普通の仕事を「オンリーワン」にするために、必要なこと――秋元祥治『20代に伝えたい50のこと』

大学在学中、21歳で地域活性化に取り組みたいとG-netを創業された秋元祥治さん。経済産業省「地域産業を創り出す33人の演出家たち」のうちの一人として紹介されるなど、活躍されています。そんな秋元さんの著書『20代に伝えたい50のこと』が話題となっています。

『20代に伝えたい50のこと』は現在38歳となる秋元さんご自身が、20代のころに伝えたかった内容をまとめたもの。この本をベースに、“これからの生き方を模索する20代”に向けて「指針」となるような言葉を紹介したいと思います。

第11回目となる今回は、「自分にしかできない仕事」についてです。

プロフィール

秋元 祥治(あきもと しょうじ)

岡崎ビジネスサポートセンター・OKa-Biz センター長
NPO法人G-net理事(創業者)

1979年生まれ。大学在学中G-netを創業。中小企業支援と若者をつなぐ長期実践型インターンシップ事業を立ち上げ、高校教科書「政治経済」に掲載されるなど高く評価される。一方中小企業支援をf-Biz・小出宗昭氏に師事。2013年よりOKa-Bizセンター長に就任。4年間で8000件を超える相談を受け、売上アップをサポート。3~4週間の相談待ちがでる人気の相談所となっている。経済産業省「キャリ教育アワード」優秀賞、「ものづくり日本大賞」優秀賞などを受賞。早稲田大学社会連携研究所招聘研究員・内閣府地域活性化伝道師。
経済産業省「地域産業を創り出す33人の演出家たち」のうちの一人として、また雑誌「AERA」や書籍『社会起業家になる方法』では、日本の主な若手社会起業家の一人として紹介されている。

「自分じゃなきゃ、今じゃなきゃ」できない仕事に出会うまで

仕事を選ぶ基準はもちろん、人それぞれでしょう。安定性や給与、福利厚生が大事という人もいるでしょう。立地や知名度という人もいるでしょうし、一方、働きがいや成長できるか。

もちろん、仕事内容も大きなポイントでしょう。

僕は、実はずーっとやりたいことや夢がありませんでした。大学に入ってから事あるごとに将来の夢を聞かれたり、先々やりたいことは? と聞かれてもあまりはっきりと答えることができませんでした。

読者の中には、僕と同じように「やりたいことはなんですか?」と問われて言葉に窮する人も、きっとたくさんいることでしょう。けれども、それは当たり前のことだとも思います。
だって、中学校・高校・大学と学生生活を過ごす中で、ほとんどの人は学校の先生と塾の先生、そして親とバイト先で出会う人…くらいしかオトナに会うことがなかったのですから、目指すオトナの姿をイメージするのは容易でないと思います。
だからこそ「第7回『自分で決めて納得できるか』」の記事でも書いたように、さまざまなものにふれて、体験してみることが重要だと思うのです。たくさんの物事にふれる中でこそ、自分自身を相対化できる。そうやって、自分の中のモノサシが形作られていくのです。

学生時代に出会ったあるオトナのひと言は、僕にとってキャリアのわかれ道でした。今でもよく思い出します。当時経済産業省の若手官僚だった、鈴木英敬(えいけい)さん(現・三重県知事)と小さな飲み会でお話を聞かせていただいた時のことです。

鈴木さんは、どうせ仕事をするのならば、と前置きした上で、こうおっしゃいました。

自分がやらなきゃ誰がやる、
今やらなきゃいつやるんだって仕事をしたい

はっとさせられたことをよく覚えています。
当時大学生だった僕は、地元に戻ってG-netとして地域活性化の事業を続けるべきかと思い悩んでいました。この言葉はそんな僕の背中を押してくれたのです。
多くの人が入社を望む広告代理店への就職もよいかもしれない(当時の僕は、大手広告代理店に就職とかをぼんやり考えていたりしました)。けれど、地域の中小企業の活性化や人材育成といったG-netの取り組みは、僕がスタートさせた仕事。まさに「自分がやらなきゃ誰がやる」と思える仕事だったのです。だからこそ、自身が取り組むべきではないか、と奮起したのを覚えています。

今から振り返れば、自分じゃなきゃ駄目だ…なんてとんだ勘違いだったな、と思いますが(苦笑)。 同時に、この言葉はこうもとらえられると思います。たしかに一見、自分以外の人でも同じように取り組める業務や役割は多いでしょう。でもどうせ働くなら「自分じゃなきゃ」「今じゃなきゃ」と思えるような仕事の仕方をしたいのだ、と。

例えば、ポスター貼り。以前とあるプロジェクトで街のあちらこちらにポスターを貼らせてもらおうとしたことがあります。スタッフは、一店舗ずつ飛び込んでお願いに回っていました。そんな仕事は一見誰にでもできそうだし、正直モチベーションも上がらない。そんな中でも、メンバーの加藤美奈さんはまるで違いました。「ポスター貼りという役割があるからこそ、これまで知らなかったお店に入ることができる。やり取りを通じて新たなつながりを作ることもできるんだ」と。単にポスター掲示のお願いだけでなく、日々のご商売や商店街についてお話を聞かせてもらい続けたのです。信頼関係を築き、新たな事業展開のヒントもそこから得られました。

大切なことは「自分じゃなきゃできない仕事」を探すのではなくて、目の前の仕事を、自分なりの努力と工夫で取り組むこと。その結果が、「やっぱり、この仕事は◯◯さんじゃなきゃ」と言われることにつながるのではないか、と思います。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

普通の仕事を「オンリーワン」に生まれ変わらせるには?

学生と面談していると「自分じゃなきゃできない仕事をしたい」という声をよく耳にします。
気持ちはよくわかります、僕もそうでした。
けれど実際は、ほとんどの仕事や役割に代わりはきっといます。あなたじゃなきゃいけない
仕事であるわけじゃない。そもそも、ほかの誰もできないような特技や特殊技能を持っている人など、そうそういないでしょう。

今振り返ると思います。「自分がやらなきゃ、今やらなきゃ…」と言う言葉は、「自分じゃなきゃ・今じゃなきゃという仕事や役割を探そう」という意味ではない。目の前の仕事や役割を、自分じゃなきゃ・今じゃなきゃと思えるように果たそう、ということなんだと思います。

普通の仕事をオンリーワンな仕事に生まれ変わらせるということなんです。

例えば、佐々木圭一さんが著作『伝え方が9割』の中で紹介していた、ふせんマジック。ふせんって、言葉を書いてそのまま貼りつけるだけで使うことがほとんどですよね。ですが、提出書類などにつけるメモも、折って立てたり隠したりちょっとの配慮であなたオリジナルの感謝を伝えることができる。単にスケジュール調整の電話を客先とした時でも、その内容をメールにして確認のために送る、ということもそう。

普通の役割でも、オリジナリティあるよね!って言わせたいですよね。そのための工夫を考えましょう。あっと驚く人の顔を想像しながら、楽しんで仕掛けちゃいましょう。

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