職場のジェネレーション・カルチャーギャップを楽しむコツ教えます|川崎貴子の「働く女性相談室」


「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」という理念のもと、キャリア支援やコンサルティング、結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さん。その経験と女性経営者ならではの視点から、のべ1万人以上の女性にアドバイスをしてきた川崎さんが「“働く女性”に立ちはだかるさまざまなお悩み」に厳しくも温かくお答えするこのコーナー(→)

今回は、「職場のジェネレーションギャップやカルチャーギャップに戸惑うことがある」というお悩みについてです。

年上の人々と談笑する社会人女性

<相談>
私はこれまでほとんど同世代の人とばかり過ごしてきました。社会人になって2年目ですが、年の離れた同僚・上司とのやり取りをする中で、いわゆるジェネレーションギャップ的な会話になるときに、いまだに戸惑ってしまいます。また、職場では海外の方が駐在することが珍しくなく、せっかく話しかけてくれても、物ごとの扱いや考え方に違いがあって驚いてしまうことが…。決して接するのがイヤというわけではないので、不慣れな私に、ギャップのあるコミュニケーションを楽しむコツを教えてください。(24歳 営業アシスタント)

社会人2年目ということであれば、まだまだ年上世代の方が多いですよね。年齢層にもかなりの幅があってそれぞれノリが違う、失礼のないようにどう反応すればいいか戸惑ってしまう、という悩みは私にも経験があり、よく分かります。

私が女性に特化した人材紹介会社を起業したのは1997年。25歳の時でした。
そのころの役員・社員は全員、私よりかなりの年上だったわけですが、いつごろからか私の年下だらけの職場になっていました。

今となっては「娘といってもおかしくない」年齢の女性たちまでおり、同期でいっぱいのOL時代が短かった私は、現在に至るまでずっとジェネレーションギャップの渦の中で仕事をしていることになります。

プライベートでも、8歳年下の夫、高校生の長女、小学生の次女と暮らしており、私が使う言葉の意味が通じない、夫や子どもたちが何を言っているのかわからない、は日常茶飯事。「ぴえん」だ「ぱおん」だ言われてわかるかっつーの!(※ぴえん・ぱおんは2018年ごろからインターネット上で若年層を中心に流行した言葉)

逆に、「ママ、大昔(*ここでカチン)携帯がなかったころってどうやって待ち合わせしてたの?本能?(*再びカチン)」と、心底不思議そうに尋ねられたりもいたします。

家族という最小単位のコミュニティですらそんな状態なのに、孫世代から祖父母といってもいいくらいの世代までが同じ職場で働くなんてまさにアメージング。
「最近の若い奴は常識が無さすぎる!」と憤る上司や、「写メでいいのに手書きのメモ取れとか、LINEで済むのに電話させるとか、業務外の飲み会とかほんと意味わかんねー」と白ける若者の姿が、ありありと目に浮かびます。

さらには、年上・年下といった世代的なギャップに限らず、うどんのつゆは白か黒か、のような出身地の違いなどによる文化的なギャップもあるでしょう。

いずれにしても、共感が得られない相手と付き合うのはなかなか億劫に思いがちですよね。

しかし、現在多くの企業がダイバーシティという取り組みを導入しています。年齢、性別、国籍、宗教等にかかわらず、多様な人材を受け入れてこそイノベーションを興すことができるという発想、すなわちこのダイバーシティが閉塞感漂う日本経済に良い変化をもたらすかもしれないと、国を始め多くの経営者に考えられているからです。

だとすれば、「ジェネレーション・カルチャーギャップ」は「イノベーションの源泉」であると言い換えることができます。

そして、それは企業の為だけではなく、私たち個人のイノベーションにも大きな影響を与えるはずです。

ここは一つ、長年ジェネレーション・カルチャーギャップの中で過ごしてきた私が、「ギャップと楽しく付き合う方法」を3つのTips(コツ)として紹介しますので、騙されたと思って(騙してないですけど)お読みいただければと思います。

Tip1:ギャップから物ごとの新しい見方を発見する

15年ほど前、私の会社ではアメリカ人とオーストラリア人の講師を何名か雇用していました。皆明るくて優秀でしたし、そのころの私も今と比べれば頭の柔らかい若者社長でしたので、多少文化の違う面があったところで何も問題ありませんでした。

いきなりファーストネームの呼び捨てで呼ばれたのにはさすがに面食らったものですが、その時、確かに名前で呼ばれる方がいいなと気づいて、以後「社長」は全社員禁止。「苗字の“さん”づけ」で定着してゆきました。

また、その中の一人に弊社役員が「○○の資料をお願い!」と頼んだところ、ファイリングブックの中の一枚を、リングを閉じたままビリッとちぎって「はい、これですね」と持ってきた、ということがありました。事務担当がファイリングブックの穴に合わせてリング状のシールを貼って、一枚一枚丁寧に補強していたそれを。

役員も私も面食らったものの、そのワイルドさが新鮮で笑ってしまいました。これきっかけに、ラックで整理する方がファイリングも探すのも時間短縮できるなと思い、変更。さらにはITコンサルを入れることで、ぎりぎりラインまでペーパーレスにできた、という経験があります。

「違い」というのは見せつけられると一瞬びっくりするのだけれど、物ごとの新しい見方を知る面白さがあり、普段さぼりがちな「白紙にして考えてみる事」のきっかけになるのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

Tip2:ギャップがあるからこそ理解を深めるチャンスと捉える

私には離婚経験があります。離婚した相手とは社長同士、また年齢も育ちもとても似通っていて色々とツーカー(死言?)でした。それなのに別れてしまったのは、お互いに「わかってるはず」「察してよ」と、言葉を尽くさなかった、相手の話を聞かなかったのが一番大きな原因でした。

方や今の夫は、8歳違いということでジェネレーションギャップはありありな上に、彼は当時ダンサーでカルチャーギャップも大きく、そもそも育った環境がまるで違う。一緒に暮らすも異星人のような存在で、「話し合わないと大変なことになる」という状態でした。そんな危機感を持ったからこそ、コミュニケーションをさぼらなかった。

職場でも同じです。相手を個人として尊重し、協力し合うためにコミュニケーションは必須。私たちは同じ国籍だろうと、同世代だろうと、テレパシーで会話はできません。知っていると思い込んでいた他人の奥深さや多面性に触れたとき、初めて上っ面じゃないパートナーシップが生まれ、そこから多くの学びを得られるから自己成長できるのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

Tip3:目標やプロジェクトをさまざまな人と共有してみる

多様性を考慮した採用をしていても「会議はいつものメンバー」「偉い人のみ」で集まっていては全く意味がありません。リーダーの皆さんにはぜひ「普段あまり接点のないメンバー」を誘って、意外な視点が生まれやすい環境づくりを目指してほしいです。

逆に若者世代も、会議やプロジェクト等、門戸が開かれたものには積極的に立候補してみてはいかがでしょうか?

同じプロジェクトで各世代の力を出し合うと、「古臭い営業手法で勝負するシニア世代」のテクニックで大口のクライアントが取れたり、「ラクに通常作業をこなしたい若者」のIT知識や技術に助けられ不可能が可能になったりして、互いに「ギャップ」だと思っていたものがチームとして実は「武器」だった事に気づくことができます。

上司だろうと部下だろうと、年上だろうと年下だろうと、尊敬し合える相手と過ごす時間は無上の喜びです。それが何ゆえなかなか尊敬し合えないのかといえば、多くの理由は「相手のことを知らないから」だったりします。

共に協力したり、知らないことを聞いたり、自己開示することで、ジェネレーションギャップは尊敬の架け橋となる可能性を秘めているのです。

プライベートでもそれぞれのギャップを認め合えば学びのチャンスに

職場のジェネレーション・カルチャーギャップは「イノベーションの源泉」であり、「コミュニケーションのきっかけ」「武器」「尊敬し合える人間関係の構築」であると書いてまいりましたが、プライベートでもギャップにはよく助けられたということを最後に。

夫と、ある問題でどんなに話し合っても埒があかなかった時、そのことを夫と同世代のビジネスパートナーに話すと、「旦那さんの考え方には共感するものがありますね。私たちは学生時代に起こった○○の影響で○○と考えがちかも」というような答えが返ってきて納得できたり、思春期の娘の心情を5年前は女子高生だった女性社員に相談したら、「娘さんの気持ちわかりますー!私の高校時代にも○○が流行って親には内緒で夢中になりましたよ~バレてましたけど!」なんて話があまりにもリアルで膝を打ったり。

ジェネレーションギャップやカルチャーギャップは、お互いの違いを、その違いが生まれた背景を知って認め合うことで、世代間の「断絶」ではなく、「ポジティブな人間関係」と「学び」として与えてくれます。

ぜひ楽しみながら、大海原へ漕ぎ出してほしいと願ってやみません。

回答者:川崎貴子f:id:kashiemi:20171127101518j:plain

リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

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イラスト:yoko
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