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「全員で全員の賞与を決める」からこそ気付けることがある!個人主義のエンジニアを変えた評価制度

フォルシア株式会社
取り組みの概要
社員に特別賞与の原資を公開し、「自分以外の全員に分配する」という設定で賞与額を記入してもらう取り組み。その結果を集約し、実際の支給額を決める。
背景にあった課題
業績指標や工数、残業時間では測りづらいエンジニアの評価を公平に行い、モチベーションを感じてもらえるようにしたかった。
取り組みによる成果
個人主義のエンジニアが周囲との関わりを重視したり、管理職のマネジメント手法や配置を見直したりという成果につながっている。
担当者の想い
自身に対する評価をしっかりと受け止め、お金も含めた幸せを感じることでクリエイティブに働いてほしいという社長の思い。

クリエイティブな仕事には、お金も含めた「トータルな幸せ」が必要

部の朝礼で自らの成果や頑張りを共有

昨今、「働き方改革」についてのさまざまな議論が交わされる中で、「評価基準をいかに設けるか」が重要なトピックとなっている。特にITエンジニアの場合は、数値目標の達成や工数、作業時間で単純に評価することが難しく、頭を悩ませている企業も多い。

情報検索プラットフォームの開発を主力事業とするフォルシアでも、かつてはエンジニアへの評価制度のあり方が課題となっていた。そんな中で生まれたのが、「賞与原資を公開し、自分以外の全員に分配する」という大胆な発想の360°評価だ。

全員が全員の賞与を査定し、個別にフィードバック

「総額●●●●万円の賞与を自分を除く対象者に分配する権限があるとしたら、それぞれにいくらずつ分配しますか?」

期末が近付いたフォルシアでは、そんな設問が書かれた重要資料が社員に配布される。2月に支給される特別賞与の額を決めるための「3C評価制度」だ。3Cとは、「Contribution」(会社への収益の貢献度)、「Commitment」(業務に対する責任感、献身度)、「Consistency」(会社への安定的関与)の3つの頭文字を取ったもの。

配られる資料には、対象社員全員の名前が書かれている。特別賞与原資の総額が明示され、この数字を自分以外の全員に振り分けていく。社員は部長やマネージャーに対しても評価をつけるため、場合によっては「上司よりも部下の方が賞与額が高い」といったことも起こり得るのがユニークな点だ。必須記入は数字のみで、時間を過度にかけることなく提出できるようにした。

集計後は、CEO(社長)・COO・取締役の3名で最終支給額を決定。この際、他の社員からの評価が特に高かった人が記入した額を重視する。評価が高い人のほうが正しい目で周囲を見ている可能性が高く、逆に他人を正しく評価できない人は、周囲からの評価も低いはず、という判断だ。部署ごとに行う期末レビューの後は、社長が全社員と面談して賞与額をフィードバックし、最終レビューを進めていく。他部署の社員の成果や頑張りにも目を向けられるよう、週1回の全体ミーティングでは各部署の成果情報やトピックスを共有している。

「3C制度の回答を見ることで、経営陣が日頃認識している社内人間関係のほころびを確認することができるんです。また、上司から見たメンバーの評価と周囲の評価をすり合わせることにもつながる。低評価が集まるメンバーについては、直属の上長と協議してマネジメント手法や配置を見直すこともあります」。

この評価制度を編み出し、運用を続ける屋代浩子さん(代表取締役社長・CEO)は、取り組みの意義をそう語る。

外資系企業の明確な評価基準をエンジニアの世界に導入

屋代さんは創業前、大手外資系の証券会社に勤め、「自分がいくら稼ぎ、会社に貢献しているか」を明確に評価される環境の中でキャリアアップを果たした。厳しくもあるが、評価が自信になり、それが高収入という形になって返ってくる世界。その収入をもとに起業の夢を実現することができた。

「常に前向きに、クリエイティブに働くためには、お金も含めたトータルの幸せを感じることが必要だと思っています。そのために、社員全員の頑張りを正しく評価できる体制を作りました」

2001年に創業したフォルシアでは、リーマンショック以降から採用を強化し、毎年10人のペースで社員数を増やしてきた。その中で感じたのが、「お金にモチベーションが湧かない若者」が増えているということ。お金のためだけに働いてほしいわけではないが、成果に対して生まれる評価をしっかり受け入れて、幸せを感じてほしい。そんな思いが根底にある。

エンジニアなど技術職の社員は、実際にどの程度会社業績へ貢献したのか、また所属するチームへどのように貢献したのかを評価しづらいという課題も感じていた。一般的な360°評価では定量的な評価がしづらく、個人の実績が正しく反映されないこともある。それを払拭するのが、「全員で全員の賞与を決める」という3C制度なのだ。

3C評価制度を編み出し、運用を続ける代表取締役社長・CEO屋代さん

全員で取り組むからこそ実現する制度

この制度を導入した結果、かつては光が当たりづらかったのではないかと思われるエンジニアの成果も正しく評価できるようになった。全員が全員を評価するため、「日頃の振る舞いが評価に直結している」という意識が高まり、「お互いに高め合う」という前向きな好循環にもつながっているという。

正しく評価するためには、互いのことをよく知る必要がある。社員は他部署も含めて周囲のメンバーの業績や行動に注目するようになり、同時に「自分も成果を出したことは積極的にアウトプットしよう」という意識につながっているのだそうだ。

「自分だけ」を考えていたエンジニアが変わった

エンジニアをマネジメントする立場にある技術部長の岩本英明さんは、メンバーが結果を出した際には「しっかりアウトプットしなきゃ」と働きかけ、全体ミーティングに共有の場を作るなどのお膳立てをしている。3C評価については「社長や部長の一存では評価が変わらないので、上に対して無駄な“おべっか”を使う人がいない。自分の評価も周囲の評価も受け止めやすく、成長につながっている」と話す。

エンジニアの杉森宙さんはもともと、エンジニア仲間へ積極的に情報共有するタイプではなかったそうだ。しかし、3C評価によって自分に対する評価が他部署より自部署からのほうが低いことを知り、意識が変わった。「他メンバーへの情報共有や後輩育成への取り組み不足を感じました。それ以来、“どれだけ人の役に立てているか”を強く意識するようになりました」と振り返る。

技術部長の岩本さん(左)とエンジニアの杉森さん(右)

社員数が増えても、正しく人を評価できる会社であるために

3C評価は、全員で取り組むからこそ実現する制度だ。エンジニア一人ひとりについて、マネジメント側が見えていない頑張りや成果を発見することができる。また、「無駄に残業することで頑張っているポーズを取る」といったパフォーマンスは通用しない。現場を知るメンバー同士が互いを見ているからだ。そうした意味での厳しさがあるからこそ、誰が見ても納得できる評価につながる。

「CEOは、頑張っている社員を正しく評価し、社内を盛り上げていくことが最も大切なミッションだと思っています」と語る屋代さん。事業拡大を続け、100名規模を伺う体制へと成長しつつあるが、この制度を適切に運用していくことで今後も正しい評価ができる会社であり続けられると確信している。

全体ミーティングでは各部署の成果情報やトピックスを共有

受賞者コメント

屋代 浩子 さん

働くということは、楽しくなければいけないと考えています。同時に会社組織なので、楽しみながら利益を生み、社員にも分配される仕組みを作りたいと思ってこの制度を作りました。技術オリエンテッドの会社で、いい技術を開発して満足してしまう側面がありましたが、この取り組みを通して「開発するだけでなく使われるサービスになっているか」「どうやって自分たちの才能やクリエイティビティをお金に変えられるか」を前向きに考えるようになりました。

審査員コメント

若新 雄純

「人が人を評価する」という、どんな企業にとっても難しいと思われるテーマに対して、社員自身が社内での関わり方を立ち止まって考え、自分の仕事を見つめ直す機会になったところがとても良いポイントだと思います。その妥当性や結果よりも、「全員による評価」という、続けることそのものに意味がある取り組みなのだと感じました。

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第3回(2016年度)の受賞取り組み