40歳管理職。転職したいけれど、給与は下げたくない【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!


曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。

CASE27:「転職したいけれど、給与が下がりそうで二の足を踏んでしまう…」(40歳女性・IT関連会社勤務)

<相談内容>
IT系企業で人事部マネージャーを務めています。

15年前、今の会社に転職。当時は創業まもないベンチャーで、人事制度の策定など仕組み作りから関わりました。以来、人事一筋。会社はどんどん大きくなり、役職も、高い給与もいただけるようになりました。

ただ、会社が大きくなったことで目標を見出しにくくなり、以前ほど仕事にやりがいを持てなくなりました。社長は「若手を伸ばすために重要な仕事はどんどん若手に任せろ」と言いますが、私は安定よりも、厳しい環境で自ら道を切り開き、成長し続けたいという思いが強いのです。成長過程にある会社に移って、もういちど最前線でバリバリ頑張りたいと思うのですが、給与がガクッと下がることが予想されるため二の足を踏んでいます。給与か、やりがいか…私はどう決断すればいいのでしょうか?(人事職)

役職付き・年収維持の転職は、現場社員から反感を買う恐れも

相談者はベンチャーの立ち上げ期から関わり、会社の成長に大きく貢献してきた立役者ですね。その実績が高く評価され、現在の地位があるのでしょう。

相談者ほどの経験があれば、給与を落とさず転職するのも不可能ではないと思います。創業期のベンチャーであれば、人事の仕組み作りから携わり、人事面から成長を支えた相談者は、のどから手が出るほど欲しい人材のはず。探せば給与維持もしくはアップ、かつ役員待遇で迎えてくれるところもあるでしょう。

ただ、既存の社員から少なからず反感を買う可能性があります。

役員や部長待遇で転職してくる人は、現場の社員に「うちのことを何も知らないのに、いきなり重要なポストに就くなんて」「そんな人に上に立たれたくない」と思われがちです。入社後、部下が非協力的で業務がうまく進まなかったり、指導やアドバイスをしても悪く解釈され反発されたりする可能性もあるでしょう。

現場とのコミュニケーションがうまく取れず、パフォーマンスが上がらなければ、入社早々あなたの評価が下がる恐れもあります。採用時の期待値が高いだけに、頑張っているにもかかわらず「思ったよりも成果が上がらないね」「期待外れだったかな」などと厳しいジャッジを受けるかもしれません。

もちろん、新しい環境にすんなり溶け込め、高いパフォーマンスを発揮できている人もたくさんいますが、このような苦難が待ち受けている可能性も十分理解し、覚悟を決めて飛び込みましょう。

無理に給与維持を目指すより「シュリンク・トゥ・グロー」のほうがうまくいく

キャリアの戦略はさまざまありますが、相談者にお勧めしたいのは「シュリンク・トゥ・グロー」(成長のための縮小)。やりがいのある仕事に就いて成長するために、いったん地位や給与を下げる、という方法です。

役員や部長クラスの高年収転職を目指すではなく、「マネージャー候補」あたりの地位で転職し、半年から1年頑張って成果を挙げ、誰も文句が付けられないような状況を整えて昇給・昇格を目指す、という方法。一時的に給与額は下がるでしょうが、そのほうが断然仕事がやりやすいでしょうし、しっかり成果を出せば早期に前職イーブンの給与を目指せると思います。

それに「シュリンク・トゥ・グロー」のほうが、いい転職先に出会える可能性も高まると思います。

企業側から見れば、いくら前職で高い実績を上げた人であっても、自社で同等のパフォーマンスを上げてくれるとは限らず、前職と同じ給与・待遇で迎え入れるのはリスクがあります。面接で前職と同等の給与を主張する人よりも、「入社時は給与が下がっても構いませんが、入社後のパフォーマンスを見て改めて正当な評価をいただきたい」という人のほうが信頼できるし、低リスクで採用できると考える企業は多いはずです。

もし「一時的であっても、給与が下がるのはしんどい」と言うならば、自身の生活水準を見直したほうがいいかもしれません。

家賃や住宅ローンなどの固定費は仕方ありませんが(高すぎる家賃やローン設定は、こういうときに足かせになるので、キャリア構築の観点から見ても避けたほうがいいと思います)、飲食費や衣服費、交際費などといった変動費は見直せるのではないでしょうか。全くのゼロにするのではなく、例えば飲みに行く場所を変えるとか、外食の頻度を少し減らすだけでも、年間で換算すればかなりの額になるでしょう。それをもとに、いくらまでなら給与額を下げられるか考えれば、転職先候補はかなり広がるはずです。

「どうしても給与を下げたくない」ならば、社内転職かリファラル採用

それでも「どうしても給与を下げたくない」という場合は、社内転職を目指してはいかがでしょう?

相談者は15年間人事一筋だったのですから、別の部署に異動すれば給与水準を落とさず、かつ「厳しい環境で自ら道を切り開き、成長し続けたい」という欲求も叶えられると思います。IT部門など専門性の高い部署は厳しいかもしれませんが、総務や広報、マーケティング部門ならば、マネージャーとして横スライドできる可能性は十分にあります。人事での高い実績と実力を評価し、あなたの「前向きなチャレンジ」を受け入れてくれるのではないでしょうか。

もう一つは、人脈を活かす方法。15年の人事歴を通して築いたであろう社外人脈の中から、転職先を探すという方法です。

最近は、リファラル採用(社員による紹介採用)が当たり前になりつつあります。人脈の中から自分の経験やスキルが活かせそうな会社を探し、「成長過程にある会社で、もういちど最前線でバリバリ頑張りたい」という熱い思いをぶつけてみてください。

相談者の仕事ぶりや人となりを評価している人であれば、「彼女に人事部長として来てもらえれば、わが社もあの会社のように成長できる」と期待し、社長に進言してくれるのではないでしょうか。社員の推薦があれば、給与額もそう落とさずに済みそうですし、入社後もその社員の口利きがあれば組織になじみやすいでしょう。

アドバイスまとめ

ハイキャリアの人がさらに上を目指すならば、一時的な年収ダウンが必要な場合も。
「シュリンク・トゥ・グロー」の考えでさらに上を目指そう
EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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