母としても会社員としても中途半端「もう仕事辞めちゃおうかな…」そう決断する前に~川崎貴子の「チーム家族」痛快コラム

仕事が終わってからも、家事に育児にと時間に追われ、気づくと寝落ちの日々…。家事も育児も積極的に行う男性も増えてきたとはいえ、「家庭のことは女性」という認識はまだ根深く、共働き妻の悩みは尽きません。そんな女性たちを応援するこの連載(→)。女性のキャリア支援や結婚コンサルタントまで幅広く活躍中の川崎貴子さんから、家族を「チーム」としてとらえ、より効率的に日々を運営していくアドバイスをいただきます。
今回は「毎日仕事に家事育児に必死すぎてクタクタ、もういっそのこと仕事辞めちゃおうかな」と退職の二文字が頭をよぎった妻たちに向けて、チーム家族としてどういう風に乗り越えたらいいのか教えていただきました。

「働くママあるある問題」をどう解決するか

働くママの「もう疲れた、仕事辞めちゃおうかな…」という声を聞くと、四年前にサイボウズ株式会社が公開した「サイボウズワークスタイルムービー『大丈夫』」という動画を思い出します。(ムービーはこちら)仕事や家事育児に頑張っているのに、すべて中途半端になっている負い目を抱えながら、子どもだけじゃなく自分自身すらちゃんと愛せているのか?と独白する女性主人公の姿が映し出され、多くの働くママが共感し、当時あちこちで拡散されて大きな話題を呼んだものです。

この動画、製作者の問題定義が透けて見えますが、「夫」が全く出てこないんですよ。保育園からの「お熱です!迎えに来てください!」コールに、いつの間にか「送り迎え担当」になっていた主人公。大事な会議を早々に切り上げ、「いつからそうなったんだっけ?」と、心の中であきらめながらつぶやきます。
あまりにも働くママあるあるエピソードですし、「忙しすぎて夫と話し合う時間や気力すらない」という意見もごもっとも。
でも、小さな疑問や不満の塵は積もって山を作ります。自分の胸に不満をつぶやいているだけでは塵の山を大きくするだけで生活は一向に改善しません。共働き夫婦は「共に稼ぎ、共に家庭を回し、共に子育て」が大前提。「いつから私が送り迎え担当に?そして、今後どうする?」は共闘しているはずの夫にちゃんと言うべきなのです。

このように、この動画の示唆に富んだ所は、働くママの大変さを映像化しただけ、見た人に何かを考えさせるだけ、ではなく、よく見ると問題点と解決策が散りばめられている点にあると私は思っています。
同じような境遇の働くママで、「自分を追いつめてしまう派」と「忙しいけど幸せに両立する派」の違いは、‘考え方ひとつ’という事が良くわかるのです。

その他、動画のシーンにも出てくる「働くママあるある問題」と、私が考える解決策をご紹介します。

1.明日は仕事休めないからおばあちゃんに頼みたいが「遠いから悪いし…」と断念
→頼れる人がいるなら積極的に頼ろう!決めつけずにまずは打診!

2.明日、病児保育頼めるかな?だとしたらお弁当作らないと…
→今日妻が担当したのだから、明日の手配は夫に任せよう!呼び出し後、即夫へ報告、連絡、相談。

3.走って保育園にたどり着き、具合の悪い子どもを抱っこしながら帰宅
→緊急&共働きだもの。タクシーを使おう!

4.やるべきことを考えたら今日も眠る時間があまりない事に気づく
→睡眠は必ず確保しよう!

5.「今日も仕事が不完全だった」と落ち込んで回想
→週単位、月単位で挽回しよう!「仕事は家庭の息抜き、家庭は仕事の息抜き」くらいに捉え、メリハリのある生活を楽しもう!

上記は一例ではありますが、「考え方を変える」、「夫婦のルールを仕切りなおす」だけで、
「私は大丈夫だろうか?きちんとお仕事ができているだろうか?ちゃんとキミを愛せているだろうか?そして、自分を愛せているだろうか?」(主人公独白より)というような、危うい境地から脱却できます。

そして、特に上記4の「睡眠」に関しては、必ず死守していただきたい所です。
今、子育てと仕事で人生マックスに忙しく、疲労も溜まりに溜まっている多くの悩める共働き女性も睡眠不足ではないか?と推測いたしますが、睡眠や休息不足だと人はネガティブな思考を繰り返し、物事の良い面やメリットを見過ごし、悪い面やデメリットにばかり注目してしまう傾向があります。
そんな時に、仕事を辞めるとか、義理実家と同居するとか、夫と離婚するなどの「人生の一大事」をジャッジするのは得策ではありません。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

今の家族環境、働く環境は、変わっていく

現在、共働き夫婦の数は増え続け、25歳から50歳の共働き夫婦の割合は全体の6割を超えます。誰に強制された訳でもないのに増加しているということは、この時代に家庭を運営していくには「共働きしないと成り立たない」という理由と共に「共働きが有利である」と判断する夫婦が多いからです。
すでに「共働き」がメジャーな夫婦関係でありながら、夫婦のどちらか、もしくは両方が追いつめられてしまうのは、「すべてちゃんとしなければいけない」という完璧主義志向や「子どもはお母さんがケアしたほうがいい」という古い価値観、「夫(もしくは妻)のほうが稼いでいるから自分がやったほうがいいと判断」という忖度気質が多くの原因になっていると思われます。と同時に、それらについて夫婦のビジョン共有と話し合いが十分ではないのです。

また、家族の状態も刻一刻と変化します。
私がシングルマザーだったころ、シッターさんや家族に手伝ってもらっていたのにも関わらず、ハードな仕事と睡眠不足でフラフラだった記憶があります。2時間しか寝ていないのに、当時2歳だった娘は私の瞼を何度も指でこじ開けてたたき起こしてきたものです。ずっと続くように思われた娘の猛獣期でしたが、あれは3歳になった時、朝起きたら隣に寝ているはずの娘がいなくて慌ててリビングに行くと、バナナの皮をむいて貪っている所を発見。その姿は猿より猿らしかったけれど、お腹がすいたら自分で果物を食べるという技を覚えてくれて私の睡眠時間のアベレージ3時間は増えたように思います。そんな猿期を経て5歳になった娘は炊飯器からご飯をよそって勝手に食べるという進化を遂げます。その姿は娘の人間宣言よろしく、「子育てできるのは一時」なのだと胸に刻まれました。

これから、家族だけではなく働く環境もどんどん変化してゆきます。今ある仕事や会社がなくなる可能性もあります。そんな中を家族がサバイブしていくためには、「夫婦が互いのセーフティネットになれるか」が重要なのです。長い目で見て、仕事人として休息を取るのも、時にはお母さんを休んでリフレッシュするのも大切な事ではないでしょうか。しかし、パートナーである夫との話し合いだけはさぼってはいけないと私は思います。

なにはともあれ、まずは気力体力の回復を図り、健全な思考に戻る事が先決ではあります。
その上で、夫と二人で将来を見据え、共働きのメリットやデメリットを互いに確認して「二人の事」「家族事」として問題解決にあたりましょう。

共働き夫婦のルールに「正解」はありません。ほかの家庭と比べることでもありません。それぞれの家族のベストな方法があるはずです。それは、夫婦二人でそのときどきに合わせてアップデートしていくものです。

そして、そんな積み重ねこそが、元は他人同士の夫婦が「チーム家族」になれるのだと、結婚10周年のわが家も日々実感中です。

川崎 貴子

f:id:kashiemi:20171127101518j:plain

リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。

イラスト:かしえみ
PC_goodpoint_banner2

Pagetop