女性活躍推進法によって、私の「キャリア」はどう変わる?――キャリアへの影響と女性が活躍する企業の見極め方

「女性活躍推進法」が施行されてから3年が経とうとしている現在、「女性の活躍」は社会的な関心が高いテーマとなっています。しかし、働く女性本人として、今後どのような変化・影響があるかについては、あまり理解していない実態もあるのではないでしょうか?

そこで、女性活躍推進コンサルティング・研修を手掛けているスリール株式会社代表取締役社長 堀江敦子さんに、今後女性のキャリアに対しどのような影響があるのか、また女性が活躍する企業の見極め方についてお話を伺いました。

プロフィール

スリール株式会社 代表取締役社長 堀江敦子氏

日本女子大学社会福祉学科卒業。大手IT企業勤務を経て2010年に起業。 両立支援や意識改革を得意とし、企業の研修・コンサルティング、大学・行政向けにライフキャリア教育を実施。

「子育てしながらキャリアアップする人材・組織を育成する」をテーマに、人材育成事業を展開。内閣府 男女共同参画会議専門委員、厚生労働省 イクメンプロジェクト委員、東京都文京区 ぶんきょうハッピーベイビー応援団委員など、複数行政委員を兼任。千葉大学教育学部の非常勤講師も務める。

女性活躍推進法で“女性のキャリア”はどう変わる?

ーーまずは、2016年に施行された「女性活躍推進法」のポイントについて教えてください。

「女性活躍推進法」は企業に対して女性が働きやすい環境づくりを求める法律です。具体的には、社員数301人以上(パート・アルバイト含む)の企業に対しては実施義務、301人以下の企業には努力義務が課せられています。つまり企業の規模に関わらず、意識的に「女性に昇進の機会を与える」ことを行わなければならないのです。

そこでポイントとなるのが、「女性採用比率の向上」、「勤続年数や労働時間の男女格差の解消」、「女性管理職比率の向上」などになります。

男女関係なく仕事も家庭も両立していく環境づくりを国としても応援していくという姿勢を示した法律と考えていただければと思います。

ーー女性活躍についての現状は、どうなのでしょうか。

現在でも、就労している人の中で出産後に退職している人は「46.9%」にも上ります(平成30年11月 内閣府男女共同参画局)。また女性管理職比率を上げることに関しても、目標では2020年までに企業内で指導的地位に女性が占める割合を30%と掲げていますが、平成29年度の民間企業における課長職以上に就く女性管理職比率は、10.9%とまだまだ目標との開きがあります。

◆階級別役職者に占める女性の割合の推移

さらに国際的に見てみると、世界国際フォーラムが発表するジェンダー・ギャップ指数においても女性活躍の遅れは顕著に現れており、日本は世界ランキング144ヶ国中114位とかなり下位に位置しています。つまり、それだけ日本は世界的に見ても、女性の活躍が遅れている国なのです。

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女性が活躍しづらい原因は「固定観念」の壁

ーー当事者の女性は、どのように感じているのでしょうか?

当社発行の「仕事と子育ての両立不安白書」の調査によると、80.3%の人が「現在の仕事が充実している」と答え、66.5%の人が「求められれば、マネージャーを経験してみたい」と、仕事に対しての前向きな想いが出てきました。

しかしながら、仕事と子育ての両立に不安を感じている人が「92.7%」もおり、その不安が理由で転職・退職を考えたことがある人は「50.4%」に上ります。仕事は充実している。昇進もしていきたい。でも、ライフステージが進んだ後の「仕事と子育ての両立」に対して、直面する前から不安を抱いてしまう傾向があるようです。

なぜこのような状況を生んでいるのか。そこには、固定観念の壁があると考えています。

同調査では、「子どもが生まれたら自分(女性)が家事や育児をメインでやることになると思う」と回答した人は82.4%。また、「子育てをする上では時間をかける必要がある」と答えた人は94.0%にも上りました。

つまり、「仕事も子育ても両立したい。でも家事や育児は女性がメインで行わないといけないの?でも自分はスーパーウーマンではないから、完璧にはできない。どちらかを選択しないといけないのかもしれない」と感じて不安になるのです。ただこれは女性達自らの価値観ではありません。この固定観念を生み出しているのは、会社の中での働き方や、パートナーの働き方、完璧なワーキングマザー像を情報発信しているメディアなど。社会のこうしなきゃいけないという固定概念が積み重なり、就職・転職・復職・昇進のタイミングで深く悩み、何かを諦めてしまう選択をしてしまうことがあります。

まず現在悩んでいる皆さんは、悩んでいるのは自分だけではないと知っていただきたいです。また、仕事も家事も子育てもすべて完璧に「女性」がしなければいけないという考え方は、社会で創られた固定観念であり、まずは自分自身がプライベートも含めて「どんなキャリアを描いていきたいか」を考えてみてください。

漠然とした不安からキャリアの選択肢を勝手に縮小してしまうのではなく、本当にやってみたいことを上司や人事部に相談したり、パートナーに相談したりと、不安なことわからないことを少しずつオープンにしていくことが大事です。

ーー「女性活躍推進法」が施行されたことで、ここ2〜3年で社会や働く女性個人を取り巻く環境はどのように変化してきましたか?

実態としては、まだあまり変わった実感がないかもしれません。しかしながら、少子高齢化から日本の労働人口は大きく減少しています。そのため国は、女性に限らずどんな人でも健康で長く働く環境を創ることに本気になってきています。特にこの2年ほどは、人材不足の波もあり、企業としても本気で取り組まないと生き残れない状況になってきました。

また2019年4月から、働き方改革関連法が施行され、時間外労働に上限規制が導入されるため、さらに企業は取り組みを強化する流れになってきているのは事実です。

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“女性が活躍する企業”の見極め方

ーー企業の“女性の活躍”へのサポートレベルが高いか低いかはどこで判断すればよいでしょうか?

自社の場合で確認する点と、転職をする時に企業を見る点を紹介します。まず自社の場合では、会社の中の女性活躍の状況や制度を正しく理解することが必要です。

自分が知っている会社の情報は一部かもしれません。そのため、先輩社員に聞いてみたり、「私は働き続けたいと思っているけど、どんな方法があるか?」と人事に聞いてみるなどしてみてください。自分では知らないことも教えてくれるかもしれません。

また企業を見る点としては「働き方の柔軟性」があるか否かは重要なポイントです。出産や育児がある女性に限らず、海外留学や大学編入など、仕事以外に時間を使いたいといったライフチャレンジ期に会社を離れても、また戻ってきたらキャリアダウンしないような体制があるかをチェックしてみてください育児などで3年社会から離れると、事業の流れが早い現代では復帰へのハードルが高くなるので、むしろ早く職場復帰できるようフォローしてくれる会社かチェックすることも大事です。

自宅で仕事ができるリモートワークや、様々な段階のシフトがあり、自分が一時期抜けても代わりに仕事ができる人を補填できる代替性がある仕組みなど。要は「どんな状況になっても働き続けられる」仕組みになっているかがポイントです。

また、転職に際しての客観的指標として、「女性活躍推進法 見える化サイト」や「女性の活躍推進企業データベース」に登録している企業、もしくは行動計画公表企業かどうかを確認することも事前に自分で取れる対策の1つです。

◆女性活躍推進法「見える化」サイト

http://www.gender.go.jp/policy/suishin_law/index.html

◆女性の活躍推進企業データベース

http://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/

※2019年2月28日現在の登録企業数 10,409社(データ公表企業)、12,717社(行動計画公表企業)

まとめ

2016年に施行された「女性活躍推進法」。ベンチャー気質のある企業など動きが速い組織では少しずつ変化が出てきました。しかし、実際はほとんどの大手企業でまだ風土が根付いていないのが現状でしょう。女性活躍推進に本格的に取り組んでも組織に浸透するのに3〜5年かかると言われている中で、働く女性たちは何をするべきか。まずは自分が何ができるかを周りに伝え、個人として意識を変えていくことかもしれません。

まずは周りに「私は何が得意かな?」と聞いてみることで自分の強みを深掘りし、スキルセットを言語化したり、自分がどうしたいかを上司に伝えることを少しずつ実践してみてはいかがでしょうか。

文・田尻亨太、松田然(合同会社スゴモン) 編集協力・武井梨名(株式会社LiB) 写真・平山諭
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