“愚痴”はキャリアを発展させる「最大の武器」になる

「パワハラの気がある上司に、理不尽に怒られてばかりいる」
「『とにかくやれ』と言われるだけで、やり方を指示してもらえない」
「職場の教育体制が整っておらず、指導や助言を請える人がいない」
「なんでもかんでも、自分ばかりが押し付けられる」

皆さんそれぞれに、職場や仕事への愚痴がこぼれることもあるでしょう。

「愚痴るだけで終わってはもったいない。その愚痴はチャンスに化けることもあるし、いずれキャリアアップやキャリアチェンジを図るとき、強力な武器になり得ます

そう語るのは、「転職アドバイス」のプロ・細井智彦さん。リクルートキャリアで企業の採用活動支援や個人の転職支援を手がけた後、独立。リクルートキャリア時代に立ち上げた「面接力向上セミナー」は受講生20万人に達しています。

多くの人のキャリアアップ・キャリアチェンジの実例を見てきた細井さんに、「職場や仕事への不満にどう向き合えばいいか」についてお聞きしました。

プロフィール

細井 智彦(ほそい ともひこ)

株式会社リクルートキャリアにおいて企業の採用活動のサポートや個人の転職支援などを経験。現在はフリーとして応募者と企業の面接場面での機会創出に取り組む。リクルートキャリア時代に立ち上げ名物セミナーとなった「面接力向上セミナー」はいままでに20万人が受講。一方で官庁や大手からベンチャー企業まで面接官向けの講習も340社以上に実施。

『履歴書・職務経歴書の書き方』(高橋書店)『転職面接必勝法』(講談社)など著書多数

「つらい」「苦しい」は、自分を磨く絶好のチャンス

皆さんの中には今の職場や仕事に不満を抱え「つらい…辞めたい…」と思っている方もいるかもしれません。しかし、こういった状況は、視点を変えれば格好の「トレーニングジム」であるともいえます。そこで身につけたスキルが、その先何十年ものビジネス人生を支える武器になることは十分あり得ます。

だから私は「今の状況が嫌だから、すぐに飛び出す」という選択肢のほかに、「発想を転換して、ある程度は続けてみる」ということも考えてみるとよいと思っています。

発想転換のポイントは次のとおりです。

「時限爆弾」のタイマーをセットする

「入社したからには、この会社にずっと勤めなければならない」。そんな思い込みは捨てたほうがいいかもしれません。「あと1年やってみて、やはり何も変わらないなら辞めればいい」と、自分の中に時限爆弾をセットするのです。設定は2年でも、半年でも、3ヵ月でも構いません。

私が転職相談に乗ってきた方の中には、「半年後に辞める」と決断したとたん、気分が軽くなって仕事に前向きに取り組めるようになり、結果、成果を挙げて仕事が楽しくなり、転職するのをやめた…なんてケースがいくつもあります。

「まずはこの1ヵ月、本気でやってみる」。そこから始めてみてはいかがでしょうか。本気で取り組むことによって、現状の何かが変わればしめたものです。

陰陽反転。「ひどい」「つらい」を“師匠”と捉える

ある会社が営業職を募集したとします。

Aさん:誰もが知る大手企業で、人気ブランド商品の営業を手がけていた
Bさん:無名の中小企業で、無名商品の営業活動を行い、売上を伸ばした

この2名の応募者が来た場合、Bさんの方が選ばれるケースは多々あります。

Aさんは黙っていても商品が売れるので、営業活動にそれほど苦労してこなかった。

一方、Bさんは営業先で冷たくあしらわれることが多いので、コミュニケーション力や提案力を磨く努力をしてきた。またCMを打つ予算もないので、限られたコストで販促の工夫を凝らしてきた。

もちろん、Aさんにも大手社員ならではの苦労があり、別のスキルが身についているでしょう。しかし、こと「商品を売る力」という視点で見た場合、Bさんの経験の方が価値を認められる可能性大なのです。

このように、マイナスの状況下でこそ、個人の「プラスに変える力」が発揮され、それが成長に結びつきます。

例えば、指導してくれる先輩がいなくて放置されている人であれば、主体的な行動力、自分で自分をマネジメントする力が養われるでしょう。

どんな不満やつらい状況も、「成長の機会を与えてもらえた」と捉えることができるのです。

将来の「おかげです」に目を向ける

TVや雑誌などで、こんなコメントを目にしたことがあるのではないでしょうか。

「野球部時代、厳しい指導を受けたおかげで忍耐力が身につきました」
「重病を患ったおかげで人の痛みがわかるようになりました」

つらい経験も、いつかは「おかげ」と思える日が来るものです。

あなたは今、ひどい先輩や上司に苦しめられているかもしれません。けれど、「怒り」の感情は、人にこの上ないパワーを与えるものです。ぜひ「健全に」活用してみてください。「絶対あいつより業績を挙げて、出世してやる!」といったように。

いつか「あいつのおかげで頑張れた」と感謝する日をイメージする。嫌な相手でも、自分の成長のために活用してしまいましょう。

自分の仕事の「募集条件」を書いてみる

今、あなたが「つらい」と思いながら取り組んでいる仕事。

その仕事の担当者を新たに募集することを想定し、採用担当者になったつもりで、その人材に求める要件を考えて書き出してみてください。

「取引先の無謀な要求にもひるまない粘り強い交渉力」
「短納期の依頼にも対応するスピード」
「執拗なクレームに耐えるメンタルの強さ」……等々

そうして挙げた要件はそのまま、あなた自身が今、身につけている最中のものです。

「この仕事ではこんなスキルが磨ける」を意識してみると、つらい状況を前向きに捉えられ、さらに高めていこうと思えるのではないでしょうか。

――以上のポイントを意識して、職場や仕事に向き合い直してみてください。

つらいこと、嫌なことでも、まずはやってみる。仮に「やってみる」をせずに、転職に踏み切ったとしましょう。面接では必ず「前の会社を辞めた(辞める)理由」を聞かれます。そこであなたが職場への不平不満を語ったなら、相手企業からはこう問われるでしょう。
「で、その環境であなた自身は『やり切った』といえるの?」
ここで返答に詰まるようでは、相手はあなたに期待を感じてくれません。たとえ半年でも1年でも、本気で取り組んでみることをお勧めします。

「サボる」「逃げる」も、時にはアリだ

ここまでのお話は、「つらいことにも挑戦してほしい」ということですが、「四六時中挑戦しろ」なんてことはもちろん言いません

時には「サボる」「逃げる」もアリだと、私は思っています。

例えば、厳しいノルマを課せられている営業パーソンであれば、たまには外回りに出てカフェでのんびり過ごしたり、公園を散歩したりしたっていい。会社都合に振り回されているだけでは、精神が追い詰められてしまいます。だから、時には「自分都合」の行動をとることで、「お互いさま」的に精神バランスを取ればいいと思うのです。

また、精神的にタフな人の共通項として、「愚痴を聞いてくれる人がいる」が挙げられます。不満を一人で抱え込むと、いつか潰れてしまう。第三者へ吐き出すことで、うまく逃がすことが大切です。会社の同僚でも、学生時代の友人でも、行きつけの居酒屋のマスターでも、誰でもいいのです。あるいは、動物園に行ってひたすら動物を眺めるだけでもいいと思います。気持ちの「逃げ場」を持っておくことが大切です。

最近では「副業(複業)」を認める会社も増えてきました。副業OKの会社であれば、普段の仕事とは違う形で自分の価値を発揮できる場を見つけてもいいでしょう。副業での経験が本業で活かせることもありますし、やりたいことを発見するきっかけになるかもしれません。

異動先・転職先を探るなら、「不平不満を言える環境か」に注目

いよいよ不満が限界に来たら、社内での部署異動、あるいは転職という選択肢もあります。

ここで忘れてはいけないのは、どこに移っても、「不満がまったくない職場」などまずないということです。内容や程度は変わっても、何かしらの不満を感じることは避けられません。

そこで注目すべきは、「不満をオープンに話せる風土かどうか」ということです。

自分の中だけで不満やストレスを溜め込んで耐えなければならない環境なのか、部署内の仲間や上司にぶつけて一緒に改善に取り組める環境なのか。それによって精神的負担はまったく変わってくるでしょう。

異動希望先や応募先がそうした風土かどうか、面談や見学の機会になるべく確かめるようにしてください。とはいえ、「皆さん、不満をオープンに話していますか」なんて、ストレートには聞きにくいですよね。例えば「職場の飲み会では、皆さんどんな話をされているんですか」といった聞き方であれば、相手も答えやすく、職場内コミュニケーションの雰囲気をつかめると思います。

――「期間を決めて本気で取り組む」×「逃げるときは逃げる」。このバランスをうまくとりながら、不満と上手に付き合っていってください。

EDIT&WRITING:青木 典子 撮影:平山 諭

「細井さんの話をもっと聞いてみたい」という方は、こちらのイベントに参加してみるのはいかがでしょうか?

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