マンガ家・赤塚不二夫の生き方に学ぶ、「負のスパイラル」から抜け出す極意って?

誰かの些細なミスに腹を立てたり、妥協してクオリティを落としたり。あるいはこちらの都合を一方的に押し付けてしまったり。言うまでもなく、それは自分本意な働き方です。ドラマ『バカボンのパパよりバカなパパ』に登場するマンガ家・赤塚不二夫先生の生き方を見ていると、働くとは周りの人を幸せにすることだということに気づきます。

ドラマの登場人物の行動やセリフから、ビジネスやキャリア形成のヒントを探るシリーズ。今回は、NHK総合『バカボンのパパよりバカなパパ』から、「負のスパイラル」から抜け出す極意をご紹介します。

誰かのために、徹底的にバカになる?

日々の忙しさに追われていると、いつしか自分本意に仕事をしていることに気づかず、負のスパイラルに陥っていることがあります。そういう時は失敗を繰り返したり、人が離れていったりして、「しまった!」と後悔したことのある人もいるのではないでしょうか。

働く(はたらく)とは、「端を楽にすること」あるいは「端を楽しませること」ともいいますが、自分本意な仕事のやり方では、瞬間的には成果が出ても、決して長続きはしません

大ヒットギャグ漫画家、赤塚不二夫さんの半生を、娘のりえ子さんの視点から描いたドラマ『バカボンのパパよりバカなパパ』は、赤塚先生の「周りの人を幸せにする流儀」であふれています。

ある時、赤塚先生(玉山鉄二)の娘、りえ子(森川葵)は、高校卒業後の進路を相談しにやってきます。しかしそこで赤塚先生とりえ子は口げんかに。思わずりえ子が「バカみたい!」と言い放つと、赤塚先生は憤慨してこう返します。

赤塚「立派なバカになるのは大変なんだぞ。毎日の心がけと努力が必要なんだよ、そもそもバカというのはね、自分が裸になることなんだよ。世の中のいろんな常識を無視して、自分なりの純粋なものの見方、生き方を押し通すことなんだよ。バカっていうのはな、最高にかっこいい言葉なんだよ!」

ここでいう「バカ」とは、何も考えず空っぽになるということではありません。赤塚先生流の「バカ」とは、周りを楽しませ、喜ばせるために、自分の中に巣食うエゴも、世の中の常識やもっともらしい理屈もあっさり捨てて、相手のことを一心に思うということです。

赤塚先生の生き方には、破天荒さと、人間としてのあたたかさが同居していますが、それも周りを楽しませるためです。

ドラマの中では、アシスタントたちとおもちゃの銀玉鉄砲で銃撃戦をしたり、キャバレーでセーラー服に女装して踊るなどはちゃめちゃな生活を送る一方で、編集者が漫画の生原稿を紛失してしまった時も一切怒ることなく飲みに連れ出し、お腹いっぱい食べさせて励ましたというエピソードが紹介されています。

赤塚先生は「笑いは人を幸せにする。だから、この世で一番大切なんだ」 と考えていました。人を笑わせ、幸せにするために、自分のこだわりを捨てて率先してバカになる。あらゆる人を、いつ何時も許す。そのために一切の妥協をせず、日々信じられないほどの努力を重ねる。だから「バカになるためには、毎日の心がけと努力が必要」なのです。

これは自分目線をやめて、どうしたら周りが幸せになるかと、「周り目線」でものごとを見ているがゆえの行動なのだと思います。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

仕事相手のアドバイスを、受け入れてみるのもアリ?

ものごとがうまくいかない時というのは、もちろん周囲に原因があるときもありますが、自分でも気づかないうちに自分本位の仕事の仕方をしてしまっていることが多いように思います。

そういう時は、エゴや理屈、常識をかなぐり捨てて、「自分」から目線を外してみる必要があるのではないでしょうか。そして、徹底的に「周り」にフォーカスして、周りの目線でものごとを見つめ直してみる。それを毎日コツコツ積み重ねる。

そのサイクルを繰り返すことで、再び「誰かを喜ばせる仕事」の好循環が起こるようになり、スランプから脱出できるのではないでしょうか。

「周りの目線になる」というと、抽象的で難しいような気がしますが、例えば、自分の意見を言ったり、自分の頭で考えることをいったんやめて、仕事相手のアドバイスを丸ごと受け入れてしまうのもその一つの方法です。

何も、盲目的に人のアドバイスに従えというのではありません。自分なりの考え方でうまくいっている時は、きっと誰かを幸せにする仕事ができているときです。しかし、うまくいかない負のスパイラルに陥った時は、どこか自分の考え方がずれているとき。その連鎖を断ち切るために、思いきって自分のやり方を捨ててみるのです。

すると相手のアドバイスどおりに進めた方が、意外とするするとうまくいくことが多いと感じます。よく考えてみると、実はそれは自分の意見を捨てたというわけではなく、自分目線をいったん横に置いておくことで、「周りの目線」という新たなアイテムを手に入れるということなのだと思います。それは、未熟な自分をパワーアップさせられる秘技なのではないでしょうか。

<番組情報>

土曜ドラマ『バカボンのパパよりバカなパパ』(NHK総合、土曜20:15~)

『おそ松くん』『天才バカボン』『ひみつのアッコちゃん』など大ヒットギャグ漫画の生みの親、赤塚不二夫の半生を、娘の視点から描いたドラマ。原作は、赤塚りえ子によるエッセイ『バカボンのパパよりバカなパパ』(幻冬舎)。主演は朝ドラ『マッサン』で俳優としての新境地を切り開いた玉山鉄二。脚本は『どんど晴れ』『花嫁のれん』の小松江里子、音楽は『あまちゃん』などを手がけた大友良英 Sachiko M 江藤直子。出演は他に比嘉愛未、長谷川京子、森川葵、馬場徹、浅香航大、草笛光子。

WRITING:石川香苗子
ドラマ好きの原点は、小学生の時に見た『刑事貴族2・3』、『ロングバケーション』、『イグアナの娘』。中高生の頃は図書館でシナリオ集を読みふけり、大学ではテレビドラマで卒論を書いた筋金入りのドラマ好き。好きな脚本家は岡田惠和さん、渡辺あやさん、森下佳子さん、林宏司さん。
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