リクナビNEXT いち早く取り組んでいる企業は、どんな策を進めているのか? 人事500名調査から見る、女性管理職登用の取り組みの「今」

安倍政権において、女性の管理職比率の数値目標が設定されたことを受け、女性の活躍推進に動く企業が増えつつある。しかし、具体的にどういう方法が効果的なのか、策を講じあぐねている人事担当者は多いようだ。リクナビNEXTでは、企業の人事担当者500人に、女性活用への取り組みについてアンケートを実施。どんな業界、企業で、どんな取り組みが進んでいるのか、独自に調査した。同時に、実際に女性管理職を多く登用している企業にもインタビュー。具体的にどんな策を進められているのか、紹介したい。

2014年3月5日

(調査概要)
調査方法:「リクナビNEXT 管理職実態調査」インターネット上で実施
実査機関:楽天リサーチ
実施期間:2014年1月24日〜1月29日
調査対象:企業で人材採用において決定権を持つ、全国の人事担当者500名(男性350名/女性150名)

取り組みに積極的なのは金融・保険、メーカーなど。
大規模企業、上場企業も多い

企業において「人材採用に決定権を持つ」全国の人事担当者500人へのアンケートにより、企業の女性の管理職登用推進の「取り組み度合い」が明らかになった。

■女性の管理職登用への取り組みの有無

女性の管理職登用を推進する取り組みを行っている企業は35.6%という結果になった。女性活用に関する政府の方針が打ち出されたのは、昨年春のこと。それに対応する動きはまだ緒についたばかりではあるが、実際に行動に移し始めた企業が増えつつあるようだ。
ちなみに、「女性管理職比率の数値目標を設置することに賛成ですか?」との問いには、61.2%の人事担当者が「賛成」と回答。女性活用を進めたいという思いはあるものの、一歩が踏み出せないでいる企業が未だ多いことがわかる。

■女性の管理職登用への取り組みの有無(業界別)

■女性の管理職登用への取り組みの有無
(資本別)

■女性の管理職登用への取り組みの有無
(事業区分別)

■女性の管理職登用への取り組みの有無(企業規模別)

「女性の管理職登用を推進する取り組みを行っていますか?」との問いの回答を業界別に集計したところ、「行っている」という企業が多かった業界は、金融・保険、メーカー(電気・電子・機械)、サービスの順となった。一方、「行っていない」と回答した企業が多かったのは、商社、IT・通信、不動産・建築だった。
同じ質問への回答を、今度は「企業規模別」に見たところ、従業員数3,001人以上の企業の63.2%が「行っている」と答えるなど、企業規模が大きい企業群に高い数値が目立った。上場企業か、非/未上場企業かで見た場合も、「行っている」の比率は上場企業55.4%に対して、非/未上場企業は31.1%と差が出た。なお、国内企業か、外資系企業かでは、外資のほうが推進率が高いことがわかった。

金融・保険業界において「取り組みを行っている」と答えた企業が多かった理由としては、生命保険を中心に女性営業が多数活躍している企業が多く、女性活用の推進にも積極的であるから、と推察される。サービス業界も、女性比率が比較的高い業界であり、同様の理由が考えられる。
そして、政府の打ち出した方針を受けて、早い段階で行動に移したのは、女性社員の絶対数が多い大規模企業や、政府の戦略に合わせる傾向が強いと言われる上場企業。メーカー(電気・電子・機械)が「取り組みを行っている業界」第2位となったのは、同業界に規模が大きい企業や上場企業が比較的多いことが影響しているようだ。

一方で、他業界に比べて取り組みが進んでいないのは、商社、IT・通信、不動産・建築。いずれの業界にも共通して言えるのは、社員に対しての男性比率が比較的高いため、女性活用に関する取り組みが進んでいないと推察される。

■女性の管理職登用に向け、実施している取り組み ※複数回答

なお、取り組みを行っている企業に、具体的に行っていることを聞いたところ、もっとも多かったのは「男女差のない評価・処遇制度の整備」で、次いで「働きやすい社内制度を整備(育児休暇制度など)」という結果となった。
「外部から採用する」という回答も12.1%と一定量はあったものの、現時点では、多くの企業は社内の女性社員の育成・登用に力を入れているようだ。

女性活用の推進・企業の取り組み実例の紹介

人事担当者の注目度が高い「社内制度の整備」だが、女性の管理職登用を推進している企業は、どのような策に取り組んでいるのだろうか?すでに成果を挙げている企業に、具体的な取り組み内容をインタビューした。
女性のための制度を設けるだけでなく、実際に働く女性社員の声を拾いながら、よりよい方向にブラッシュアップする姿勢が、功を奏しているようだ。

【株式会社アイスポットの場合】3つの働き方から選べるキャリアセレクト制度を導入。
この1年で女性管理職が5人→8人に増加

美容やリラクゼーションサロンの情報サイトを運営する株式会社アイスポットでは、昨年1月から、3つの働き方を選べる「キャリアセレクト制度」を導入した。
仕事におけるキャリアアップやスキルアップを重視し働く「ワーク重視型」、育児や介護、資格の勉強などを優先しながら時短で働ける「ライフ重視型」、そしてフルタイム勤務だが定時退社をベースに公私のバランスを考え働ける「ワークライフバランス型」の中から、社員一人ひとりが自分に合った働き方を自由に選べるようになっている。
「美容系という事業内容に加え、2001年創業の若い会社ということもあり、”若い女性社員”が多いのが特徴。当社の全従業員81人中、女性が約60人となっています。彼女たちは皆、さまざまな仕事を通して経験を積んだ、当社の貴重な戦力。キャリアセレクト制度は性別にかかわらず利用できますが、出産や育児などのライフステージを経ても女性に末永く働いてほしいという思いから、この制度を新設しました。その後、女性社員の声を取り入れながら、微修正もしています」(管理本部管理部チーフ・安達のぞみ氏)

働き方が選べるようになったことで、育休中の社員が復帰に意欲的になったり、さらなるスキルアップを目指して学校に通う人も増えてきた。人事担当の安達氏自身、昨年に育休から復帰した後「ワークライフバランス型」を選択し、日々無理なく働けているという。
この制度が社員全体の士気向上にもつながり、女性管理職(マネージャー職以上)は1年前の5人から、この3月時点で8人に増えた。

「女性管理職の数は増えましたが、本部長以上の中では女性は社長のみなので、女性社員にはマネージャーを、管理職にはさらに上の幹部層までも目指してほしい。そのため、これからも社員の生の声をヒアリングしながら、女性の働きやすさ向上につながる制度を新設したり、現状の制度をブラッシュアップするなどして、環境を整え続けたいですね」(安達氏)

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