「正反対の性格だから、うまくいく」想いをカタチにするフードユニット“ちゃあみー”の挑戦

手料理には、つくった人の想いやあたたかみが感じられます。今回お話を伺った管理栄養士の峰さんは、フードコーディネーターの友人とユニットを結成し、想いを伝えるツールとして食の可能性を広げるべく活動。今回は、思い切って会社を辞めフードユニットとして活動をはじめた二人が、どのように事業を展開し、ビジョンを描いているのか、お話を伺いました。

ちゃあみー フリーランス管理栄養士 峰奈津季(みね・なつき)さん

1992年埼玉県生まれ。女子栄養大学栄養学部実践栄養学科を卒業後、管理栄養士の資格を取得。新卒で介護食を扱う食品メーカーにて栄養情報担当者(営業職)として就職。営業経験を2年経験した後、独立。現在はフードコーディネーターの友人(倉田)と、フードユニット「ちゃあみー」として活動中。

独立と結婚、人生の転機が一度に訪れる

──前回は峰さんが会社を辞めることを決意するまでの経緯をお聞きしましたが、周囲の反応はどうだったのでしょう?

退職を職場に告げたのは、ちゃあみーのメンバーで休日に料理教室をはじめて半年ほど経ったタイミングだったと思います。入社2年目に入った頃ですね。やはり職場の人たちからは、「なんで?」と驚かれました。

ただ、私としては辞める気持ちは固まっていて、決めた以上はできるだけ早く辞めるべきだと思っていたので、きちんと話をして、最終的には円満に退職することができたと思います。

後任者への引き継ぎを済ませ退職日を迎えたのが2017年6月だったこともあり、実は当時は結婚の話も進んでいて、たまたまですが最終出勤日の翌日が入籍日だったので、あのときはドタバタでした(笑)。

結婚と退職が重なったので、私の両親には心配をかけてしまいましたが、夫は「やりたいことがあるのなら、やってみなよ」と応援してくれていたので、ありがたかったです。今では両親も応援してくれていて、ブログやSNSもこまめにチェックしてくれているようです。

──人生の大きな変わり目だったんですね。その後、仕事はどうやって見つけたのでしょう。

最初は求人サイトで「レシピ開発」などを検索して仕事を受けたり、知人のカフェのお手伝いをしたりして、少しずつ仕事を増やしていった感じです。メディアの知人を通じて食関連の記事を監修する仕事も受けていたので、その記事を見た人から新たな依頼を受けることもありました。

ただ、サラリーマンの頃に比べると、やはり仕事量は安定しませんね……。仕事を詰め込みすぎてしまったり、慣れない税金の処理に困ったりしたときは、「サラリーマンのときは恵まれていたんだな」と思うこともありました。それでも、今はずいぶん慣れてきましたし、自分で判断して仕事をできるフリーランスの生活に充実感を感じています。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

食は、想いをカタチにできるもの

──現在はどういった仕事がメインなのでしょうか?

メンバーの倉田がフードコーディネーターなので、レシピ開発は主に彼女が担当しています。私は管理栄養士として栄養面のアドバイスをしたり、記事の監修をしたりすることが多いですね。

最近増えてきたのは、食品メーカーさんの営業のお手伝いです。岡山にある菓子メーカーの社長の方とつながる機会があり、東京営業のお手伝いをしています。そのメーカーは某航空会社の機内販売や機内サービス品も納めているので、私たちが商品企画をしたものも扱ってもらえるようになりました。この仕事は私たちの自信につながったので、今後も新しい商品をどんどん企画し、世の中に出していきたいですね。

──ちゃあみーでは、「想いをカタチにする」というコンセプトがあるとのことですが、これはどのようなイメージで考えられたのでしょう?

これは、倉田が強く思い入れをもっていたアイデアで、私も話を聞いていて共感したものです。倉田はもともと、人によく料理を振る舞うんですよね。私も、仕事が大変だったときなどに「今日はおつかれさま」と手作りの料理を食べさせてもらっています。

そういうときの想いってきちんと伝わるんです。食べた私はもちろん、きっと作った彼女も幸せな気持ちになれる。高校の頃は、母が毎日お弁当を作ってくれていて、特別な日にちょっと豪華なお弁当になっているだけで気持ちが暖かくなったことを思い出しました。食にはそういう力があると思っていて、私たちも想いをカタチにできるようなサービスや商品を作りたいと思っています。

フードコーディネーター倉田さんと管理栄養士の峰さんで活動するお料理ユニット「ちゃあみー」

──たしかに、同じメニューであっても、手づくりのものは違いますよね。

今はデジタルなコミュニケーションが普通になっていますが、あえてアナログな方法を使うことで、より深く想いを伝えられるのかもしれませんね。なにより、コミュニケーションがうまくいくと思います。

そういえば、私の実家では、必ず家族全員が揃わないと食事をはじめられなかったんです。テレビも消して、食卓を囲みながらそれぞれの日常について自然と話をしていました。今は結婚しているので、実家の家族と食事をする機会は減りましたが、それでも時々食事をすると盛り上がりますし、それが人生の充実につながるのではないかな、と。

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正反対の性格の二人だから、うまくいく

──相方の倉田さんは現在シンガポールにいらっしゃるとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか?

シンガポールのチャンギ空港でお弁当を販売している会社から、商品開発の相談を受けたことがきっかけです。現地にいる社長から、「1年間手伝いに来て欲しい」と言われ、倉田が行くことになりました。

もちろん、それまで一緒に活動していたわけですから、簡単には決められません。ただ、将来を見据えて海外で仕事を経験するのは貴重な機会と考え、彼女はシンガポールで、私は国内で、それぞれ経験を積んでいくことに決めました。来年1月帰国の予定なので、そこからは彼女と一緒に会社を作るつもりです。

いまでも倉田とは頻繁に連絡を取り合っていますが、現地で学んだことについて聞いています。たとえば和食をシンガポールで提供するにしても、現地に合わせた味付けをしなくてはならないようで、そういう部分を実地で体験できているようですね。

──峰さんにとって、倉田さんはどういう存在なのでしょう。

倉田はフードコーディネーター、私は管理栄養士ということで専門分野が違いますが、それ以上に性格的にも全然違うタイプなんです(笑)。彼女はアイデアをすぐに行動に移せるタイプで、逆に私は客観的に考えて慎重に進めるタイプ。私が持っていないものを彼女が持っていると思いますし、逆の面もあると思います。それでいてお互いがリスペクトしあえているので、パートナーでいられるんでしょうね。

共通の友人からも、「二人は全然違うタイプだね」と言われることが多いですが、だからこそうまくいく面もあると思います。お互いに自分の領域についてはこだわりがあるので、似たもの同士だと、むしろうまくいかなかったかもしれません。

──最後に、今の働き方についてどのように感じられているかお聞かせください。

私は中学生の頃から管理栄養士を目指してきましたが、当時抱いていた仕事のイメージの枠を超えた仕事をできていると思います。管理栄養士がもつ知識を、病院や学校以外でも幅広く活用できているので、これからも管理栄養士の可能性や面白さを体現できるような働き方ができるといいな、と思いますね。

先ほどもお話しましたが、私たちは「想いをカタチにする」というコンセプトを大事にしていますので、これから想いが伝わるようなサービスを生み出していきます。レシピの開発や料理教室などを通じて、共感の輪をどんどん広げていきたいですね。

文・小林 義崇 写真・刑部友康
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