの意見を聞いたり、面接で評価ポイントを質問したりするなど、一人で不安がらずに行動してみることが好結果を生み出すようである。
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山田モーキン(総研スタッフ)からメッセージ
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自分の価値を自己評価するのはなかなか難しい作業。だからこそ今回ご紹介したように、第三者からの客観的な評価やアドバイスをもらうことが、転職に限らず、今後のキャリアプランを明確にしていくうえで、大変参考になるのではないでしょうか。
次回(8/9)はハード系職種の方にクローズアップした異業種転職事例と不安解消ポイントをご紹介します。
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