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JPNIC、DLNA etc.……社外でも真価を発揮するエンジニアたち
会社に縛られず2つ目の肩書をもつ働き方
自らのキャリアを生かし、会社の枠を超えて活躍するエンジニアが目立っている。彼らは、会社の仕事をこなすだけでなく、規格や仕様を策定する団体などに企業の代表として参画し、そこで自らの力を磨いているのだ。
(文/大河原克行 総研スタッフ/根村かやの) 作成日:04.08.18
Part1:エンジニアだからできる、「業界全体に技術で貢献すること」
 エンジニアに求められるのは、常に自分の技術や知識を磨くとともに、最新の情報を手に入れられる環境を築くこと。そして、それをベースに優れた製品や技術を世の中に送り出すことだといえる。
 エンジニアならば、自分が手がけた製品が世の中に広く受け入れられ、高い評価を得ることを強く願うのは当然のことだろう。また、それによって、自らが属す企業が大きく成長を遂げられるのであれば、まさにエンジニア冥利につきるというものだ。
 しかし、エンジニアには、企業の利益や成長を追求するだけではない別の生き方もある。
 例えば、将来の標準仕様となるであろう規格やスペックを策定する団体に参画し、そこで、業界のために尽力するという生き方だ。企業のなかに閉じこもっていては得られない人脈やノウハウが獲得でき、業界全体を動かしているという醍醐味も魅力的だと、この生き方を選んだエンジニアたちは異口同音に語る。
Part2:スキルアップはもちろん、大きな充実感が魅力!
JPNIC、JANOGなど複数の団体でキーパーソンとして活躍 近藤邦昭さん((株)インテック・ネットコア)の場合
 インテック・ネットコアは、インターネットの高信頼性技術など、インターネットに関する各種技術の研究などを行っているインテックグループの1社。同社で高信頼ネットワーク研究開発グループ主幹研究員を務める近藤邦昭さんは、企業に属しながらも、そのほとんどの時間を業界の活動に割いている特殊な例だといえる。

 インテック・ネットコアは、事業内容にも「インターネットに関する業界活動」という項目が盛り込まれているように、会社そのものが業界活動に積極的に取り組むことを奨励している。
「企業ですから、もちろん技術や製品として成果を出すことが求められています。しかし、相互に接続され使われているというインターネットの特性を見てもわかるように、インターネットの高信頼性技術ひとつをとっても、社内だけで検証していては限界がある。多くの企業や団体との連携によって、より信頼性の高い技術が確立できるようになります。そうした意味でも、業界活動と企業の利益とは密接に関係しているといえます」
近藤邦昭さん
(株)インテック・ネットコア
高信頼ネットワーク研究開発グループ
主幹研究員 近藤邦昭さん(33歳)

 近藤さんは、インターネットの技術者などが参加する日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)の会長を務めるほか、Y2KCC/JP事務局長、JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)での活動、総務省情報通信審議会でIPv6ワーキンググループの委員を務めるなど、いくつもの役職を歴任、兼務している。
「対外的な活動は、仕事全体の4割程度を占めますが、ミーティングが近づくと、1週間以上、対外活動につきっきりになってしまうこともありますね」
 対外活動が集中してしまうときには、まわりの理解を得るための努力を惜しまないこと、それとともに対外活動におけるコスト意識を持つことが重要であると語る。
「あまりにもコスト意識を強く持ちすぎると、自分の属する企業のメリットばかりを追求するようになり、まとまるものもまとまらなくなる可能性がある。その点はしっかりわきまえる必要はありますが、この対外活動によって、どれだけのメリットを企業に還元できるのかという点を常に頭のなかに入れておくことが必要です」

 近藤さんは、「エンジニアの方々には、ぜひ業界団体の活動に参加することをお勧めしたい」と語る。
「とにかく入ってくる情報量が違う。また、社内にいては得られない多くの優秀な技術者たちとの人脈を築くこともできる。同時に、業界に貢献できるという点はエンジニアとしても大きな魅力です」と続ける。
 その近藤さんも最初は、外部活動に参加することには、少し躊躇したという。
「最初は勇気がいりますよ。でも、物おじせずに踏み出すうちに、少しずつ自分の役割が認められるようになる。私も最初の頃、ある検証結果を報告したところ、それを多くの人が評価してくれたことで自信がつきました。なにより、多くの人が評価してくれたことがうれしかった」

 エンジニアは、常に殻を破り続けることが必要だというのが、近藤さんの考えだ。
「自分の世界を広げよう、あるいは殻を破ろうと思うのならば、どんどん外に出ていくべきです。対外活動のチャンスや接点を得ることができたら、まずは出向いてみることです。講演を聴いてその後の懇親会に出てみる、といったことからでもいいんですから。そうした場ならば、著名なエンジニアや、団体のトップの人たちとも気軽にお話ができる。団体のトップの人たちはとくに若いエンジニアが好きですから、いろいろな知識や機会を与えてくれるはずです。それを生かしてほしいですね。きっと自分を大きく飛躍させることができると思いますよ」
JANOG 日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ/日本におけるインターネットに関する技術的課題や運用における問題などを議論、検討する任意団体。インターネットのプロバイダーなどが参加し、インターネット技術者同士の情報交換なども積極的に行っている。

JPNIC 日本ネットワークインフォメーションセンター/日本国内のグローバルIPアドレスの割り当てや、インターネットに関する調査、研究活動などを行っているインターネットに関する代表的任意団体。当初は、JPドメイン名の割り当てやDNSの運用なども行っていたが、これらの業務は日本レジストリサービス(JPRS)に移管している。
DLNAなどで、業界リーダー企業の代表として活動 影山雄一さん(ソニー(株))の場合
 ソニーのIT&モバイルソリューションズネットワークカンパニーでネットワークソフトウェアエンジニアとして勤務する影山雄一さんは、1999年のソニー入社以来、ずっと対外的な活動に携わってきた経験をもつという、同社のなかでもユニークな存在だ。
大学では電気工学を専攻したものの、「ホームネットワーキングに関する仕事をやってみたい」とソニーへの入社を決意。その決意を具現化すべく、ホームネットワークの標準仕様として期待されたIEEE1394(i.LINK)に関する事業部門への配属を希望した。

 影山さんは、配属直後から、IEEE1394のプロトコル開発およびその標準化作業に取り組んできたが、その延長線上の業務として、ソニーが中心メンバーの1社として参加していた1394トレードアソシエイションにおける対外的活動を開始することになった。
ソニーには、入社直後の若いエンジニアでも、重要な仕事を任せたり、対外的な活動にも積極的に参加させたりする風土がある。影山さんもそうした風土のなかで鍛えられたひとりだ。
影山雄一さん
ソニー(株) IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー
メディアシステム開発部門MT開発部
影山雄一さん(29歳)

「対外的な活動といっても、これまでの仕事の延長線上だったため、それほど違和感はありませんでした。それに、外に出ても、物おじしない性格であったことも幸いしたのでしょうね」と影山さんは笑いながら、対外活動に乗り出したきっかけを話してくれた。
 1394トレードアソシエイションではWPL(ワークプロジェクトリーダー)を務めるなど重要な役割を担い、社内でUPnP用のテストツールを開発しながら UPnP フォーラムに参画するなど、ソニーの代表としての役割を果たしてきた。

 その影山さんが現在参画しているのが、ホームネットワーク環境を実現することを目的に、AVメーカー、家電メーカー、パソコンメーカーなど全世界140社が参加しているDLNA(デジタルリビングネットワークアライアンス)だ。影山さんは、インターオペラビリティ&コンプライアンスコミッティに所属し、コンテンツタスクフォースのリーダーとして、ガイドラインに準拠したテストツールの仕様決定や開発などを担当している。
「ホームネットワーキングの仕様策定という最上位工程に携われる魅力は大きいですね。そして、コミュニケーションスキルやネゴシエーションスキルといった通常のエンジニアの仕事だけでは身につかないスキルも高めることができる。また、DLNAでは、英語でのやりとりが多いので、自然と英語のスキルも上がりますよ」

 しかし、こうしたメリットの一方で、対外活動によるデメリットはないのだろうか。
「もし、あるとすればソフト開発の現場から離れてしまったことによる危機感ですね。現場に戻れと言われたときに、すぐにソフトの開発ができるかというとやや不安な面はあります。このあたりはリスクヘッジしておく必要があるでしょうね」
 影山さんは、エンジニアの目からのデメリットをあえてあげてくれたが、メリットのほうがはるかに大きいと話す。 「社内での仕事にも醍醐味はあるのですが、対外活動ではそれとは異なる大きな魅力があります。自分を伸ばしたいと思うのならば、対外活動に積極的に参加したほうがいいですよ」と、影山さんは強調した。

DLNA デジタルリビングネットワークアライアンス/今年6月まではDHWG(デジタルホームワーキンググループ)と呼ばれていた団体。Audio/Visualを中心とする家電やPCを相互接続するためのガイドラインを策定することを目的に設立。ソニー、松下電器、ノキア、サムスン、マイクロソフト、インテルなど全世界140社が参加している。

UPnPフォーラム ユニバーサルプラグアンドプレイフォーラム/家庭および企業のネットワークにおけるさまざまな機器間の接続を、簡単でシームレスに行えるようにする仕様を策定する団体。米国に本部を置いている。世界の696社が加盟している。
Part3:会社の枠を超えた活動が、エンジニアを成長させる
 2人の意見に共通しているのは、対外的な活動はエンジニアのスキルアップのためには大きなステップになるという点だ。社内だけでなく、外部の優秀な技術者たちの刺激を受けることで、自らも成長できるからである。
 そして、もうひとつは、業界標準仕様の策定や、業界に影響を与える先端技術やツールなどを自ら生み出す立場にいられること。社内の活動では得られないような体験や、業界に貢献しているというエンジニアとしての充実感を得られる点だ。これこそが企業の枠に縛られないエンジニアの特権だといえよう。
 その一方で、対外活動を行ううえで、注意しなくてはならないことがいくつかあるようだ。それを5か条としてまとめてみた。
会社に縛られずに2つ目の肩書をもつための5か条
第1条 社内の仕事をおろそかにするな
会社の仕事をこなしてこそ、対外活動に対して周りが評価をしてくれる

第2条 コスト意識をもて
会社に所属している立場であれば、対外活動はコスト。果たして、どれだけのコストがかかり、その一方でどれだけのメリットを会社に還元できるのかを頭に入れておくべき

第3条 外では「自社エゴ」を出すな
会社を代表して参加しているのだから、会社の利益を追求するのは当然だが、そればかりを強調しすぎると、決まるものも決まらない。自社、他社そして業界それぞれのバランスをとろう

第4条 情報漏洩には注意
一緒に作業していると仲間意識が芽生えるが、やはり別の会社に所属しているという一線を引いておくのは当然。とくに発表前の製品情報、技術情報の漏洩には注意

第5条 会社の意見か、団体の意見かの区別をはっきり
外部からの発言を求められた際に、企業を代表した意見なのか、それとも所属する団体を代表した意見なのかを明確に区別しないと、思わぬ波紋が起こる可能性もある

 こうした点に注意すれば、対外活動も比較的スムーズにこなすことができるだろう。
 エンジニアにとって、自分を大きく飛躍させることができる対外活動。もし、あなたに外部の組織で活躍できるチャンスが訪れたのなら、ぜひ挑戦してもらいたい。
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ
本文ではご紹介できませんでしたが、近藤さんは数回の転職を経験されています。対外活動を始めたのは前々職時代。職場が変われば2つの肩書のバランスが変わることもありますが、近藤さんは、「流されないことが大切」と言い、「いまここで自分がするべきことは何か」を常に考えてきました。一方、影山さんは「学生時代は、自分が『物おじしない性格』とは思っていませんでした。社内、社外でいろんな仕事をするうちに、わかってきたんです」と言います。
対外活動には、そんなふうに「新しい自分」「新しい仕事」を発見する効果があるのかもしれません。

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