コミュニケーション下手が会社で生き抜くには?借金玉さんが教える、仕事がうまくいかないときの対処法

同僚とのコミュニケーションが苦手、要領が悪くて仕事がうまく回せない…など、会社で何となく「生きにくさ」を感じている人は少なくないようです。在宅勤務の機会が増え、セルフマネジメントもうまくいかず、一人落ち込む人もいるようです。

そんな若手ビジネスパーソンに対し、昨年刊行の『発達障害サバイバルガイド』(ダイヤモンド社)が7万部を突破した“発達障害サラリーマン”借金玉さんが、自身の経験をもとにアドバイスしてくれました。

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借金玉さんプロフィールイラスト借金玉(しゃっきんだま)さん

1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害注意欠如・多動症)の発達障害者。早稲田大学卒業後、「何かの間違いで」大手金融機関に就職するが、全く仕事ができず2年弱で退職。一発逆転を狙って起業し、一時期は社員十数名を抱えるまでに成長するが、事業破綻。1年かけて「うつの底」から這い出し、現在は不動産会社で非正規の営業職として働く。自身の経験から生み出した職場、仕事などでのサバイバル術をまとめた著書『発達障害サバイバルガイド』(ダイヤモンド社)、『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』(KADOKAWA)が好評。

「当たり前」ができない僕が、生き抜く術を身に付けるまで

僕は子どもの頃から、皆が当たり前にできていることができず、「人生まるでうまくいかない」と感じ続けてきました。

部屋の中はいつもぐちゃぐちゃで、朝は起きられず、夜は眠れない。空気が読めず、人と関わるのが苦手。小中学校時代は不登校を繰り返していました。後に発達障害(ADHD:注意欠如・多動症)と診断されたときは、「なるほど、そういうことだったのか」と非常に納得しました。

その後、紆余曲折を経て早稲田大学に入学し、首尾よく卒業。そして、新卒でとても立派な金融機関に就職できたのですが…今思い返しても本当に何一つ仕事ができませんでした。どうしてもゼロの数を正確に数えられなくて、伝票に1億円を10億円と書いてしまうのです。ケタ間違いは金融業界あるあるかもしれませんが、僕の場合は10回に1回は間違えてしまうので「あいつの伝票は信じるな」と言われる始末。結局2年弱で退職しましたが、考えてみれば発達障害には最も向かない職場だったかもしれません。

その後、一念発起して起業したところうまく行き、最盛期は社員十数人を抱えるまで大きくなりましたが、3年もたたず事業破たん。すべての自信を失い、しばらくうつ状態に陥っていましたが、縁あって今は小さな不動産会社で非正規の営業職として働いています。

大手金融機関の社員、社長、そして再び一営業職を経験してみてわかったのは、社長、上司は大変なんだということ。そして、思ったよりも会社は合理的にできていて、朝礼や挨拶、職場の飲み会なんていう、くだらない(と思っていた)風習にも合理性があるのだ、ということ。社長と社員両方を経験してみて、やっといろいろなものの解像度が上がり、会社員として生きていくためのコツを習得、それを本にまとめることができました。発達障害の人だけでなく、仕事がなかなかうまくいかない人、会社で何となく生きづらさを感じている人、コロナ禍での在宅ワークで閉塞感を感じている人にも、参考にしていただけるのではないかと思っています。

この後、若手ビジネスパーソンのいくつかのお悩みに、僕なりのアドバイスをしていきたいと思います。

CASE1:要領が悪く、一つの業務を習得するのに時間がかかってしまう

要領が悪い人が、自らを鍛えて「要領を良くする」のは無理があります。

そもそも、仕事を習得するスパンは人によってかなりの差があります。短期間でポイントを飲み込み早期に活躍できる人もいれば、飲み込みにかなりの時間がかかるけれどその後はぐんと伸びるという人もいます。

部分的に覚えた知識をうまく活用することができず、ある程度全体像が見えないと物事が認知できない、という人は少なからずいます。営業の仕事にはAからZまであるとして、新人が得られる知識はせいぜいAからDまでぐらい。会社からはその知識内で何とか頑張ることを求められますが、「おぼろげながらでもZまで見えないと動けない」のです。

このようなタイプの人は、どうしても序盤の立ち上がりが遅くなるものですが、重要なのは、習得に時間がかかることをくよくよ悩むのではなく、「自分は立ち上がりは遅いけれど、全体像がつかめたらその後は強いタイプなんだ」と自分自身で認知すること。容量が悪い自分をポジティブに認めれば、全体像をつかむまでのしんどい期間も頑張り抜く気力が湧きますし、「しんどい期間をどう生き延びるか」という小ワザを身につけることもできます

若手が「多少仕事ができなくても勘弁してもらえる期間」には個人差があります。周りを見ても、「あいつは仕事ができないのにいつまでも許されているな」なんていう人がいるのではないでしょうか。そういう人は、「勘弁してもらえる期間を少しでも伸ばす小ワザ」を活用している可能性が大です。

例えば、嫌いな上司や先輩にも元気よく笑顔で挨拶する、親切にしてもらったらお礼を言う、帰省したらお土産を配る、なんて小ワザは誰でも簡単にできるライフハックです。「こんなことぐらいで?」と思われるかもしれませんが、これらはすべて「相手を尊重している」という姿勢であり、やられて嫌な気持ちになる人はいないので、やって損はありません。

僕は大手金融機関時代、これらを「くだらない」と一切やってこなかったのですが、挨拶してたまにお菓子を配っていれば、自分にぶつけられる石が3割ぐらい減ったのではないかと少し後悔しています。

注意してほしいのは、くれぐれも「自分はダメだ」という結論で終わらせないこと。一見自己反省しているようですが、実は「情報量ゼロ」だからです。

例えば、「メモがうまく取れない」のであれば、メモを取る効率が悪いのか、先輩の話の中からメモすべき大事なポイントが抽出できないのか、話自体をうまく読み込めないのか、思いつく原因をいくつか考えてみること。具体的に克服すべきポイントが見えたら、人はたとえ時間がかかっても解決に向けて動くことができるからです。

できないことに向き合うのは、苦痛を伴う作業です。「自分はダメだ」に逃げ込んだほうがラクという気持ちもわかりますが、それでは何の解決にもなりませんし一歩も前に進めません。

「自分は物事の習得に時間がかかると認識する」「その原因を自分なりに見つけ、心に留めておく」だけでも、くよくよすることが減り、仕事に対して今より前向きになれると思います。

CASE2:マルチタスクがこなせずすぐ仕事が溜まってしまう

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無理してマルチタスクをこなそうとするほうが無理なのではないかと思います。

僕もかつては、マルチタスクをこなせるようになりたくて、ワーキングメモリーを鍛える方法を調べたり、滝に打たれてみたり、個人輸入の怪しいサプリを飲んだりしてみましたが、何一ついいことは起こりませんでした。試行錯誤の末行きついたのは、マルチタスクはシングルタスクの集合体であり、わけて考えればシンプルだということ。そして、わけた業務を頭の中ではなくビジュアルで「現実的に仕分けをする」のが一番有効だと気づきました。

仕事では、一つひとつの営業案件をバインダーでわけて整理しています。営業案件が4~5件ぐらい同時に動くのはざらであり、かつ1つの物件を売る際にも銀行にローン申請をかけたり、謄本を取ってきたりなど、さまざまな業務が発生します。それらを案件ごとにバインダーに収めておけば、「案件Aについては、このバインダーを見ればすべてわかる」状態が作れます。営業に出かけるときは、必要なバインダーをカバンに放り込めばヌケモレもありません。

大手金融機関時代、ものすごくキライな上司がいたのですが、その人に言われた「わけることは、わかることだ」は金言として今も大事にしています。「こじれにこじれた問題も、すべてわけてみろ。わけ終わったらそれをA41枚に整理しろ。整理できた時点で、その仕事の8割は終わっている」と。その上司のことは今でも大キライですが、これについては大正論だと思っています。

日々のやるべきタスクも、脳以外の場所に置いて見える化するのをお勧めします。スマホや紙に書き出す方法でもいいのですが、一押しはホワイトボード。ホワイトボードは絶対に無くすことのない最強のメモ帳であり、嫌でも常に目に入ります。その日のタスクだけでなく、やるべきことを思い出したらその都度がーっとホワイトボードに書き出しておき、毎日見返せば、忘れることはありません。そして確実に手離れしたものを消していきましょう。

あとは「他人に整理してもらう」のもお勧めです。僕はタスクが3つ以上重なると、頭がごちゃごちゃになりパニックになるので、他人に口頭でやるべきことをバーっと語って整理してもらっています。

僕は常々、人が使える一番優れたツールは他人の脳だと思っています。ごちゃごちゃ入り組んだ問題も、第三者であれば主観が入らないからシンプルにほどき、仕分けることができる。それをホワイトボードに書き出しておけば万全です。

CASE3:意見や要望がうまく伝えられず、同僚と協働するのが苦手

意見をうまく伝える方法は、ロジカルシンキングなど専門の本がいろいろ出ているのでそちらに任せるとして。僕が問題にしたいのは、それ以前の「相手との関係性」についてです。

「こいつ、いい奴だよな」と思う相手ならば、若干意味不明なことを言われても頑張って理解しようとするし、疑問点を聞き返そうと思えますが、普段から「ウザいな」「気に入らないな」と感じている相手だと「伝わらねーよ!」で終わってしまうものです。確かな伝達技術も大切ではありますが、まずは「意見を聞いてもらえる関係性」を作りましょう。

「関係性作り」というと、協働が苦手な人にとってはハードルが高いと感じるかもしれません。「コミュニケーション力に自信がないし、気の利いた雑談もできない」と思うかもしれませんが、そういう人にも無理なくできて有効なのが「挨拶」です。

挨拶は、「わたしはあなたに敬意を示している」という動作であり、感じがよく礼儀正しい人という印象につながります。そして、挨拶されて嫌な気持ちになる人はまずいません。「ありがとうございます」「お疲れ様です」「よろしくお願いします」などの基本的な挨拶を続けることで、「いい奴だよな」の土台を作ることができます。

さらに、スキあらば「褒める」といいでしょう。目の前の本人を直接褒めるのも悪くはないのですが、お勧めしたいのはその場にいない第三者を褒めること。回り回って伝わったほうが、効果が断然上がるからです。

褒めるポイントは何でもOK。優しい、親切でもいいし、「今日のスーツがかっこいい」とかでも構いません。何かのきっかけで、「そういえばあいつ、〇〇さんのこと頼りになるって褒めていましたよ」と伝われば、「…なんだ、いい奴じゃないか」と思ってもらえるでしょう。

CASE4:在宅ワークで自分を律しきれず、どうしてもダラダラしてしまう

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発達障害仲間の会社員は概ね、昨今の在宅ワーク拡大を歓迎しています。他人の目がなく、自分のペースで仕事が進められるのでストレスが溜まらないし、ちょっとくらい残業しても怒られない。「在宅ワーク、最高!」とみんな言っています。

その逆で、在宅ワークで調子が出ない人は、「他人の目がペースメイキングになっていた」というタイプだと思います。上司や先輩が近くに居て、定期的に進捗を確認されお尻を叩かれることで、ペースメイキングができていた…という。
こういう場合は、上司や先輩以外の「自分を律するもの」を作る必要があります。まずはPCやスマホのスケジューラや、アラームなどを活用して、自分で自分のお尻を叩いてみてはいかがでしょうか?

それでも、どうしてもダラダラしてしまう…という人は、「これから自分は仕事に入るぞ!」という強力なマインドセットが必要です。

オフィスに出勤していたときは、朝起きてから実際に仕事を始めるまでに、たくさんのマインドセットとなる動作が存在していたはずです。朝起きたら顔を洗い、歯を磨く。シャワーを浴びる。着ていくシャツを選び、ネクタイを閉めたり化粧をしたりなどして職場に向かう…などなど。在宅ワークでこういう動作をごっそり省いてしまっているのが、ダラダラの原因の一つだと思われます。

僕は、家で仕事をやり始める前に、「顔と手を洗う→ジャケットを着こむ→机の上をひと通り片付ける」を「毎朝の儀式」として必ず行っています。
手を洗い始めたのは、PC作業中にものすごくて汗をかき、ひどい手水虫に悩まされたのがきっかけなのですが、無心に手を洗っていると「仕事したくない」という思いが少しずつ溶けていくのを感じます。そして、ジャケットを着こむころには「よしやるぞ」という前向きな気持ちが優勢になっています。

在宅ワークでこういう「儀式」を行うのは茶番だと思われるかもしれませんが、儀式にはそれなりの現実的効果があります。出勤していた時のルーティンを思い出し、儀式として取り入れれば、気持ちの入り方に変化があるはずです。

なお、「在宅ワークは孤独で寂しい」という人は、ビジネスチャットをうまく活用して同僚に雑談をしかけてみてはいかがでしょう。ちなみに、最近仲間内で流行っているのが、ネットで拾ったクソ画像を送り合うというもの。話が盛り上がり、在宅ワークのいい気分転換になっています。クソ画像でなくてもいいので、ちょっとした日常の面白ネタを送るなどして、雑談のキッカケを作ってみてはいかがでしょうか?

最後に…「モヤモヤしたら言語化する」を習慣にすれば一歩前に進める

昨今の情勢を受け、将来に漠然と不安を覚え、何となくモヤモヤを抱えている…という人は増えていると思います。しかし、モヤモヤをそのまま放置するのは精神的に良くありません。

そして「モヤモヤしている自分が悪い」と自分を責めるのは簡単ですが、基本的には禁止です。自分を責めたところで何のメリットもないからです。

モヤモヤしたら、なぜモヤモヤしているのか紙などに書き出してみましょう。モヤモヤの原因として考えられるものを片っ端から書き出すことで「言語化」すれば、そこに「情報」が生まれ、一歩前に進む手掛かりになりますよ。

 

「発達障害サバイバルガイド」書影『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』(借金玉著/ダイヤモンド社)

発達障害と診断された人だけではなく、なんとなく日常に生きづらさを感じているすべての人に向けて、借金玉さんが編み出した「どうにか働き、食っていくためのノウハウ」をまとめた1 冊。在宅ワークや生活環境、お金や健康にいたるまで「実体験で手に入れた工夫の数々」がわかりやすく解説されています。

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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