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オブジェクト指向技術の先端企業「豆蔵」に潜入
大手メーカーの管理業務を脱し、組み込み系コンサルへ
ネットワークインタフェースカードのファームウェアや携帯端末通信制御ソフトなど、組み込み系ソフト開発に携わってきた中堅エンジニア――。彼は、開発業務全体にかかわるITコンサルタントへの転身を試みた。面接で問われるのは何か?
THANKS! 大手完成品メーカーでは、早ければ20代後半から、メンバーや品質に対する管理業務の比重が高まります。しかし、現場で開発を続けたいというエンジニアも多くいます。今回はそんなケースを取り上げました。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)
応募したエンジニア 企業の面接担当者
土井秀夫さん(当時32歳)
ITソリューション事業本部 ES事業部長
上級コンサルタント
福富三雄氏
当時の職種 携帯端末通信制御ソフト技術者
募集職種 組み込み系コンサルタント
業務の内容 協業他社からの携帯端末通信制御ソフトの受け入れ業務、および社内開発チームとの調整。
仕事内容 各種の組み込み制御システムの開発を工学的なアプローチで改善するコンサルテーション。
職務経歴 大学院修了後、大手電機メーカーでインタフェースカードを開発。別の大手電機メーカーを経て大手通信機器メーカーへ。
応募資格 短大・高専卒以上、C++を用いた組み込み系開発・マネジメント経験3年以上、開発業務改善への関心など。
志望動機 組み込み制御ソフト開発全体にかかわれる仕事を希望。開発業務改善にも関心が強かった。
募集背景 組み込み制御システム開発におけるコンサルティングニーズの高まりに対して人員を補強。
書類選考
求人部署であるITソリューション事業本部内の全事業部へ、すべての応募者の書類を回す。選考は事業部長が行う。
1次面接
現場のリーダークラスの技術者1人が面接する。人事担当者が同席。所要時間は約1時間。通過率は3〜4割。
2次面接
事業部長が1対1で面接するのが基本。所要時間は約1時間。通過率は8割程度。
3次面接
役員が最終面接を行う。所要時間は1時間程度。ここではほとんどの応募者が通過する。
内定
採用が内定した旨を2〜3日中に通知。入社日を話し合いのうえで決定する。
合計3社でリーダーとしての組み込み系開発を経験

ITソリューション事業本部ES事業部長 上級コンサルタント
福富三雄氏(以下福富):

 今回のご応募、ありがとうございます。【Point1】最初に志望動機を聞かせてください。


土井秀夫さん(以下土井):
 今春(2002年)入社した×××(大手通信機器メーカー)では、通信制御ソフト開発とはいえ、実質は管理業務。共同開発会社からのソフト受け入れ管理です。しかも、大規模な開発ですから、全体がよく見えず、改善提案もできません。それで再度転職し、開発の上流から下流にまでかかわって自分の考えを実現できるような仕事をと、御社に応募いたしました。


福富:
 当社でどんな仕事をしたいのですか?


土井:
 いったんは請負開発作業に携わり、御社独自のノウハウを見てみたいです。それを私自身の経験と合わせて活用し、組み込みコンサルができればと思っています。


福富:
 職務経歴を説明してもらえますか。


土井:
 私は95年に大学院を終了し、○○○(大手電機メーカー)に入社。制御システム部門へ配属されました。翌年から実開発に加わり、産業用通信ネットワーク製品を担当しました。ネットワークインタフェースカード(LANカード)です。最初はpSOS上のファームウェアの詳細設計、コーディング、テストでした。次は別タイプのLANカード開発。【Point2】私の受け持ちはデバイスドライバでしたが、カードの基本仕様設計にも参加しました。このときには4人チームのサブリーダーでした。

 以上の仕事で3年が過ぎたころ、原子力発電所内での通信手順の開発というプロジェクトを、5人チームのリーダーとして任されました。私は仕様設計を行い、3人でファームウェアの詳細設計、コーディング、テストを担当。デバイスドライバとWindows上のツールの開発に各1人を充てました。そのあとはLANカード開発に戻り、主にファームウェアを担当。メンバーの教育も行いました。○○○での組み込みソフトの実開発期間は合計4年半ほどです。開発言語はすべてCでした。

 2001年5月、△△△(大手電機メーカー)のLSI事業部へ転職しました。ここでの仕事は、携帯端末用の組み込み通信制御ソフトの開発です。テレビ電話を実現させるものでした。C++を使い、サブリーダーを務めました。しかし、事業縮小に伴い、冒頭でお話したように×××へ転職。現在は、他社からのソフト受け入れと評価、社内調整などを担当しています。


Point 1
[面接官] 当社に入社した場合に、どんな技術や経験を活用して、何をしてくれるのか。この観点からチェックします。特にコンサルタント職では、みずから進んで仕事に向かっていく姿勢が重要です。
 
[応募者] 豆蔵さんが何を得意とし、どんな事業を行っているかは知っていました。顧客の組み込み系の開発業務を改善するコンサルテーション。開発の全体にかかわりたいという私の希望と合致するので、そのとおりに答えました。

Point 2
[面接官] 若いときから上流工程に参加し、リーダー業務の経験を積んできたことは評価に値します。職務経歴の説明では、こういう経験がどれだけあるかをわかりやすく話してほしい。その内容はあとから突っ込んで尋ねます。
 
[応募者] 1社目でリーダーを務めていたことは知ってもらいたくて、やや強調しました。それと職務経歴は、別職種の人が聞いても理解できるように説明しました(土井さんの実際の説明は、ここで要約したものより詳細だった)。



オブジェクト指向の習得・実践経験はほとんどなし

福富:
 【Point3】これまで、どのような設計手法を用いてきましたか?


土井:
 市販のプロセス手順を使ったことはありません。一応の開発手順が社内で決まっていましたから、それに準じて行ってきました。


福富:
 構造化設計手法は使っていなかったのですか?


土井:
 特別にはありません。


福富:
 何かのダイアグラム、例えば、ステートチャートやDFDを使ったということもないですか?


土井:
 はい、ありません。


福富:
 △△△さんの仕事ではC++を使っていますね。これはオブジェクト指向では?


土井:
 そのテレビ電話の通信制御では標準規格に準拠しなければならず、C++を使わないわけにはいかなかったのです。結果として、作ったものはオブジェクト指向的な形になっています。それをほかの携帯電話へ持っていっても、OSの構造を直さねばならないところはありますが、ほぼそのまま使えるはずです。


福富:
 クラス図は書かなかったですか?


土井:
 設計資料としては書いていません。頭に思い浮かべながらのコーディングです。


Point 3
[面接官] なるべくオブジェクト指向や構造化手法の経験者を採用したいので、この質問は必ずします。土井さんの場合、このあとの一連の質問に対する答えを聞く限り、知識はあるが、経験はもう少しほしかったという印象です。
 
[応募者] 豆蔵さんの技術面接ですから、この質問が出るのは予想していました。期待に沿える返答をしたかったのはやまやま。しかし、ウソは言えません。過去は変えられません。




調整能力がわかる要件獲得法と合意の取り方

福富:
 これまでの仕事を見ると、上流からかかわる仕事が多いですね。つまり、要件獲得フェーズが含まれます。【Point4】ユーザーからどのようにして要件を獲得してきたのですか?


土井:
 LANカードを開発していた○○○の開発部には、ユーザーと接する場がありませんでした。それで、過去のネットワーク開発で求められた要件を議事録などから探り出す一方、ユーザーと接している技術者が望んでいることをつかむ。そんな作業でした。


福富:
 それは文書化するんですか?


土井:
 設計資料のいちばん最初に、基本仕様書を作成して付けていました。開発の目的や満たさねばならない要件などを明示するのです。


福富:
 それが妥当であるという合意は、どのようにしてなされるのですか?


土井:
 まずは、開発グループ内でレビューして合意を取ります。次に、その製品を使う関係部署の方たちに内容を開示し、コメントをいただきます。そういう2段階の手順でした。


Point 4
[面接官] 組み込み系の開発者はユーザーとあまり接しません。しかし、要件決めは必要不可欠。ならば、要件をどのようにして獲得し、合意を得ていたのか。その返答から、利害関係者との調整能力もチェックできるのです。
 
[応募者] この質問の意図は察していました。要件獲得の方法を尋ねられたら、そのあとは合意を取る方法についての質問が続くとも予想できました。


見積もり作成やトラブル対処などから管理能力を見る

福富:
 土井さんは早くからリーダー業務を経験しています。プロジェクト管理として計画や進捗管理をどのように行ってきたのかを話してください。


土井:
 ○○○で開発していたLANカードは受注生産でした。従って、納期は確定しています。それに合わせて自分たちのチームの作業完了日もおのずと決まります。そこから逆算して、与えられた人数で達成するにはどんな手順と効率が必要なのかを検討し、スケジュールを立てます。


福富:
 スケジュールを立てるというのは、見積もりを作るということですか?


土井:
 そうです。


福富:
 【Point5】実際、見積もりはどんな形で作りましたか?


土井:
 基本的には、最終段階のソフトウェアの構成などまでイメージしてライン数を出し、全体の開発量を計算します。それをもとにして担当者の作業量と日程を割り出します。


福富:
 進捗管理の仕方は?


土井:
 マイルストーンで押さえます。


福富:
 メンバーの進捗をチェックする頻度は?


土井:
 初めのうちは1週間に1回です。週報ベースで現状を確かめ、口頭でも聞きます。試験段階では、実質的に毎日チェックします。


福富:
 進捗遅れで問題が発生したときには、どうしていましたか? 例えば、日程より2週間遅れている作業が見つかった場合などです。


土井:
 【Point6】そういうケースでは、もともと人数が限られていたので、もう対策は打てません。私が多めに作業をします(苦笑)。




Point 5
[面接官] 開発規模から開発工数を見積もって、実現可能な日程を作る。そういうやり方をしてきたのかどうかを知るための質問です。開発プロセスやプロジェクト管理の改善には、きちんとした見積もりをした経験が欠かせません。

Point 6
[面接官] こういう答えを期待していたのではないのです。リスク管理の工夫や原因を解明したうえでの対策といった、具体的な体験がほしかった。
 
[応募者] この答えは情けないものでしょう。しかし、事実なので仕方ありません。予想し得ることは計画にすべて織り込んでいましたから、突発事故は残業でカバーするほかなかったのです。

進捗管理を意識し、改善点を把握しているか

福富:
 ○○○で土井さんがリーダー、またはサブリーダーを務めた開発は、計画どおりに完了しましたか?


土井:
 期日内にすべての機能を完成させたものは、残念ながらありませんでした。「一部の機能はまだ動きませんが」という形で納品し、追い掛けて完成させました。ただ、ユーザーはすべての機能を一度に試験するわけではないので、問題になったことはありません。従って、ほかの開発に影響を及ぼさない範囲での納品という点では、いつも期日を守れたとはいえます。


福富:
 そういう納期遅れに対して改善を試みたことは?


土井:
 【Point7】最も改善すべきだったのは、各担当者の能力不足でした。どのフェーズでも、いったん作業をさせてからレビューし、考え方を教えてまた作業をさせ、レビューする。そういう指導によって能力の向上を図りました。


福富:
 最後に伺います。これまでに勤めた3社はみな大手企業です。なぜ、当社のようなベンチャーを希望するのですか?


土井:
 この年齢になると、大手企業では管理業務が中心です。それでいて、組織が大きいために改善提案をしてもほとんど実現しません。【Point8】自分の考えを現実に作用させられる御社で働きたいと考えました。


福富:
 わかりました。終わりにしましょう。結果はすぐにお知らせします。


土井:
 よろしくお願いいたします。




Point 7
[面接官] ここでは業務自体の改善経験を話してほしかった。各担当者の能力不足が現実問題の一つではあっても、それだけの改善では根本が解決しない。当時20代だった土井さんに、そこまで求めるのは酷ではあるのですが……。
 
[応募者] ○○○ではメンバーが外注スタッフでしたから、作業手順を変えるような要求は出せない決まりになっていたのです。作業処理能力のスピードと精度を上げてもらうしかありませんでした。

Point 8
[面接官] 当社では、こういう考え方の社員が多くいます。しかし、何らかの自分というものがなければなりません。土井さんは意思のベクトルが明確なので、当社に合っていると感じました。私は彼に好感を持ちました。

面接官はここを見た!
●これまでの組み込みソフト開発で用いた設計手法
●担当した開発業務の中での改善実績と工夫の仕方
●リーダー経験の内容と苦労した度合い
 組み込み系のコンサルタントを経験している応募者は皆無に近い。従って、コンサルタントになれる素養を判定する。まず、オブジェクト指向か構造化のどちらかの開発手法を使った経験があるかどうか。C++を熟知していることが条件。次に、開発業務に問題点を見つけ、改善した経験と改善策の内容を問う。同時に、リーダーとして苦労した点を探る。開発の現実を知っていることが欠かせない。メーカー出身者なら、なおよい。
土井さんはこの言葉に燃えた!
「○○○で土井さんがリーダー、
またはサブリーダーを務めた開発は、
計画どおりに完了しましたか?」
 私は、どの会社で働くかよりも、誰と働くかを重視していました。面接で審査されると同時に、こちらも入社後の上司、つまり面接官を審査していたのです。福富さんは質問が適切で当を得ていた。きちんとした仕事をしてきた人でないと、こうはいきません。鋭く具体的な質問をしてくる。例えば、進捗管理の能力を測るために、上のような直球を投げ込んでくるわけです。力を感じました。一緒に仕事をしてみたくなったのです。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
 応募者の土井さんは、大抵のエンジニアが憧れる大手企業3社で実績を積んだ人。どれも最先端の技術分野です。はっきり言えばかなり優秀なエンジニアですが、豆蔵さんは「うちでは珍しくない転職者」と言います。このような大手企業からの転職例が、最近増えているようです。あなたが興味のある、あるいは狙っている企業では、どんな面接が行われているのでしょうか。企業名、応募職種、転職者のシチュエーションなど、知りたいことを教えてください。できる限りの取材をしますよ。

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