AIが進化したら、私が携わる事務の仕事はなくなってしまう?【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!今回は、将来自分の仕事はなくなってしまうのではないかと悩む、25歳女性からのお悩みです。

曽和利光さんメインカット曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

自分の仕事はAIに置き換わりそう…将来への不安を払しょくするには?

 

<相談内容>
CASE55:「将来、私の仕事はなくなってしまうのでしょうか?」(25歳・素材メーカー勤務)

今の会社に就職し、営業事務に携わって3年目です。主な仕事は受発注管理や入金チェック、売り上げ管理などのほか、納品書や見積書、請求書などの作成業務です。営業アシスタント的なことも手掛けていて、例えばグラフ作成やスライド作成などと言ったプレゼン資料の作成サポートや、簡単なクライアント対応も行っています。

いずれもPC作業がメインであり、ITの進展により将来的にすべてAIに置き換わってしまうのではないかと不安に感じています。

とはいえ、他にやりたいことがあるわけでもなく、今の仕事が好きで満足しているので、来たるAI時代に対してどんな対策を打てばいいのかわかりません。将来に対するこの漠然とした不安を何とか払しょくしたいのですが、私ができることにはどんなことがあるのでしょう?(営業事務)

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

人の心を動かす「センス」は、人間にしかない強み

曽和利光さんインタビューカット

一部の事務作業などはすでにAIに置き換わりつつあり、今後も加速すると思われますが、相談者の仕事がすべてAIに置き換わるにはまだまだ時間がかかると思われます。ただ、必要以上に不安にならないためにも、「AIが進化しても残るもの」は何かをつかみ、準備をしておくといいでしょう。

AIは膨大なデータをさまざまな条件で集計し、判断の材料を提示することができますが、その材料をもとに「決断」するのは人間にしかできません。なぜなら、決断には責任が伴うから。AIも理論上はデータをもとに判断し、最適解を出すことはできますが、その責任までは負えません。

物騒な例で言えば、AIを搭載したドローン兵器を作れば、いつどこを攻撃すればいいか判断し、実際に攻撃することだってできるでしょうが、最終的に攻撃すると決断、ボタンを押すのは人間であるべきです。
身近な例で言い換えれば、ECサイトで買い物をすると、別の商品をリコメンドされますが、それを買うかどうかは個人の判断であり、決断です。

さらにいえば、その決断はあくまで人が行うものですから、「正しい・正しくない」だけではなく「好き・嫌い」という主観が多少なりとも含まれることになります。

ビジネスにおいても同じで、いくら正しいデータであっても「好き・嫌い」には勝てません。例えばAIに「事業拡大のためにはこれが正しい営業戦略だ」と提示されたとしても、多くの社員が「こんなことやりたくない!」と嫌がる方法であれば、結局誰も頑張り切れず、事業は頓挫してしまいます。

従って、今後人間が磨いたほうがいいと思われるのは「決断力」と、決断材料となり得る好き・嫌いの「センス」。これが、AIに対して人間が勝負できる能力であり、どんな領域であってもいいので「好き」を突き詰めセンスを磨くことが、これからの時代の武器になると考えています。

 

8,568通り、あなたはどのタイプ?

AIが進化するほど、一見仕事に関係なさそうなセンスがモノを言う

曽和利光さんインタビューカット

相談者の仕事は営業事務で、「今の仕事が好きで満足している」とのこと。であれば、今の仕事の中で「AIではできない、人の好き嫌いを左右するセンスに基づいたもの」は何か考え、それを磨くことをお勧めします。

例えば、めちゃくちゃ見やすいプレゼン資料を作るセンスとか、一目でわかりやすくデザイン的にも美しいグラフを作成するセンスとか、さらにいえば営業担当者をやる気にさせるような一言を紡ぎ出すセンスとか、クライアントへのお詫びに持っていく菓子折り選びのセンスとか、殺風景な営業所に品のいいお花を一輪飾るセンスなどでもいいのです。

AIは、相手の立場や気持ちを慮ることや、相手を感動させたり温かい気持ちにさせたりすることは不得意です。従って、AIが進化すればするほど、このようなフォーマルには仕事と見なされていなかったようなことが重要になるはず。ただ、通り一遍のレベルではAIに追いつかれる恐れがあるので、それらのセンスをエッジが立つほど磨くのがポイントです。

「センスを磨いたところで、ビジネスパーソンとして果たして生き残れるの?」と思われるかもしれませんが、ゆくゆくは「人を雇う理由」自体が変化すると予想しています。仕事の大半をAIが担えるようになったら、人を雇うのはある種の道楽になると思われるからです。

AIがあれば一人で仕事をしようと思えばできるし、オフィスを構えなくてもいい。それでも人をわざわざ雇うのは一緒にいて楽しいから。仕事の目的を共有し、思いを分かち合い、達成して喜び合う…そのために人が存在する――近い将来、そんな時代がやって来るのではないかと考えています。

何年後にやってくるのかまではわかりませんが、例えば20年後であれば相談者はまだ45歳。まさに働き盛りです。そのときに、AIではなく人間ならではのセンスを発揮するために、今のうちから自分の好きな分野と向き合い、センスを磨くことに着手することをお勧めします。どれが自分の武器になり得るのかピンと来なければ、周りに褒められたことを抽出してみたり、同僚や担当営業に聞いてみたりするのも方法。職場をイキイキさせる、同僚を笑顔にさせる存在を、ぜひ目指してみてください。

アドバイスまとめ

人の感受性を刺激するような
フォーマルではないセンスが仕事に役立つときが来る。
「好き」を突き詰められるような
自分ならではのセンスを見つけ、磨いてみよう

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

 

 

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