成功のカギは”内輪ネタ”と”非公式感”。 有志による社内バラエティ番組「ウラダル」で、コロナ禍のコミュニケーション危機を克服
株式会社マクアケ
成功のカギは”内輪ネタ”と”非公式感”。 有志による社内バラエティ番組「ウラダル」で、コロナ禍のコミュニケーション危機を克服
株式会社マクアケ斬新なアイディアや体験を応援購入できるクラウドファンディングサービス「Makuake」を中心に、様々な事業を展開する株式会社マクアケ。事業拡大に伴って新たな拠点も増え、社内コミュニケーションの重要性が増していくなかで起きたのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。
在宅勤務を余儀なくされ、対面コミュニケーションが取れず、一体感の醸成や、同社がとりわけ大切にしてきたカルチャーを新しいメンバーに伝達する難易度が高まってしまったという。
企業が成長軌道に乗って社員数が100人に達するころに、拠点や事業部が増えたり、組織階層が多重化したりするために、社内コミュニケーションや組織運営が困難になることを表す「100人の壁」という言葉がある。
マクアケは、もともと年間20人程度の新メンバーを迎えていたが、2019年12月の上場を契機に、1.5倍のスピードで採用を強化。新型コロナウイルス流行が迫る2020年初頭、まさにその壁に直面しようとしていた。
新規事業本部 マネージャーの北原 成憲さんは、身を持ってその「壁」を感じていたと話す。
「人数が少ない頃は、互いの顔も分かるし、あうんの呼吸で通じる部分もありますが、社員が増えてくると、一人ひとりの名前や人柄が把握しづらくなり、話しかけづらくもなりますし、ひいては、経営陣の考えも伝わりづらくなってしまう。それを課題に思っていました」(北原さん)
とりわけ危機感を感じていたのは、コミュニケーション機会の損失によって、企業ビジョンに基づいた社内風土が伝播しづらくなることだ。
同社の採用においては、『生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現』という企業ビジョンに理解・共感できる人材かどうかを重視している。だが、リモートという環境の中では、続々と入社してくる新メンバーに、肉迫感を持ってビジョンに裏打ちされた空気やカルチャーを掴んでもらうことが困難だった。
マクアケがこれほどまでにビジョンにこだわるのは明確な理由がある。
「前例のない新しい事業などを進めていくと、360度どこにでも正解があるような気がして、メンバー同士で同じ方向を見ることが難しくなってしまいます。けれど、ビジョンが明確になっていれば、自分たちはどんな商品やサービスを生み出すべきなのか、目線を合わせやすくなります。ビジョンはコンパスの役割。だからこそ大切なんです」(北原さん)
日々の業務を円滑に行うためだけでなく、自社の事業に必須のビジョンドリブンな空気を行きわたらせるためにも、コミュニケーション不足の解消は喫緊の課題だった。
この課題の解決に大きく貢献したのが、有志社員によるZOOMを使った社内番組「幕ウラでダル絡み(通称:ウラダル)」だ。
社員をゲストに迎えた手製のバラエティ番組を通して、一人ひとりのメンバーの顔や人柄に対する理解が深まり、その後のコミュニケーションが円滑になった。特に、既存社員と新しいメンバーとの間にある距離を縮めることに大いに貢献している。さらに、どこからでも番組に参加できるため、本拠地である東京と地方の垣根も越えることができる。この”内輪ネタ”を凝縮した番組が、共通の話題・共通の体験となって、社員の帰属意識を高めることに一役も二役も買った。
100人近いメンバーのうち、番組開始から半年で60人以上が出演しており、約80%という最高視聴率を記録。これほどまでに社員を惹きつけ、一体感を与える番組を長く作り続けてこられた秘訣はどこにあるのか。
実はこのアイディアは、課題から考えられたものではなく、有志各人が「やってみたかったこと」を掛け合わせて誕生したものだという。
北原さんとともに企画を立ち上げた武田 康平さん(名古屋支社長 キュレーター本部)、安倍 正晃さん(品質保証本部 法務)、成毛 千賀さん(キュレーター本部 マネージャー)には、それぞれ本業以外に伸ばしてみたいスキルや思惑があった。
「例えば、僕や、機材・技術まわりを担当するテクニカルディレクターの安倍さんは、動画配信にチャレンジしてみたいと思っていました。メインMCの武田さんは、ニュース番組のパーソナリティを務めるようなタレントになりたいという夢があり、セルフブランディングに興味を持っていた。そしてアシスタントMCの成毛さんは、社内のメンバーともっと仲良くなりたいと考えていました。それらを掛け合わせて考えたのが、社員の紹介番組です」(北原さん)
自分たちがやりたいことを実現したいがために始まった自発的な企画だからこそ、今でも毎週続けられる原動力となり、結果的に、企業としての課題解決につながったのだ。
現在では制作・配信の設備も徐々に整ってきているが、第1回目ではパソコン1台とウェブカメラだけを使っての番組制作だった。それでも、入社したばかりの人をゲストに迎えて話を聞くという番組内容には想像以上の反響があったという。
2020年入社の竹島 万裕さん(キュレーター本部)も、番組出演経験者のひとり。
「新しい会社に入ってすぐに、自分のことを深く知ってもらえる機会に恵まれることは少ないと思います。当時はコロナの影響で在宅勤務がメイン、しかも私にとって初めての転職だったこともあり、どう馴染んでいけばいいか悩んでいましたが、番組がきっかけとなっていろいろな人と絡めるようになりました」(竹島さん)
出演者にも視聴者にもさまざまなメリットをもたらす良質な番組制作は、どのようにして進められているのだろうか。
「回を重ねるうちに、動画だからこそ伝えられる部分も大きいと感じるようになりました。テロップをつけるなど、表現の幅も広いですし、見ている人とインタラクティブにやり取りができることも大きい。社内報のような紙媒体だと、取材・構成・発行などの手間がかかってしまいます。動画配信なら、僕たちはパソコンとカメラさえあればできますし、視聴する方もURLをクリックするだけなので簡単です」
北原さんは、ここまでの手応えについてそう話す。オンライン会議の普及で社内の機材が充実したことや、視聴する側の「慣れ」も追い風となったのだという。
過去、特に反響の大きかった「神回」として北原さんが挙げるのは、「料理番組」や「役員をゲストに迎えた人生相談」「メインMCの武田さんへのドッキリ企画」など。
「料理番組は、料理が苦手な社員2人が同時にから揚げを作る企画でした。放送時間中に無事にから揚げを作れるのか? Zoomだからこそできる自宅からの配信を皆で見守りました。2人の性格が分かりやすく伝わってきましたね(笑)」(成毛さん)
多くの社員を動画に参加させるのではなく、あくまでも「出演者」と「視聴者」に分ける形式を貫くことにも理由があった。
「最初は、Zoomにいろいろな人が入る形でも試してみたのですが、それではただのオンライン飲み会になってしまうんです。そうした試行錯誤を経て今の形になりました」(北原さん)
社員にフォーカスするのは、「ネタ枯れ」せずに面白い番組を作り続けるためでもある。話題の糸口を見つけるために、事前に出演者には綿密なアンケートを取るという念の入れようだ。出演を恥ずかしがるゲストには複数人で登場してもらうなどの工夫もしている。
番組制作には大事なポリシーがある。それは、あえての「非公式」感だ。
「もし仮に『マクアケの裏側』のような番組名だったら、会社が用意した社内イベントという印象になり、敬遠されてしまったかもしれません」(北原さん)
レギュラー放送だけでなく、大型特番の実績も生まれた。番組開始から2か月後の2020年5月1日。この日はマクアケの創立記念日だった。
例年であれば懇親会を行っていたが、この年は新型コロナ感染拡大のために開催できないということもあり、それに代わる大型企画として「24時間放送」が実現した。朝・昼・夜それぞれに担当を分けてシフトを組み、出演者の数は30人を超えた。
「感動のフィナーレでは社長が号泣してくれました。この24時間放送をきっかけに、社長や役員にも出演してもらうようになりました」(北原さん)
以来、役員陣からも評価され、出演を希望する声や、視聴率を上げるためのアドバイスが届くようにもなった。カルチャーに貢献する部活と認められ、正式に予算も提供された。
一方で、かえって「会社の公式」感が出る懸念はなかったのだろうか?
「懸念は正直ありました。なので、役員に関わってもらう際にも番組ポリシーは貫くようにしています。過去にやった企画では、『一流かそうでないか、役員格付け企画』などを実施しました。
僕がこの取り組みを通じて深く実感しているのは、『社員が率先して始めること』と、『社員が好きで続けられること』がいかに重要かということ。そのためには、社員の取り組みを邪魔をしないこと、社員自身が自己実現を追求するのを認めてあげることが欠かせないと思っています」(北原さん)
最後に北原さんは、「マクアケスタンダード」と名付けられた行動規範の一節を紹介してくれた。書かれているのは「挑戦を愛し、自ら幕を開ける」という言葉だ。
ウラダルのように、社員が自ら挑戦の幕を開ける企画は、きっと会社も応援してくれるはず――。北原さんたちが全力でこの取り組みを進めてこられた背景には、ビジョンを通じた会社への深い信頼があった。
(WRITING:多田慎介)
※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。
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