新人のパフォーマンスは、能力だけの問題じゃない!「相性」をデータ化してマネジメントに生かす「人材育成エンジン」の実力
株式会社セプテーニ・ホールディングス
新人のパフォーマンスは、能力だけの問題じゃない!「相性」をデータ化してマネジメントに生かす「人材育成エンジン」の実力
株式会社セプテーニ・ホールディングス人材育成は、数値による成果が見えにくいと言われる。優秀なスキルを持つ人事パーソンやマネジャーがいれば、メンバーの成長を促したり離職を防止したりという手立てを打つことができるが、そうでない場合はどうなのか。永遠の課題のようにも思えるが、ここに一つのユニークな事例がある。
ネット広告市場で事業を拡大し続けるセプテーニ・ホールディングスでは、「人事の成果を定量化する」という目的のもとで社員のデータを蓄積し、「人材育成エンジン」として独自の仕組みを作り上げた。
経歴データや入社選考中の行動データ、各種のアセスメントデータや研修データなど、社員一人ひとりの数百項目におよぶ情報を蓄積しているセプテーニ・ホールディングス。これをもとに自社に必要な人材タイプを分析し、「攻め(未来創造型)か守り(課題解決型)か」、「理論派か直感派か」などのタイプに分類して、採用から社内適応、育成、戦力化までを図っていく独自の取り組みを行っている。
推進する進藤竜也さん(人的資産研究所)は、「それまで定性的にしか見ることができなかった『個人のタイプと配属先の上長やメンバー、仕事との相性』を組織の最適化を支援している株式会社ヒューマンロジック研究所の協力を得て定量化し、個人と環境の適応度を客観的に測れるようにしました」と語る。
ポイントは、新入社員が活躍できているかどうかを個人の能力やスタンスだけで評価するのではなく、所属チームや上司、仕事との「相性」を客観的に見られるようにしたことだ。大量のデータをもとにした人材育成エンジンがこれを可能にした。この相性データを役員・部長クラスが組織作りの判断材料とすることで、社員それぞれの活躍の芽を伸ばしたり、離職の危機を防いだりといったマネジメント強化に役立てているという。
2000年代、ネット広告市場が伸び続ける中で、大手企業と競合しながら成長してきた同社。その過程では、採用シーンで有名企業に勝てず、育成でも新人のパフォーマンスが安定しないという課題を長く抱えていた。「セプテーニ独自の人材育成を行い、他社と競争しない人事戦略を打ち出したい」。そんな思いを背景に編み出されたのが、人材育成の方程式を作り、構造化した人材育成エンジンだった。
「上場や企業規模の拡大に伴い、自社が採用するべき人材を見極め、職場に適応させていくための新たな取り組みが必要となっていたんです。“相性”を見極めるというコンセプトにしているのも、それが背景にあります」
社内で収集した人事データをもとに、株式会社ヒューマンロジック研究所協力の上で「個人と環境の相性」を定量化するツールを3年がかりで開発。新入社員一人ひとりのタイプをサーベイ化し、相性が良いと考えられる環境へ配属し、半年ごと(入社1年目社員は3カ月ごと)の360°評価を通して適応度合いを測定していく。「最初の1年間のパフォーマンスは個人の能力ではなく、環境との相性に起因する」という考えのもと、職場との相性が合わない人は異動によって改善を図るという打ち手が同社の常識となっていった。
人材育成エンジンは、高確率で社員の退職予測を行うことも可能にし、それをもとにしたリテンション策の開始につながっている。新卒採用ではデータ上で推奨された学生のうち95パーセントが最終面接を通過し、将来的な面接の廃止を検討できる段階に。選考フローの大幅な工数削減につながる可能性もある。
Great Place to Work(R) Institute Japanが発表する「働きがいのある会社ランキング」では、人材育成エンジンの運用を開始した2013年以降、同社の関連スコアが上昇。2012年は30位だったが、2016年には5位にランクインしている(従業員100-999人内)。1人あたりの売上高も2012年以降は伸び続けており、生産性の向上にも少なからずつながっていると考えている。
実際のマネジメントの現場では、どのようにこの仕組みを運用しているのだろうか。
リスティング広告やSEMを扱う約80名の部門を束ねる本間崇司さん(株式会社セプテーニ メディア本部・第一コンサルティング部部長)は、人事から提供されるメンバーのサーベイとチームリーダーのサーベイを見て組織編成を決めている。人材育成エンジンの運用を開始してからは、メンバーの成長を考え、「相性の良い人と組む」「あえて違うタイプの上司のもとで働く」などの打ち手をデータドリブンで考えるようになった。
神埜雄一さん(株式会社セプテーニ執行役員)は、部長やマネジャーに対して、サーベイを活用して相性に基づいたマネジメントを行うよう推奨している。新規事業を立ち上げる際の人材配置では、「○○にチャンスを与えたい」といった属人的な判断を排して、システムが導いた最適人材を選ぶようになった。こうした人事方針を伝える際に、人材育成エンジンのデータを根拠としてメンバーに提示できるようになり、「マネジメントが非常にやりやすくなった」という実感があるという。
取り組みを推進する進藤さんは、もともと人事部門で新卒採用を担当していた。「自分が採用に関わった新人が活躍できないまま悩んでいる状況は無視できなかった」と当時を振り返る。
そんな状況を変えたいという思いが原動力となり、人材育成エンジンによって全社員の退職予測や特定社員の活躍予測を行ったが、当初は経営陣も半信半疑だったそうだ。しかし、その後の半年から1年間にそれらのデータが的中していくこととなり、マネジメントに活用しようと考える管理職が増えていった。
2016年4月からは新しく立ち上がった部署「人的資産研究所」に所属し、人材育成エンジンの運用を専門としながら同社グループ全体の組織作りに奔走。「副業容認やパラレルキャリアを勧める声が多い世の中で、“セプテーニという環境をいかに楽しんでもらうか”を追求することも大切だと思っています。社内のメンバーのやりがいを最大化するための方法の1つとして、今後も人材育成エンジンを進化させていきます」と抱負を語ってくれた。
藤井 薫 氏
人の能力というのは、個人の問題だけでなく「場の相性」にもあるのだと教えてくださりました。このプロジェクトは若い人の直感から蹴り出して、職場との相性を考える取り組みを始めたことに価値があると思います。今盛り上がっている「HR tech」の動きですが、これを作り上げるためには、長年データを集め続け、現場やマネジメントラインに丁寧に導入していくという、「人に対する熱いまなざし」が必須です。この取り組みには、それらのすべてが息づいています。
※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。
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進藤 竜也 さん
人材育成エンジンの開発・推進を担当しています。かつては新卒採用も担当していたのですが、その仕事を通じて「一人ひとりが成長する環境を本気で作りたい」という思いを持ち、この取り組みを進めてきました。今後は、一人ひとりが成長するための最適解を、データを使って導いていきたいと思っています。