【シゴト悩み相談室】営業になって2年目、仕事に活かせる人脈が作りたいけれど…

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩み相談を、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

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曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。

CASE2:「仕事に活かせる有益な人脈が作りたい」(23歳男性・専門商社勤務)

<相談内容>
新卒で今の会社に入社し、営業職に就いて2年目です。

デキるビジネスパーソンたるもの、仕事に活かせる人脈が必要だ!といろいろな異業種交流パーティーに出向いていますが、もともとは引っ込み思案であるうえ、どういう切り口で話を広げればいいかいつも悩んでしまいます。結果、社外人脈はいまだ広がらず…。

どんな話をすれば、人脈は広がりますか?また、どういう交流会に出向けば人脈が築けるのか、アドバイスください!

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■不特定多数の人が集まるパーティーで、果たして有益な人脈が築けるか?

 この方が求めている「仕事に活かせるいい人脈」とは、仕事の案件や、有益な情報、役立つ人物などを紹介し合える人脈を指しているのだろうと想像します。このような人脈を築きたいならば、いわゆる「異業種交流パーティー」の類のものに参加するよりも、別の方法を考えたほうがいいと私は思います。

 私も過去、この手のパーティーに参加したことがありますが、この場が有益な人脈につながるかと言われると、少々懐疑的です。

 何十人、場合によっては何百人もの人が集まる交流会は、相手との共有の話題が見つけにくく、頑張って話しかけたところで雑談レベルにとどまりがちです。また、あなたのように「自分にメリットのある人脈がほしい」と臨む人が多いため、目の前の人を今、活かせるかどうかで判断しようとしてしまい、結果的に「つながっておくべきか判断できない」で終わるケースが多いのです。もちろん、そこでのつながりをフックに交流を重ね、共通点を見つけて深掘りするという方法はありますが、時間もパワーもかかります。

 そこでお勧めしたいのは、異業種交流パーティーの“逆を張る”方法です。

■STEP1:大勢が集まるパーティーではなく、少人数の集まりのほうが効果的

 人と人との信頼関係を支えているのは、「共感性」です。自分と同じ考えを持った人、同じ体験をした人などに、人は共感しやすく、信頼関係も築きやすくなります。

 そして、その共感のタネが深ければ深いほど、信頼関係はより強固になります。例えば、仕事での失敗談や、抱えている不安、悩みなど。もちろんプライベートなことでも構いません。一例ですが、初めて会った人に「子どものころ転校が多く、昔からの友人が少ないのがコンプレックスで、大人になった今、改めて多方面に友人がほしいと思っているんだ」などと言われたとします。あなたに転校経験があり、新しい環境になじむのに苦労した経験があるならば、俄然その相手に共感しますよね。例えばこういうことです。

 深い共感を得る・与えるには、ネガティブな要素も含め、お互いの深い部分をある程度さらす必要があります。しかし、大勢が集まる交流会で、そんな話はしにくいですよね。少人数のほうが、ぶっちゃけた話がしやすいはずです。

■STEP2:自分の中にある「希少価値の高いもの」をテーマに、参加する会を選ぶ

 少人数の集まり…と言われても、どんな会に参加すればいいのかピンとこない人もいるでしょう。

 お勧めしたいのは、「希少価値のある属性のコミュニティ」。不特定多数が集まらず、結束力が高まりやすいからです。自分の中の「希少性」をぜひ、探してみてください。

 どんなものでもいいのです。例えばですが、「東京在住のカープファン」とか、「ハーレーダビッドソン愛好家」とか、「○○県出身の県人会コミュニティ」などもいいかもしれません。手軽なところでは、「地元の人ばかりが集まるバー」なども一つの選択肢。“地元”という希少性が、客同士の結束力を高めてくれるはずです。

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■STEP3:くれぐれも、「目の前の人」を仕事で利用しようと思わないこと

「人脈を作りたい!」と躍起になっている人にありがちなのが、「目の前の人脈をどうビジネスにつなげるか」ばかり考え、失敗するパターン。せっかく信頼関係を築けたのに、その人相手に自社商品を思い切り営業してしまう人っていますよね。相手としては、「え?せっかく同じ趣味を持つ信頼できる友人が見つかったと思ったのに…オレのこと、営業対象として見ていたの!?」と一気に引いてしまいます。

 実は、「仕事に有益な人脈」は、目の前にいる同一コミュニティの人の「周辺」に存在します。

 参加コミュニティの中では、くれぐれも「ここでのつながりを仕事に役立てよう」とギラギラしないこと。カープファンならカープの話をメインに盛り上がるべきです。その中でお互いに気心が知れ、強固な信頼関係が築ければ、いざというときにその人脈が力になってくれるはずです。

 新しいビジネスを考えているけれど、周りに知見がある人がいない…今季のカープの戦績について話すかたわら、こんな悩みを話したら、「自分にはその知識はないけれど、そういえばあいつはその分野に詳しかったよな…」などと、友達の顔を思い浮かべてくれるかもしれません。即戦力となるWebデザイナーを採用したいけれど、どうやって探せばいいかわからない…とこぼしたら、「前職で一緒だったデザイナーの鈴木さん、そういえば会社辞めたいって言っていたなぁ」と思い出してくれるかもしれません。

 これこそが「正しい人脈」だと私は思います。あの人だったら信頼できるから、この仕事を紹介しよう。あの人が真剣に人を探しているなら、私の知り合いを紹介しよう――自然にそう思い合えるような、信頼できる関係をぜひ築いてください。

 私が参加しているコミュニティに「ベンチャー人事の会」というものがあるのですが、ここは本当に結束力が高いんですよ。設立間もないベンチャー企業の人事って、だいたい社に1人だけ。マイノリティ(社会的少数派)感が強いうえに、採用の難しさや未整備の人事制度の構築方法など、同じような悩みや課題を抱えているので、共感値が異様に高いんですよね。だからこそ、「知り合いの会社が困っていたから、曽和さんの会社を紹介したいんだけど、どうかな?」など新しい仕事を紹介いただいたり、人手が足りなくて困っているときに知り合いを紹介いただくなど、ここの人脈に本当に助けられています。

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 ちなみに、社外人脈を築くことばかりに目が行っているようですが、「社内人脈」こそ大事にすべきだと思いますよ。

 同期と悩みや不安を共有し合った経験、同じ部署の仲間と苦楽を共にした経験、タフなプロジェクトに配属されたメンバー同士で一致団結した経験は、非常に稀有であり、濃い関係性も作りやすいです。

 今の時代、1つの会社で定年まで勤め上げる人は少なくなってきています。社内で濃密な絆を築ければ、転職や独立などを機に、すばらしい人脈が社外でどんどん広がっていくでしょう。

<アドバイスまとめ>

異業種交流パーティーにお金を落とすよりも、趣味や仕事などの「少人数のコミュニティ」に参加して信頼できる人間関係を作るべし。そうすればいつか、その仲間たちが仕事でもあなたの力になってくれる。

>>『シゴト悩み相談室』バックナンバー

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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