「まずは私が動く」「私が前例を作る」 さまざまな反対を乗り越えて働き方を改革した1人の女性社員
ワークスアイディ株式会社
「まずは私が動く」「私が前例を作る」 さまざまな反対を乗り越えて働き方を改革した1人の女性社員
ワークスアイディ株式会社「社内で新しいことを始めようとすれば、反対する人も出てきます。そんなときは『まず自分がやってみる』ことを大切にしてきました。当事者として小さく始め、必要なノウハウを蓄積しながら、少しずつ状況を変えてきました」
ワークスアイディの朝比奈 一紗さん(HRS事業本部 HRSマーケティング室 室長)は、これまでの歩みをそう振り返る。女性社員が次々と退職する状況に疑問を抱いて、派遣会社では常識とされていた手法を変えることに挑んだ。自身の結婚・出産を経て、現在は女性が中心となって活躍するチームを率いている。
これは、どんなに周囲に反対されてもあきらめることなく、社内へ新たな働き方を発信し続けてきた女性社員のストーリー。
朝比奈さんは約10年前、25歳でワークスアイディに入社した。当時は「バリバリ働くことしか考えていなかった」という。長時間労働も厭わずに仕事にのめり込んでいった。
創業メンバーの1人である倉岡 伸輔さん(執行役員 HRS事業本部長)は、朝比奈さんが入社したころを振り返って「子育てをしながら働けるような会社ではなかった」と話す。
「20代の男性ばかりで立ち上げ、結婚や出産という概念に疎いまま会社が大きくなっていきました。女性社員が次々と辞めていっても、問題として明確に認識していなかったと思います」(倉岡さん)
事実、朝比奈さんの先輩女性社員も次々と会社を去っていった。
「女性社員が退職する背景には、『この環境で働いていても結婚がイメージできない』『産休・育休などの制度はあっても活用できないのでは』という懸念があったのだと思います」(朝比奈さん)
問題の一端は、派遣会社ならではの多忙な業務にあった。1人の社員が求職者・求人企業双方と向き合い、膨大な量の業務をこなさなければならない。ノウハウは属人化しがちで、業務の分担や改善はなかなか進まなかった。
大きな課題の一つが「求職者との面談」だったという。
かつては、派遣スタッフの募集をしてコーディネーターが面談日時に待っていても「ドタキャン」が多い現状があった。天候によっては来社率が50%程度となることも。そこで朝比奈さんは「電話面談」の導入を考えるようになった。
「この状況は自社のスタッフにとっても負担ですが、登録しようとする方にとっても負担だと思ったんです。交通費と時間をかけて登録会場に来ても、必ず望む仕事があるとは限りません。それなら登録は電話で済ませ、実際に仕事を始める際に会えばいいのではないかと考えました」(朝比奈さん)
コロナ禍を経験した今なら、リモート面談という手法を当たり前に感じるかもしれない。しかし2015年当時、派遣業界では大手も含め、リモート面談を実施している企業はほとんどなかった。
しかし、社内からは反対意見も寄せられた。
「従来は直接会って面談していたのに、電話で済ませるなんて失礼では? という意見もありました。そこで、最初はコーディネーターにお願いするのではなく、『私が電話面談をやります!』と宣言し、上司である倉岡さんの許可をもらって進めていきました。今までのやり方をガラリと変えろと言われて、不愉快に思う気持ちはよく分かります。だから、まずは自分でやってみるしかないと思ったんです」(朝比奈さん)
30分に1人のペースでスケジュールを組み、1日で15〜16人と面談することもあった。1カ月の電話面談件数は約300人となった。
「実際にやってみると、先方の反応はとてもよかったんです。働く上での希望は、かしこまった面談の場ではなくても、電話でしっかり伝えられるのだとご理解いただきました。そうして関係性を作り、コーディネーターに引き継いでいきました。コーディネーターとしては、紹介できる登録者が増えることをマイナスに感じるはずはありません。結果を出したことで電話面談の取り組みが広がっていき、対面時のようなドタキャン率はほぼゼロになりました」(朝比奈さん)
それまでのワークスアイディには、子育て中の時短社員が担当できる仕事はほとんどなかった。しかし電話面談なら、あらかじめ自身のスケジュール枠を設定して予約を組み、スケジュール通りに動くことで時短勤務でも対応できる。朝比奈さんは時短社員によるチームを作り、電話面談を積極的に進めていった。このノウハウはやがて、ビデオ録画面談やライブ面談といった新たな手法へ進化していくこととなる。
さまざまな取り組みを定着させていた2019年、朝比奈さん自身が妊娠し、産休・育休からの復帰に向けてプランを描くこととなった。キャリアのあり方を見直し、産後4カ月で希望部署へ復帰。この経験は、会社全体のBCP(事業継続計画)を充実させていくことにもつながっていった。
「当時はまだ、産休・育休を経て同じ部署に戻れる人はいませんでした。私自身もキャリアが途切れてしまう不安を感じていました。それまではキャリア志向でどんどん上に行きたいと思っていたけど、『このままでは会社を辞めなきゃいけないかも』と感じていたんです。
女性の生涯年収は、キャリアの中断があった場合となかった場合では、1億円ほどの違いがあると言われます。まずは自分自身のために最適なキャリアを考えなければいけないと思いました。転職する道もあったかもしれないけど、会社のメンバーのことが好きだし、お世話になった倉岡さんはじめ上司や先輩にも恩返しがしたかった。だから、私が前例を作ることに決めました」(朝比奈さん)
家族の理解を得て産後4カ月で希望する部署と仕事に復帰。子育てと向き合う女性のさまざまなキャリア志向をかなえるため、女性中心のチームを新設してテレワークを推進している。女性だけでなく、腰痛など体の不調を抱える男性社員からも、「ノウハウを教えてほしい」と頼られるようになった。
倉岡さんはこのチームを通じて、「会社としてのBCPが一気に進んだ」と評価する。
「業務の属人化を改善し、電話やビデオ面談などの新しいやり方を定着させた後に、朝比奈さんから提案されたのが『BCPにつながるテレワーク体制』でした。台風などの自然災害で電車が動かないときにも、無理をして通勤しなければならないのか? そんな疑問から出発して体制を作ってきました。そうした経緯があったので、新型コロナの影響が拡大してからもまったく慌てませんでした」(倉岡さん)
テレワークチームを運営する立場となった朝比奈さんは現在、チームメンバーとの日々のコミュニケーションにおいても試行錯誤を重ねている。
「割と寂しがりやのメンバーが多いので、今は1日中Zoomをつなぎながらテレワークをしています。オフィスと同じように呼びかけられるし、誰かの子どもが泣けば気づく。仕事とプライベートの垣根を気にすることなく、互いの状況を把握できていると思います」(朝比奈さん)
この体制となってからは、かつて結婚を機に退職した女性社員を再雇用するという「奇跡」も起きた。
「そのメンバーのご主人は夜勤の仕事をしていて、彼女は『お昼ごはんを作ってあげたい』というのが一番の希望なんです。だから、出勤しなければならないフルタイム勤務ができません。そこで、雇用契約書には『フルタイムでテレワーク』という条件を明示し、仕事をしながらご主人と一緒にお昼ごはんを食べる幸せを実現すると約束しました。他のメンバーにもそれぞれ、実現したい幸せがあります。個別の想いと向き合い、『ここで働けてよかった』と感じてもらえるようにすることが、今の私の目標です」(朝比奈さん)
(WRITING:多田慎介)
※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。
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