【BMW・ダイエー・日産の元経営者】林文子横浜市長「“寄り添う感性”や“受容力”は女性の強み」

女性の社会進出支援が活発化している横浜市で11月9日(日)、「女性のチカラが横浜を元気にする」と題した『横浜ウーマンビジネスフェスタ2014』が行われた。

横浜で活躍する女性経営者たちが実行委員を務める同イベントは、昨年に続き2度目の開催。横浜市内の女性起業家による出展スペースやプレゼンテーションの機会が設けられ、多くの女性起業家・経営者・起業を目指す女性たちが集まった。
午後からは林文子市長の特別講演を開催。親子連れも目立つなか、参加者たちは、日本を代表する女性リーダーの豊かな経験に裏づけされた、ビジネスシーンにおける女性視点の強みについて聞き入った。

4社の大企業の経営者を経て、横浜市長、指定都市市長会長に就任

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 林市長は、横浜市長に就任する以前は、ファーレン東京(現フォルクスワーゲンジャパン)、BMW東京、ダイエー、日産自動車と、4社の経営者を歴任してきたスーパーキャリアウーマンとしてよく知られている。『部下を「お客さま」だと思えば9割の仕事はうまくいく』(KADOKAWA/中経出版)(参考記事)など数多くの経営やマネジメントに関わる著書があり、“命令しないマネジメント”で部下をやる気にさせるリーダーシップには定評がある。

林市長は、2009年の横浜市長選挙以来、「待機児童ゼロ」を公約に掲げており、全国の地方自治体の中でもとりわけ早くから女性の社会進出支援や子育て支援に力を入れてきた。自身のキャリアパスと重ね合わせながら、「政府・内閣府が女性の活躍推進を、公の場でこれほどはっきりとおっしゃっていただける時代がくるとは、夢を見ている気がします」と言及した。

昨年末、林市長は全国20の政令市の市長でつくる指定都市市長会議で次期会長選に立候補し、選挙により選出された。現在、政令市の女性市長は、林市長と、仙台市の奥山恵美子市長のふたりだけ。約1800ある地方自治体のなかで、地方公務員管理職に占める女性の割合(平成25年調べ)も、都道府県6.8%、政令指定都市11.3%、市区12.4%、町村11.4%と、増加傾向にあるとはいえ、その比率はまだまだ低い。それを象徴しているような「男性18人:女性2人」の指定都市市長会で、会長に選ばれたことは「時代が変わった。男性・女性という境目がなくなった」とより強く感じる機会だったという。

女性の強みは、寄り添う感性、そして包容力

林市長が長年携わってきた自動車・流通・小売業界は、特に男性の割合が多い業種といえる。「男性は戦友であり、いろいろな方に育てていただいた」と前置きをしつつも、「(男性だらけの職場に)身を置いているときは、苦しくもありました」と当時を振り返る。その主たる理由として、男性と女性では、ウマが合う・合わない等も含め、もともとの感性が違うことを指摘する。

中でも営業の核となる“おもてなし”には、その性差が顕著に出やすいと指摘。女性は相手の立場にエモーショナルに寄り添おうとするが、男性は、シャイで、バリアを張る傾向が強い。販売員として働いていた頃、男性上司から「そこまで頭を下げる必要はない。こちらはよいものを売っているのだから、もっと堂々としていなさい」と注意され、その感覚の違いに悩んでも、周囲に相談できる女性がほとんどおらず、ひとりで苦しむ時間が長かったと打ち明けた。
けれど、その感性こそ、林市長の営業スタイルの強みとなり、多くの顧客に恵まれるように。結果的に、4社の企業から経営者としてスカウトされ、そのリーダーシップの手腕を認められて現在に至る。「“寄り添う感性”や“受容力”は女性の強み。性差があっていいんです。男性、女性、それぞれの持ち味を生かしていくことが大切」と語った。

男性も、仕事に後ろ髪ひかれることなく新生児を抱き上げる喜びを

また、自身の公約である「待機児童ゼロ」についても言及。少子高齢化が進むなか、日本の労働生産人口が必然的に減少していくことは周知の事実だ。女性が持っている潜在能力を生かすことは、国力を保つためにも大きな課題であり、「政府も自治体も企業も皆が本気でそう考えている」と林市長。女性の社会進出を推進するためには、単に保育施設を増やせばよいというものではなく、男性にも等しく子育てを経験してもらう社会づくりを行わなければならない。しかしながら、男性は慣習的に「仕事を休んではならない」と感じてしまう傾向にあり、育児休暇制度を設けても、それを使わない人が多数を占める。そこで、ある自治体は、男性職員の家庭に子どもが産まれる場合は、少なくとも3日間は仕事を休むように、男性職員全員に“強制”することにしているという。こうすることで、新生児が誕生した際は、男性職員も後ろ髪をひかれることなく、赤ん坊をおもいっきり抱きしめて過ごすことができる。「育児にも仕事にも、よりやりがいを見出せるすばらしい制度」と林市長は評価した。

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理想の社会を築くため、自治体、企業の垣根なくタッグを組む

現在、横浜では、執務スペースや打合せの場所の確保に悩む創業期の女性起業家のための会員制シェアオフィス 「F-SUSよこはま」、 店舗運営を目指す女性起業家が、専門家からのアドバイスを受けながら試験的に店舗運営を行う施設「Crea’s Market」、女性おうえん資金(女性起業家支援)など、女性起業家を育成するためのさまざまな支援を行っている。これらの仕組みを使って、これまで50人以上が起業。中でも先月から始まったばかりの「Crea’s Market」は、実際に店舗を運営しながらお客様と接してみて、相場が分かっていくと利用者からの評判も上々だ。
こういった横浜市のさまざまな取り組みを支えている縁の下の力持ちが、市の職員である。「公約は守らなければならないものであり、市長が掲げた『待機児童ゼロ』という公約を実現化できなければ大変です。そのために、モチベートされた市の職員たちが、日々奮闘し、地道な努力をものすごく積み重ねてくれています。公務員が批判された時期がありましたが、横浜市の職員の皆さんは本当に有能で、よく助けていただいています。理想の社会を築き上げるためには、市民、公務員、自治体、企業の垣根なく、皆が一丸となってタッグを組むことが大切です」と強調した。
「日本の女性進出が先進諸国の中ではあり得ないほど著しく遅れているのは事実です。だからといって、過去の日本のあり方を否定する必要はありません。それよりも女性視点をいかにこれからビジネスの場に活用できるかを考えましょう。細かいところに目が届き、優しく、生活を守ることに長けている。それらは女性が持つ大きな力です。また、生活の実体験の中からアイデアを放出し、表現する能力に長けています。私が企業で働いていたころは、男性が本当に多かったので、同性の相談相手がいませんでした。それが本当に苦しかった。なので、皆さんには、こういう場を通じてネットワークを広げていただき、大いにコミュニケーションをとり、相談しあっていただきたい」と締めくくった。

取材・文・撮影:山葵夕子

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