「女性が活躍できる会社」を見極める5つのポイントとは?

サポートではなく、最前線で仕事がしたい。パフォーマンスを発揮したら、しっかり評価してもらえる会社で働きたい。結婚、出産後も仕事とプライベートをうまく両立していきたい。そんな女性たちに向け、働き方やワークスタイル変革に詳しい沢渡あまねさんと、オンライン教育サービス「育休スクラ」を運営する小田木朝子さんに、「女性が活躍できる会社」の見極め方について聞いてみた。

活躍する女性イメージ画像

あまねキャリア工房代表 沢渡 あまねさん

沢渡あまねさん業務プロセス&オフィスコミュニケーション改善士。株式会社なないろのはな 浜松ワークスタイルLab所長、株式会社NOKIOO顧問ほか。人事経験ゼロの働き方改革パートナー。日産自動車、NTTデータなどで、広報・情報システム部門・ITサービスマネージャーを経験。現在は全国の企業や自治体で働き方改革、社内コミュニケーション活性、組織活性の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり、#ダム際ワーキング。著書『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』『職場の問題地図』『業務改善の問題地図』『仕事ごっこ~その“あたりまえ”、いまどき必要ですか?』『職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」』など多数

株式会社NOKIOO 取締役 小田木 朝子さんん

株式会社NOKIOO 取締役 経営学修士 小田木 朝子さんプロフィール画像通販企業やIT企業での法人営業を経て、2011年にITサービス開発を行う株式会社NOKIOOの創業に参画。教育事業担当役員として、企業や行政に女性活躍・働き方改革・人材育成事業を提案している。女性のためのオンラインスクール事業「育休スクラ」の運営や、仕事がもっと楽しくなる“知恵とヒント”をVoicyで平日毎朝10分配信中。

女性の活躍を阻む要因とは何か?

業務改善・オフィスコミュニケーション改善士として、全国350以上の企業、自治体、官公庁を見てきた沢渡さんは、女性が活用できる組織作りがいまだ不十分な企業が多いと指摘する。それはなぜなのか?

「女性の活躍を阻んでいる要因の一つは、これまでの日本の社会は、『男性正社員・終身雇用』前提モデルであったことが挙げられます。組織のマネジメント、個人への期待や仕事に対する向き合い方が、男性正社員や終身雇用に最適化され過ぎていたのです。

労働法制や社会保険・退職金の仕組みも、固定された勤務地で1日8時間以上、週に最低5日、定年まで勤め上げるようなフルタイムの正社員が優遇されやすい仕組みです。残業することはもちろん、会社とつかず離れず長く働いてきた人が優遇され、評価された時代が長く続きました。今もそうした組織のマジョリティが続いているとなると、そうそう変われるものではありません」(沢渡さん)

実際、そうした会社や組織の中に長くいると、その働き方に合わせられない女性は「自分は活躍できないのでは」と諦めてしまう。そう語るのは、小田木朝子さんだ。

「私も以前は、男性終身雇用型モデルに自分をフィットさせようとしていました。残業するためにプライベートを犠牲にしたり、本意でないライフスタイルを選択することで評価されようと無理に頑張ってしまう。自分には無理だと離脱していく女性も少なくありませんでしたね」(小田木さん)

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女性が活躍できる会社や組織を見極める5つのポイント

働き方改革がかけ声だけでうまくいっていない。そのような企業も多く見てきている沢渡さんだが、人手不足が深刻な会社や、トップが問題意識を持っている会社は、変わり始めているという。

「時代は不確実性を増してきました。ITテクノロジーに代表される技術は進化し、経済のグローバル化も進み、COVID-19のような未知のリスクも現れている。これらの不確実性に向き合うための答えは、組織の中にあるとは限りません。不確実性が増す時代において求められるのは、多様な考え方や経験や能力であり、外部とのコラボレーションです。従来のような同質性の高い統制型・男性正社員モデルでは機能しなくなってきたんですね」(沢渡さん)

これは、たとえば営業活動のような現場の業務においても言える。もはや旧態依然の、足で稼ぐ営業スタイル、飛び込みやテレアポのみで稼ぐ営業スタイルだけでは、新たな顧客の獲得や維持は難しいであろう。

オンラインによる商談など、営業活動のやり方そのものを最新化する必要があり、かつデジタルマーケティングやブランディングなど、新たなアプローチを取り入れていく必要もある。気合いと根性頼みの営業活動には限界がある。

ITを活用し、場所や時間の制約を取り払うことで、能力や知識のある人を積極的に採用する企業も出てきています。経営課題に向き合っていく中で、女性の登用も進んできました」(沢渡さん)

では、そうした女性活躍ができる会社を見極める方法には、どんなものがあるのだろうか。女性が活躍できる会社や組織を見極める方法として、5つのチェックポイントを挙げてもらった。

Point1:メディアに登場する女性のプロフィールに注目する

雑誌やWebメディアなどに登場している女性のプロフィール欄に書かれている経歴や業績をしっかり見ることをお勧めします。営業や技術を含む多様な部門の人がいるかなども良い着眼点です。

女性管理職をアピールする会社をよく見かけますが、管理部門のみだったり、男性終身雇用型の生き方で無理をして頑張って管理職になっている人も少なくありません。実は現場では『あんな頑張り方はできない』と思われているケースもあります。会社とコミュニケーションを交わす機会があるなら、どんなキャリアを積んできた人なのかを聞いてみるのもいいと思います」(小田木さん)

Point2:性別関係なく、多様なリーダーがいるか

性別にかかわらず、多様なリーダーがいるかどうかをチェックすることも有効です。チームリーダーや役員に女性がいる、という点に目が向きがちですが、一方で介護をしながら仕事をしている男性管理職や育休経験を持っている男性社員、異業種からの中途採用で入った役職者など、多様性がリーダーの中にあるかどうか。そこから、その会社全体のカルチャーが見えてきます」(小田木さん)

Point3:女性活躍や女性支援制度を強調しすぎていないか

「当たり前のように女性活躍がすすんでいる企業の共通点は、これまでの男性正社員主体の場所や労働時間で評価される働き方に、女性を合わせさせるのでなく、女性ならではの発想やポテンシャルを活かせる、働き方や環境を(再)構築できていることです。

私たちNOKIOOでは、女性の活躍を『時間当たりの生産性高く仕事をし、事業や組織の中で中心的役割を果たすこと。仕事や職場に愛着を持って取り組み、仕事を通じて成長できること』と定義し、明文化しています」(小田木さん)

働き方改革やダイバーシティ経営が自然に行われている企業ほど、女性活躍推進や女性支援制度を強調しすぎていない。経営課題に真摯に向き合い、それを解決してきたら結果的に女性「も」が活躍しやすい仕事のやり方や環境になった。多様な人材が本来価値を発揮しやすい組織になっていた。そうした会社がうまくいっているのです。

たとえば、自社サイトの「製造現場の取り組み」などのコーナーに、「普通に」女性社員が登場している。こういう企業のほうが、男女の隔たりなく能力や資質のある人が自然に活躍できる職場であることが伺いやすいですね」(沢渡さん)

Point4:リモートワーク、フレックスが推進されているか

「出社しないと仕事ができないわけではありません。長く働かないと成果が上げられないわけでもありません。会社にいないと情報が得られない仕組みではなく、役割も予定もすべてオープンで、いつでもオンラインでコミュニケーションを取ることができる組織であれば、男女関係なく活躍のチャンスも増えます。

誰が何をしているかもわかりますし、しっかりとした信頼関係の中で仕事を進めることもできます。大事なのは、時間あたりの生産性です。子育て中や時短勤務でも、仕事に投じられる時間内で最大のパフォーマンスが発揮している組織であること。それこそ、立場や事情に関わらず評価や登用がされ、報酬を上げることができる組織なのだと思います」(小田木さん)

『オンラインミーティング、ビジネスチャット、オンラインファイル共有サービスなど、非対面でも仕事ができる環境が整っているか?実際、それらを使って通常業務を遂行できているか?』は、子育てや介護など、事実上制約条件の多い女性が時間や場所に関係なく仕事をしやすいかどうかを判断する、一つの観点だと考えます。『チーム内や社外(取引先や顧客など)とのコミュニケーションや進捗管理は、どのようなツールを使っておこなっていますか?』こんな質問をしてみるのも良いでしょう。

やり方にこだわらず、時間制約を減らしたり、報告や情報共有もフラット、困ったときに助けてほしいと言えたり、助けあえる環境のある会社がいいですね。会議は必ず対面で集まってやらないといけない、などの『べき論』に凝り固まっている企業は避けましょう。デジタルとアナログをうまく組み合わせれば、働き方のバリエーションも飛躍的に増えます」(沢渡さん)

Point5:職種に縛りがないか

職種に縛りがないこと、さらには人材育成や環境改善にきちんと投資している会社かどうかも重要なチェックポイント。たとえば、製造業において、女性にはきつい仕事はさせられないと事務職および補助業務しか任せない企業もあります。一方で、仕事のやり方や環境改善により肉体的な負担を減らし、女性も花形職人になれる道を作っている製造現場もある。育成や環境改善に企業が積極的かどうかは、女性が選択できる職種の幅広さからも見えてきます」(沢渡さん)

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外の世界と接することで見えてくるものがある

現在の会社に見切りをつけ、「もっと女性が活躍できる会社に転職したい」と考えているのであれば、転職活動をする際に気をつけてほしいことがある、と小田木さんは語る。

転職活動でのやりとりで違和感を抱いたら、それを無視しないほうがいいですね。例えば、意見を尊重されている気がしない、メールで済む手続きや書類などを郵送で送付してほしいと言われる、面接や面談に行っても中高年の男性しか出てこないなど。そうした違和感は、意外と鋭いアラートかもしれません。

また、アンテナを磨くために、普段から外の世界とのつながりを持っておくことをお勧めします。社外とつながり、様々なバックボーンの人とつながることによって、自分はどう働きたいのかを考える機会になり、より多くの選択肢が目の前に見えてきます。今はオンラインで外とつながれる機会が増えているし、様々な業界、職種のセミナーもたくさんあります。

私は2020年4月に育休中の女性のためのオンラインスクール『育休スクラ』を立ち上げました。様々なバックグラウンド、様々な企業に勤務する人が集まり、ビジネスの知識や仕事の進め方を学んでいきますが、参加者が一様に言うのは『井の中の蛙だったことに気づいた』という言葉です。

自分が所属する組織以外をいかに知らなかったか。新しい情報を得ることで自分の視野を広げ、目の前にある課題に対する解決の糸口を手に入れられた。その体験が良かったという声も聞いています。

『苦しい状況はすべて環境のせいだと思いながらキャリアを積んできたけど、環境は自分で変えられるし、成長できるチャンスはあると思えるようになった』という声も多いですね。やはり外の世界と接することで見えてくることはたくさんあると思います」(小田木さん)

正しく自分をアップデートし、自己研鑽を続けることも重要

もちろん女性が正しく活躍できる企業を見極めることは大事だ。しかしその一方で、自分自身のマインドを見つめ直すことも大切だと、沢渡さんは言う。

「健全に成長を続けている組織とは、『能力が高い人や、成長意欲がある人が正しく活躍できる』組織です。男性女性関わらず、自分の権利ばかり主張していて成長努力を怠る、あるいは成果を発揮できない人は、任せられる仕事の幅も活躍できる領域も限られるでしょう。自由と責任はつねに表裏一体です。企業は、個人が正しく活躍するための制約条件をなくしていく責任がある。一方、個人はその環境を活用して成長し活躍する責任があります」(沢渡さん)

これからの時代、男性正社員・終身雇用型優勢の企業会社も変わらざるを得なくなっていくだろう、と沢渡さんは続ける。なぜなら、雇用の大部分を占めている中高年社員たちが続々と引退していくことになるからだ。

「日本が直面している大きな課題が少子高齢化への対応です。圧倒的な労働力不足の時代、優秀な人材の獲得競争はさらに激化するでしょう。制約条件を抱えた人は積極的に採用しない、登用できない、などという企業は、人の維持獲得が厳しくなります。優秀な人ほど、自分自身が不自由なく活躍できる企業に転職しますから」(沢渡さん)

小田木さんも、女性に限らず、働く人すべての環境が変わっていくはずだと語る。

「リモートワークや、時間や場所に制約されない多様な働き方が、女性だけでなく全社員に適用されていくことになると思います。頑張りたくても、頑張れない環境にいた人が、正しく頑張れるようになっていきます」(小田木さん)

そうしなければ、企業の未来は極めて厳しいことになるからだ。
最後に、沢渡さんはこう語る。

会社が変わることだけを求めず、個人として、正しく自分自身をアップデートしていくことも必要です。ライフステージや組織の抱えている問題や課題に合わせ、自分はどんな価値を提供できるか。あるいは、どんなスキルが必要か。自己研鑽をしていく。環境が変わっても活躍できる強い個人、組織から優遇される人材になる。そんな目標を持ち、自分自身をアップデートし続けられる人は男性・女性に関わらず強いですね」(沢渡さん)

自己成長の意欲をしっかり持ちアップデートし続ける。それこそが、女性が本質的に活躍できる環境変化に繋がるだろう。

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WRITING:上阪徹 EDIT:馬場美由紀
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