仕事が好き。だから「家事分担はフェア」でいたい|100家100通り「家事分担」スタイル

乳幼児を抱える共働き夫婦にとって、日々の暮らしをいかに円滑に過ごすかはこの時期の大きな課題でもあります。時間があるほうが家事育児をやればいい、給料が高いほうが仕事に重点をおけばいい、など家庭によって考え方はさまざま。100家庭あれば100通り、各家庭が築き上げた分担のスタイルがあります。この連載ではいろいろなご夫婦に、今の家事分担に至る経緯、考え方、夫婦のコミュニケーションについてお話をおうかがいし、多様な家事育児の分担事情をご紹介します。

第1回目の今回は、妻はフリーランス、夫は会社員。2歳の子どもを育てながら、バリバリ働きたいお2人の家事育児の分担についてお話をおうかがいしてきました。

菅原 さくらさん (写真左)

ライター、編集者、雑誌『走るひと』副編集長。1987年生まれ。北海道出身の滋賀県育ち。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。2016年に長男を出産。インタビューが得意で、生き方・パートナーシップ・表現などのジャンルを中心に、Webや雑誌から、広告や採用などの企業案件まで幅広く執筆。

平田 裕信(ゆうじん)さん (写真右)

建築設計事務所勤務。1987年生まれ。東京都出身。早稲田大学理工学部建築学科卒。オフィスビル、大学、ホテルなどさまざまな施設の設備設計を担当。

妊娠前から「共通認識」の下地を作った

―出産前、2人暮らしの時の生活スタイルをおうかがいします。

さくらさん 妊娠する前までは、お互いむちゃくちゃ仕事していたので、家事らしい家事はほとんどなかったように思います。私も取材で外出が多かったり、夫も夜中まで仕事をしていたりという生活だったので、平日の食事はそれぞれ別で過ごして、休日も外食が中心。たまに家で自分たちが食べたいものを作るくらいだから、洗い物もあまりなくて。

裕信さん 掃除はルンバがあったし、洗濯物も少ないからそんなに負担でもなく。家事は手が空いたほうがやれば良かったんです。どちらが何をやるとか決めなくても回っていました。

さくらさん ただ、子どもができても仕事を辞めるつもりは全くありませんでした。妊娠する前から「どうやってお互いが仕事に打ち込みながら子育てをするか」という話を夫としていたため、家事育児は2人で分担するという共通認識は自然とできていました。

裕信さん 実際に、家庭のあれこれを「家族共通のプロジェクト」だと意識しはじめたのは、妻が妊娠してからです。さくらさんは「お腹で子どもを育てて、無事に出産する」妊娠係だと思ったので、そのぶん、洗濯や洗い物などの家事は僕が中心でやるようになりました。もともと、彼女は体が強いほうではないので、僕ができることはなるべく多くしようという意識もありましたね。

さくらさん 妊娠中はそれで全く問題なかったのですが、いざ産まれてみると、状況が変わってきました。私は産後数日でデスクワークをはじめ、1カ月後には取材も再開。子どもは早生まれで保育園に入れなかったため、1年間はベビーシッターを頼みました。こうなると夫の思いやりだけでは、家の中がどうも回らない。単純に洗濯物は増えるし、部屋は散らかる。睡眠も途切れ途切れ。「これはやり方を考えないと回らないね」という話になり、本格的に家事育児をタスクとしてとらえ、時短や効率化を図りました。そうしないと立ち行かない状況だったのです。

 

―子育てや家事を「プロジェクト」として、共通認識の下でタスク化や効率化を考えたのですね。

さくらさん 私と夫は、仕事に対する熱量が同じくらいだったんです。お互いに仕事をしたい気持ちもわかるし、どちらかだけが仕事ばかり、家事育児ばかりをしていたら、たぶん潰れてしまうだろうと。だから、共同のプロジェクトである家事育児のなかで、どちらがどのタスクを引き取るか、という方法になったんだと思います。

効率化は、子どもの成長に合わせながら常に考えています。おむつや着替えの置き場所ひとつから、動線にあわせた配置変えを試行錯誤したり、家事のタイミングや頻度、家電の導入を検討したり。お互いがどこかに無駄を感じたら、また変更してみない?という提案を出し合っていますね。夫が基本的に午後8時には自宅に帰れるように調整してくれているので、フリーランスの私とも偏りなく家事育児を分担できていると思います。

 

―夜遅くまで仕事をしていた裕信さんにとっては、思い切った対応でしたね。育児と仕事の葛藤はありましたか。

裕信さん 仕事が好きだったので最初は葛藤がありました。でも「仕事がやりたいという気持ちは、妻も同じだな」と思っていて。僕が帰る時間を調整することで、さくらさんが今までと変わらずに仕事ができるなら、僕が頑張らないといけないのかな、と思いました。それに「仕事よりも育児のほうが大変だよね」というのは、共通認識としてありましたね。
仕事の体制としては、会社で残業する代わりに、自宅に仕事を持ち帰って仕事ができるようにしたのが良かったです。社内で共有するカレンダーの予定に「7時退社」とざーっと入れておいて、「早く帰る人」と思ってもらえるようにしました。

 

―裕信さんは、育児休業を取られましたか。

裕信さん さくらさんの退院後1週間だけ取りました。もっと長く休むことも考えましたが、長期の育休をとって前後にしわ寄せがいくよりも、毎日なるべく早く帰宅することのほうが僕らにはベストだと話し合いました。

さくらさん 私が産休・育休のないフリーランスだったから、「持続性」をいっそう意識して、仕組みを考えていったような気がします。

裕信さん 育児は短期戦ではなく、長期戦。ずっと続くので。お互いが息切れしないようにペース配分を考えていかないと。

家事分担は「朝番」「夜番」の分業制

―現在の家事育児分担について教えてください。

裕信さん 「朝番」と「夜番」のシフト制で、僕は「朝番」を担当。朝起きると食洗機と洗濯乾燥機の中身を出して、子どもの身支度、ご飯を食べさせて、保育園への送りを担当しています。

さくらさん 「夜番」の私は、夕方子どもを保育園に迎えに行き、夕食を作って食べさせて、その後、大人の夕ご飯の支度、お風呂、寝かしつけ。お風呂と寝かしつけは、夫も一緒にやることが多いですね。食洗機と洗濯機のセットは、その日エネルギーが残っている方がやります(笑)。

裕信さん 妻は基本的に自宅で作業していて、取材や打ち合わせなど外出の時間はそのときどきで変わりますが、僕は会社員で毎朝だいたい同じ時間に出社。ならば僕が「朝番」をするのが効率的だなと思ってこの流れになりました。
最初からスムーズに分担できたのは、妻が里帰り出産をしなかったのも大きかったかもしれません。

さくらさん そうですね。どちらかがやるしかない状況なので、育児スキルのレベルや子どもに対する意識がずれることなく分担ができたと思います。
最近は子どももだいぶ手がかからなくなりつつあるので、仕事が忙しい時はお互い週2で残業をして、週2でワンオペするという変動シフト制も組めるようになりました。年末など、忘年会やイベントが重なるときは、応相談。「ずらせない度」「レア度」が高い予定を優先するように、お互いが調整して、なんとかうまくやっています。

夫婦間コミュニケーションの基本は「他人」

―育児で余裕がなくなったときや、体調を崩したとき、仕事でストレスがたまったときはどうしていますか?

さくらさん 「もうしんどいよー」と泣きつくことはあります(笑)。でも、イライラをぶつけたりぶつけられたり、というパターンはないですね。

裕信さん そういうときは話を聞きつつ、その日の夜番タスクを引き取ったりします。僕が疲れ切って帰ったときも同じですね。仕事に余裕のあるほうが、その時期だけタスクを多めに引き取ることもあります。こうして臨機応変に対応し合えることは、すごく助かりますね。「担当のタスクを絶対にやらないとダメ」という固定化されたシステムだったら、続かなかったと思います。

―夫婦コミュニケーションで日頃から心がけていることは?

さくらさん 夫が担当のタスクでも、なにかしてくれたら、いつも言葉でお礼を伝えるようにしています。「朝の送り、ありがとう」って言うし、夫も「ご飯作ってくれて、ありがとう」って言う。便宜上タスクごとに分けているけれど、そもそもすべて夫婦2人のタスクだし、やってくれるのが当たり前ではないと思っています。

裕信さん 本当にありがたいからね。毎日ありがとうって言っているね。

さくらさん 私のほうが、よりありがたがっているんですよ。夫は私より家事育児をやっているような気がするから。

裕信さん 僕は同じぐらいの分担かなと思っていたんですけど、僕のほうがやっていると思われているなら、ラッキー(笑)。

さくらさん 仕事も家事育児もフェアに分かち合えることは、とてもありがたいことですよね。でも、分担そのものよりも、お互いが納得できる仕組みをつくれるまで、ちゃんと話し合える関係であることに感謝しています。

裕信さん そうだね。極端な話、家事育児の分担が0:100だったとしても、夫婦が納得していて幸せなら、何も問題ないと思う。ただ僕らには、今の形がベストだったと思っています。

さくらさん それに、夫婦だからといって、努力なくして良好な関係は保てないと思うんですよね。あいさつやお礼、何か頼む時の言い方も、仕事上での人間関係で普通にしていることを夫婦間でもしているというか。
何年も一緒にいるからと相手に甘えて、こういうことをおろそかにすると、やっぱりうまくいかなくなるのではないかな、と思っています。例えば、相手がやっていることに不都合があるときは「こういうやり方のほうが、もっと良くない?」という提案型のコミュニケーションをする、とか。相手を否定せず、具体的な話をして、建設的に着地したいから。

裕信さん そうだね。昔、僕がさくらさんのおしゃれニットを乾燥機にかけてしまって、めちゃくちゃ縮んだことがあったんです(笑)。そのときも責められたりはせず、次から間違って乾燥をかけないための対策を話し合う方向に進みました。

 

―はじめから、このような建設的な会話ができていたんですか?

裕信さん 僕たちは大学生のころに出会って6年間の交際を経て結婚したのですが、学生のころは、彼女が泣きながら大げんかすることもありました。当時、僕は「話して揉めるくらいなら、黙っておこう」というスタンスで、それもけんかの原因だったんです。でも、さくらさんから「言葉を飲み込まれると何もわからないし、解決できない」と言われて。
そう言われても最初はうまく伝えられませんでした。僕が伝える曖昧な言葉に、彼女が「じゃあこうだったら嫌じゃなかったの?」「私はこれがこうだから嫌だった」などと、どんどん対話をしてくれて、どうしたらよいのかを2人で話し合えるようになったんです。そんな経験を何十回もして、少しずつ自分の気持ちがわかったり、伝えられるようになった感じがします。

さくらさん いま思えば取材のようだったね(笑)。
でも、そうやって感情的なけんかも建設的なけんかも重ねて、交際中にだいたい軌道修正が済んでいたから、結婚後は大きな揉めごとはありません。

今後の課題は「情報共有」

―負担軽減のためにあってよかった、と思えるモノやサービスはありますか?

さくらさん サービスでまず必要だったのは、ベビーシッターさん。家電製品では、ルンバ、食洗機、洗濯乾燥機。最近は自動調理器のホットクックも買いました。

裕信さん 体のメンテナンスとテンションを上げるマッサージチェアも活躍しています。心のリフレッシュのためにディズニーランドホテルに泊まるとか、旅行やレジャーも必要経費。お互いに飲みに行きたい時とかは、調整し合って、それぞれの時間を楽しむようにしています。

さくらさん あとは睡眠不足対策で、もともとあったワイドダブルベッドにシングルベッドを買い足しました。子どもがいても広々寝られるので、睡眠の質がアップして、すごく良い買い物だったと思います。

―睡眠、大事ですよね。

さくらさん 子どもが生まれてから保育園に通うまでは、特にしんどかったですね。この時期の深夜は、私が授乳、夫がおむつ替えという役割分担でしたが、今考えると、効率的じゃなかったかもしれません。一緒に起きていてくれるというのは感情のケアとして感謝していますが、2人とも夜中に起きているから、共倒れの可能性もありますよね。

裕信さん 確かに、2人そろって睡眠が切れ切れになるのは精神的に良くなかったね。

さくらさん 育児アプリにつけていた生後10カ月頃の記録を見返すと、謎に授乳回数が増えて、1時間半おきに起きている生活なんですよ。詳しくは覚えてないのですが、当時のnoteによると夫と些細なけんかをしていたようです。普段けんかをすることがないので、なんでだろう、と原因をつきつめたら、どうやら睡眠不足だった。「もう夜間断乳しないともたない」と判断し、結局それが卒乳につながりました。

―現在の分担において、改善したい点はありますか?

さくらさん これからは「情報共有」の方法を考えたいと思っています。今は普通に会話レベルでシェアできる程度だから問題はないのですが、今後、習い事をはじめたり、小学生になって平日の行事が増えたりしたら、もっと情報共有を効率化する仕組みが必要になると思っていて。

裕信さん 家事育児のタスクに関しては、どちらがどう代わってもできるレベルに揃っているから、いまのところは現状維持でよさそうだもんね。でも、確かに情報共有は必要かもしれない。幼稚園を調べてくれていたとき、僕の仕事が忙しくてさくらさんに任せっきりだったから、タスクが多くて申し訳なかった。

さくらさん うん。子どもが成長したら、そういう場面が増えるかもって思った。情報の整理はスプレッドシート、予定はグーグルカレンダーを共有するとか、ベタだけどまだやってないから。

裕信さん 2人で工夫できることがまだまだあるね!まずは試しに取り入れてみましょう。

 

インタビュー・文:野原 晄 撮影:刑部友康

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