職場にいる「やりづらい人」とどう付き合えばいいのか?――経営・組織コンサルタント×リクナビNEXT編集長対談<前編>

職場の上司や同僚に「どうもやりづらい」「噛み合わない」人がいる――そう感じている人は多いことでしょう。「実はそのやりづらさは、理論的に説明が付く」と語るのは、『職場の「やりづらい人」を動かす技術』の著者であるプリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役・秋山 進氏。

やりづらいと感じるのはなぜか、どうすればうまく協業していけるのかについて、秋山氏と藤井薫「リクナビNEXT」編集長に語ってもらいました。

プロフィール

秋山進(あきやま・すすむ)<写真左>

プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役。リクルートに入社後、事業企画に携わる。独立し、経営・組織コンサルタントとして企業の事業構造改革等に従事。現在はグループ代表として、経営リスク診断、組織設計、幹部人材育成等に携わる。著書:「社長が将来役員にしたい人」(日本能率マネジメントセンター)、「一体感が会社を潰す」(PHP新書)、「社長!それは「法律」問題です」(共著:日本経済新聞社)など。

藤井 薫(ふじい・かおる)<写真右>

「リクナビNEXT」編集長。1988年にリクルート入社後、人材事業の企画とメディアプロデュースに従事し、TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長などを歴任する。2007年からリクルート経営コンピタンス研究所に携わり、14年からリクルートワークス研究所Works兼務。2016年4月、リクナビNEXT編集長就任。リクルート経営コンピタンス研究所兼務。

「視点」「思考」「行動」によって、人は8つのタイプに分けられる

―まずは、職場にいる「やりづらい人」とはどんな人か。秋山氏が例示する人物タイプに、藤井編集長が命名しました。

閉店ガラガラ狭門家

「その仕事、私の担当じゃないんで」「それ私の専門外なんで」と言って、自分の担当や専門分野から一歩も外に出ない人

ロジカル・オンリーロンリー

「ソースは?」「エビデンスは?」とファクトやロジックしか受け付けない人

コンビニエンス・プロフェッショナル

「私は何をすればいいんでしょうか?言ってくれれば進めますよ」という人

他にも、「世界や他社に比べてうちの会社は遅れている!」と嘆くばかりの人、非現実的な夢や理想論ばかり語る人、意思決定はするものの現場での遂行に一切関与しない人……など、それぞれに「絡みづらい」と感じる人がいると思います。なぜ、違和感を覚えてしまうのでしょうか。

秋山氏(以下、秋山) 「やりづらい」と感じるのは、そもそも自分と「タイプ」が合っていないから。ビジネスパーソンは「視点の持ち方」「思考のパターン」「行動の重点」という観点でタイプ分類することができます

さらに、この3つの軸×2タイプをもとに、8種類のタイプに分けることができます。

タイプ診断テスト(タイプを知るための30の質問)については別記事にて掲載をしております。ぜひ試してみてください。

1.想像力ゆたかな小説家(ミクロ×直観意味×WHAT

自分なりの視点で物事を見つめ、あれこれ考え、オリジナルでユニークな結論を出すことを好む人。直感にすぐれたアイデアマンだが、視野の狭い独りよがりな人と思われがち。

2.創意工夫の技能者(ミクロ×直観意味×HOW

自分なりに工夫を凝らしたユニークなアプローチで、目標達成や課題解決に臨むことを好む人。結果にこだわる独創的な仕事人。興味のないことには頑張れない人とも思われている。

3.現実を見抜く観察者(ミクロ×事実論理×WHAT

自分の見聞きしたことをデータと照らし合わせてみて、単なる体験以上の普遍的な原理原則を発見したいと思う人。仮説検証のプロだが、目に見えないものは見落としがち。

4.頼りになる実務家(ミクロ×事実論理×HOW

自分の体験とデータをもとに見つけた法則を活かしながら、目標や課題に向かって絶えず行動する人。PDCAの権化のようなタイプ。チャレンジ精神の低い人と思われることも。

5.時代を感じる評論家(マクロ×直観意味×WHAT

自分なりの見方で世界を眺め、それをもって「大きな話」をすることを好む人。物知りなご意見番だが、批判することばかりに長けた「口だけの人」と思われがち。

6.未来を創る革新者(マクロ×直観意味×HOW

広くユニークな視点で世界を眺め、イノベーションの芽を探し出そうとする人。新規事業などについて超高感度のセンサーを持つ。浮世離れした人と思われることも。

7.正しさを求めるコンサルタント(マクロ×事実論理×WHAT

データやロジックをもとに「そもそも論」や「あるべき論」を語る人。すぐにホワイトボードに図やグラフを描いて説明する。現場感覚の薄い、使えない意見を言う人という印象も与える。

8.実現を目指す政治家(マクロ×事実論理×HOW

データやロジックを通して世界を眺め、納得感の高い解決策を考え、実行できる人。ビジネスの具体的な方向性を定める推進役だが、「的外れなデータに振り回される人」になることも。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

自分と相手のタイプを理解すれば、会話の糸口が見えてくる

――お2人はどのタイプで、これまでの人との関わりでどんな経験をされてきましたか。

藤井編集長(以下、藤井) 僕は「5.時代を感じる評論家」タイプなんです。視点はマクロで、もともと宇宙・生命・人類などの学問が好きですし、時間軸も「100年」単位で考える。だから「遍執長」なんて呼ばれますよ。思考は直感意味的なので、深層心理や隠されたニーズを洞察するのが好きですね。「WHAT」重視なので、「存在価値」「あるべき姿」に常に考えを巡らせているタイプです。

秋山 藤井さんは、ハイレベルな抽象的思考をする人とすごく話が合うでしょうね。彼らが創造したものに対し、その意義や価値、世の中に与えた影響を理解できるから。一方、相性が良くないのは、ミクロにこだわる人や実行収束のほうから物事を考えるタイプ。編集長という立場だと、現場で制作している「技能者」を統括するから、しんどかったんじゃない?技能者は自分の感覚で行動して成果を出そうとしているでしょう。それに対して、評論家である藤井さんは幅広い事象やニュースなどの情報から大きな視点で考えているから。

藤井 締切りまで時間がない状況でも、つい「そもそも論」を語っちゃいますからね。編集の世界観とは、存在価値とは、って(笑)。譲る部分、譲れない部分のせめぎ合いはありますよね。

秋山  僕はもともと「7.正しさを求めるコンサルタント」です。行動は「WHAT」重視タイプ。「HOW」を考えるのは本当に苦手です。実現のために具体的に何をするかとか、スケジュールをどう立てるとか、全く興味がないし、やりたくない。でも、必要に迫られて「(どうにか)やればできる」レベルまでどうにか辿りつきましたけど。というのも、僕がリクルートにいた頃は、周りのメンバーは「HOW」に長けた人が多く、「WHAT」的な大枠を考えて「こんな感じでよろしく」と渡したらあっという間に形になった。ところが、11年いたリクルートを辞めてメーカーやインフラ系の仕事を始めたら、「よろしく」だけでは何も進まないんですよ。「HOW」の複雑性と難易度がリクルートよりも格段に高い。だから、自分も「HOW」に習熟するしかなくて、一生懸命努力しました。

藤井 周囲は「WHAT」タイプばかりだったんですね。メーカーの研究者や技術者は「3.現実を見抜く観察者(ミクロ×事実論理×WHAT)」タイプが多いんじゃないですか。高度な専門領域を持っていて、その道のプロフェッショナルとしての誇りがあるゆえに、他の領域に対しては関心が低くなることがあるかもしれませんね。それが別のタイプから見ると「閉店ガラガラ狭門家」と捉えられたりしますが。

秋山 確かに「ミクロ」の差異を重視する人が多かった。例えば、文系視点で見れば「化学でしょ」なのだけど、彼らにとって「有機」か「無機」かではまったく異なるし、思考から何からかなり違うことなんです。それを認識せず土足で踏み込むと、一瞬でシャッターを下ろされる。「あなた分かってないね」と。そんなわけで、あまり馴染みのないタイプに囲まれてみて、その人の本質をつかみ損ねるとボタンが掛からなくなることを痛感した。そこで、「ミクロ視点かマクロ視点か」「事実論理ベースの人か直感意味ベースの人か」といったことを分類・体系化してみたんです。さらに、各タイプの相性の良し悪しを整理して、この本が出来上がりました。

藤井 この「タイプどうしの相性一覧」を参考にして、相性の悪いを克服し、いい方向へ転換しよう、ということですね。

秋山 まずは、自分のタイプを知る。そして、相手のタイプを知る。それぞれの思考や行動の「クセ」を理解することが必要です。その上で、相手との建設的な会話方法を知ることが大切ですね。

藤井 秋山さんは、苦手なタイプの方々とどんな会話を心がけたんですか。

秋山 さきほどの話で言えば、最初から「あなた化学の専門家でしょ」ではシャッターを下ろされるけど、「化学もいろいろあるんだと思いますが、どの領域ですか。あぁ、Aですか。AというとBとどう違うんですか」と聞く。「私は有機と無機の違いもよくわかっていないので、すみません、教えてください」と。そうするとちゃんと説明してくれるんです。そんな最初の一声のかけ方で、その後の関係がまったく変わってくるんですよ。あとは、例えば「最適化の範囲を広げよう」となったとき、自分で勝手に計算しないで「あなたの領域ではどんな影響を受けますか?」とたずねる。そうするとシミュレーションをしてくれるので、それをふまえて「どう変えてほしいのか」を仮説として提示する。話を持っていく順番に少し気を使うだけで、動いてくれるレベルがぐんと変わるというのは、たくさん経験しましたね。

藤井 そこから、タイプ別に「建設的な会話」の組み立て方を整理していかれたんですね。

タイプ診断テスト(タイプを知るための30の質問)については別記事にて掲載をしております。ぜひ試してみてください。

後編へ続く

参考図書

『職場の「やりづらい人」を動かす技術』

著者:秋山 進

出版社:株式会社KADOKAWA

EDIT&WRITING:青木 典子 撮影:平山 諭
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