量産型ワーキングマザーでいこう

働くママたちのコラム

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突然ですが皆さん、ガンダムは好きですか。アニメ『機動戦士ガンダム』に「赤い彗星のシャア」っていう人が出てくるんですが、その人はエースパイロットで、シャア専用ザクの機体性能と相まって、早さとかが「通常の三倍」なんですよ。ふつうは量産型ザク、っていう緑色のロボット(正確にはモビルスーツ)なんだけど、その中に一体だけ、超絶な実力とカリスマ性を誇る赤いのがいるわけです。

私はワーキングマザーを始めて5年になるのですが、メディアに出てくるワーキングマザーはみんなこの「シャア」みたいな人ばっかりだなと思ってたんですよね。「通常の半分の時間しか働けないなら通常の三倍のスキルで補え!」みたいなことを、同じワーキングマザーに言われた時のその、背後から撃たれる感……。

「女性活用」が国をあげて推進されている、はずの2014年なのですが、私なんかは「えっなんか戦場にシャア大佐しかいない……大佐、キャリアアップが早すぎて見えないし……私どっちに飛んでいったらいいかわからない……援軍(祖父母のバックアップとか)もないし……私のような量産型が、育児と仕事を両立しようなんて若さ故の過ちだった……の? あっまた保育園から呼び出しがっっ」

っていう感じだったですよね、ここ数年。

ロールモデルがいないのは当たり前だった

「私の会社ではワーキングマザーって前例がないんです。子育てをしながらどうやってキャリアを築けばいいかロールモデルがありません。だから仕事を続けられるか不安です」。そういう声を同世代や後輩からよく聞きます。でも、冷静に考えたらそれは当たり前ではないか。自分の会社だけではなく、どこもそうなのでは? と思うのです。

いま現在50代の、いわゆる均等法世代の方に聞くと、「勤めているのが大企業であればあるほど、みんな仕事を辞めて専業主婦になっていった。仕事を続けた友人は公務員と教員ぐらい」ということらしい。40代、バブル世代はどうか?というと、それこそシャア大佐みたいに、男性の働き方に過剰適応するしか、企業に残る術がなかったのではないか? 給与も男性並み(当時はかなり高給)にもらって、それを駆使してベビーシッターを雇うなどサービスを駆使し、残業も厭わず持ち前の高い能力でキャリアを築いていった……それができるすごい母親しか、会社に残れなかったのではないか。

だから今の30代〜40代前半に「ロールモデルがいない」のは、致し方ないことですよね。過去にガッツで職場に残ってくれた先輩ワーキングマザーのおかげで、我々はかろうじて育休を取って復帰できるようになった。シャアみたいな人だけじゃない、ふつうのお母さんも、いろんな理由で育児と仕事を両方やりたい、やらなきゃいけない時代が、初めて訪れているんじゃないかしら。

それはそれで万事OKっぽく聞こえるけれど、たとえば祖父母の強力なバックアップとか、シッターを雇い続けても破綻しないほどの給料とか、献身的に妻を支えてくれる専業主夫とか、そういうの、私たち量産型は持ってないんですよね。そうすると、普段はなんとか回せていても、なにか予測不能の事態が起きたときに、バッファというか「タメ」がない。夫婦どっちかが倒れるとそれだけで家事育児が回らなくなる。子供が熱を出す、しかも治るまでに1週間ぐらいかかる、そういう時に限って夫婦ともに外せないアポがあったりする。祖父母が手伝ってくれていたのに、彼らが突然倒れたりして、家庭内で「子育て戦力」としてプラスだった存在が、ゼロどころかマイナスになってしまうこともある。

まあ、母親が育児も家事も介護も責任負って全部やる前提の社会システムだと、その上に仕事が乗っかったら、ふつうに倒れるよ。って、それだけのことなんですけどね。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

量産型ワーキングマザー、マジ偉い

いま、こんな風に「タメ」が少ない中で、仕事と育児の両立をなんとか踏ん張っているお母さん、そしてその良きパートナーとしてのお父さん達を、私は誉めたい。あえて私が。この木っ端ブロガーが。だって、あんまり誰も誉めてくれないから。自分で選んだんでしょとか、全部持ってていいじゃん勝ち組とか言われがちだから。あなたがんばってる。すごいがんばってるわ。マジ偉い。マジ尊敬。

「べっべつに世の中のために働いてるんじゃないんだからねっっ お金のためだし仕方なく共働きしてるだけだし」。そんなあなたも偉い。別に意識してないのに社会のためになっちゃってる。すごい。だってさー、女の人が、仕事と育児という、まったく種類の違う喜びやら教えをもたらしてくれるものを、どちらかバッサリ諦めなきゃいけない世の中が続くのなんて、辛いでしょう?

娘さんがいるお父さんお母さんなら、よりイメージはつきやすいかもしれない。かわいい娘ちゃんがすごく優秀で、社会人になったらぶっちゃけ自分より部下なんか扱う術に長けてて、「商売ってたのしい! ヤバい! わたし出世するわ! 社長目指すわ!」って言い出したときに、「うーん母親になるならまず無理だね」「ジェンダーギャップ指数というのがあってだな」とかさ……言いたくないですよね。

私は、量産型ワーキングマザーがふつうに企業にワラワラいる状態になってほしい。今はもういっぱいいっぱいで、ロールモデルがないからキャリアもどうなるのか謎だし、体力もギリギリ……みたいなお母さんも、ただ「(企業に)いる」だけで偉いし、それはとっても意味があることだと思うんです。子育て中の人が、組織に一定数いなければ、時短とかこれまでにない働き方をしたい人が何を望んで何に困っているか、永遠に顕在化してこないから。それだと、「今は子育てに専念しているけど、いつかはまた仕事したいな」というお母さんも、ずっと企業に戻りにくいままだし、キャリアの続きを築けないままなんですよね。

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サバイバルするための具体的な術

この5年間、私と夫の両立の道はけしてラクではなかったのですが、でもなんとか2人とも、仕事を辞めずにこられました。子供たちも元気に育ってます。そもそも論で言うと政治がね。まだまだ社会的コンセンサスがね。でもそんなのみんな賢いから分かってますよね? 世の中というのは、なかなか今すぐには変えられないから、ちゃんと政治に関心を持ちつつ、とりあえず量産型ワーキングマザーとして生き抜くコツ、みたいなものがないか、5年間を振り返ってみました。「時間ではなく成果で勝負」とか、「周囲に感謝の気持ちを忘れずに」みたいな、まあ……正論だけど……耳にタコだよ!みたいなことは書かないようにします。

1. 「○時過ぎたらいない人」になる

量産型の我々は、お迎えを交代できる人がいませんから、絶対に、ぜっっっったいに、夕方に会社を出なければなりません。

しかし、なぜか「今まさに会社を出んとす」というときに「ちょっといいですか?(有無を言わせない感じで)」と声をかけてくる方がいらっしゃいます。会議を、サラリと18時以降に設定してくる上司がいらっしゃいます。そういうときに、なんとなく対応したりしなかったりしていると、遅くまでいる人だと思われてしまいます。

ここはやはり、ケジメをつけて自分の仕事を時間内に終わらせ責任を全うし、

「あっいない」→「いつもいない」→「(たまに残業してると)どうしたの?」

……ぐらいな感じにしとくと良いと思います。まあ、ときに残業デーがあると仕事が一気に片付くので、週に何回か夫にもお迎え行ってもらいたいよね。本音では。

2. いちばん身近な同僚に、家庭の事情をぜんぶ話す

いくら「時短という勤務スタイルで会社と契約を交わしている」状態であっても、どうしてもイレギュラーなトラブルや、責任がグレーゾーンな業務というのは発生してしまいます。自分の仕事の続きを、チームメイトにカバーしてもらわざるを得ないときがあります。私は、過去にかなり属人的な仕事スタイルの職場に居たことがあり、プロジェクトに自分しか対応できる人がいない状態がいかにリスキーか、よくわかりました。

それ以来、なるべく2人組(かそれ以上)の体制で仕事をさせてもらうよう、上司に頼んでいます。そしてチームを組んだ相手に、仕事の状況を逐次共有するのと同様に、家庭の状況も伝えています。

長男は妖怪ウオッチが好きだよとか。夏はお腹を壊しがちなんで今週ちょっとヤバいよとか。おばあちゃんが倒れたわアハハーとか。子供を連れて会社のみんなと遊んだり、とかもします。同僚は、「そんなこと知るかい」ってときもあるかもだけどさ、まったく知らない子供のために……よりも、知っている子供のために……の方がまだ、良いかなって。騒音なんかも、知ってる人のやることだと思うと、急に気にならなくなるらしいし、ね。

3. 長く勤めるために、制度はキッチリ使う

この5年間に、国&会社の制度を、自分でも驚くぐらい利用しました。というか、利用せざるを得なかったんです。

産休・育休だけではないです。介護休職もしました。子供の看護に使える休暇も。もちろん時短も使っています。正直、育児を始めてから、私もまったく想定外のことがいろいろと起こり、その度に上司に相談し、会社を休み休みここまで来たという感じです。こればっかりは本当に会社に感謝しました。休めない会社だってあるだろうし。「詰んだ……」って思ったことも二度ぐらいあります。でも一応、勤め続けています。

育休などを早く切り上げるのも良いとは思いますが、「家族のこと」や「身体のこと」というのは、不測の事態が起こり得ます。長く、健康を保ちつつ勤めるためにも、無理せず一時的に休むことを自分に許し、制度はキッチリ使っていくのが良いと思います。

そしてマネジメントする方々には、30歳を超えると人は「家族や健康」のいろいろに振り回されることが増え、それは本人の努力だけでは如何ともし難い、逆らえない運命ですらあるということを、ご理解いただけると幸いです。

4. 「愛」を残すために、家庭の仕事を「外」へ

私は自分の家族が好きですし、なによりも大切だと思っています。辛いときに人を支えるのは、やはり一番身近な家族の「愛」だろうとも思います。

でも「愛」って、どんな条件でも発動するものではないとも、思います。心身が疲れていると「愛」は機能しません。母性愛だのなんだのって、泉のように際限なく湧き出てくるものではありません、人間だもの。

前述しましたが、我々はあまり「タメ」のない時代を生きています。なにか重たいもの、ストレス源になるものを自分の手から離さないと、疲弊して「愛」がうまく機能しなくなるような気がします。ほんとうに自分がやった方がいいことは何か、過ごした方がいい時間はどういう時間か、よく考えたい。そして、今まで「家庭」の仕事だったものを、どんどん家庭の「外」へ出した方がいいと思います。

以前、保育園で手作りグッズをたくさん作らねばならないお母さんが、「私はグッズを手作りする時間があったら、息子と遊んであげたいよ」と言っていました。仕事と育児を両方やるなら、そういった新しい整理整頓というか、断捨離は必要かもしれません。「愛」という名のもとに(トレンディドラマ……?)、なんでもかんでも自分の手でやる必要はないと思います。

ちなみに我が家では最近、隔週ですが家事代行サービスにお掃除を頼んでいます。プロがお掃除をすると、毎回念入りにやらなくても、ほぼ清潔な状態をキープできるんですね……。以前は、貴重な休日の午前中に夫婦でずっと掃除していたので、その時間を子供たちと遊ぶのに使えるようになり、嬉しいです。というかね、アレは汚れを取り除いてもらってるのではない。「片付けど片付けど子供が部屋を汚す……我が家キレイにならず……ぢっと手を見る」という、哀愁を帯びたストレスを取り除いてもらってるのだ!

いま、祖父母の手が借りられる人は、どんどん借りたらいいと思う。なんといっても頼みやすいしお金もかからない。そして、孫の世話は生きる喜びだ、という祖父母も居たりするし。けれどその戦力、いきなりゼロになるかもしれません。「家族」に頼りすぎる社会システムは、かくも脆弱なんですね。だから家庭の「外」の(公・民間ともに)サービスを育てるためにも、たまにはファミリーサポートとか、使ってみてくださいね。

5. 夫を諦めない

ワーキングマザーを始めたころ、夫とけっこう衝突していました。そのことを私の母(ずっと教員として働いてました)に「お父さんとケンカとか、した?」って聞いたら、「そりゃそうよ。戦争よ」と言われました……よろしい。ならば戦争だ。

量産型ワーキングマザーにとって夫は生命線です。だって、子供は2人のもとに産まれてきたんだから。そして柱は2本しかない。でも、「どうせ夫は帰ってこないし」「夫に何を言っても根本的に変わらない」という風に、諦めちゃってるお母さんは多い気がします。

でも、本当にそうなのかな? 母親の方が、なんとか道なき道を行こうとしているのに、夫は本当になにも変えられないのかな? もちろん会社での立場や収入も大事だし、夫婦が子供のために、2人ともキャリアダウンするというのも悲しいことかもしれない。でも、いつも母親が諦めるのが当たり前、ってことはないと思いますよ。自分がどうして、どういう形で仕事を続けたいのか、夫と、とことん話してみてはどうかしら。たぶん、結婚前には気付いていなかった、お互いの(主に男女の役割に関する)価値観まで踏み込むことになるかもしれません。でもその価値観だって、ずっと話し合っていけば変わるかもしれないからね。あなたの夫という人を諦めないでほしいな! 話せばわかります、きっと。あなたが選んだ人だもん。

そして時には我々も、「やっぱり母親の自分がいちばん子供に愛されたい」とか、「私の聖域であるキッチンの細やかなルールを侵さないでほしい」みたいな、プライドを捨てることも必要かもしれません。意外と自分も無意識に、性的役割に固執してた……なんてこともあるかも。

* *

いかがでしょう。私の体験談ですが、少しでも参考になれば幸いです。

自分の能力や可能性をどこまでも追求できる「仕事」と、人を愛し愛されて生きる幸せをあらためて実感させてくれる「育児」。両方の喜びを(なんとか頑張れば)味わえる時代に生まれたことを、ラッキーだと思いたいですね。仕事が子育てのストレス解消に、子育てが仕事のストレス解消になるように、いつも自分を鼓舞し、慰め、可愛がり、休み休みでもいいから、なんとかやっていきましょう。そして、無我夢中でやっていくとそのうち、あなた自身が後輩たちのロールモデルになっていると思います。きっと。

ちなみにガンダムヲタのうちの夫は、『機動戦士ガンダム』の世界では、「量産型」の機体を導入することで、戦局が決まっていった、と力説しています(「アムロがいなくても連邦軍は勝利していた」説)。エースパイロットの活躍はもちろんストーリー的には面白いのですが、あくまで極地的な勝利でしかないのです。

著者:kobeni (id:kobeni_08)

kobeni (id:kobeni_08))

5歳と1歳の男児を子育て中の母親です。はてなで「kobeniの日記」というブログを
書いています。仕事は広告系です。公国じゃないです。最近はECサイトの運営に携わっています。

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