“飲食店なのに土日祝休み”を実現! 料理人が生み出した究極の「働き方」とは?

あなたはどんな生き方をしたいですか?今の働き方で実現できますか?

――今回ご紹介する柴田雄平さんが最も大切にするのは、「家族全員でご飯を食べる時間を持つ」こと。

それを叶えるため、飲食業界では珍しい「土日休みの店舗経営」をめざし、会社を興しました。その後も複数の会社を次々に設立。その軌跡をうかがい、「人生のビジョンを実現する働き方」を考えます。

プロフィール

柴田雄平(しばた・ゆうへい)

埼玉県の高校卒業後、調理師免許を取得。ベンチャー企業にて外食事業および商品開発、マーケティングを経験、大手企業のヒット商品開発に関わること多数。2013年onakasuita株式会社(以下onakasuita)を設立。土日祝日休みの外食事業および、企業マーケティング支援を展開している。2015年株式会社mannaka(以下mannaka)を設立。マーケティング/経営の事業戦略立案から企画・開発・広告・改善までを通貫した伴走型事業支援を行う。2018年株式会社tilde設立。株式会社utuwa取締役就任。一般社団法人Papa to Childrenを共同設立。株式会社ふたつぶ顧問相談役。現在32歳、2児のパパ歴3歳6カ月。

「家族がそろってご飯を食べられる働き方がいい」
――ヨーロッパでの料理武者修行中に得た確固たる人生観

――どうして「家族そろってご飯」にこだわりをお持ちなのですか?

中学のときから、妹とほぼ2人暮らしだったからかな。

離婚で母親はいないし、父親は仕事が忙しくて全然家にいない。だから料理はお弁当含めて全部僕がやりました。外食もめちゃくちゃ利用したけど、すぐに飽きちゃって。それで料理に目覚めて、卒業後、調理師免許を取ったんです。

――それはとても大変でしたね。

うちは極端にしても、日本ではご飯時、たいていお父さんがいない、お母さんがいない、と全員そろわないことが多いですよね。でも、僕が料理の武者修行に行ったヨーロッパで会った家庭では、お父さんがちゃんと食事時にいるんですよ。朝、子どもが登校するのを見送ってから仕事に行ったと思ったら、昼もいる(笑)。いったん帰ってくるんですね。それで子どもが遊びやら習い事やら学校やらから帰ってきて夕飯になったら、そこにもちゃんといる。「なんなんだ?!」って思いました(笑)

――忙しくて全然家にいらっしゃらないお父様と、食事ごとに家にいられるヨーロッパのお父さんの働き方の違いに愕然となさったのですね。

半年で6か国周ったけど、どの国も家族で食事をする家庭ばかりで。文化の違いに驚きました。それで「なんのために仕事してんだ」って聞いたんですよ。そしたら「遊ぶためだ」って。「子どものため」「家族のため」ももちろんありましたけど、みんな「一番楽しいのは、俺だけどね」って。もうなんだかわからないけどすごく興奮しました(笑)

――すごく人生を楽しんでいる感じがしますね。

なんでそんな感覚で働いているんだろうって考えたら、チーズの酪農家、ワイナリー経営、ムール貝の養殖家など、みんな自分のスキルを活かしたスペシャリストだったんですよね。「生きるための武器」を持っているというか。

――柴田さんにとって、衝撃が大きい旅だったんですね。

彼らと一緒に鹿やうさぎを狩って食べることも経験し、「生きるために命をもらっている」と食に対する思いもいっそう強くなりました。本当に、海外の食文化や働き方を通して、人生観が大きく揺さぶられる旅でしたね。
帰国して「飲食業でも家族で食卓を囲めるような会社」を探したら、自分がイメージしたような会社はなかった。だから「ないなら作りたい」と思いました。

「7年後に1店舗、開けたい。できる限り学べて、1500万円貯金できる会社ですか?」
――人生のビジョンを実現するためのスキル獲得に奮闘

――帰国後に外食産業とマーケティングをしているベンチャー企業に就職なさっていますが、なぜですか?

スキルを身につけるためです。「飲食店経営」と「マーケティング」のスキル。
飲食業界で働いていても家族で食卓を囲めるように、「土日祝日休みの飲食店」を開こうと決めたんです。でも家賃が発生する中で、店舗を月の3分の1閉めるのは、どう考えても収支が合わない。だからその分を「飲食のマーケティング」をして補おうと思いました。

ただ、今の自分には圧倒的にスキルがない。そもそも、社会人としての経験もなかったんです。そこで20歳の時に、外食事業とマーケティングのベンチャー企業に入ろうと思いました。

入社の目的がはっきりしていたので、面接で社長に言っちゃってたんです。
「7年後に1店舗開けたいので、7年間で仕事を覚えられるだけ覚えたい。それに開店資金に必要な1500万円を貯金できる環境ですか?」って。

甘さは指摘されたものの情熱は認められたので、さらに最速で目的を達成する方法を聞くと部長になることだと。じゃあ、僕3年で部長になりますって宣言しました(笑)

――ビジネスマンとしての経験がない中で部長になるには、仕事と勉強に相当注力しなくてはいけなかったのでは?

僕はずっとバカだバカだ言われていたので(笑)“質”がないので、“量”をとっていくしかないんです。睡眠時間を限界まで削りながら、何とか勉強時間を作っていました。忙しく、なかなか本格的なマーケティングの勉強まで手が回らなかったのですが、現場であったことを、自分なりにマーティング的な視点から見直して、毎日ノートに書き込んでいたら、7年で70冊にもなりましたね。

――転機はいつ訪れましたか?

入社4年目、24歳の時に外食事業部で六本木や恵比寿でテナント展開のプロデュースを経験させてもらいました。この時に出したお店が流行って、「マーケティングのセンスがある」と評価してもらったんです。目標より1年遅れて、部長になることができました。

その後も、あるコンビニスイーツのプロュースに関わった時は、商品が爆発的にヒットし、外食事業全店舗の年間総売り上げの1.4倍という数字を叩き出したんです。マーケティングが持つ費用対効果や世の中への影響力の高さを目の当たりにして、さらにのめり込んで勉強しました。そうこうしているうち、大手の広告会社から声をかけていただくようになり、本業とはまた違ったwebとソーシャルのマーケティングも覚えることができました。

――外食産業ノウハウ、食に関するマーケティング、さらにwebとソーシャルのマーケティングに豊富な人脈。スキルばっちりですね。いよいよ独立をお考えに?

めでたく貯金もでき、さらにはお世話になっている会社の社長さんからのご支援もあり、2013年27歳で独立しました。飲食店経営と食に関するマーケティングの会社「onakasuita」設立です。

▲終始にこやかな柴田さんですが、肝心なところはきりっとした表情で伝えてくれます

家を手放してでも、手に入れたもの

――会社経営は順調でしたか?

始めは大変でしたね。もともとonakasuitaは、飲食店経営と、飲食店を土日祝日休みにする補填として食のマーケティングをやる予定でした。でもマーケティングってすごく時間をかけなきゃいけないし、お金になるのに最低3カ月くらいかかるんです。店舗の立ち上げと同時進行はとても無理。だから先に店舗運営だけやっていたんです。

そうこうしているうちに、早々に2店舗目出しちゃうんです。1店舗目出してからまだ半年、不足分を補う大事なマーケティングを始める前だったのですが、お世話になっている方から紹介してもらった候補物件がよかったんです。資金も足りなかったので、自分の家を売ってまでも2店舗目を持つべきかどうか選択を迫られ、「よし、家売ろう」と。
もともと忙しくて店に寝泊まりの状態だったのが、本格的に住む所がなくなったので、正式にお店に住むことになりました。

――翌年にはmannakaを設立なさいますね。こちらは、webとソーシャルのマーケティング会社ですか。

はい。前の仕事からのつながりで「webとソーシャルのマーケティングをやってくれ」というお声を複数いただいていたんです。でも、それをやるインフラもなく、揃えるだけの資金もない。そうしたらクライアントになる会社が、前金で半額出してくださったんです。それでmannakaを設立できました。onakasuitaは飲食業と食のマーティング、mannnakaは、企画・開発から広告まですべてやるマーケティング専門と、事業形態が全く違うので子会社ではなく別会社にしました。

――1年ちょっとの動きが激しいですね!どれもこれもでは手が足らなかったのでは?

嫁の渾身のサポートで仕事に集中できました。そのおかげで店舗も、なんとか軌道にのりました。店舗も「土日祝日休み」にできるくらい稼げるようになりましたし、自分の家も購入しました。

▲親の愛情に飢えていたと振り返る柴田さん。「ふつうに愛情を与えてやれる状況を作りたい。自分がしてもらえなかったことをやってやりたい」(本人提供写真)

「身近な人を幸せにする」というミッション

――「ブレない人生のビジョン」を持ってここまで進んできていらっしゃいますが、社員にもその考えは浸透しているのでしょうか?

そうですね。「自分が望む働き方ができるからこの会社を選んだ」という人が集まるようになりました。例えば、mannakaには独立志向が強いメンバーが集まっています。「mannnakaはステップアップとしか考えていないです」と言い切るくらい(笑)。

外食事業専門のonakasuitaと別会社にしたのは、こういう人をサポートできるから、というのもあるんです。個人として投資したり、会社として仕事を回したりできるから。援助されたくない!という猛者も多いですが、そういう場合はそっと放っておきます(笑)。ただ、自分の経験から「10年分の年収を考えろ」と伝えています。人のビジョンはそのときどきのステータスで変わります。自分自身のライフステージや、収入のない時期をどう乗り越えるのか、あらゆる可能性を考えて、一番いいと思う道を進んでほしい。

働き方ということでいえば、オフィスレスで完全在宅勤務だから選んだという人もいます。で、onakasuitaのほうは、独立なんて考えていない人が多い。

――「飲食業をやりたい人」ということでしょうか。

飲食業でかつ「土日祝日休みだから」と来てくれた人が多いです。onakasuita取締役は「結婚して子どもがいても、飲食業に携われる会社にしたい」というビジョンを持つ女性です。それだけワーママが飲食業で働くのは難しいんですよね。
役員は全員現場を離れており、リモートで経営を見たり、店舗整理をしたりしています。自分がモデルケースになろうとしている彼女は、奈良に住んでいながら東京の2つのお店を見ています。現在妊娠中で子どもが産まれたら夢がかなうので、次はステップアップして彼女に続く女性社員を育てていくことになります。

――社員ごとのビジョンをとても尊重なさっているのですね。

その人に合った会社、やりたいと思うことができる会社でありたいと思います。会社のリソースでできることがあれば、どんどんやる。個人のビジョンと向き合っていくと働き方に個性が出てくる。法人化して子会社にしたり、別会社にしたり、社員のやりたいことが一番いい状態でできる形態をつど取っていきます。

――とても面倒見がいいんですね!

「身近な人たち」を幸せにしたいというのは、僕のミッション(存在意義)なんです。家族、社員、クライアントさん、FBでつながる友人…。最近は、パパ同士のつながりの場を作るべく、社団法人Papa to Childrenを立ち上げました。多くのパパの悩みをみんなで解決しています。

――柴田さんも周りもとても幸せそうで、ミッション通りですね。

会社や働き方は、“生き方”という個人のビジョンを見つけることが重要だと僕は思っています。今の若い人は、今持っているスキルだけで何ができる、何ができない、と選択を狭めてしまっている。まずは自分がどう生きたいか。それがわかってから、実現のためにどうやってスキルを手に入れるか考えればいいんです。

▲取引会社とのミーティングに娘さんを連れて行くこともあります。「子連れ会議NGの会社とは取引しなくてもいいと思っています!」(本人提供写真)

明確に人生のビジョンを持ち、絶対にブレない柴田さん。

「もし、今あなたにビジョンがなければ、自分は何が好きか、どういう時に笑うのか、自分の“好き”や“幸せ”を徹底的に掘り下げてみるといい。」と教えてくれました。

確固たるライフビジョンを持つことが明日への一歩になりそうですね。

文:Loco共感編集部 杉本雅美

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