転勤を言い渡されて辛い…どうすればいい?

突然の転勤の辞令…希望していない場合、驚き、動揺してしまいますよね。「転勤するぐらいなら会社を辞めたい」と悩む人もいることでしょう。転勤が嫌だという場合、断っていいのか、悪いのか。転勤を理由に会社を辞めてもいいのか、辞めずに頑張ったほうがいいのか。人事歴20年超、現在は人事領域支援会社を経営する「転職のプロ」、曽和利光さんに教えていただきました。

転勤を言い渡されて悩むビジネスパーソンのイメージ

就業規則に書いてあれば、基本的には断れない

転勤を断ってもいいものかどうか迷ったら、まずは就業規則を確認しましょう。そこで会社の転勤命令権が定めされている場合には、転勤を断るのは就業規則違反になるため、基本的には断れません

そして、比較的歴史の長い日本企業の就業規則には記されていることが多いので要注意です。昔の慣習のもと記され、そのままアップデートされていないケースが多いからです。

もちろん、今のご時世では断ったからといって「即解雇」とはならないでしょう。ただ、就業規則にある以上、転勤を断りそれが容認されたとしても、「会社に忠誠心がない」「適応範囲が狭く扱いづらい」「チャレンジ精神に欠ける」などのマイナス印象が残る可能性が高いのは残念ながら現実です。断る場合は、ある程度の覚悟をもって、決断したほうがいいでしょう。

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辞める・受け入れるの判断は「辞令前に打診があったか」

ただ、現在では「会社が社員に転勤を強要するのは好ましくない」という風潮が強まりつつあります。本人の意向や家庭の事情を無視して望まない転勤を要請するのは、「そもそも会社の姿勢としてどうなのか?」という議論も上がっています。

さらにはリモートワークが普及し、どこにいてもオフィスにいるのと同じように働ける時代になりつつあるのに、「転勤などなくしていいのでは?」という意見もあります。

こういう社会情勢を踏まえ、足元では、転勤の辞令を言い渡す前に本人に何らかの打診を行う企業が多いようです。会社としても、この人材不足の折、転勤の辞令を出してあっけなく辞められてしまうのはリスクです。企業側も転勤辞令にはセンシティブになっており、「本人が思いもよらない転勤辞令」の件数は、今は格段に減っているはずです。

それなのに、何の前触れもなく急な転勤辞令が下りた…という場合は、2つの可能性が考えられます。1つは、従業員を大切にせず、転勤で忠誠心を試すような古い体質の会社である可能性。そしてもう1つは、「その人自身が会社にあまり評価されていない」可能性です。

多くの場合、転勤辞令はその人の成長を期待して実施されるもの。例えば次世代リーダー候補にある若手に、地方の小規模な組織でリーダー職に就いて経験を積み、早期にリーダーシップやマネジメント力を磨いてほしい…と転勤を言い渡すケースは珍しくありません。もちろん、その場合は事例が下りる前に、転勤してほしい理由や背景、会社としての期待感などを本人に丁寧に説明するはずです。

その説明がまるっと端折られているならば、明らかにケアが怠られています。すなわち、会社があまりその人に期待をかけておらず、人数合わせの転勤辞令である可能性が高く、この場合は辞令を断って転職するというのも一つの選択肢といえます。

人は期待されてこそ成果を出すことができ、成長もできますが、期待されていない場合は大きなチャンスも回って来ず、本人のモチベーションもなかなか上がらないもの。そんな環境に居続けても、成長可能性は低いと思われるからです。

ただ、「期待されていない転勤辞令」を甘んじて受け入れ、現地で「何くそ!」と踏ん張り本社を見返してやる…というのも一つの方法です。

慣れ親しんだ場所からまったく新しい環境に位置から飛び込むのは、それだけでビジネスパーソンとしてのトレーニングになります。この機会をチャンスと捉え、環境適応能力をいかんなく発揮して自己変革能力を磨き、小さな仕事でも成果を上げるべくコツコツ努力し続ければ、「あれ?こんなにデキる奴だった?」と見直してもらえる可能性はあります。

「突然の転勤だったけれど、あいつ異動先で大活躍しているらしいよ」という噂が人事の耳に入ったら…次世代リーダー候補に引き上げない理由はありません。自分を安易に転勤させた会社を見返すべく腹を括れるならば、こちらの選択肢のほうが将来のためにもお勧めです。

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転勤先での「辛い」「寂しい」をどう乗り越える?

期待されて転勤するにしても、甘んじて転勤するにしても、慣れ親しんだ土地を離れて縁もゆかりもない土地で生活するのはストレスが大きいもの。家族や恋人、友人に会えなくて寂しい、勝手がわからない場所で一から仕事を覚えるのが辛いと感じる人が大半でしょう。

なかには寂しさのあまり、もといた場所の同僚や友人ばかりと連絡を取り、地元にまったく溶け込もうとしない人が見受けられます。特に東京などの大都市から地方に異動した人に多いようですが、そのままでは寂しさ、辛さが募るだけです。

また、地元の人には「そんなにこの土地が嫌なら帰ればいいのに」と思われてしまい、ますます孤立する…という悪循環に陥る恐れがあります。いったん覚悟を決め、転勤を受け入れた以上、現地に馴染む努力をしないといつまで経っても辛さ、寂しさは消えません。

住んだからには積極的に同僚や現地の人とコミュニケーションを取り、「自分で自分の居場所を快適にする」努力が重要。お気に入りの場所を探してみたり、行きつけの飲食店を見つけたりするのもいいかもしれません。

昔から「住めば都」と言いますが、ことわざはある意味先人から伝わる「事例集」です。少しずつでも行動すれば、どんどん居心地がよくなっていくと思いますよ。

曽和利光さんのプロフィール画像

曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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