転職したい企業のクチコミ情報がどれもブラック…どこまで信用していい?【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!今回は、応募した企業のクチコミ内容がどれも悪く、転職を見送るべきか悩んでいる25歳男性からのお悩みです。

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曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

転職クチコミサイトの悪い書き込み…どこまで信用していいの?

<相談内容>
CASE45:「悪いクチコミを見て転職していいものか迷っています」(25歳・IT関連会社勤務)

IT関連企業に勤務し、法人営業職に就いて3年目。ステップアップのために転職を考えており、何社か選考が進んでいますが、クチコミ情報を見て迷っています。

第一志望はネット系のA社で、現在一次面接を終えたところで好感触を得ています。ただ、さらなる企業研究のために見たクチコミサイトに、ノルマ達成のプレッシャーがきつくて社内の雰囲気が悪い、そのせいか営業手法が強引、教え合うよりライバルを蹴落とす傾向が強く、入社して数年以内に辞める人も多い…など、あまりよろしくないコメントが多数ありました。

クチコミに惑わされてはいけない…とは思うものの、どうしても気になってしまい、もし内定をもらっても転職していいものかどうか悩みます。
クチコミはどこまで信用していいものでしょうか?そして、もし内定をもらったら、私はどのように判断すればいいでしょう?(営業職)

8,568通り、あなたはどのタイプ?

一個人の感想を、額面通り受け取るのはお勧めできない

曽和さんインタビューカット

世の中にはさまざまなジャンルのクチコミサイトが存在し、迷ったときの判断材料としている人も多いかと思います。ただ、クチコミはあくまで「一個人の感想」であり、参考にする程度に留めたほうがいいと思います。

特に転職クチコミサイトは、「退職者」が書き込むケースが多いようです。
退職者は、何らかの理由でその会社が自分に合わなかったから辞めたわけですが、この手のサイトに書き込む人は不満を抱えて辞めているケースが多いと思われます。従って、転職に関するクチコミは一定以上のネガティブバイアスがかかっていると考えたほうがいいでしょう。一時の感情に流されて書き込まれたものも多いと予想されるため、悪いクチコミを額面通りに受け取るのはリスクがあると思います。

そもそも、同じ環境下で働いていても、人によって感じ方は変わります。例えば、「忙しい」という状況一つ切り取っても、ある人にとっては「ハードワークなブラック企業」であり、別の人は「若手でも責任ある仕事を任され、頑張らせてくれるいい企業」かもしれません。

相談者が目にしたという「プレッシャーがすごい」「社内の雰囲気が悪い」「営業手法が強引」などのクチコミも、いずれも一個人の感想の域を出ていません。

社員同士が刺激し合って切磋琢磨している状態を「足の引っ張り合い」と評する人もいるし、粘り強く何度もクライアントにアタックする営業を「強引な営業」という人もいるかもしれません。「数年以内に辞める人が多い」というのも、具体的な人数が書かれていない以上、どれぐらい多いのか判断ができません。そういうクチコミを、どこまで信用していいものでしょうか。

敢えて言えば「ファクトが書かれているクチコミ」は、少しは参考にできるかもしれません。単に「忙しい」というだけではなく、「先月の残業時間は〇時間にも上った」とか「毎日終電近くまで帰れず、期末はタクシー帰りのこともある」など、何らかの根拠が記されていれば、多少信ぴょう性が感じられます。

ただ、これもあくまで誰ともわからない人の1つのクチコミに過ぎず、事実ではない可能性もゼロではありません。
せっかくいいと思える企業に出会え、選考も進んでいるのであれば、面接の場で自分の目でその企業を見て、クチコミが本当かどうか確認してはいかがでしょうか?

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どうしても気になる噂は、ファクトベースで質問しよう

曽和さんインタビューカット

「クチコミが本当かどうかなんて、面と向かって確認しづらい」という人もいるかもしれませんが、モヤモヤした気持ちを抱えたまま選考を進めるのは応募者と企業、双方にとってよくありません。どうしても気になるのであれば、面接の場で質問するなどしてしっかり確認すべきでしょう。

ただ、主観によるクチコミを挙げ「これは本当なのですか?」とぶつけても、主観で返されるだけなので注意が必要です。例えば、「社内の雰囲気が悪いというクチコミを見たのですが、実際はどうなのでしょう?」と聞いたところで、面接官に「僕はそうは思わないけれどなあ…」などと返されて終わりです。

ポイントは、クチコミで書かれている「ファクト」が真実かどうかを、感情的ではなくフラットに確認すること。例えば、「念のための確認です。あるクチコミサイトで、『営業は毎日終電間際まで働いている』と書かれていたのですが、これは事実なのでしょうか?」というように、フラットな聞き方でファクトチェックをするといいでしょう。

ファクトベースで聞かれたら、相手もファクトで返してくれます。「10年くらい前まではそういうこともあったけれど、今は月の残業時間は20時間までと定められているのでそういった心配はありませんよ」とか「期末の繁忙時期には、そういうことも正直あります。しかしせいぜい3~4日程度であり、それも年々減らす努力をしています」など、企業理解につながるような答えが返ってくる可能性もあります。

「そんなことを聞いて、印象が悪くならないか?」と心配する人もいるかもしれません。確かに、主観によるクチコミ内容を疑心暗鬼な雰囲気で質問されたら、人によっては「信ぴょう性のないクチコミを信用するなんて…」とマイナスに受け取るかもしれませんが、冷静なファクトチェックであれば変な印象を与えることはないはずです。応募先企業を深く理解するきっかけになると前向きに捉え、不安点は臆せず質問してほしいですね。

アドバイスまとめ

一個人の、感情によるクチコミをどこまで信用するか?という話。
どうしても不安に思うならば、面接の場で「ファクトベースでフラットに」
質問すれば企業もファクトベースで返してくれる

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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