家事分担でケンカになるのは「平等センサー」が発動した証拠ーー100家100通り「家事分担」スタイル

乳幼児を抱える共働き夫婦にとって、日々の暮らしをいかに円滑に過ごすかはこの時期の大きな課題でもあります。時間があるほうが家事育児をやればいい、給料が高いほうが仕事に重点をおけばいい、など家庭によって考え方はさまざま。この連載(→)では、100家庭あれば100通り、各家庭が築き上げた分担のスタイルをご紹介します。

今回は、同じ会社でフルタイム勤務をしつつ、双子を育てている濱田ご夫妻。平等主義な妻とマイペースな夫。日ごろからけんかが多いそう。そんな濱田家が、どんな経緯で今の家事育児の分担になったのか、どこに納得度があるのか、教えていただきました。

濱田家の家事育児分担事情

■夫婦ともにフルタイム勤務・子どもは1歳の双子・両親は最後の切り札

・お迎えは曜日別に担当(夫:週2、妻:週3)

・主な家事は妻、育児は半々

・日々の意識のズレは、けんかでチューニング

 

濱田 健太郎(はまだ・けんたろう)さん(写真右)

1986年生まれ。神奈川県出身。人材系企業にて主にIT業界領域の事業企画を担当。趣味はゲームで、完全なるインドア派かつ内向的。好きな言葉は「明けない夜はない」。

濱田 友恵(はまだ・ともえ)さん(写真左)

1986年生まれ。神奈川県出身。2017年に双子の長男・長女を出産。人材系企業にてカスタマー領域の事業企画・ブランディングを担当。基本ポジティブで社交的。好きな言葉は「圧倒的な当事者意識」。

出産後に激変した家事育児

―お子さんが生まれる前の家事はどんな分担でしたか?

友恵さん 平日は仕事行って帰ってきて寝るだけなので週末の空いた時間で掃除、洗濯をするくらいでしたが、洗濯は夫、それ以外は私でした。

健太郎さん そうですね、洗濯は自分から進んでやっていました。着たい時に着る洋服がないのがストレスなので、自分のためですね(笑)。

友恵さん ただ彼は洗濯物をたたむことには興味がないようで、私がひたすらたたんでいましたね…。

 

—そして、双子の妊娠。驚きましたよね。

友恵さん 病院では淡々と「双子ちゃんですね」と告げられたのですが、私は「マジかっ!」と(笑)。
妊娠経過は順調でしたが、つわりで食べられない時期があって。そのとき夫が平日に買い物をして料理を作ってくれて、そんなことしたことないのに人が変わったようでした。

健太郎さん あんまり覚えてないんですが、そうだったかな。

友恵さん あぁこの人と結婚して良かった、これから双子を産んでもきっと大丈夫だ、と思ったんですけど…。

 

―何があったんですか(笑)。

友恵さん 出産前に実家のそばである今の家に越してきたんです。とりあえず段ボールを運んで必要なものだけ出して、私は実家で過ごしていました。
そして出産後、半年振りに子どもを連れて戻ってたら…。
段ボールがそのまんま、カーテンもかけず、飲みかけのペットボトルやらが床に転がっていて。夫はゴミ屋敷みたいな部屋で生きていたんです。びっくりしました。本当にこれからどうなるんだろう、と。

健太郎さん 僕は部屋が汚くてもそこまで気にならないんです。生きていくのに不自由なければそれでいいというか。「我慢度」が高いというか。

友恵さん だから私が掃除をする。私がやればいいと思っていると思うと、なんだかなぁと…。

健太郎さん 僕の中で、今やるべき項目ではない、というだけで。彼女がやるから、とは思ってないんですよね。

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曜日別でお迎え担当を決める

—そんな家事分担(?)でしたが、出産後は育児のタスクも増えます。双子だと一気に2人分。友恵さんが仕事復帰後、生活はどのように変化しましたか?

友恵さん 仕事は復帰して半年間は時短で働きましたが、今はフルタイム勤務です。朝6時半頃に起きて、8時に全員で家を出て、歩いて駅前の保育園へ。お迎えは午後6時頃、夫が週2、私が週3の曜日別。お迎え担当が、ご飯、お風呂、寝かしつけまでを行います。お迎えがない方は思う存分仕事したり、自分の時間を過ごしたり。この流れは復帰後からずっと変わっていません。週末は私が平日分の食事をまとめて作り置きして冷凍しています。

―復帰後の家事育児の分担について、話し合いましたか?

健太郎さん 保育園が決まって慣らし保育(※)のころに話をしました。

友恵さん 「『名もなき家事』って知っている?」と言いながら、やるべき家事を箇条書きにして分担を決めました。実際は全然その通りにやれていないんですけど(笑)。
ただ、復帰前は「子どもは保育園で馴染めるのだろうか」「仕事がどれだけできるんだろうか」と不安ばかりだったので、夫ときちんと話をすることで、前向きなイメージができたのは良かったですね。子どもが病気の時や緊急時の対応も確認し合えて、不安が解消されたと思います。

納得度という意味では、お金の話をしておいたのは大きかったです。
「私は時短で収入がこれだけになるから、家に入れる分は同じシェアでいくらずつだね」という話を事前にして、納得感を持って育休明けを迎えられたと思います。
その後も「時短からフルタイムになるからいくらにしよう」「家事育児の負担を考慮していくらにしよう」と修正もしました。

健太郎さん 保育園のお迎えシフトもこのときに決めました。最初は僕が週1、彼女が週4で担当する案を彼女が出したんです。ただ、彼女は全社表彰をもらったこともあるくらい、仕事に対して情熱を持っている人。責任感もありますし、仕事を始めると、きっともっと仕事をしたくなるに違いないだろう、と。なので僕が週2で彼女が週3、という提案をしました。

友恵さん そうですね。本当にその通りでした(笑)。同じ職場なので、急な会議などがあった時は、相手のスケジューラーに「お迎えお願いします」と書き入れたりして、調整しています。

※慣らし保育:新しい環境へのストレス軽減のため、保育時間を短時間から少しずつ増やしていく期間

 

―社内のロールモデルになっているのでは?

友恵さん 若手の女性社員は「共働きの子育ての話を聞きたい」と声をかけてくれることはあります。
最初は私自身、「双子だし、仕事と育児を両立するのは難しいのかな」と漠然と思っていましたが、今のところ意外とできるものだなって。子どもが毎日元気に保育園に行っていること、理解がある職場であること、そして夫の協力次第で。

 

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「平等センサー」で日々チューニング

―分担を決めてから一年弱経っていますが、うまく回っている秘訣は?

健太郎さん 日々の細かいチューニングですね。けんかはよくしますよ。彼女が怒り始めたら、「平等センサー」が崩れている証拠だと思っています。彼女は家事育児の平等性にこだわっているので。僕が家事育児をやると、平等センサーが元に戻る。

友恵さん そういえば、怒った後は家事をやってくれる。
そうそう、最近は彼が洗濯物をたたむようになったんですよ!言い続ければ変わるんですね。そのときは、うれしい、えらい、と褒めています(笑)。

―どんな心境の変化だったのですか?

健太郎さん 言われたから、やろうかな、って(笑)。彼女が言うほどすごいことではないとわかっています。褒めて僕をうまく使おうとしているな、と思っていますよ。ただ、嫌な気はしない、というか。
むしろ彼女には感謝しています。日々の食事、掃除……、全部かな。

でも育児だけは負けてないと思っています。
昔から子どもが好きだったので、双子だと聞いて本当に嬉しかったんです。今日も部屋の掃除のために、僕1人で子ども2人を公園に連れて行きましたが、全く苦にならない。

友恵さん 我が家の場合、家事と育児は別もので。夫は家事をあまりやらないので、私がほぼ担当していますが、2人分の育児は完全に任せられます。しかも楽しんでやってくれるので、そこは本当に助かります。

ただ、よく周りから「お父さんが子ども2人の世話をして、寝かしつけまでやるなんてすごいね」と言われるのは、ちょっと違和感があるんです。夫がやればすごいと言われて、妻は言われないっておかしいなぁと。2人の子どもなのに。

 

—今までで一番大変だった出来事は?

友恵さん 3時間おき授乳のころ。最初は子どものどっちかが起きたら、もう一人も起こして一緒に授乳して寝かせてリズムを作るようにしていましたが、そうもいかない日も多くて。
彼は夜中に起きなかったんですが、職場復帰直後、睡眠不足で体を壊した時に起こしました。

健太郎さん 彼女が一人を抱っこすると、もう一人は僕が抱っこするしかないですから。

友恵さん 夜中でも起こしたら「ハイッ」って、ばっと起きて代わってくれたときは、おぉー!と思いました。

 

夫婦の会話を大事に、楽しく働き家族と向き合う

—お二人のストレス発散方法は?

健太郎さん 僕はほとんどストレスがたまらないんです。たとえ嫌なことがあっても飲みに行って寝たら終わり。子どもたちと過ごすのも楽しいので、育児でストレスを感じることはないです。自分の時間は子どもたちが寝たあと、好きなゲームやマンガを楽しむ時間があればいいんです。

友恵さん 私は友達とご飯に行くこと。仕事や家事育児のタスクをいったん忘れて私個人の時間があると、リセットできます。
あとは仕事から早めに帰って子どもたちと向き合う時間は癒しです。最低30分間は、やらなきゃいけない家事のことは一切考えず、ただ子どもと全力で遊ぶことにしているんですが、この時間をいかにまっさらな気持ちで向き合えるかを考えるようになりました。そのために仕事は無駄を排除して集中して終わらせます。
子どもを産む前に同じ速度で仕事していたら、もっと効率が良かったと思いますけど(笑)。

あとは夫婦の会話も大事ですね。子どもが寝た後、一緒に洗濯物をたたみながら、たまにはワインを飲みながらたわいもない話をします。毎朝、保育園に向かいながら話す時間も貴重な夫婦の時間になっています。

 

—これからの課題や目標はありますか?

友恵さん 課題というわけではないですが、今後、外部の掃除サービスは使ってみたいですね。

健太郎さん 病児保育とか、ベビーシッターさんとかも…。実家は近いですが、最後の切り札だと思っています。

友恵さん 目標としては、そうですね。人生80年とすると、子どもといるのは20年ぐらいの短い間。だからこそ子どもと一緒にいる時間を大切にしたいと思っています。小学生になると、子どもの意思も出て、学校行事も増えたりして、今ほど仕事ができないのではないかと思っています。そんな変化も受け止められるように、時間的にも気持ち的にも余裕を持っていたいです。
楽しく働き続けながら全力で家族と向き合う。あれもこれもわがままな状態ですけど、それを実現するのがテーマですね。

健太郎さん 彼女は何事にも妥協したくない強い意志を持っている人なので、僕はそれを支えられたらと。そんな気持ちです

友恵さん よく凸凹コンビだね、なんて言われます。けんかというコミュニケーションをとりつつ(笑)、これからも前に進んでいければと思います。

 

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インタビュー・文:野原 晄 撮影:平山 諭

 

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