「今の仕事を辞めたい」を家族に言えない…そんなときは~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム

「仕事を辞めたい」と思ったとき、家族にすぐに相談できればよいですが、不安にさせたくない、反対されると悲しい、といった理由でなかなか伝えられない人も多いのではないでしょうか。

女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を手掛ける川崎貴子さんは、かつて本サイトで「嫁ブロック」をテーマにしたコラムを寄せてくださいました。
在宅ワークの推奨など働き方が変わりつつある中、こんな時でも、あるいはこんな時だからこそ今の仕事を辞めて新たな環境に身を投じたいと考える人へ、家族への伝え方のアドバイスをあらためて伺います。

嫁にプレゼンする夫

いまこそ再び伝えたい嫁ブロック(家族ブロック)のこと

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による失業率は、諸説ありますが、休業状態にある隠れ失業者数を合わせると今後2桁に達するのではないかという予測も少なくないようです(2020年6月時点)。

過去に起こったITバブル崩壊、リーマンショック後に失業率が戦後最高を記録した当時、転職支援事業会社を経営していた私は「求人も少ないが転職希望者も少ない」を、会社が潰れる恐れとともに実感したものです。

不況時には、企業や人によってはチャレンジ精神が削がれ、安定志向になるのは仕方のないこと。私も転職相談に来た人に、あくまでもその人のことを思って、
「世の中が安定するまで待ってみては?」
とアドバイスをした事が一度や二度ではありません。

自粛生活が段階的に緩和されつつある現在(2020年6月時点)においても、働く、そして生活してゆく中で私たちの不安はまだまだ多岐に渡っています。

そのような状況下であっても、「今の仕事を辞めたい」「転職したい」「今の会社にしがみつきたくない」「起業したい」とは、それ相当の理由があるのだとお察しいたします。

そして、こんな世の中だからこそ、そのチャレンジや選択を家族に言えないお気持ちも。

家族はあなたに愛情があるからこそ心配するし、妻も夫も両親も兄弟も皆「このあと世の中は一体どうなるんだろう」とそれぞれに不安を感じてもいます。

そこに、

「オラ、仕事辞めてくるわ!」

と、悟空ばりの無邪気さで宣言されたら、なんとしてでも阻止しようとするのが家族愛というもの。

私は3年半前に「嫁ブロックを発動する妻は良妻か?悪妻か?(//next.rikunabi.com/journal/20170105_d1/)」というコラムで、ブロックされる背景や「妻との向き合い方」を書いたのですが、今回はさらに、「Withコロナ生活」も踏まえて家族が納得してくれるかもしれない伝え方を紹介したいと思います。

前提として「転職したいから仕事辞めたい」なのか、「起業したいから辞めたい」なのかで伝え方は変わってきますので、それぞれのポイントを参考にしてください。

CASE 1:転職したい場合の家族への伝え方

いま勤めている会社の将来性の無さや働く環境の悪さ、自分の努力では到底回避できない組織体制の古さ、などなどをしっかりと詳細にまとめましょう。

転職する際、企業面接でこれを伝えるのはマイナスですが、家族に辞めたい理由を伝えるにあたっては必要となる情報です。

すぐに転職したい場合は、逆に転職先候補である企業の優位性を「小学生からご老人にまで」理解できるような言葉で伝えられるようにしておきましょう。「給料はほとんど変わらないけど残業ほぼ無し!育休もOK!」という具合です。

聞く側の耳を塞いでしまうような専門用語の羅列はNG。わかりやすい説明にすることで、「地獄から天国へ移りたいというのであれば理解できる」と、賛同を得られやすくなります。

現在、この状況下で苦境にあえいでいる企業がたくさんあるように、今後の景気はどうなってゆくのか、どの業界が伸びるのか、第2波が起きたら…などについては、今までの常識では判断できません。
情報の出どころがはっきりしている大手新聞社などの色々な記事をできる限り読み、調べられるものはすべて網羅して来たるプレゼンに臨みましょう。

CASE 2:起業したい場合の家族への伝え方

家族が心配する伝え方2トップは、

《1》 「今の会社とりあえず辞めたい(その先は考えていない)」
《2》「今の会社辞めて起業したい」

ではないでしょうか。

《1》に関しては心身の問題に至るケースを除き、しっかり考えてから告知していただくとして、問題は《2》。

これは私が20年ほど前に使った言葉でもあります。「大手人材会社を辞めて起業する」と伝えた瞬間、家族の反対たるや、父親からは伝えた途端に勘当されたほどでした(後に賄賂を贈り続けて解消)。

ただでさえ起業というものは失敗するリスクを伴う上に、今はWithコロナですから、よっぽど特殊な才能やアイディアや資産や人脈がない限り、家族たちに「へー、頑張ってねー!」とは言われない案件かと。

ですので、《2》を敢行したい場合は「本気度を見せる」ことが重要です。

会社を辞めずに週末だけ起業してみる、とか、必要な知識を学べる所に通うとか、資格取ったりお金貯めたり、「来年起業したいから今頑張っている」という姿を一定期間、ちゃんと見せることが家族の安心、あなたへの信用につながります。

家族を説得する際に意識したいポイント

ここからは転職したい人、起業したい人に共通のポイントをお伝えします。

外堀から固めよう

家族相手に限らず、交渉ごとの上手い人というのは一回でディールを成功させません。巧妙な脚本家よろしく、たくさんの仕掛けを用意して相手の心を動かしながら、結果「YES!」と言わせているのです。

「会社辞める」は言いにくいことですから一回で済ませたい気持ちはよく理解できますが、急いては事を仕損じる。ケース1、ケース2に記したことを、日々、少しずつ丁寧に実践してみてください。

また、家族で一番理解があり、かつ発言権がある人に事前相談という形で外堀から埋めてゆくのも有効です。私は、起業時に経験した父に対する失敗から、離婚の際は事前に妹へ、その後母へ相談し味方になってもらって事なきを得た経験があります。多数決ってやっぱ強いっす。

大切な軸を家族とすり合わせよう

何度も書いてきましたが、コロナウィルス感染症の流行によって仕事スタイルも生活スタイルも変化は避けられなくなってきました。(今も最前線で働いてくださっている医療従事者の方たちには感謝でいっぱいです。)

その上であえて書きたいのですが、私にとって「コロナ自粛期間」は悪いことだけではありませんでした。

窮屈ではあったけれど、こんなにも家族が一緒にいられたのは人生初の経験だったからです。

ご多分に漏れず私も、起業してからは会社を大きくしたい、もっとお金を稼ぎたい、影響力のある人になりたい、と欲望いっぱいに走り続けて参りました。それが家族にもプラスに作用すると信じて疑っていなかったのです。

しかし、自粛中に毎日子どもたちと食事をし、散歩をし、家で映画を観て、たわいない話を繰り返すことによって、欲望猛ダッシュで働くことが果たして自分の本当の幸せだったのか?と疑問を抱くようになりました。

そして、「幸せになることに、大きな会社も大金も必要ない」と気づいてしまったのです。この境地に至ったのは、「これ、リモートワークでできるんだ」ということを数多く体験できたのも、自分の在り方を考える時間をたっぷり取れたのも、大きかった。

皆さんにも、こんな時だからこそ、いま一度ご自分の働き方ついて考えてみていただきたいと思います。「仕事を辞めたい」と思ったら、そもそも自分の軸はどんなものだったのでしょうか。

自分の使命とは?
本当に好きな仕事とは?
誰の役に立ちたくて働いている?

自分にとって幸せな働き方って何?

それがはっきりとご自身の肝に落ちていれば、家庭の共同経営者である夫や妻は互いにすり合わせの上で、ほかの家族たちもその提案を受け入れてくれるのではないでしょうか?

家族が反対するのも心配するのも究極は、
「幸せになってほしい」
からであり、大切な家族の一員が幸せになれるのであれば、それに越したことはないからです。

プロフィール

川崎 貴子

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リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

イラスト:yoko

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