「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」という理念のもと、キャリア支援やコンサルティング、現在では結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さん(川崎さんの記事一覧)。
人材コンサルティングの経験と、女性経営者ならではの視点から、のべ1万人以上の女性にアドバイスをしてきた川崎さんが、「“働く女性”に立ちはだかるさまざまなお悩み」に、厳しくも温かくお答えするこのコーナー。
第八弾は、「女性の上司がいないうちの会社、キャリアプランが描けません」というご相談です。
<今回の相談内容>
安定した企業に就職して5年目。自分の仕事は任せてもらえてそれなりにやりがいはあるけれど、今の会社で、自分の将来像が描けません。
女性の管理職はおらず、長年勤めている女性は補佐役ばかり。
こうなりたい、と思える女性社員がおらず、このままここで働いていていいのかモヤモヤしています。
いずれ結婚し出産したとしても産休育休、復帰に関してあまり理解を得られそうにありません。
これから、どうやってキャリアプランを描けばいいのでしょうか?
(27歳 メーカー)
回答者:川崎貴子
リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。
<回答>
相談者さんがお勤めの会社がどんなに名のある企業であっても、今現在のお給料が他社に比べて良くても、
・女性の管理職が居ない。
・女性の仕事は主に補佐役。
・ロールモデルがいない。
・結婚出産したら復帰しづらい。
は、女性が活躍できる企業の少なさにおいて「先進国最下位クラス」の日本のお話といえども、今時なかなかの「空気読めてない企業」と言えます。長年人材コンサルティング事業をやってきて、多くの企業の人材状況を覗き見してきたものですが、この4カードはなかなか揃わないっすよ!見つけた驚きで、国の天然記念物に推薦したいくらいです。
「女性活躍推進」に向けて、政府もマスコミも企業も「多様性」を声高に叫んでいる中、相談者さんがお勤めの会社はブレずに「昭和の企業」を頑固一徹貫いています。まるで世間の声が一切聴こえていないみたいに。果たしてその企業に、女性の未来はあるのでしょうか?
なぜ今、多くの企業が女性活用に力を入れるのか?
女性活用やダイバーシティ制度を導入している企業たちは、「流行だから」という理由だけで手間暇かけて取り組んでいる訳ではありません。結果、会社のブランド価値が上がり、優秀な人材が集まり、優秀な人材が流出しない為に、なのです。要は、勝機をそこに見ているから取り組んでいるのです。しかし、相談者さんが勤める会社の経営陣も管理職も時流を読めず、来るべく少子高齢化社会に対処する気がなく、その気はあったとしても企業体質的に「変化ができない」という時点でアウトな匂いがぷんぷん致します。読んでいて相談者さんの貴重なこれからの時間を、敢えてアウトな会社に費やす価値を私は見出すことができません。
もし私が、相談者さんの勤める会社の社員だったとしても「結婚出産を機に辞める」「ずっと補佐役」以外のキャリアプランを描く事ができません。会社のルールを決める場所に女性が参戦できないのですから。
不測の事態で社長が交代したり、外国企業にM&Aされたり、という会社の危機に直面しない限り、ドラスティックな変革は望めないのではないでしょうか?
女性が安心してキャリアアップするために必要不可欠なのは、ロールモデルの存在
私は、女性が企業で伸びていく為に「女性管理職や女性のロールモデルの存在が不可欠」だと常々思っています。
そのように発言すると、「部下や上司に男も女もない論」が地味に炎上したりするのですが、性差は確実に存在すると私は思っています。男性と女性では、同じ発言や立ち居振る舞いをしても受け取る側の印象が大きく変わりますし、お手本がいないまま初の管理職になって、仕事に行き詰まったり、悩んだりしている女性たちを数多く見てきたからです。
また、管理職研修の現場で、「女性部下を男性部下と同じように指導して大丈夫か?」と質問する男性管理職は後を絶ちません。コンプライアンス上どこまで踏み込むべきか、どのように指導したらセクハラに値しないか、など、ルール化の難しいセンシティブな制約が多いので当然と言えば当然です。体の事やライフイベントの事など、実感できない女性部下の悩みもありますし、年々厳しくなる企業ルールを前に、男性上司が女性部下を厳しく、熱意を持って育てられるかどうかは、これからさらに疑問が残る所です。
私は25歳で独立してしまったためOL経験が4年間しかありませんでしたが、その間、女性上司には大変恵まれました。その会社は、とにかく色々なタイプの女性上司を外部からもたくさん採用していたからです。尊敬できる女性上司も、こわい女性上司も、ヒステリックな女性上司も、フレンドリーな女性上司も、プライベートな相談に乗ってくれる女性上司も、やたらドライな女性上司もいました。
私は圧倒的に社会経験が少ないまま社長になって部下を持ったものですから、かつての女性上司たちを何度も何度もお手本にして今までやってきたように思います。○○部長だったらどう考えるか?○○リーダーだったらこんな言い方するだろうな。上手く行かなくてイライラしたら、ヒステリックだった○○部長を思い出して「絶対にああはなるまい!」と反面教師に。
上司の半分以上は男性でしたが、振り返れば、思い出したのはいつも女性上司の事ばかりでした。今でこそ「女性マネジメントのプロ」という看板で、働く女性のメンター代行や企業コンサルティングを生業にしていますが、私の完全なオリジナルメソッドではありません。私の中に、かつての女性上司たちの欠片がたくさん詰まっていて、「ここは共感して話を聞こう」「ここはしっかり注意しよう」と、欠片たちの応援を得ているから、自信を持って繰り出せたのだと思います。
自分が思い描く理想のロールモデルはいなくてもいい
脳科学の本で読みましたが、女性は男性より不安になりやすい傾向が高いと言われています。その会社で一番出世したり、パイオニアになったりする事に喜びを見出しづらい。気概のあるタイプならいいのですが、そうじゃなければ、女性上司のお手本もロールモデルも存在する会社を探すべきです。先人が居るほうが安心してキャリアアップすることができるからです。
完全な上司も完全なロールモデルも見つからないかもしれないけれど、彼女たちの教えや、参考にしたい所や反面教師にする所をつぎはぎのパッチワークにしていくうちに、相談者さんのキャリアプランも明確になってゆくと思います。
そして、くれぐれも「結婚や出産でキャリアを手放さないで済む会社」、「出産しても働いている女性たちがたくさんいる会社」を選んでほしいと思います。
貴重な人生の時間を有意義に過ごせるよう、応援していますね。