地元へのUターン転職を考えているけど、キャリアダウンにならないか心配です【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!


曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)など著書多数。最新刊『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)も好評。

CASE34:「2年後にUターン転職する予定。キャリアダウンしないかどうかが気がかりです」(30歳・IT関連会社勤務)

<相談内容>
私は北陸出身。以前から、いつかは地元に戻りたいと考えていました。歳を取った両親に、もし何かあったときにすぐ駆けつけられるような距離にいたいという思いもありますし、何より地元のことが大好き。昨年結婚しましたが、子どもを育てるならば東京よりも自然豊かな地元がいいと思っています。

そこで「社会人になって10年、32歳になったら帰ろう」という計画を立てました。もちろん、妻も承知してくれています。

ただ、地元に私が力を発揮できる場所があるか、今から少し不安です。

今の勤務先は大手企業で、そこで新卒入社以来経理を任されています。月次、年次決算はもちろん連結決算も担当、子会社とのやり取りなども多く、責任ある仕事を任されている実感もあります。地方企業にはおそらくこのような役割はなく、キャリアダウンになってしまうのではないかと不安です。給与水準もおそらく下がるでしょう。家賃など生活費も下がるとは思うものの、自分のモチベーションを維持できるかも心配です。

32歳まで、あと2年。これらの不安を解消するために、今から準備できることはあるでしょうか?なお、「Uターン転職しない」という選択肢は、今のところ考えていません。(経理職)

8,568通り、あなたはどのタイプ?

地方企業へのUターン転職=キャリアダウンではない

地方企業に転職することが、果たしてキャリアダウンなのでしょうか?

大企業の分業体制の中、限られた一部分の業務を担ってきた人が、中~小規模の企業に移ると、それまでより「上位クラス」の仕事を任されるようになります。

小さい組織では、1人がいくつもの役割を兼務するのが普通です。例えば、本社でいち営業部員だった人が、地方の営業所では営業マネージャーに就任したり、何なら営業所まるごと任されたりするなんてよく聞く話。そして、営業活動のみならず営業戦略立案、業績管理、人事マネジメントなど組織運営全般を担うようになります。

都心の大手企業から、北陸にある地元企業にUターン転職するということは、勤務先の企業規模は確実に小さくなるでしょう。そこではおそらく、経理だけでなく財務や法務などといった周辺業務や、場合によっては総務、広報、人事なども任される可能性があります。いち経理担当者の枠を超え、1つ上のレイヤーでバックオフィス部門全体に目を配り、幅広い知識と経験を得る。これは能力開発の観点からいえば明らかに「キャリアアップ」です。

相談者は現在、経理部門で幅広い仕事を任されているとのこと。ただ、今後40代、50代とステップアップしていくことを考えると、経理を中心にバックヤード部門全般に知識を広げられるのはプラスであり、守備範囲が広がることで仕事のスケール感も十分に感じられると思います。

もし、相談者の言う「キャリアダウン」の指標の中に、「給与水準」や「大手企業にいるという社会的ステータス」も含まれているのであれば別ですが、そうでないならば特に心配することはないと思います。

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「スペシャリスト志向」の場合は、どうしても都心が有利

ただ、相談者が「スペシャリスト志向」の持ち主なのであれば、話は変わります。もし「これからも経理以外はやりたくない、この道のスペシャリストになりたい」のであれば、Uターン転職はキャリアダウンと言えるかもしれません。

おそらく地元企業においては、前述の理由で「経理専門のポスト」は少なく、経理以外の業務も任されるケースが大半と予想されます。従って、スペシャリストとしてキャリアを積んでいく環境を地元で探すのは難易度が高そうです。

地元に戻るのはマスト、でもどうしてもスペシャリストを目指したいというのであれば、この2年の準備期間のうちに地元での人脈作りに注力し、経理部門が独立していそうな地元の最大手企業(地銀や鉄道会社などでしょうか)のツテをたどるか、経理関係の上位資格を取得して専門職を目指すか、のいずれかの選択肢になると思われます。

周辺業務について理解を進め、「面白がれる力」をつけておこう

スペシャリスト志向というわけでないならば、Uターン転職後は現場で経理を中心に幅広い業務経験を積み、総務部長や経営管理部長へとステップアップしていくのが王道のキャリアパスになると思われます。

この場合、残り2年の間に周辺業務の知識を多少なりともつけておくと、転職活動の際に有利に働くと思われます。

相談者は今の会社に新卒入社したということですから、おそらく同期の中に総務や広報、人事担当者などがいることでしょう。彼らに、今の仕事内容とやりがい、醍醐味、苦労などを聞いてみることをお勧めします。日々の仕事内容を詳しく知ることでおおよそのイメージが付きますし、やりがいや醍醐味を感じるとき、大変さを感じるときなど具体的な経験談を聞けば、Uターン後の心の準備ができそうです。また、各職種にはそれぞれ「新人はこれを読め」というバイブル的な本があるので、そういう本のタイトルを教えてもらい、目を通しておくのも一つの方法です。

このような方法で周辺業務について最低限の知識をつけておけば、興味が膨らみ、いざというときに「面白がって取り組める」素地が作れます。それさえあれば転職活動では引く手あまたなはず。より有利な環境、条件を目指せるのではないでしょうか。

アドバイスまとめ

所属企業の規模が小さくなることで、1ランク上の仕事に携われる可能性大。
2年後に備えて視野を広げ、「周辺業務も面白がれる力」をつけておこう
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭
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