高い日本語能力と真面目さを生かして活躍! 「シルバー人材×AI」で新たな雇用の場を生み出し、ビジネス課題を解決
株式会社ライトカフェ
高い日本語能力と真面目さを生かして活躍! 「シルバー人材×AI」で新たな雇用の場を生み出し、ビジネス課題を解決
株式会社ライトカフェシニア人材がAI(人工知能)を育てる――。システム開発を手がけるライトカフェが青森県八戸市に設けたサテライトオフィスでは、未来を先取りしたような光景が現実となっている。ITスキルが求められる業務にシニア人材を起用しているのは、シニア人材だからこそ発揮できる強みがあるからだ。
近年では身近な家電製品にも搭載されるようになったAI。その精度を高めていくための機械学習では、文章や画像、音声などの情報を人間が「教師データ」として整理し、AIにインプットしていく「アノテーション」作業が重要な役割を果たしている。
ライトカフェの日本語アノテーション業務では、ソフトウェアで校閲する前後の文章を比較し、「言い換え」「追加」「類義語」など、校閲された理由を分類してタグ付けしていく。この業務を統括する庄司 洋祐さん(上級プロフェッショナルユニット 専門役員)は、「ものすごい量の作業を根気強く進めていかなければならない仕事」と説明する。
「当社では従来、画像に関連するアノテーション業務を海外の委託先に対応してもらっていました。一方でネイティブな日本語スキルが求められる日本語アノテーション業務は海外への委託が難しく、新たな体制を作る必要がありました」(庄司さん)
しかしなぜ、シニア人材の力を借りることにしたのか。庄司さんはその理由を「シルバー人材は語彙力が豊富であり、正しい日本語の知識で業務にあたってもらえるのではないかと期待したから」と説明する。また、単調な作業を繰り返すことになるアノテーション業務では、真面目に根気強く仕事に取り組むシルバー人材の強みが生きるとも考えたという。
業務上のメリットだけではない。ライトカフェにはさらに大きな目的があった。
「私たちはこれまでにも、『新たな雇用を生み出す』という目的に沿って地方拠点を展開してきました。ITに関わる業界では、シルバー人材が活躍できる場をほとんど作り出せていません。ライトカフェが率先して動き、地方でのシルバー人材の雇用を創出していきたいと考えていました」(庄司さん)
そんな折、青森県八戸市出身の社員が地元へ戻ることを希望したことがきっかけとなって、八戸にサテライトオフィスを開設することが決まった。ライトカフェにとってはこれが、シニア人材活用に向けた第一歩となった。2019年末には八戸市のシルバー人材センターとのやり取りも始まった。
「実際に募集を行ってみると、シニア人材の中には『仕事でパソコンを使ったことがある』という方も少なくないことが分かりました。63歳から68歳までの6人の方がメンバーとして決定し、2020年3月より業務を本格的に開始しました」(庄司さん)
新型コロナウイルスの影響を受け、東京本社と八戸をオンライン会議でつないで研修を行った。「AIとは? アノテーションとは?」といった基本事項の解説から始め、実際の作業見本を見てもらい、サテライトセンターの現場でもマネジメントを進めていく。研修資料は紙でも配布し、業務を進める中でいつでも見返せるようにした。
一連のプロセスを振り返って、ライトカフェの小林 弘忠さん(サテライトオフィス推進室 室長)は「仕事に向かうスタンス面での指導は必要なく、マネジメントの負荷は小さい」と話す。
「成果物のチェックは若手社員が行い、間違いがあれば翌日にはフィードバックしています。もちろん質問があれば随時答えられる体制です。サテライトオフィスで仕事ができるときには、シルバー人材同士で会話をしながら教えあっていただく場面もたくさん見られました」(小林さん)
2020年10月以降は、新たに「シルバー人材がテレワークをする」という取り組みも進めているという。オンライン会議システムを常時つなぎっぱなしにして、互いにいつでも話しかけられる環境を作り、サテライトオフィスに近い業務環境を作っている。
ライトカフェで日本語アノテーション業務に取り組むシルバー人材は、どのような思いで応募し、仕事を続けているのか。八戸で活躍する2人へのインタビューから見えてきたのは、パソコンを使う業務への「シルバー人材側のニーズの高さ」だった。
木村 万利子さんは、定年退職するまでの42年間にわたり、金属製品を扱う企業で事務職として働いていた。得意先からの電話を受け、製品の在庫を確認し、配送の手配をする仕事だ。パソコンを使う機会が多かったことから、表計算ソフトに関する資格も取得した。
「シルバー人材センターに登録してからは、展示場の受付や試験官などさまざまな仕事を経験しました。ライトカフェの仕事を紹介してもらったときは、『また思いきりパソコンを使う仕事ができるんだ』とうれしい気持ちになりましたね」(木村さん)
当初はサテライトオフィスへの出社を希望した。「明日会社へ行くという予定があれば、何を着ていこうかと考えるし、ワクワクした気持ちになる」。新たな職場はすぐに、木村さんの新しいやりがいに変わっていった。家族や友人には「人工知能に関する仕事をしているんだよ」と誇らしい気持ちで話しているという。
「夫は『せっかく好きなことをしているんだから頑張れ」と言ってくれています。やっぱり仕事は、好きなことを続けるのが一番ですよね』(木村さん)
西村 容幸さん(68)は、長年営業畑を歩んできた。東京のハウスメーカーに勤めた後、35歳で独立し不動産会社を起業。両親の介護のため、65歳で地元の八戸へ戻った。
「パソコンはあまり得意なほうではない」と話す西村さんだが、ライトカフェの仕事を知り、湧き上がる好奇心を抑えきれなかった。営業として人と話す仕事を続けてきたことが生かせるのではないかという思いもあった。
「AIアノテーションと聞いて、自分はお門違いかもしれないとも思いましたが、『何事も経験だ』と思って飛び込んでみました。これまではまったく知らなかったAIのことを学ぶのは、新しい発見の連続でとても面白いですね。向上心はいくつになっても大切だと実感しています」(西村さん)
西村さんは地元の高齢者大学にも足を運んでいる。ここで出会った同年代の仲間は、現役時代の仕事経験からパソコンに抵抗のない人が多いという。ライトカフェの仕事について話すと、「自分もやってみたい」と興味を持たれる。「こうした仕事はシニア側も求めている。まだまだ需要があるのではないか」と西村さんは話す。
「何歳まで働けるか、ということは考えたくない。体力と知力が続く限りはこの仕事を通じて社会に役立ちたい」
西村さんはそう話す。高い向上心を持ち、前向きに仕事に取り組むシルバー人材の姿勢は、ライトカフェの既存メンバーに新たな刺激を与えているという。
「立ち上げ時には、私もシニア人材の方々と一緒に日本語アノテーション業務をしていました。私の場合は膨大な作業量を前にしてイライラしてしまうことも多かったのですが、シニアのみなさんは常に真面目に作業と向き合ってくれるんです。その姿勢を見て、モチベーションアップにつながりました」(庄司さん)
「今後QA業務をシルバーのみなさんと一緒に出来ないかと検討をしています。QAとはQuality Assuranceの略で、品質保証のことです。新しく作成したサイトやアプリケーションが正常に作動するかなどの動作テストをお任せできればと考えています。QA業務には正確性が必要なため、細かい作業が得意なシルバーの方々には適性があると思います。シルバーの方々が活躍できる場を更に広げていきたいと考えています。」(小林さん)
シルバー人材の日本語能力や勤勉さを生かしてビジネス課題を解決したライトカフェ。庄司さんは「シルバー人材が活躍できる可能性のある職場は、日本中にたくさんあるのでは」と提起する。
「特にIT業界ではシルバー人材の活躍の場が少ないので、他社でもどんどんやってみてほしいと思っています。新たな雇用を生み出すことで地域の活性化につながるとともに、企業側にとっては、人材不足などの課題解決に向けた新たな一手になるのではないでしょうか」(庄司さん)
(WRITING:多田慎介)
※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。
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