母業休暇のススメ~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム

仕事が終わってからも、家事に育児にと時間に追われ、気づくと寝落ちの日々…。家事も育児も積極的に行う男性も増えてきたとはいえ、「家庭のことは女性」という認識はまだ根深く、共働き妻の悩みは尽きません。そんな女性たちを応援するこの連載。女性のキャリア支援や結婚コンサルタントまで幅広く活躍中の川崎貴子さんから、家族を「チーム」としてとらえ、より効率的に日々を運営していくアドバイスをいただきます。

子どもと過ごす日々の中で迫られる、大小さまざまな選択と決断。その都度、悩んだり不安になったり。消耗するのは体力だけではありません。今回は「24時間戦えません!」という妻たちに向けて、積極的に母業休暇をとる方法を教えていただきました。

以前、SNSで多くのお母さんたちが「あるある」と言いながらシェアしていた「名画で学ぶ主婦業」。私もあまりの共感に笑いが抑えきれませんでした。(電車で見るのは止めましょう!)
そして、改めて思ったものです。

日本の母業、主婦業は大変だな、と。

母業…それは、終わりの見えない日本一ブラックな仕事。
さらに他に仕事を持つ共働き妻は、皆、魂を削られるぐらい目まぐるしい毎日を送っておられます。
長女が通っていた保育園はバリキャリママが多く、仕事の電話をしながら子どもをがーっと引き取って、ママ同士のあいさつも小走りですれ違い様のみ。一分一秒も惜しいというママたちの疾走が印象的な場所でした。そして、皆一様に心配なほど疲れていたのでした。

母業=肉体労働+頭脳労働+感情労働のトリプルコンボ

母業の何が大変って、「これだけやっておけばいい」という決まったタスクや時間的制限がなく、次々に起こる事象に臨機応変に対応していかなければならない点です。要は頭も体も疲れるんですよね。それがまた、子育てという「責任」を伴いながら。
おまけに、母業は究極に「感情労働者」でもあると言えます。

感情労働とは
アメリカの社会学者A.R.ホックシールドが提唱した働き方の概念。
感情の抑制や緊張などが不可欠な労働のこと。
つねに自分の感情をコントロールし、相手に合わせた言葉や態度で応対することが求められる。代表的な職種としては、客室乗務員、営業マン、教師、看護師、カウンセラーなど。

感情労働従事者は、個人の感情を殺して職業のイメージを全うする事が多く、上手くストレスを解消しないと「燃え尽き症候群」に陥る事があります。
母業はまさに、
「子どもの前でイライラしてはいけない」とか「お母さんはいつも笑顔でいなければ」などのイメージや制約が多い仕事なのです。

「ブラック家庭」から「ホワイト家庭」へ

燃え尽き症候群に陥ると、すべてのやる気がなくなり、内にこもり、人付き合いができなくなったりしてしまうケースも。
また、慢性的な疲れは精神か体のどちらかに表れます。
子育ては子どもたちが大きくなるにつれて年々ラクになるとはいえ、私たちの体力や免疫力だって年々低下しているのを忘れてはいけません。
ブラック企業は辞めれば済みますが、母業は逃げられません。
「もう、疲れた」とプツリと緊張の糸が切れる前に、大ナタを振るって「我が家の母業」を「ホワイト家庭化」させる必要があります。

私自身、夫が忙しくなったタイミングで、会社経営と他3社の取締役、月に8本の執筆連載、他講演や取材をてんこ盛りに入れた上に、育児と家事を回す生活を4年程続けました。実母に手伝ってもらいながらもすべての仕事を分刻みで終らせなければならず、いつも何かに追われているような毎日でした。

そして、乳がんが発覚します。
4年間、自分が頑張れば何とかなると思ってきたけれど、「私が死んだら意味がない」ということにやっと気づきました。
家族が一番困る未来を作ろうとしていた自分に愕然としたのです。

休むことも仕事のうち

乳がん発覚後、私は仕事を減らし、PTAや学校行事はすべて夫に丸投げすることに。そして、週に1日の「完全休暇」と「ジム通い」を決めました。
そもそも、昔(長女や次女が赤ちゃんだったころ)は、「子育て目標:絶対に死なせない」くらいのいい加減なものでした。それが、彼女たちが大きくなるに従って、食育だの勉強だの習い事だのと、「より良く育ってほしい熱」がむくむくと沸いてきて、その想いを全うすべく母業に上乗せし、結果的に自らの健康のことまで気が回らなくなっていたな、と後にいたく反省したのでした。

今では毎日22時になると「本日の母業は終了いたしました」と言って看板を下ろしています。すると、長女はテスト前など自分で夜食を作って食べ、洗いものまでするようになり、おかげで夫と話す時間も増え、連絡ミスも減り、みんな普通に機嫌よく過ごしているじゃありませんか。結果的に私が休んだ方が家庭は上手く回っているのです!

他にも行った我が家流「ホワイト家庭化」計画を以下にシェア致します。

1. 「母業を休む」ことは「大事な仕事」と割り切るべし
2. 「休暇中の母は何もしない」という認識を家族全員に徹底するべし
3. 頼れるサポート(ファミリーサポート、病児保育、友人、親戚)を準備しておくべし
4. 夫とスケジュール共有&タスク分担を1カ月前から準備すべし
5. 夫や子どもにやってもらいたいことは「具体的」にお願いするべし
6. 週に3回は外食orデリバリーデーにするべし
7. 料理をする時はまとめて作り置きするべし
8. 今日しなくていい事は明日以降にするべし
9. ONとOFFを切り替えるスイッチを自分に作るべし
10. 愚痴を言える相手を確保するべし

 

時折、世間も自分も「昔から言われ続けている理想の母親像」を我々に突き付けてきます。しかし、「理想の母親」なんて皆が描いている虚像で、今を生きる私たちはそういうものに振り回されちゃいけないのではないか、と今回思いました。そろそろ時代に即した自分なりの「快適にバージョンアップした母業」を模索せねばならないと。
そして、私おかあさんだから…という自己犠牲を愛とイコールにしてしまうのも、やみくもに自分の夢を子どもに託してしまうのも、子どもには害でしかないと私は思います。

とはいえ、子育ては修行のような側面もあり、私はこれからも「母親というペルソナ」を被り続ける事でしょう。そうだとしても、精神も肉体も健康でご機嫌に自分の人生を生きている母の姿を子どもたちに見せていきたいと思っています。

川崎 貴子

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リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

イラスト:かしえみ

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