仕事と育児に注力してきたが…「イクメン」率を少し下げたい【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!


曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。最新刊『人事と採用のセオリー』(ソシム)も好評。

CASE28:「仕事が忙しくなり、家事の比率を減らしたいが…」(29歳男性・IT関連会社勤務)

<相談内容>
ITベンチャーの経営企画室で、リーダーとして働いています。

半年前に長男が誕生。「イクメンになろう!」と張り切って、忙しい中でも頑張って家事や子育てに力を注いできました。育休中の妻を気遣い、掃除や洗濯、休みの日は1週間の食事の作り置きなど、フルスロットル。それだけ初めての子どもがかわいくて、苦とは思っていなかったのですが…。

最近、妻の期待値がどんどん上がってしまい、平日深夜の掃除洗濯、週末の食事作りが「当たり前」化してしまいました。最近では「あなたがやったほうがクオリティが高いから」などと、私に任せきりになってる感があります(実際、妻は家事が得意ではなく、私がやったほうが精度が高いです)。

一方で、会社は設立して8年。創業事業が軌道に乗り、経営基盤はできてきたものの、成長スピードは鈍化。「第二の柱」を作り、会社を次の成長ステージに乗せることが急務となっています。そのため、自社のリソースを活かした新規事業を検討したり、アライアンス先を模索したりするなど、どんな可能性があるのか日夜話し合っています。今が一番、この会社の正念場だと思っていますし、やりがいを持っています。

このように、仕事がどんどん忙しくなり責任も増しているのに、家事の負担が私を苦しめています。両方やりたいのは山々なのですが…私はどうすればいいのでしょう?毎日疲れ切っています。(経営企画職)

仕事は「人に振る」「6割主義に挑戦する」ことで時間捻出を

相談者は仕事と家事・育児でいっぱいいっぱいで、寝る時間すらなさそうですね。この状態を解消するには、どちらか一方を選ぶしかないですが、こういう相談をするということはおそらく「選び切れない」のでしょう。ならば、「二兎追う」方法を考えるしかありません。そのためには、仕事、家庭のそれぞれで効率化を行い、時間短縮を図ることが必要です。

まずは「仕事」。相談内容を見ると、仕事も家事も完璧にこなしたいがために、毎日疲れ切っている…と読み取れます。相談者はおそらく完璧主義者であり、「自分が率先してやらないと!」という意識が強く、たくさんの業務を抱え込んでいるのではないでしょうか。

第一にやるべきは、「人に振れる業務はどんどん振る」ことです。

リーダー職ということは、部下を何人か抱える立場だと推察します。幹部層は、リーダー以上の立場にある人にプロセスは望んでいません。アウトプットさえ出せれば、どんな方法を取ってもいいと任せてくれるケースが大半です。

だからこそ、自分の業務をすべて棚卸しして、「本当に自分にしかできない業務はどれか」を見極めたうえで、自分でなくてもいい業務…たとえばですがデータの集計や考察、プレゼン資料の作成などは部下に任せてはいかがでしょうか?今までずっと自分でやってきたものを人に振るのは抵抗があるかもしれませんし、引き継ぎ時は一時的に時間がかかるかもしれませんが、ここは部下を成長させるいい機会だと捉え、マネジメント力を発揮してください。

外注できるものがあれば、どんどん外注に回すのも一つの方法。多方面から自分の業務を見直し、時間をねん出する工夫をしましょう。

もう一つお勧めしたいのは、「6割主義」に挑戦してみることです。

相談者は完璧主義だけに、アウトプット内容が「過剰品質」になっているのではないか、と推察されます。企画についても、細部まで検討を重ねて練り上げ、120点のものを目指しておられるのではないでしょうか。

ビジネスにおいて慎重さは確かに大切ですし、企画を完璧に練り上げる過程においては強い自己肯定感も得られると思います。しかし、経営企画として「次の一手」の可能性を急ぎ模索しているのであれば、フットワークも大切です。6割がたの出来で動き始めてみて、反響を見ながら細部を見直したほうが、結果的に精度が上がるケースが多いものです。

完璧主義者からすれば、初めは「6割主義」になかなかなじめないかもしれませんが、さまざまな可能性が検証できるうえに時間短縮にもつながると考えれば、挑戦できるのでは?企画を練り上げる過程で何度となく行っているであろう「ああでもない、こうでもない」と議論を重ねる会議も、かなり削減できるはずです。

 

家事は「絶対やるべきこと」を洗い出し、それ以外は「手を抜く」

そして「家庭」。
妻が「あなたがやったほうがクオリティが高い」というぐらいですから、家事においてもおそらく完璧主義ぶりを発揮しているのだと思われますが、負担を減らすには「手を抜ける部分は抜く」しかありません。

少し極端かもしれませんが、掃除や洗濯は少しぐらい溜めても死にはしません。子どもの食事など、絶対守らねばならない「安全・健康」に関することに注力し、それ以外のことについては、今までの半分程度にとどめてはいかがでしょう?毎日行っている掃除や洗濯を、2日に1回か、3日に1回にするだけでも、かなりの負担軽減になるはずです。もちろん、食洗機やお掃除ロボットなど家電に頼るという方法もあります。

もしくは、「クオリティが高い」という相談者の家事業務を、妻向けに「完全マニュアル化」してみるのはいかがでしょう?

仕事も家事も完ぺきにこなす相談者ならば、いい家事マニュアルが作れそうです。「自分が仕事に行っている間、残業しなければならない間に、必要になったら…」という名目で、やり方を1から10まで示したマニュアルを妻に渡せば、「やってみようかな」と思ってもらえるかもしれません。実際その通りにできたら「すごい!」と褒めまくれば、妻の家事に対するモチベーションを上げられるかもしれません。

もちろん「あなたみたいになんてできない!」と拒否されるかもしれませんが、妻が職場に復帰したら、二人三脚で家事・育児をしなければとても回りません。仕事で部下を育成するような気持ちで丁寧に臨めば、突破口が見えてくるのではないでしょうか。

 

「子どもと接したい」欲求を満たす方法を考える

ここまでいろいろな方法についてお伝えしましたが、相談者はおそらく「仕事だけでなく家事にも全力投球したい」「愛する子どもとできるだけ接していたい」という欲求が強いのでしょう。本当に辛くて疲れ切っているならば、妻に「本当にしんどい」と正直に伝えて家事から手を引けばいいのですから。

もし「今まで通りのペースで二兎追い続けたい」のであれば、リモートワークを積極的に取り入れ、自宅で業務にあたるしかありません。ITベンチャーであれば、リモートワーク制度がすでに導入されているのではないでしょうか。もし社内であまり取得実績がなかったとしても、自ら先陣を切って取り入れてみましょう。少なくとも朝晩の通勤時間が削減でき、身体的負担がかなり減るはずです。

リモートワークができないのであれば、いっそ子ども部屋にWebカメラを取り付けてみてはどうでしょう?仕事の合間に子どもの様子を見ることができれば、「子どもとできるだけ接していたい」という相談者の欲求が満たされ、日ごろの疲れも癒えるかもしれません。

とはいえ、あなたが倒れたら元も子もありません。6割主義までは難しくても、「完璧主義」を少しでも緩める努力はしてみてください。

 

アドバイスまとめ

完璧主義者こそ、働き方改革を!
仕事でも家庭でも、今より「少しだけ手を抜く」努力をすべし

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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